当初のものとだいぶ変わりましたので、12/11現在のページを改めて。

http://www.kickstarter.com/projects/458846070/labyrinths-customized-modular-dungeon-terrain?ref=live

ラビリンス(Labyrinths):あなたのためのダンジョン・テレイン

アイアン・リング・ゲームズ(Iron Ring Games)による、カスタマイズされたゲーム用のテレインをあなたに。

あなたのゲームをレベルアップする、カスタマイズされた、お手頃なテレインの提案です。アイアン・リング・ゲームズ(カナダのゲームおよびゲーム用コンポーネントの会社)は、誇りをもってラビリンス(Labyrinths)という名のダンジョン・タイルを作成しました。

ラビリンス(Labyrinths)は28mm規格で、TRPG・ボードゲーム・ウォーゲーム用に使うことができます。ラビリンス(Labyrinths)はエクスカリバー(Excalibur)から作成した灰色の硬度の高い石膏に彩色して作りました。丈夫でゲームに華を添えるキットが入手できるようになったのです。

我々のするべきことはキットの内容をより個人に合わせたものにすること、塗装の種類、オプションを詳述することが第一です。その一方、キックスターター・プロジェクトとしての値段の手ごろさを両立させることも求められます。

我々はハースト・アーツ社(Hirst Arts)よりライセンス契約を交わし、(訳注:ハースト社は石膏の型を作っている会社で、自社製品を使った年商1,000ドルを超える会社にはライセンス契約を求めている)残りの工程を自社で行うことにしました。また、我々は既存のタイルとの互換性や、本プロジェクトにおける塗装・未塗装についてのシステムも説明する必要があります。

大変ありがたいことに、皆様より信じられない額の投資をいただき、当初設定していた12のキットおよび250種以上のパーツはすべて解禁されました!

我々は当初のストレッチ・ゴールに達するやすぐに各キットにパーツを追加し、ペイントの種類を充実させ、追加オプションの数や、選択可能なタイルの種類も増やしました。

それに加え、我々はカスタム自由のアドオン・キットを追加し、解禁されたパーツから選べるようにしました。ストレッチ・ゴールに達し続ける限りさらにパーツは増えていくのです。

コア・キット
コア・キットは2種類(部屋タイプ・洞窟タイプ)で1つにつき55ドルです。複数購入すれば割引になります。(補足参照)それに加えて、キットごとにタイルとオプションのパーツを選択可能です。1セットごとに60ドル追加すればペイント案から好きな色を塗ることができます。

現在の画像は2万5千ドル達成時点でのものであることにご注意ください。

アドオン・パック
アドオン・パックは”Drink Coasters”(20ドル)コースか、"I Just Want Accessories"(15ドル)以上のコースに投資した方は誰でも、1キットにつき35ドルの追加投資で購入できます。アドオン・パックはどれも同じ値段です。
プロが塗装した物を希望する場合は1つにつき35ドル追加してください。

キックスターターの終了後、我々はあなたがどのキットとオプションを希望するか確認します。

カスタム・キットは100ポイント以内で好きなパーツの組み合わせを選べるアドオンです。各アイテムにはポイントが設定されており、その範囲内で選択できます。ペイントの有無、タイル・追加オプションも選択可能です。詳細は高解像の画像を見て確認してください。(訳注:色・タイルを選択するものは2種類まで、各パーツは最大10組まで指定可能)

塗装のプラン

9種類の塗装はすべて解禁されました。

それに加えて、出資者による投票を最後の1週間で受け付けます。我が社の塗師はあなた方の希望に応えるべく、フル稼働で試し塗りに励んでいます。できあがり次第写真を追加します。
希望があれば、既存のパーツにその色を塗りますのでお申し付けください。

タイルの形態

現時点で17種類のオプションが選択されています。コア・キットおよびアドオンごとに好きなものを選択してください。
一部のパーツ、たとえば曲がったもの、角度が付いたもの、半分のサイズなどのタイルでは選択できないものがあることをご承知おきください。

選択パーツ

現時点でも多様な選択パーツがあります。レジン(樹脂)から作った水、血、酸やスライム付きのタイル、魔法の意匠や宝石の付いた岩などなどが選べます。これらは塗装済みのセットを選択した場合のみ付属します。

投資者の皆様の要望により、パーツは1キットあたり3つまで選べるようにしました。さらに、希望は随時受付中です!
パーツ選択の際、キットごとに10パーセント前後のパーツをどのように塗るか指定できます。この選択は単に10パーセントのパーツの外見を変えるだけでなく、セット全体に親和する影響を与えることでしょう。

新ストレッチ・ゴール!

洞窟セットに無料で“入口”のパーツが追加されました。
下記の画像が原版です。

3万ドル:解禁!
我々は自社の型師に3マス幅で2枚ドアのパーツ(#38)を作成するよう言いました。このパーツはドア&ポータルのキットおよびカスタム・アドオンの選択肢に追加されます。

レジン・クリスタルのパーツが(大小両方とも)がカスタム・アドオンの選択肢に追加されました。

3万5千ドル:解禁!

瓦礫パーツ4つ組のパーツが廃墟アドオンおよびカスタム・アドオンの選択肢に追加されました。

キノコ岩が選択パーツに追加されました。

4万ドル:(12/12解禁)

型師にデーモンの彫像と祭壇を作成させます。ストレッチ・ゴールに達し次第カスタム・アドオンの選択肢に追加されます。
以下の画像は彫像のコンセプトです。

レジンタイルもカスタム・アドオンの選択肢に追加されます。

4万5千ドル(未解禁)

レジン製のパーツを追加します。
柱、髑髏、ドラゴンの頭蓋骨、ドアやアクセサリーの一部がレジン製になり、カスタム・アドオンの選択肢に追加されます。

ビック・ダンジョンのアドオンにバルコニーのパーツが追加されます。こちらもストレッチ・ゴールに達し次第カスタム・アドオンの選択肢に追加されます。

5万ドル(未解禁)

我々は型師に髑髏をテーマにしたタイル・セットの作成を命じます。こちらもストレッチ・ゴールに達し次第カスタム・アドオンの選択肢に追加されます。

我々は型師に藁でできたモンスターの巣、テレポーター、骨の山、小さな石橋の作成を命じます。これらは各アドオン・キットに追加され、こちらもストレッチ・ゴールに達し次第カスタム・アドオンの選択肢に加わります。

リンク先について
リンク先にある画像と文章は、どのセットをどれだけ使ったかということの説明です。ストレッチ・ゴールのパーツが含まれている場合はそのように書いてあります。

また、アクセサリ・アドオンにあるパーツをいくつか高解像度の写真で掲載しました。
全ての画像はこちら(リンク先)からご覧ください。セットの写真や出資者からのリクエストで載せた画像もあります。

(中略)

発送および送料

(中略)

(訳注:要は日本への発送および送料は必ず当方まで確認してください、とのこと。なお、12/11付で送料について補足しました。ただ念のためIron Ring Games社に聞いておくことをお勧めします)


限定特典

このプロジェクトに20ドル以上の投資をした最初の20人はハンドメイドの本棚がついてきます。このほかに、我々にフィードバックをしてくれた方、何らかの形でキャンペーンの手助けをしていただいた方にも差し上げます。

御礼
我々スタッフは、金額が目標に達するとすぐにパーツの作成と塗装にかかります。
すでに投資していただいた方には、我々はあなたの支援に対して謝意を示させていただきます。そうできない場合であっても、みんなの幸せのために我々のキックスターターを周知していただければと思います。

周知用のため、よろしければ以下の画像二つを用意しておりますのでお使いください。

お世話になった方々

Heather Macmichael サポート
Sam Kane サポート
Matthew Sullivan 塗装
Ken Verge 型作成
Nathan Deluca デザイン
Ann Hawboldt デザイン
Matthew Winchester 原版作成

リスクとチャレンジ
本キックスターターのプロジェクトの全行程の責任はアイアン・リング・ゲーム社にあります。我々は45年以上の間、彫刻、型の製造、作成、塗装の経験があります。これまでに我々が完成させた委託作品は千以上に及び、このプロジェクトには1カ月以上の準備期間を費やしました。我々は機材を新調し、型取り、塗装のプロを揃えています。予想外のことは起こるかもしれません。しかしながら、我々はどんな困難にもチャレンジすることを楽しむ、臨機応変でこの道一筋の誠実なグループです。

参考までに
・ハースト社の作成したプロトタイプは完璧です。
・プロジェクト用に準備した機材は購入およびテスト済みで、このプロジェクトの期間中ずっと保証期間に入っています。
・アイアン・リング・ゲームズの社員のうち何人かは仕事または趣味としての型製造の経験があります。
・テストした大きな型は完成しております。出来栄えは素晴らしいものです。
・我々は型製造と材料輸送の遅れに対する備えがあります。
・我々はキット作成、塗装の工程や資金調達のスケジュールを詳細に立ててあります。
・必要なもののほとんどは地元で調達でき、北アメリカの外からは購入しません。作成から配送までの全行程はハリファックス、ノヴァスコシアで行います。

天災を除いて、予想されうる最悪の事態は遅延です。我々は品質を第一に求めるつもりです。いずれにしても、プロジェクトの状態は定期的にお知らせしますのでご注目ください。

よくある質問

-リストに載った以外の国も対象ですか?

(省略。日本からもできます。送料は12/11付の回答を参照してください)

-複数のキットを購入した場合、ストレッチ・ゴールはそれぞれ得られますか?

得られます。
単純な例を。キットAを1つ、キットBを2つ、アドオンCを3つ購入した場合、ストレッチ・ゴールはキットA1つ、キットB2つ、アドオンC3つ分のアドオンが得られます。

-複数のコア・キットに投資した場合、すべて同じでなくてはなりませんか?

いいえ。
キックスターターの終了時、2種類のコアセットからどう選択するかを確認します。それと一緒に、1セットごとにタイルとオプションを解禁された中から選んでください。

まあ、洞窟セットで木目の床を選ぶのはお勧めしません。そうしたいというなら止めはしませんが・・・

-キックスターター期間終了後にキットを追加できる?
キックスターターのサポートに問い合わせましたが、返答は「保証の範囲外になる」ということでした。キックスターター終了後の支払いはペイパルで取り扱うことになるでしょう。

2月発送予定の方は1月10日まで、4月発送予定の方は3月1日までに追加変更をお知らせください。

2月発送予定だったものの4月に遅らせたい方はその旨お知らせください。

-大部分がアドオンなのはなぜ?
送料の都合です。

投資の区分をシンプルにしつつ選択肢を多様にするのはよいですが、あまりにも大量の区分があるのは好ましくありません。2つのコア・キット、塗装するかどうか、送料は3種類。これだけでも十分複雑です。送料の大部分はアドオン追加前によるものですが、追加によっては大きさよりも体積が問題になることもあります。

我々はあなたがたがどのように投資するかを予想するのではなく、コア・キットとドリンク・コースター(20ドルの投資コース)だけに絞ることにしました。これによってコア・キットの値段を抑えつつ送料も安上がりにできたのです。

-壁と床が分かれている理由は?

主に3つです。
1)収納性
壁と床が分かれていればそれだけ収納スペースが少なくなります。5×5マスの閉じた部屋に必要なタイルを設置するのに必要なタイルをしまうと仮定すると、壁と床を分けた物は接着した物に比べて58%のスペースで済みます。あいた42%で他のタイルをしまうなり他のアクセサリーを詰めるなりできるわけです。状況によって数字は異なりますが、いかなる場合でも同じかそれ以上のスペースを節約できます。

2)応用性
壁と床がくっついていた場合、タイルを変えたいと思うと丸ごと取り換える必要があります。外付けならばその手間はありません。角部分と壁部分で区別をする必要もありません。壁と床でよいのです。我々は単純に壁と床でダンジョンを広げていきます。両方が分離しているからこそ、ダンジョンを作成する際に壁や角が足りなくなるのではないかという懸念をしなくて済むのです。また一方で、壁を遮断地形や柱、階上の土台として使うこともでき、動く壁の罠を載せたり隠し扉にも使えます。

3)効率とコスト
使い道がたくさんあるということは、それだけ使われる頻度が高いということです。同じダンジョンを組むにしても、取り回しの良い方が安く上がります。さらに、パーツは分離した方が簡単かつ安上がりに作成できます。お互い無駄は省きましょう。そのほうがどちらにとっても得です!

-丈夫にできているのかな?
床と壁がくっついているのなら、壁は驚くほど安定します。何層にも及ぶダンジョンを積み上げたとしても強度的な問題は全くありません。

-他社との互換性は?
大体のところは共存可能です。全く問題ないものもあれば、若干の違いがでてくるところもあります。我々から違和感なく共存させるためのパーツを提供させていただきますので、そのあたりの心配は無用です。

ダンジョンを作るための準備時間はどのくらいかかる?
ほとんどの所において、他のシステムと比べてもかかる時間は引けを取りません。それはなぜか?我々は広い部屋の作成を意識しているからです。12×12の部屋を作りたいのに、2×2を敷き詰めるのは骨が折れるでしょう。

-どうしても床と壁は貼り付けたいけれど
どうしてもというなら、使い勝手は悪くなりますが接着させることもできます。1.5インチ幅の壁を使うとよいでしょう。セットから壁や角、階段などを作ることができます。

-ストレッチ・ゴールなどで、接着した物を作ってくれたりしない?
あり得ません。
我々はこれまでのあり方を変えることに躊躇いがなかったわけではありません。分離した物が普及していなかったからです。ですが、これからは変わるでしょう。我々がそれを示します。

-各パーツは何から作られますか?
石膏と樹脂です。ほとんどのパーツはシンプルにできており、型取り時にに機械で吸い取ったり揺らしたりして気泡を取り除くことで強度を保っています。

エクスカリバーは利用できる中でも18ksi(非常に硬い)という最高の硬度を持つ素材で、傷を防ぐとてもきれいな型から作られます。パーツ中の非常に細かい部分、透明および半透明の樹脂部分はポリエステルからできています。

もちろん、給水塔の上から落とすとか、トラックでひき潰すような真似はしないほうがよいでしょう。(訳注:Dwarven Forgeのキックスターター動画でのパフォーマンスを意識している)我々はダンジョン作成やコンベンションでのジオラマなど何度もテストを重ねており、顧客との仕事でも要望はほとんどなく、あったとしても些細なものです。

-キットの構成や塗装、細かい部分はいつまでに決めればいいの?
キックスターター終了時にコアセットの構成やペイントの有無、オプションパーツとタイル、他のオプションもあれば確認します。

そうすることで、投資額を何度も変えることなく欲しいパーツや塗装が解禁されるまで待っていられるわけです。

-もっと写真が見たい!

こちらまでどうぞ。
http://ironringgames.imgur.com
希望があればお知らせください。

-各パーツの大きさは?
1マスあたり1インチ(2.54cm)×1インチ、厚さ4分の1インチ。
壁は厚さ0.5インチ、高さ1.5インチ、幅はパーツによって1~4インチ。
(訳注:Dwarven ForgeやPaizo のフリップ・マットと同じ規格です。ただしこれだと
本文の28ミリ規格という表記と食い違う気がするのですが・・・)

ダンジョン・テレインのキックスターターがあったので紹介させていただきます。
よろしければどうぞ。

本文を訳してここに載せてよいかはアイアン・リング・ゲームズ社に確認済です。

(2013/11/29 アイロン→アイアンに表記を修正)
(2013/12/2 Complete kit Customizationについて付記があった部分を追加・修正)

値段のシステムが分からない、という意見があったので補足します。

補足
・セットの値段(日本から、かつ現在でも入手可能なもののみ)

こちらは申し込みの際に支払いを求められた金額になります。
実際に支払う際、表記の金額と異なる場合があることを予めご了承ください。
申し込み時は金額をもう一度確認することをお勧めします。
例:1セットの未塗装なら55ドル+15ドルで申し込むことができますが、
引き落とし時に( )内の送料が適用されて95ドルになる可能性があります。

1セット:未塗装55ドル、塗装は+60×1ドル、送料15(40)ドル
2セット:未塗装110ドル、塗装は+60×2ドル、送料20(60)ドル
3セット:未塗装160ドル、塗装は+60×3ドル、送料30(80)ドル
5セット:未塗装250ドル、塗装は+60×5ドル、送料45(120)ドル
10セット:未塗装475ドル、塗装は+60×10ドル、送料90(240)ドル
アドオン(すべて共通)1キットにつき35ドル、塗装は+35ドル、送料20ドル

・ストレッチ・ゴール達成によるパーツ・オプションの追加

12/2 現在はすべてのストレッチ・ゴールを満たしたので、アドオンの画像が
差し替えられています。そのアドオンの画像をご覧ください。

12/5ストレッチ・ゴールが追加されました。詳細は後ほど更新します。

・最後に解禁されるアドオンの詳細

Complete kit Customizationキットはこちらをご覧ください。
http://ironringgames.imgur.com/
各パーツの右下が購入に必要なポイント数です。
1キットあたり合計100ポイント以内で選んでください。

(12/2 リンク先に制限が付記されたので訂正)

同じパーツは最大10組までにしてください。
壁とタイルは最大2種類まで、塗装も最大2色まで選択できます。

http://www.kickstarter.com/projects/458846070/labyrinths-customized-modular-dungeon-terrain?ref=live

・タイルのサイズ

1マスあたり1インチ(2.54cm)×1インチ、厚さ4分の1インチ。
壁は厚さ0.5インチ、高さ1.5インチ、幅はパーツによって1~4インチ。
(注:Dwarven ForgeやPaizo のフリップ・マットと同じ規格です。ただしこれだと
本文の28ミリ規格という表記と食い違う気がするのですが・・・)

ラビリンス(Labyrinths):あなたのためのダンジョン・テレイン

アイアン・リング・ゲームズ(Iron Ring Games)による、カスタマイズされたゲーム用のテレインをあなたに。

あなたのゲームをレベルアップする、カスタマイズされた、お手頃なテレインの提案です。アイアン・リング・ゲームズ(カナダのゲームおよびゲーム用コンポーネントの会社)は、誇りをもってラビリンス(Labyrinths)という名のダンジョン・タイルを作成しました。

ラビリンス(Labyrinths)は28mm規格で、TRPG・ボードゲーム・ウォーゲーム用に使うことができます。ラビリンス(Labyrinths)はエクスカリバー(Excalibur)から作成した灰色の硬度の高い石膏に彩色して作りました。丈夫でゲームに華を添えるキットが入手できるようになったのです。

我々のするべきことはキットの内容をより個人に合わせたものにすること、塗装の種類、オプションを詳述することが第一です。その一方、キックスターター・プロジェクトとしての値段の手ごろさを両立させることも求められます。そこで我々はハースト・アーツ社(Hirst Arts)に基本的なデザインをライセンスして、残りの工程を自社で行うことにしました。また、我々は既存のタイルとの互換性や、本プロジェクトにおける塗装・未塗装についてのシステムも説明する必要があります。

我々は、合計250種類上のパーツに及ぶ型の作成の資金を得るため、キックスターターにラビリンス(Labyrinths)を案内させていただきます。キックスターターは既存の店舗では扱いきれないほどの多様なパーツを揃えるのにうってつけの場所でしょう。

最初の4つのキットのための目標額はすでに達成しました。我々は今より多くのキットやパーツを提供するべく、さらに多彩なアドオンを選択していただくため、あなたの投資により多くのお返しをするべく頑張ります。

25,000カナダドルが最終ゴールで、(22,500ドルを除き)2,500ドル投資額が増えるごとに我々は以下を追加します。

1)新しいアドオン
2)すでに解禁されたキットとアドオンに新たなパーツを追加
3)新しいタイルの選択肢を追加
4)新しい塗装を追加
5)新しい選択パーツを追加

最後の目標である25,000ドルに達した場合、それまで出たアドオンのパーツから自由に選択できるアドオンを解禁します。

メインとなるキット
メインとなるキットは2種類(部屋タイプ・洞窟タイプ)で1つにつき55ドルです。複数購入すれば割引になります。(補足参照)それに加えて、キットごとにタイルとオプションのパーツを選択可能です。1セットごとに60ドル追加すればペイント案から好きな色を塗ることができます。

部屋タイプのキット単体で大きな部屋1つ、もしくは曲がりくねった通路、あるいは中型の部屋3つを作るのに十分な大きさがあり、すでに達成したストレッチ・ゴールによって追加の床タイル、円形の壁、階段とドアまで含まれています。さらなるゴールに達すれば、より多くのパーツが加わるわけです。
詳細は表を見てください。

コアとなるキット(洞窟タイプ)は100マス分のタイルと16種類の壁、5つの岩と戸口でできています。すでに達したストレッチ・ゴールによって、41マス分のタイルが追加され、鍾乳石や階段が加わりました。さらにこのままいけば柱やバリケード、池のタイルが追加されるでしょう。

アドオン・パック
アドオン・パックは20ドル以上投資した方は誰でも1キットにつき35ドルの追加投資で購入できます。アドオン・パックはどれも同じ値段です。プロが塗装した物を希望する場合は1つにつき35ドル追加してください。キックスターターの終了後、我々はあなたがどのキットとオプションを希望するか確認します。

ダンジョン・アクセサリ・アドオンは、あなたの室内の遭遇のスパイスとなるすべてがあります。宝箱、収納箱、樽に木箱などなど。ストレッチ・ゴールによって、テーブル、落とし穴、木製の王座と暖炉が追加されました。このままいけば吊り橋に本棚、最後には生贄用の祭壇が加わります。

同様に、ケイヴン・アクセサリ・アドオンはあなたが洞窟のセットアップのアクセサリーになるであろうすべてが詰められています。ごく自然にあるような堆積岩、鍾乳石やキノコにクリスタル、もっと邪悪にするための髑髏や祭壇があります。ストレッチ・ゴールによって、大型のキノコ、宝の山、井戸に階段、巨人用の玉座が加わりました。さらに進めば吹き抜けの階段や鍾乳石が加わり、最後のゴールでは超小型のキノコが手に入ります。

アドオン:
ストレッチ・ゴールに達するたび、さらなるアドオンが解禁されます。(11/28現在 あと一つ解禁されていないアドオンがあります)詳細はチャートの画像を見てください。あなたが複数のキットを購入する場合、その数だけパーツが追加されます。下の図に示された(訳注:ページ参照)の範囲はあなたが投資するキットごとに得られる範囲を示します。

錠のかかったマークがついたキット:
ストレッチ・ゴールに達するたび、これらのアドオン・キットが解禁されます。

塗装プラン:
ストレッチ・ゴールに達するたび、我々はどのようにあなたのキットを塗装するかのオプションを追加します。現在8種類が解禁され、残り2つは投資していただいた方の投票によって決まります。詳細は表を見てください。

タイル・オプション:
塗装プランと同様に、我々はあなたのタイルの選択肢を劇的に増やしています。コア・キットごとに、あなたはどのタイルにするか選択できます。洞窟タイプとダンジョン・アクセサリ・アドオンも同様です。片方のキットからしか選択できないものもありますのでご注意ください。これらも最後に解禁されるアドオンで自由に追加できます。

オプションとなるタイル:
あなたのダンジョンのアクセントとなるオプションもアドオンになります。購入するセットごとに無料で1つ、それ以上は追加で購入可能です。こちらも各セットごとに1つずつ選ぶことができます。

リンク先について
リンク先にある画像と文章は、どのセットをどれだけ使ったかということの説明です。ストレッチ・ゴールのパーツが含まれている場合はそのように書いてあります。

また、アクセサリ・アドオンにあるパーツをいくつか高解像度の写真で掲載しました。

輸送代金
(省略します。日本は各投資額の一番下にある金額を加えてください。投資する画面で最終的な確認があります。)

限定特典

このプロジェクトに20ドル以上の投資をした最初の20人はハンドメイドの本棚がついてきます。このほかに、我々のキャンペーンの手助けをしていただいた方にも差し上げます。

御礼
我々スタッフは、金額が目標に達するとすぐにパーツの作成と塗装にかかります。
すでに投資していただいた方には、我々はあなたの支援に対して謝意を示させていただきます。そうできない場合であっても、みんなの幸せのために我々のキックスターターを周知していただければと思います。

周知用のため、よろしければ以下の画像二つを用意しておりますのでお使いください。

リスクとチャレンジ
本キックスターターのプロジェクトの全行程の責任はアイアン・リング・ゲーム社にあります。我々は45年以上の間、彫刻、型の製造、作成、塗装の経験があります。これまでに我々が完成させた委託作品は千以上に及び、このプロジェクトには1カ月以上の準備期間を費やしました。我々は機材を新調し、型取り、塗装のプロを揃えています。予想外のことは起こるかもしれません。しかしながら、我々はどんな困難にもチャレンジすることを楽しむ、臨機応変でこの道一筋の誠実なグループです。

参考までに
・ハースト社の作成したプロトタイプは完璧です。
・プロジェクト用に準備した機材は購入およびテスト済みで、このプロジェクトの期間中ずっと保証期間に入っています。
・アイアン・リング・ゲームズの社員のうち何人かは仕事または趣味としての型製造の経験があります。
・テストした大きな型は完成しております。出来栄えは素晴らしいものです。
・我々は型製造と材料輸送の遅れに対する備えがあります。
・我々はキット作成、塗装の工程や資金調達のスケジュールを詳細に立ててあります。
・必要なもののほとんどは地元で調達でき、北アメリカの外からは購入しません。作成から配送までの全行程はハリファックス、ノヴァスコシアで行います。

天災を除いて、予想されうる最悪の事態は遅延です。我々は品質を第一に求めるつもりです。いずれにしても、プロジェクトの状態は定期的にお知らせしますのでご注目ください。

よくある質問

-リストに載った以外の国も対象ですか?

(省略。日本からもできます。送料は補足参照)

-複数のキットを購入した場合、ストレッチ・ゴールはそれぞれ得られますか?

得られます。
単純な例を。キットAを1つ、キットBを2つ、アドオンCを3つ購入した場合、ストレッチ・ゴールはキットA1つ、キットB2つ、アドオンC3つ分のアドオンが得られます。

-複数のコア・キットに投資した場合、すべて同じでなくてはなりませんか?

いいえ。
キックスターターの終了時、2種類のコアセットからどう選択するかを確認します。それと一緒に、1セットごとにタイルとオプションを解禁された中から選んでください。

まあ、洞窟セットで木目の床を選ぶのはお勧めしません。そうしたいというなら止めはしませんが・・・

-大部分がアドオンなのはなぜ?
送料の都合です。

投資の区分をシンプルにしつつ選択肢を多様にするのはよいですが、あまりにも大量の区分があるのは好ましくありません。2つのコア・キット、塗装するかどうか、送料は3種類。これだけでも十分複雑です。送料の大部分はアドオン追加前によるものですが、追加によっては大きさよりも体積が問題になることもあります。

我々はあなたがたがどのように投資するかを予想するのではなく、コア・キットとドリンク・コースター(20ドルの投資コース)だけに絞ることにしました。これによってコア・キットの値段を抑えつつ送料も安上がりにできたのです。

-壁と床が分かれている理由は?

主に3つです。
1)収納性
壁と床が分かれていればそれだけ収納スペースが少なくなります。5×5マスの閉じた部屋に必要なタイルを設置するのに必要なタイルをしまうと仮定すると、壁と床を分けた物は接着した物に比べて58%のスペースで済みます。あいた42%で他のタイルをしまうなり他のアクセサリーを詰めるなりできるわけです。状況によって数字は異なりますが、いかなる場合でも同じかそれ以上のスペースを節約できます。

2)応用性
壁と床がくっついていた場合、タイルを変えたいと思うと丸ごと取り換える必要があります。外付けならばその手間はありません。角部分と壁部分で区別をする必要もありません。壁と床でよいのです。我々は単純に壁と床でダンジョンを広げていきます。両方が分離しているからこそ、ダンジョンを作成する際に壁や角が足りなくなるのではないかという懸念をしなくて済むのです。また一方で、壁を遮断地形や柱、階上の土台として使うこともでき、動く壁の罠を載せたり隠し扉にも使えます。

3)効率とコスト
使い道がたくさんあるということは、それだけ使われる頻度が高いということです。同じダンジョンを組むにしても、取り回しの良い方が安く上がります。さらに、パーツは分離した方が簡単かつ安上がりに作成できます。お互い無駄は省きましょう。そのほうがどちらにとっても得です!

-丈夫にできているのかな?
床と壁がくっついているのなら、壁は驚くほど安定します。何層にも及ぶダンジョンを積み上げたとしても強度的な問題は全くありません。

-他社との互換性は?
大体のところは共存可能です。全く問題ないものもあれば、若干の違いがでてくるところもあります。我々から違和感なく共存させるためのパーツを提供させていただきますので、そのあたりの心配は無用です。

ダンジョンを作るための準備時間はどのくらいかかる?
ほとんどの所において、他のシステムと比べてもかかる時間は引けを取りません。それはなぜか?我々は広い部屋の作成を意識しているからです。12×12の部屋を作りたいのに、2×2を敷き詰めるのは骨が折れるでしょう。

-どうしても床と壁は貼り付けたいけれど
どうしてもというなら、使い勝手は悪くなりますが接着させることもできます。1.5インチ幅の壁を使うとよいでしょう。セットから壁や角、階段などを作ることができます。

-ストレッチ・ゴールなどで、接着した物を作ってくれたりしない?
あり得ません。
我々はこれまでのあり方を変えることに躊躇いがなかったわけではありません。分離した物が普及していなかったからです。ですが、これからは変わるでしょう。我々がそれを示します。

-各パーツは何から作られますか?
石膏と樹脂です。ほとんどのパーツはシンプルにできており、型取り時にに機械で吸い取ったり揺らしたりして気泡を取り除くことで強度を保っています。

エクスカリバーは利用できる中でも18ksi(非常に硬い)という最高の硬度を持つ素材で、傷を防ぐとてもきれいな型から作られます。パーツ中の非常に細かい部分、透明および半透明の樹脂部分はポリエステルからできています。

もちろん、給水塔の上から落とすとか、トラックでひき潰すような真似はしないほうがよいでしょう。(訳注:Dwarven Forgeのキックスターター動画でのパフォーマンスを意識している)我々はダンジョン作成やコンベンションでのジオラマなど何度もテストを重ねており、顧客との仕事でも要望はほとんどなく、あったとしても些細なものです。

-キットの構成や塗装、細かい部分はいつまでに決めればいいの?
キックスターター終了時にコアセットの構成やペイントの有無、オプションパーツとタイル、他のオプションもあれば確認します。

そうすることで、投資額を何度も変えることなく欲しいパーツや塗装が解禁されるまで待っていられるわけです。

DAC2013“Bolt from the blue”のセッション資料になります。

こちらはHammerfast-A Dwarven Outpost Adventure Siteを基にしていますが、
必要に応じて修正してあります。掲載後に修正される可能性もありますので、
予めご承知おきください。

・ハンマーファストの成り立ち

 とあるモラディンの僧侶が啓示を受け、ドワーフの墓所に都市を築いた。それがハンマーファストの始まりである。それからタラクという名のグルームシュの勇者が侵略するまで、この地はドワーフの聖地であり続けた。戦いでタラクは絶命し、争いはそこで終わるかに見えた。だがかえってグルームシュの注意を引いたため、遂にモラディンとグルームシュが直々にやりあうところまで発展した。
 第二の戦争、今度は神々のそれになるかと思いきや、驚いたことに両者は妥協した。グルームシュはハンマーファストそのものには価値を見出さなかったが、己の信者をかの地に置くことは後々のためになると考え、オークの安全な居住をモラディンに要求した。モラディンは自身の定めた掟に従う限りにおいてこれを許した。両者が最終的に取り交わした、単純明快かつ絶対の掟は以下の4つである。

◆グルームシュの信者は、ハンマーファストの住民に危害を加えない限り安全な居住を保障される。
◆グルームシュの僧侶は、ハンマーファストが攻撃にさらされたとき、これを守る義務を負う。
◆住民に危害を加えようとしない限り、ハンマーファストの幽霊に手出しをしてはならない。幽霊への攻撃は、生きている住民への攻撃と見なされる。
◆モラディンの寺院とグルームシュの寺院は共に聖地である。片方がもう一方によって侵されたとき、神々がそれを止める。

掟を犯した者はモラディンの信徒によって取り調べ(拷問)がなされ、グルームシュの信徒によって処罰(両目をくり抜いて街から放逐される)されるのが常である。なお、4つ目の掟はこれまで破られたことがない。どこにでもある争いが神々の直接介入を招くなどとは考えられないことだが、ほとんどの住民はこの掟を破ることはこの地の終わりであると固く信じている。

・ハンマーファストの祝日

ドラゴンの日

盛夏の日、悪竜カラストリックスの打倒を記念してドラゴン祭りが行われる。メインとなるイベントは「ドラゴン火葬行列」であり、冒険者に扮した子供たちが、町中を練り歩きながら並べられたドラゴンのぬいぐるみを剣や槍で一つずつ刺していく。パレードの終点はモラディンの寺院であり、穴の開いたぬいぐるみが盛大に燃やされて祭りを締めくくる。

戦いの日

春の初めの頃、かつてハンマーファストにあった争いを忘れないためにある。この日の逢魔が時に外にいると酷い不運に遭うと言われているため、人々は日没後扉を固く閉じて出歩かない。深夜に吠え猛るオークの軍勢が町を走り抜け、当時の戦を思い起こさせる。

隣人の日

秋が訪れる頃、過ぎ去った夏の日を惜しむかのように収穫祭が開かれる。老いも若きも、権力者も貧乏人もみな一緒の仮装行列が街を練り歩き、どの家もケーキやクッキー、その他お菓子を焼いて子供に配る。食べ物をあげる行為は町の結束を象徴している。

一つ目祭り

モラディンとグルームシュの間には緊張が途切れることがないが、決して爆発には至らない。「一つ目祭り」はこの緊張の発散の場とも言われている。毎年極寒の日を選んでグルームシュの僧侶が荒々しい武道会を主催し、ネンティア谷周辺のグルームシュの強者たちが集まって序列を競う。試合は対戦相手の死で決着がつくこともあるが、多くはいずれかが気絶して終わる。
この決闘とは別に、グルームシュの戦士たちは相手を選ばず勝負を受ける。コードの戦士、近隣の腕自慢などなど、戦えるものなら誰でも歓迎される。
この祭りは一週間にも及ぶ。グルームシュの僧侶がこれらの勝敗が来るべき年の吉凶を占うと考えているが、そこにモラディンの寺院がつけこむ。奴らをやきもきさせてやろうと企んでパラディンやクレリックを送り込み、祭りはちょっとした盛り上がりを見せるのだ。
(PCたちはこの祭りでその年のチャンピオンを倒して名を挙げた、などの設定ができます。)

・故あってPC達を狙う面々

サークル・オブ・ストーン

歴史的にハンマーファストの成り立ちを厳密に解釈し、ドワーフのみがハンマーファストの住人であるという、いわゆるモラディンの急進派である。存在と行動がハンマーファストの掟に触れるものであるため、表向きは存在を秘して影からオークやグルームシュの影響力を排そうとして暗躍する。オーク憎しなどどこにでもある話なだけに、消極的にこれを支持する者も多く、ハンマーファストのモラディンの司祭たちも少なからずこれとのつながりを噂される。ただし、サークル・オブ・ストーンとの関係は、モラディンの聖職者にとって致命的(同胞による拷問と憎むべき相手からの処刑が待っている)なだけに、それを認める者、まして公言する者はまずいない。

グロンド・シルバースター

彼は狂信者でも急進者でもなかった。ネンティア谷近くのドワーフ氏族の一員として生まれ、青年期にオークの一団の襲撃を受け、彼以外の家族は命を落とした。自らも瀕死の重傷を負って命尽きようというとき、ベルナール・トゥルーシルバーというモラディンのエグザルフが彼を救い、「ハンマーファストをあるべき姿に導く」ようにという啓示を授けた。それからというもの、モラディン高司祭として、仕える神のみならず家族の復讐のためと、ハンマーファストにおいて自らの目的を密かに果たしていた・・・とある冒険者たちの手によって、彼がサークル・オブ・ストーンの一員であることを発覚するまでは。ドワーフの審問もオークの捜索からも逃げおおせたグロンドは、その日を境にハンマーファストから姿を消した。

グルームシュの勇者、タール

力こそ全てと考えるこのドラゴンボーンは、剣匠を見つけては師事し、奥義を得た後で殺すという秘伝盗みの人生を送っていた。その年の一つ目祭りにおいて、存分に腕を振るった彼はオークを差し置きグルームシュの祝福を受け、以来グルームシュのチャンピオンとして仕えている。悪竜カラストリックスの襲撃において、彼は自分こそがドラゴン・スレイヤーにふさわしいと豪語し、それにふさわしいだけの力もあったのだが、実際にその称号を得たのはよそ者のヒューマンやつまらんドワーフどもであった。獲物を横取りされて大いに誇りを傷つけられたタールは、竜殺しを殺せば自分が最強と思い直し、虎視眈々とその機会を狙っている。

・ハンマーファストの幽霊たち

ハンマーファストはもともとが墓地の上に作られた町であるため、幽霊には事欠かない。勘のいい人が暗いところで目を凝らせば1人や2人はすぐ見つかるし、日が沈めば夜こそ自分たちの時間とばかりに闊歩する。
大概の幽霊はおとなしい。町をうろついている連中も生者を気にも留めずおしゃべり(たまに独り言)に興じる。内容は15分も聞けば(ほとんどが一方的にしゃべるだけなので、もし聞き続けるような忍耐があればの話だが)最初に戻るようなしろものであるため、進んで幽霊に話しかける生者がいるとすれば、もうじき幽霊の仲間入りをするか、酔っぱらいか、あるいはどうしても昔のことで知りたいことがあり、手当たり次第聞きまくっている連中(早い話、馬鹿と冒険者)くらいだろう。
もっとも、すべてが人畜無害というわけでもない。戦いで死んだドワーフの霊は、オークを見るや斧を構えてときの声を上げて襲いかかることがある。そうした突撃が100回あったとして、そのうち99回は(実体を持たない彼らは)触れることすらかなわず、埃を巻き上げて終わる。だが残り1回が襲った相手を八つ裂きにしないなどという保証はどこにもないのだ。そうした意味でもっとも危険なのは、「鉄の墓所」のモラディンのパラディンとクレリック20名だろう。タラクやカラストリックスとの戦いで命を落とした者のうち、とりわけ名誉ある人物が、死後もなおハンマーファストの護りを買って出ている。彼らはたまに「起きて」外の様子をうかがっている。もちろんハンマーファストの掟は知っているものの、オークに引けを取らない闘争心、不退転の意志と優れた技量をもった彼らをなだめて誤解を解くのは、モラディンの聖職者をもってしても骨の折れる仕事だろう。
http://dungeonsmaster.com/2013/06/major-changes-coming-to-dd-encounters-dms-to-pay-for-adventures/#more-12705

D&D Encountersの大事なお知らせ:冒険のお代はDM持ち

2013年6月13日 Ameron(デリク・マイヤーズ)

 「マーダー・イン・バルダーズ・ゲート」の販売をもって、14シーズンにわたる身一つでの冒険は終わった。良くなったこともあるし、悪くなったこともある。読者諸兄はD&D エンカウンターズをとりまく環境の変化と、これからの身の処し方について問われることになるだろう。

 最大のニュースは、もう君たちの店舗にシナリオがタダで支給されなくなったことだ。DMは冒険をするために1冊34.95ドルを支払わなくてはならない。ある意味で公平だ。もし君がコンベンションやプレイグループでDMをしたいなら、1冊約35ドルの支払いは当然だろう。

 だがもし君が私のようにD&D エンカウンターズのために数年間ボランティアでDMをやっていて、理由の一つに費用がかからず、シナリオを続けるのに必要なのが君の熱意だけだったからだとしよう。突然同じものにどうしてお金がかかることになるのだろう?ウィザーズ社の横っ面をひっぱたかずにいられようか?なぜ買うなんてことを考慮に入れなくてはならないだろうか?この先を読めばその理由がお分かりになると思う。

 まず特筆すべきはこのシナリオは3.5版、4版、そしてD&DNextすべてで運用可能ということだ。「D&DNextの対応版をダウンロードする」という項目はもう存在しない。3つの版は同じ扱いを受けているように見えるし、本自体も単なるありふれた冒険以上のようだ。以下が現在オンライン上に表記されている本の内容になる。

「マーダー・イン・バルダーズ・ゲート」(Murder in Baldur’s Gate)
アドベンチャー第1部作 (商品説明)
・96ページ ハードカバー(7.09インチ×9.06インチ)
・うち64ページはバルダーズゲートおよびそこの住民について
・うち32ページはシナリオ(訳注:モンスターのデータは別途ダウンロード)
・冒険に関連した4つ折りのマスタースクリーン
・挿絵

 マップに関しての記述がないが、3.5版やD&DNextでやるならグリッド・マップは必要とは限らないため、ウィザーズ社が入れなかったとしても責められるものではない。4版でやりたいのなら、自分で作るかダンジョン・タイルを使うかしなくてはならないだろう。

 目についたのが、「マーダー・イン・バルダーズ・ゲート」の表紙画像にウィザーズ社は「D&Dエンカウンターズ」のロゴをつけていないし、公式プログラムであるとも書いていないことだ。ピンとこない方のために書くと、本棚にある他のD&Dのハードカバー書籍と同じ扱いということで、これがウィザーズ社の狙いだろうと私は見ている。ウィザーズ社の目的はシナリオをフラッグ・ストアで毎週水曜日にプレイし続けてほしいものの、D&Dエンカウンターズ以外でプレイする場を作ろうとしているのではないだろうか。これが果たしてD&Dエンカウンターズの終わりの始まりなのか、はたまたお金を取るための新たな流れができあがるのだろうか?

 D&Dエンカウンター・プログラムがどの方向に向かっているかに関係なく、まだ公式にコンポーネントを遊べるサポートはある。マーダー・イン・バルダーズ・ゲートは8月21日に始まるが、その前の週末に(8月17-18日)新シーズンに向けたお披露目会が設けられる。費用はタダで、必要なキットはフラッグ・ストアに送付される。キット1つにつき以下のものが梱包されている。

導入的な短いシナリオ:2部
DM用NPCカード:2組
専用のプレイヤー・マップ:20枚
「マーダー・イン・バルダーズ・ゲート」参加者配布用20面ダイス:20個

 インディアナポリスでたくさんのDMとプレイヤーでにぎわったGenConでの盛況を思い出すに、日常のフラッグ・ストアにおいては寂しさとともに振り返ることだろう。だが、今回の週末の冒険は(D&D Nextのルールを使用)したGenCon同様なのでそんなこともない。

 マーダー・イン・バルダーズ・ゲートは始まりに過ぎない。今後5シーズンにわたってD&Dエンカウンターズ(そのうちこの名前も変わるかもしれない)はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社がしかける壮大なクロスオーバーイベントとなる。フォーゴトン・レルムを舞台にした、それぞれ違うキャラクターと場所で繰り広げられる6つの小説がシナリオの下敷きだ。もっとも、プレイヤーからのこれからの5部作で得たフィードバックをウィザーズ社は次への教訓にすることだろう。すぐに続報が来ることと思う。

 以上だ。私が知っていることはすべてお伝えした。D&Dエンカウンターズは変わりつつある。冒険は他の本同様有料となり、お金を払えば誰もが求めることができる。DMの持っているシナリオはもうDM専用のものではないため、知りすぎているプレイヤーに細心の注意を払うことになるだろう。

 個人的にフラッグ・ストアに期待しているのは、フラッグ・ストアが長く続けているDMに対してシナリオを無償で提供、少なくとも大幅割引してくれることだ。長期的に見ればDM陣はたくさんのプレイヤーを引き寄せ、物を買わせて店に大量のお金を落とさせる。過去のシーズンにわたって、公式プログラムがフラッグ・ストアにもたらした利益を考えれば、店は本代くらい便宜を図ってくれると思うのだが。

 以上の情報に基づいたあなたの反応はどうだろう?34.95ドルの支払いか、D&Dエンカウンターズを終了するかを突き付けられ、あなたはどうするだろう?今回の変更によって、どれだけの人がD&Dエンカウンターズを潰してしまうと考えるだろうか?はたまた、新しいシナリオを3.5版・4版・D&D Nextの好きな版で遊べることによって、どれだけの人がD&Dエンカウンターズやコンベンションに来るようになるのだろうか?

・ウィザーズ社の記事:マーダー・イン・バルダーズ・ゲート
(http://www.wizards.com/wpn/News/Article.aspx?x=2013_06_10_DDEBaldur)
・販促用フライヤー
(http://www.wizards.com/ContentResources/Wizards/Sales/Solicitations/2013_06_08_DDBaldur_Solicitation_en_US.pdf)

DAC愛知2013に応募しました。
以下が概要になりますので参考にしてください。

使用システム:D&D4版
シナリオ名 :Angel’s Trumpet
シナリオのPCレベル :16
受入PL人数:4~6
事前準備(PC作成などの準備が必要かどうか):有
初心者向け:×
経験者向け:○
電源使用の有無:無
DM自己紹介:こんにちは、airoです。北海道のDIY(D&Dを一緒にやろうぜ)というサークルで活動しています。大会当日まで一緒に楽しみましょう!
レギュレーション:大会当日までにWizards of the Coast社が発表したD&D第4版関連の書籍・サプリメントすべて(D&D Insider含む)

シナリオ概要:

地には死体が横たわり、空には禿鷹が舞っている。塔から見たアンデッドの群れは、さながら生きとし生ける者全てを貪り食う黒い蛆のようだ。足元で地面が揺れている。攻撃を受け、城壁がきしむ音が聞こえた。遠からず千年の時を耐えてきた石壁も塵へと崩れ落ちるのだろう。我らの守護者が姿を消して久しい。デヴィルの狡猾な罠にはまったともゾンビに貪り食われたとも聞く。老いたこの身ができることと言えば、守護者の帰還を祈ること、そしてそれを探すことのできる英雄にすべてを託すことだけなのだ。

-教皇ミッドノーテンの手記より

今回はアンデッドやデヴィルと戦いながら、消えた天使を探す英雄たちの物語です。果たして英雄たちは天使を見つけ出し、また消えた謎を解き明かすことができるのでしょうか?

シナリオのフックや設定などについては随時お知らせします。伝説級のセッションを体験したことがない方でも問題なく参加できますが、キャラクターの自作や基本的なルールの理解が必要になります。掲示板・メール等の打ち合わせや事前準備は多い方です。大会当日までそうした対応が増えることをあらかじめご了承ください。

みなさまの応募をお待ちしております。どうぞよろしくお願いします。

(設定資料等については後ほどアップします)
2012/12/3 ヴィスターニ→ヴィスタニ に表記を修正

http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201208history

ヒストリー・チェック:イグヴィルヴとグラズズト
ジョン“ロス”ロッソマーニョ

 シリーズ、ヒストリー・チェックではダンジョンズ&ドラゴンズの豊富な歴史を解き明かしていく。それぞれの記事でゲームの象徴的な英雄、悪役、組織、出来事に新解釈を加えて可能な限り複雑に絡む歴史を解きほぐす。本文のほか、コラムでは技能チャレンジに成功したキャラクターがどのようなことを知っているか示していく。今回のお題は魔女の母、そして悪名高きデモノミコンの著者でもあるイグヴィルヴ、そしてある時は敵、またある時は恋人のデーモンの王子、グラズズトについてみていこう。

愛は失われず

「失われた恋人を探し求める男ほど尋常ならざるものはないね。目を見ればわかるよ。お探しの人はお前さんを闇の中に置き去りにし、彼女を見つけるためにはあたしらの助けが入り用ってわけだ。」

「気楽にしな、友よ。彼女はもうあたしらの手の中さ。あたしらもまた彼女のことを探していたと聞かされてもお前さんは驚かないと思うけどね。あたしらの情報をお前さんと共有することで、最後はどっちも得をすることになるよ。いやね、一族の者が今晩遅くに戻って、あんたの恋人がどこで何してるか教えてくれることになってるんだ。お前さんから逃げることができたとしても、あたしらからは逃げられないよ。」

「そんなしかめっ面をしなさんな。お前さんはきっとあたしらが彼女のことを狩ろうとしているとでも思ってるんだろう。友よ、心配しなさんな。一族の者が戻るまで、時間つぶしがてらお前さんに昔々のロマンスのお話をして差しあげよう。多くのバードが多元宇宙の中でも最大規模の恋物語と思っているよ。欲望という形定まらざるものの根底を明らかにしてくれるんだ。」

「それじゃあ、イグウィルヴとグラズズトの話でもして、お前さんを悶々とさせてあげようじゃないかね。お前さんの心を支配している愛について省みてみるがいいよ。彼女の言葉や行動を思い返してご覧。そうすればお前さんの身に何が待っているかも腰を据えて考えられるってものさ。」

ザロヴァン族

 この「ヒストリー・チェック」の語り手はヴィスタニの一員であるザロヴァン族であり、シャドウフェルとほかの次元界を部屋から部屋のごとく簡単に行き来する謎めいた放浪者たちだ。ザロヴァン族は過去と関連する未来の出来事に重きを置いており、寛容の精神、暗い陰謀、謎めいた好意から、ジョルジョ(ヴィスタニ外の者)に対して知恵を授けることがあるかもしれない。ヴィスタニに関しては、Player’s Option: Heroes of Shadow、The Shadowfell: Gloomwrought and Beyond、Dragon誌380号の「ヴィスタニ」(すべて未訳)に記載されている。

かの古き黒魔術

「では、我らが乙女のことから始めようかね。その娘は長年に渡って様々に名前を変えて伝えられている。ナターシャ、ヒューラ、そしてターシャ、最後にイグヴィルヴ。イグヴィルヴはお前さんの記憶を刺激したみたいだね?ついでに言うなら、知ってると言っても名前を聞いただけってところだろう。お前さんはデーモンの召喚についてあれこれ議論するより、農夫に救いの手を差し伸べる人のようだからね。そしてお前さんのツレは芸術の類の弟子で、そのいなくなった相手は何かにご執心じゃなかったかい?どっちだって構いはしないよ。あたしゃお前さんがそんな泥沼にはまるほど愚かじゃないことを願ってるのさ。」

「イグヴィルヴは魔女の母として、デモノミコンを著した一人として知られているね。敢えて言うけど、彼女が書いたっていうのは言い過ぎさ。というのも、イグヴィルヴはすべての魔女の母、バーバ・ヤガーの義理の娘なんだ。そしてこれからお前さんもおなじみの名前が出てくるよ。」

「イグヴィルヴの闇の修業が始まったのは悪名高き老婆の小屋の中。若さゆえの犯行の懲罰として、悪い定命の者が近づかれないよう封印をされた魔法の財宝が詰まった蔵に押し込められた。そこでイグヴィルヴはより深い闇の神秘に興味を持ったのさ。」

「やがて彼女は大魔導師ザギグ・イラジャーンに取り入った。力あるウィザードだったが、純然たる欲望という名の武器には弱く、ほどなく彼とその弟子の不適切な関係を非難する者の耳を聞こえなくしたり、その姿を変えさせて口を封じるようになったんだ。」

「ザギグの指導の下、イグヴィルヴのアビスとその住人に対する執着は真っ盛りの頃だ。二人はアビス第四階層の欺きの大公、フラズ・アーブルを呼び出し、グレイホーク城の地下牢に幽閉してのけた。ザギグは弟子にこのフィーンドに接するときの心配だの注意だのを噛んで含ませたが、イグヴィルヴは捕らえたデーモンからずっと多くのものを手にした。欺きの大公が自由を求めて争う間、囁かれた偽りと虚実織り交ざった言の葉から、数えきれないほどの秘密を得たのさ。」

「ザギグとフラズ・アーブルからめぼしいものをすべて抜き取った後、イグヴィルヴは闇に紛れておさらばしたんだけれど、愛する師の書庫を荒らすのも忘れなかったんだ。彼女の持ち逃げした最も価値ある文書が魔法の解説を扱ったザギグの書で、これがイグヴィルヴのデモノミコンの基になった。彼女はザギグからお宝を奪っただけでなく、業績まで泥棒したのさ。」

「おやおや・・・何か問題があったみたいだね。でも、夜の間に盗まれた禁忌のブツの話なんかをしたせいじゃないよ? それが残酷で予期できない裏切りっていうやつさ。ザギグもきっと自分の恋人の頭に裏切りがいつからあったのか考えたことだろうね。」

求愛と惨禍

「イグヴィルヴがザギグの元を出奔してヤーチル山に逃れたとき、彼女の欲望はもっと力が欲しい、目に映る世界をもっと支配したいという単純なものだった。だから彼女が住処に選んだ場所は偶然でなく必然だったのさ。その山にはツォーカンスという名の魔導師が葬られていると言われていた。だがツォーカンスが実はハーフデーモンであり、その父フラズ・アーブルの欺きの力を受け継いでその事実を隠しおおせていたことを知っている定命の存在はほとんどいなかったのさ。」

「ザギグからかすめ取った束縛の知識とフラズ・アーブルとの対話で得た知識を活かし、イグヴィルヴはツォーカンスとの途方もない精神対決に打って出て見事に勝利を収めた。彼女に縛られたハーフデーモンは、長い年月もの間招請に応じては彼女がアビスのフィーンドに関して造詣を深めるのに一役買ったんだ。」

「新しい発見を武器にしつつ、それからのイグヴィルヴはデーモン・プリンスにグラズズトいう名を与えて牢に閉じ込めた。フラズ・アーブルの時と違い、すべてに通じる古代の洞窟に押し込めつつ、闇の王子の身体はイグヴィルヴの手元に置いたんだ。そのハンサムなお顔を毎日独り占めするためにね。ザギグの書を発展させ、デモノミコンの最初の章を執筆するためにグラズズトから情報を得るにつれ、イグヴィルヴはグラズズトがいないと我慢できないことに気が付いた。グラズズトだけが自分の関心を惹くのに値したんだ。」

「イグヴィルヴは魔女の女王として知られるようになり、ヤーチル山の麓のペレンランドを支配下におさめた。その力の源はイグヴィルヴが閉じ込めていたデーモンであったが、その間にイグヴィルヴが連れ合いとして見ていたのはグラズズトただ一人だった。ごくわずかにいる、彼女の宮廷に足を踏み入れて生きて帰ってきた者いわく、彼女の隣に闇の王子が座っていたそうだ。だが抜かりはない。グラズズトの意志は最初にアビスから引っ張り出されたときのまま、イグヴィルヴに束縛されていたのさ。」

「そしてイグヴィルヴとグラズズトの間に、穢れた魂の息子、アイウーズが産まれた。この忌み子は数えきれないくらいの厄災を世界にもたらし続けるんだが、この汚らわしい夫婦の落とし子について触れるのはまたにしておこう。少なくとも、今回はいい。」

「おそらく、かつてザギグを自身の虜にしたように、グラズズトのことを征服したという確信が自惚れにつながったんだろう。ひょっとすると前と同様、今回もうまくやったと思いこんでいたかったのかもね。どっちにしろ、闇の王子による避けられない裏切りは彼女にとっては驚きだったのさ。」

「頻繁な召喚の儀式のために、イグヴィルヴの聖域の下にあるアビスへの裂け目が危険な状態になったんだ。そこでグラズズトは(訳注 イグヴィルヴから現在の名前を与えられることによって)切り離されたツォーカンスの力を自分に戻してくれれば、アビスからの封印を施せるともちかけた。イグヴィルヴは了承したが、彼女が儀式を終えたとき、自分が飼いならしたと信じ込んでいたハーフデーモンは、圧倒するほどの凶暴さで殴りかかってきたのさ。」

「グラズズトは自らの女主人との戦い、そして彼女が裏切られたと分かったその瞬間を大いに楽しんだ。ひどく力を削がれていたが戦いには勝ち、グラズズトはイグヴィルヴを情け容赦なく叩きのめした。夫婦の憎悪からくるその情熱は互いの欲望ほどに激しく、両者の壮大な戦いはヤーチル山を根元から揺るがす。アイウーズですら争う二人を離そうとして、人間の部分とデーモンの部分、二つに割かれたんだ。」

「とうとう、グラズズトは連れからの束縛を絶ってアビスに還った。一方イグヴィルヴはというと、滅茶苦茶にされ、力のほとんどを奪われて打ち捨てられた。闇の王子は仕返しはできてもとどめを刺せずに去ったのか、あえてイグヴィルヴを生かしたのか疑問をはさむ者もいる。そうしたのは慈悲か、半死のまま捨てる方が残酷だからか、どっちだろうね?お前さんの今の心痛を思うに、答えを聞くのはよしておこう。」

ヒストリー・チェック

 難易度20の<歴史>判定に成功すれば、イグヴィルヴがヤーチル山に要塞を構えて、アイウーズの補佐の元ペレンランドを支配していることを知っている。さらに30の<魔法学>または<歴史>判定に成功していれば、ツォーカンスの捕獲、イグヴィルヴがグラズズトとして首輪をつけることで力を抑え、その終いに戦いの末グラズズトの逃亡を許したことを把握している。

業とともに生きる

「その間何を分かち合ったにせよ、グラズズトはどうあっても自分のしたことを忘れないだろうとイグヴィルヴには分かっていた。力を盛り返し、領地がズタズタになったときに失われた魔法の宝物を取り返す途上にあり、魔女の母はグラズズトのエージェントが自分のことを突き止めるのではという恐れを抱いていたのさ。実行に移すのは早かった。闇の王子の残酷な気まぐれから逃れるため、二人はアザクラトとして知られる、三層からなる領域に移った。」

「あたしゃフィーンドの名前を挙げて自分の舌を汚しはするけれど、最も救いのないダンジョンであるゼラタールの街で起こった、非常に不愉快な悪行について話すつもりはないからね。汚らわしい行いの結果、さらなる怪物と共に新たな発見が産まれたってことさ。イグヴィルヴはああいう中で「お子様」とみられていたようで、そういうのは情け容赦なく獲物にされてしまう。そして、グラズズトは敵の目から自分の子供の素性と所在を隠しおおせるようえらい苦労をしたのさ。」

「グラズズトとイグヴィルヴは、彼らの間にある愛より大きなものは憎しみしかなく、彼らの間にある憎しみよりより大きなものは愛しかないことがわかった。闇の王子にいた他の配偶者を幻滅させて取り除かせ、イグヴィルヴはかつての囚人、そして恋人、今は捕らえ人の参謀兼愛人に納まって銀白宮(ぎんぱくきゅう)を闊歩したんだ。」

「彼女の助言とデーモンへの造詣は、グラズズトの策謀と征服計画に大いに役立った。イグヴィルヴは、グラズズトの敵にその信用する部下を物質界に放逐させ、そこで言葉にできないような荒廃をもたらさせるという策を多く画策している。そしてグラズズトの敵が十分に抗う力のない状況に陥れ、下級のデーモンの軍勢を召喚して戦場に送り込む。この召喚されたデーモン軍団はどんなところにも現れ、怒り狂い血に飢え、物質界にある国をいくつも滅亡へと導いたよ。」

「グラズズトは嫉妬から過去にイグヴィルヴと付き合いのあったどんなフィーンドも滅そうとした。もう狂気の沙汰にしか聞こえないんだが、フラズ・アーブルすらも、単に自分以外にかつてイグヴィルヴに囚われ、オモチャだったことがあるからっていうことで猛烈に攻め立てた。グラズズトを置いて、何人たりともそのような「特権」など認められないっていうことなんだって。」

「イグヴィルヴとグラズズトはいつも互いが張り巡らせる陰謀にそれはそれは慎重だったため、両者の関係には信頼というものがまったく欠けていた。もしそんな言葉が彼らの間にあるのならね。それにもかかわらず、この二人は爛れた絆に付け込もうという輩に対してはものすごい団結を見せた。グラズズトは、イグヴィルヴに近づく自らの敵にあえて寝取らせ、閨で得た秘密が敵の命取りになるという手口をよくやる。この手の密会が増えるたび、イグヴィルヴが焚き付ける闇の王子の嫉妬の炎はいや増すばかりで、そのたび本当にグラズズトのことを裏切るんじゃないかとわからなくなるね。」

「銀白宮は噂で渦巻いているよ。そのほとんどはひねくれた二人の行いからくる真実だけれど、地位や片割れを奪おうとする敵対者が流すデマだったりもする。数えきれないほどの敵が二人の仲を裂こうと試みている。闇の王子と魔女の母が組めば、アビスの階層など片っ端から征服してしまえるだけの実力があるからね。」

「物質界では無慈悲なるチューニィという名のデーモンが陰謀を企てたことがあって、とうとう腐敗した二人の結びつきを断つことに成功した。グラズズトを害そうと、そしてイグヴィルヴに自分の息子、アイウーズを巻き込んだ自らの計画で助力を得るために、チューニィはイグヴィルヴを魔法で拘束する闇の王子の力を無効化したんだ。」

「銀の宮殿中を大破壊の嵐が吹き荒れたけど、イグヴィルヴもグラズズトも決着をつけようとはしなかった。代わりに宮殿中の価値ある宝物を無に帰し、互いのお気に入りの召使や愛人を殺し、悪意に満ちた辛辣な言葉を不浄の舌で応酬するに留めたんだ。以前戦って、その後盛り返すまでのことを覚えていたのか、両者とも力を温存した。」

「とうとうグラズズトは、イグヴィルヴにアザクラトから安全に出られる道を授けた。デーモンの主人は、下僕にアストラル海のどこかにある彼女の領地まで儀式の研究や蓄えたレリックを運ばせた。デーモンの離婚騒動としちゃ、考えうる限り平和的な解決だよねぇ、そうは思わないかい?」

ヒストリー・チェック

 難易度25の<魔法学>判定か難易度30の<歴史>判定に成功したキャラクターは、イグヴィルヴの虜囚、二人が「和解」したこと、二人の敵に対して行われた一連の策略と征服についての詳細、そして関係の破滅についても知っている。

危ういバランス

「そして今や二人の間には燻るような未練だけが残り、魔性のつがいは、互いが相手にした仕打ちですら自身を苦しめたんだ。二人の間に秘密などほとんど残っておらず、それゆえにあらゆる裏切り全てが茶番だったのかもと考えさせたのさ。」

「その裏腹に、グラズズトとイグヴィルヴはお互いにエージェントを使って、相手の企みを妨害させることに興じるようになった。互いの敵愾心は、今やかつて互いに親密な関係があったことを思い起こさせるためだけにある。二人の間で愛情として通る物は殺意に満ちた筋書きと狡猾な罠だけさ。」

「かつて他のデーモン・プリンスの力を削ぐために二人が組んでやっていた策略と比べても、なんというか、より陰険になっているね。グラズズトもイグヴィルヴもお互いを陥れようという人物なら誰にでも援助の手を差し伸べるよ。だがそれが額面通りの物であったことなど一度もない。お互いにね。時に片割れが、相手の側にプレゼントよろしく陰謀家を相手の玄関先に送りつける。多くの冒険者は自分たちが彼らの大事な記念日の「引き出物」だってことを知ってさえいれば首がつながったのにさ。援助を授かったんじゃない、自分たち自身が相手への贈り物だったんだってね。気が付いた時にゃもう遅いよ。」

「一方で、グラズズトとイグヴィルヴのガキどもは次元界をうろついていた。あるときは親の七光りをちらつかせ、報復を恐れて思いきった手に出られない敵を破滅させたりもしたんだが、たいがい奴らは闇の王子と魔女の母の狭間に置かれる永遠の駒さ。姿が見えなくなって久しい両親の姿を愚かにも追い求め、偶然出会うわずかな可能性にかけて・・・何を求めているんだろうかねぇ?愛?」

「友よ、お言い。邪悪の血を受け継ぐものをどのくらい知っている?お前さんはどうしたいのかな?残念ながら、イグヴィルヴとグラズズトの出来事にはお前さんが気付くよりも多くの中身があるんだよ。」

「お前さんはそのような両親から生まれた子供など腐敗の権化そのものだと信じるかい?アビスの子宮から生まれた相手を愛してしまったことに気が付いただろうか?そしてもっと大事なのは、そんな女があんたのことを愛するだろうか?あたしらがあんたの失われた恋人を探している間、今の問いをよく考えてほしいね。間違いなく見つかるよ、二人で話し合うことが山とあるだろうからさ、その時にまた別な話をしてあげよう。」

ヒストリー・チェック

 難易度25の<魔法学>または<歴史>判定に成功すれば、イグヴィルヴとグラズズトとの間にあったといういわば休戦協定のような秘密の取引があったこと、そして彼らの子供たちが物質界やさらにその向こうまであまねく散らばっていることを知っている。

フック

 グラズズトとイグヴィルヴのよじれた関係をキャンペーンに使おうと考えているダンジョン・マスターに以下のフックを用意した。参考までにサプリ「デモノミコン」や「次元界の書」を参照してほしい。

◆グラズズトとイグヴィルヴの子供たちには、自らに眠る真の遺産に気が付いていないことがよくある。PCやNPCの中に、自分にグラズズトかイグヴィルヴ、あるいは両方の血を受け継いでいるかもしれないと疑い、闇の王子や魔女の母が伏せたままにしておきたい答えを探し求めることだろう。パーティーは「我儘な子供」を誘拐する計略に巻き込まれることになる。陰で糸を引いているのは親の片方か・・・はたまた大勢いるその敵か。

◆アザクラトにおいて虜囚に遭うまでの間、最大級に強力な力を持つアーティファクトやレリックのいくつかがイグヴィルヴの手にあった。冒険者はダーウーズ・ウンデラウス・ランタン(ダーウードの不思議なランタン)、プリズン・オヴ・ザギグ(ザギグの檻)、6章からなるデモノミコンの1章の噂を耳にするかもしれない。だがこの話は失った自分の物を取り返したいという魔女の母との競争にもなるわけだ。

◆賢者いわく、イグヴィルヴが真に愛したのはその娘ドレンザだけであると。この子供は謎に包まれており、父親が誰かということ、彼女がヴァンパイアであることの原因が分かっていない。彼女はその母によって破壊されたツォーカンスの洞窟跡において、守ってやった結果か、楽にしてやったためかはわからないが冒険者の手にかかった。娘を生に戻すべく、魔女の母は極秘裏に、だが絶え間なくその魂を探し求めている。イグヴィルヴは目的のためなら、どんな手段やクリーチャーを使うことも厭わない。それが英雄であったとしても・・・

著者について

 ジョン“ロス”ロッソマーニョは以前にもダンジョンズ&ドラゴンズで書いたことのあるフリーランスのライターだ。彼が以前にプレイしたグレイホークでのゲームでの経験のみならず、絡み合った爛れた関係を扱う緻密さが記事にエッジを利かせている。「イグヴィルヴっていったい何よ?」という素晴らしい質問をしてくれた女性と最近結婚した彼は、自分のことを幸せ者だと思っているようだ。
(DAC2012のセッション参考資料になります。)

http://www.wizards.com/dnd/downloads/dragon/412/412_Using_Ships.pdf

明かされた魔法:船を君のキャンペーンに使ってみよう
ローリー・アンダーソン

 背中に受ける風、顔に浴びる暖かな陽光、波の砕ける心地よい音、足元の穏やかな横揺れより良いものなどあるだろうか?君が海に漕ぎ出せば、空は感動に震えて冒険を約束してくれる。心惹かれる場所、未開の地の探索、変わった海のクリーチャーとの遭遇、忘れ去られた文明の発見、埋められたお宝の発見等々、何でもありだ。
 海は驚くほどの美、多大な危険、風変わりな生き物、スリルあふれる冒険に満ちている。危険のない冒険などない以上、航海の成否を握るのは船かもしれない。
君のために作った船は、どんな航海もののキャンペーンにも興を添える。今回の記事は船のサンプルと船をカスタマイズする方法を紹介し、そしてサンプルとなる船のクルーと君のキャンペーンで使えるアドベンチャー・フックをご覧に入れたい。

船の例:流星号
 船旅を希望する者の大部分は、同じ方向に向かう商船を探して乗船を依頼する。支払は船長との交渉次第だが、おおくは金銭や労働、あるいはその両方となる。他には距離や危険を伴うか、船長の人となり、目的地に着くために当初の航路を変更する必要があるかどうかもあるだろう。怪物や海賊から船を護るという用心棒を引き受ければ、ほとんどの船長なら喜んで冒険者たちをタダで船に乗せることだろう。
 これはもちろん、冒険者たちの乗った船が予定通りの航路を進んでいる場合。大体において、船長は航路を変えたり、危険な海域を通ったりするのを渋るものだ。金につられたなら話は別だが・・・
 キャラック(武装商船)は探査と外洋の航海向けの帆船だ。開けた公海の激しい嵐に耐え、長い航海に必要なだけの物資を積める十分な格納スペースを持つ。キャラックを使うためには、借りるなら乗組員一式つきで週当たり500gp、買い上げるなら9,000gpかかる。
 流星号の見取り図が示す通り、キャラックは以下のようになっている。(訳注:図はリンク先を参照)
1.メインデッキ:船のメインデッキには船の航行と修復に使う基本的な用具が備えられている。船首(エリア2)の近くでは、大型の枠箱がボルトでしっかりと固定され、備品、ロープ、その他消耗品が中に詰まっている。一艇の漕ぎ船がデッキ中央に括り付けられている。キャラックには通常2本から4本のマストが立ち、メインマストの最上段に見張りのための場所がある。

2.船首:船に乗り込まれる場合に備え、前部(「船首楼」)は、射手に敵船目がけて射掛けるための足場と、要塞の壁としての役割を果たす。船首の両側にはバリスタが置かれ、ここにも漕ぎ船が一艘配備されている。厚手の金属鎖につながれたアンカーは船の手すりの近くに置かれる。

3. 後甲板:後甲板は船の航行と制御の要。船長は後甲板から命令を発するが、これは操縦士が操船をそこで行い、舵手も船の方向と航路を決めるためだ。また、大型のカタパルトが据え付けられており、重い石かタールの火球を敵船目がけて放り投げる。

4. 物品庫:この小さな収納には手桶にモップ、ネットやロープのような基本的な用具がしまわれている。

5. 高級船員用の食堂:キャビンボーイが高級船員および幹部用のこの食堂に食事を運ぶ。座り心地の良い椅子が木のテーブルを囲んでいる。ナプキンに使われるのは上等なリンネル(亜麻糸)、食器は磁器、スプーンやフォークなどは銀メッキがされている。乗客の中でも身分の高い者は、よく船長との食事に誘われる。

6. 高級船員用ラウンジ:この部屋にはソファーや豪華な椅子など家具がいくつか置かれており、船長や幹部はシフトの合間にここでくつろぐ。

7. 海図室:詳細な航海図の広げられた大きなテーブルがこの部屋を占めている。壁には地図や海図が貼られ、未知の領域をマッピングするための製図用の机もあり、また六分儀にコンパス、その他航行用具が隅にある小さなテーブルに載っている。

8. 診療室:基本的な応急処置の用具と大まかな外科処置に使う道具が壁のキャビネットにかけられている。用具は包帯、軟膏、吊り紐、治療用の薬草だ。船員が深刻な怪我を負ったなら、肢がのこぎりで切り落とされる間、帆布の切れ端を口に噛まされることになる。乗組員は可能な限りこの部屋をきれいにしようと努めているものの、床や壁には隠しきれない血の染みが。

9. 流し:先端から海に直接物を捨てることができる。

10. 水夫室:水夫の寝床はハンモックと私物を納める引き出しが壁にあるだけの味気ないものだ。船が出港してから何日目か壁にチョークで書かれていたりする。

11&12. 乗客用の部屋:こちらの部屋には丈夫で寝心地のいいベッドが、その下に私物を入れる鍵付きの収納箱がある。箱にはそれぞれ船酔いを和らげるための薬が一瓶、あるいはハーブの入ったポーチを入れている。

13. 厨房: 厨房、すなわち船の台所は小さなストーブ、洗い台、食器の詰まった木製の戸棚が置かれている。

14. 食堂:この部屋を占めるのは長机が2台に木でできた長いベンチが2脚。船員たちは食事や賭け事の際、この卓を囲む。

15. 下甲板:下甲板の両側に沿って背の低い木製のベンチが並んでいる。帆をはらませる風が吹かないときや、慎重に操船する必要がない時、長いオールが海をかき分けて進む。オールの出番がない時、この一帯は物置代わりに使われる。

16. 船長の書斎:壁に向かって大きな書き物机が置かれている。荒海の中でも本が駄目にならないようにと、革のひもでくくられた本箱がいくつかある。この部屋を使えるのは船長、一等航海士、二等航海士だけだ。

17. 船長の居室:船長は賓客をもてなすのにこの豪華な部屋を使う。船の中で最もプライバシーが保たれる場所の一つであるため、この部屋は静かに話し合いたい場合にも使われる。金の装飾の着いたワイン色の椅子が低いマホガニーのテーブルの周りに置かれる。優雅な金のシャンデリアが部屋の照明で、消えずの松明が併せて使われている。酒の置かれたキャビネットは角ごとに複雑な意匠が掘られ、厚めの豪奢な敷物が荒い床板を覆い隠している。他の部屋と同様、家具は床に固定されているものの、この部屋は雰囲気を壊さないよう、巧妙に見えなくしている。航海の様子を描いたタペストリーが壁を飾り、そのうち一つはキャプテンが貴重品を隠すための小さな物入れを覆う。

18. 船長の寝室:寝室は船長用の他の部屋に比べればかなり質素なものだ。大きめの木のベッドと上等な寝具がこの部屋を占め、木の衝立が壁と向い合せに置かれている。

19. 第二食料品置場:厨房の1階下は穀物の袋、豆や野菜の缶詰、水瓶、ブランデーの樽やほかの消耗品で詰まっている。

20. 第二貨物室:第一貨物室で収まりきらない場合はこちらも使われる。

21・22. 副船長室:一等航海士・二等航海士がこの部屋を共有しており、2段ベッドと大きな収納箱が部屋の中にある。

23. 営倉:営倉とは船の中にある、狭くて家具の一切ない部屋のことを言う。ドアは鉄の棒で枠を取られた窓が付いており、そこから食べ物を差し入れる。この部屋にはわらのマットと便器があるばかり。

24. 鍵付き倉庫:珍しく貴重なものを保管するとき、大きな鉄の南京錠をかけられたこの部屋を使う。唯一の鍵は船長が身に付けている。

25. 第一食料品置場:この貨物室は食物の入った大きな箱ならびに水やビールの樽でひしめいている。第二食料品置場の食料がなくなれば、こちらから移し替える。

26. 第一貨物室:この船の総積載量は400トンにおよぶ。

27. 家畜用檻:これらの檻にはヤギ、めんどり、たまに豚もいる。こうした動物は新鮮な肉と卵であり、長い航海の間不足しがちな貴重な食料になってくれる。

船の進み方
 船の速度はその時点での風によって大きく変わってくる。通常の航行は約4ノット、一日換算で100マイルほど。以下の表は風の状態ごとの平均的な速さになる。

船の運航速度
風   ノット マイル/日
無風   0   0
微風   1  30
漕ぎ   1  30
順風   4 100
強風   6 165
烈風   8 220

標準的な乗組員

 キャラックに登場する標準的な乗組員は、船長、一等航海士、二等航海士、操舵手、甲板長、水先案内人、コック、キャビンボーイ(ガール)が各1名ずつに18~20人の水夫からなる。船長は船の安全と効率的な航行という責務がある。船長はまた、乗組員のいさかいを仲裁し、起こるすべてのことに最終的な責任が問われる。序列では一等航海士はその次、二等航海士はさらに次に来る。操舵手は操舵と航路の維持の責任を持つ。甲板長は甲板作業を監督し、船の定期的な点検と整備を行う。鋸の腕前が最も優れた甲板長はまた船の外科医としての役目も兼ねており、必要に応じて荒っぽく切断したり関節をはめたりする。操舵手は舵を取って危険なところや浅瀬を避けつつキャラックを安全に航行する任を負う。キャビンボーイ(ガール)はキャプテンの使い走りや掃除に伝令、備品の運搬などの雑務をしている。残りの乗員は必要に応じて掃除、整備、帆の繕い、見張りといった様々な仕事をこなす。
 一日の勤務は三交代制が組まれている。船長は朝から夕方まで指揮を執り、一等航海士は夕方から深夜までを務め、二等航海士は深夜から朝までが押し付けられる。

娯楽
 生活が甲板の上にあり、終わりのない海をずっと眺め続けることは、ときに最も強靭な水夫の正気すらも試す。娯楽は乗組員の規律や高い士気を維持するためにも重要だ。非番の水夫は様々な時間つぶしに携わる。
 カードやダイスを使ったゲームは時間つぶしによくある手段だ。典型的なダイスは木、骨、象牙からできている。変わったダイスには数字ではなくモンスターの絵が描かれており、より恐ろしいものほど高い目になる。例を挙げると、6面ダイスでブロンズ・ドラゴン、ウォーター・エレメンタル、ドラゴン・タートル、クラーケン、ジャイアント・クラブ、そしてシャーク。
 船での賭け事は多様で、カードやダイスを使うものから日常の出来事などをネタにする。よくあるのは、次の仕事で最初に怒られるのは誰か、今晩のスープは何か、どのお客が最初に船酔いになるか。水夫は普通金持ちではないため、賭けるのは銅貨だが、レアものや珍味、酒や炊事に見張りの仕事を賭けたりもする。
 また、航海は酒に歌、ほら話なくして始まらない。一つの物語が時に何時間ものエンターテイメントになることもあり、どれも初めて聞くようなとんでもないものばかりだ。

君は聞いたことはあるか?
◆難破した船の生存者が、残骸の木に掴まりながら素手で魚を捕まえて生き長らえたこと。
◆恋人が海に出かけたことで、心痛のあまり死んでしまった王子。
◆2,000フィートもの津波に襲われながら、船長の赤ん坊も起こさず、テーブルのグラスの水もこぼすことなくかいくぐった船。
◆イルカになれそうだからという理由で海に飛び込んでいった少女。そして長い年月が経ち、その子は小さな水かきと尾びれを生やし、イルカの群れと泳いでいるのが発見された。
◆クラーケンに飲み込まれてしまった水夫が、漁師によってそのクラーケンが殺されるまでの4か月ほど腹の中で生きていたこと。(その水夫は生きてこそいたが、彼女の肌は色が抜けて白くなり、目が見えなくなり、正気は失われていたという)
◆ドラゴン・タートルと取っ組み合い、素手で倒したという水夫。

 他の余暇の過ごし方と言えば、読書したり、日記をつけたり、スケッチしたり、昼寝をしたりする。仕事の間に十分なほど肉体労働に励むため、水夫は暇な時間に運動することはほとんどない。
 乗組員の中には自らの神に祈ったり、ささやかな捧げものをしたりする者もいる。ほとんどは海の神メローラに航海の無事を祈る。中には嵐の神コードに対し、自分たちが大嵐からお目こぼしいただくよう願う者もいる。
 船長は他の乗組員と親睦を深めるようなことはしない。他の乗組員と同じに見られては示しがつかないという考えによるようだ。それゆえ船長は空いた時間を一人、あるいは同じく手すきの幹部と過ごす。もし船にひとかどの客がいるなら、船長はその人物を自分の居室に招いてお茶会をする。キャプテンによってはハンドメイドで美しい絵の描かれたスリー・ドラゴン・アンティや、象牙の駒を使ってドラゴンチェスで接待する者もいる。読書や日報を付けて時間をつぶすこともあるだろう。

船の種類
 船を購入するとき、いくつか選択肢がある。

アパレイタス・オヴ・クワリシュ:このザリガニ型の乗り物は水中を移動でき、中型のクリーチャー2体とその荷物を載せることができる。
アルゴシー(大貨物船):この大きな交易船は相当な積載量の貨物室を持つうえに若干の乗組員で航行できるため、商人達に人気がある。しかしながら、船足は遅く、嵐の中での制御は困難だ。
キャラック:こちらは前のセクションで例とその詳細に触れた。人員30人、貨物400トンの積載ができる。
クリッパー:この細長い船は船足が早いものの、荷物を載せるスペースはほとんどない。
グレートシップ:この巨大な船は200人と500トンまでの貨物を運ぶことができ、戦時であれば多数の兵士の運送に供される。
ロングシップ:川を旅したり浜辺に錨を降ろしたりするようにできているため、この細身の船にあまり荷物を載せる場所はない。
ピンネース:この船は外洋から沿岸まで幅広く使える。外洋に出られる船としては最も安価に購入でき、必要な乗組員も少ないためこれまた安上がりに運用できる。
ボート(漕ぎ舟):小さなボートは小さな湖や大きくない川を旅する際に使われる。ボートは未知の地域で行う海岸線の調査や、大きな船が停泊できない場所で力を発揮する。

船の種類
名前               積載量  価格(gp)
ボート               200ポンド   50
ピンネース*       30トン  1,800
アパレイタス・オヴ・クワリシュ* 200ポンド 5,000
ロングシップ* 3トン 5,000
クリッパー 5トン 5,000
キャラック 400トン 9,000
アルゴシー 2,000トン 9,000
グレートシップ* 500トン 13,000
*印は冒険者の宝物庫に記載
(訳注:100ポンド≒45.35キロ)

船用のマジック・アイテム

 捨てるほど金のある船のオーナーは、自分の船に魔法の武器や各種設備を備えようとするかもしれない。このセクションでは、船上の戦闘がより効率的になるか、船旅がより快適になるようにデザインされた貴重なアイテムをお目にかけたい。特に明記していない限り、これらのアイテムは使用するためには船に設置されていなければならない。加えて、サイズの関係で小さい船には取り付けられないものもある。たとえば、キャプテンズ・フィースト・テーブルはボートに置けない。とあるアイテムが船におけるかどうかは、船本体の(大きさではなく)名称で決まる。(訳注:幅40フィート、長さ100フィートであっても、ボートである限りキャプテンズ・フィースト・テーブルは設置できない。)
 船用設備と分類されているマジック・アイテムは、(その他の魔法のアイテムと違って)船に取り付けられているか乗船時に使用したときのみ機能する。

アルケミスツ・ラボ
Alchemist’s Lab/錬金術師の研究室 レベル10 アンコモン
この物で溢れた研究室には、ビーカー、薬瓶といったものから、ドラゴンの歯やブリーワグの眼球といった妙な試薬まで揃っている。
その他の魔法のアイテム5,000 gp
特性
◆君がこの部屋で錬金術アイテム、儀式巻物、ポーションを作成するとき、かかる時間は通常の半分になる。
◆君はこの部屋で行う<魔法学>判定に+2のアイテム・ボーナスを得る。

キャビン・オヴ・トランクウィリティ
Cabin of Tranquillity /静寂の船室 レベル12 アンコモン
この船室で休んだもの誰もがすっかり疲れが抜け、今日もまた世界と戦う準備ができていることがわかる。
船用設備13,000 gp
特性
この船室で大休憩を取ったものすべてが15点の一時的hpを得る。この一時的hpは、失われるか次の大休憩の開始時まで持続する。

キャプテンズ・フィースト・テーブル
Captain’s Feast Table/船長の正餐用食卓 レベル9 アンコモン
とてもよく磨かれた丸い樫のテーブルには12人分の椅子があり、12人みなに素晴らしい晩餐をふるまう。
船用設備4,200 gp
汎用パワー◆一日毎(標準アクション)
効果:テーブルの上に豪華な食事が12人前現れる。食事が済んだなら、テーブルの所有者がマイナー・アクションを使用することでテーブルを一瞬できれいにできる。

ドラゴンストライク・バリスタ
Dragonstrike Ballista/竜撃のバリスタ レベル17 アンコモン
敢えて君の船を襲う者がいたなら、君は魔法の稲妻をもって報いる。
船用設備65,000 gp
特性
この魔法のバリスタを使うためには、バリスタが占めるマス目の隣にいる必要がある。バリスタを使えるのは一度に一体のクリーチャーだけで、このバリスタは矢弾が不要である。
攻撃パワー[電撃] ◆無限回(標準アクション)
攻撃:遠隔20 (クリーチャー1体); +20 対反応
ヒット:2d10+4点の[電撃]ダメージ、目標に隣接しているすべてのクリーチャーに半減ダメージ。

エレメンタル・エンジン
Elemental Engine/精霊機関部 レベル15 レア
ウォーター・エレメンタルを船に付けたなら、推進力と危険の軽減、二つが一挙解決だ。
船用設備25,000 gp
特性
◆船は乗組員なしでもキャプテンの命令通り機動・航行できる。
◆船は浅瀬・岩・渦巻その他自然災害を安全に避けられる。

フィギュアヘッド・オヴ・バランス
Figurehead of Balance/平衡の船首像 レベル13 アンコモン
美しい像は船首を飾るだけでなく、乗組員と乗客の足元をしっかり支える。
船用設備17,000 gp
特性
◆船の乗組員および乗客は、船外に強制移動される際に行うセーヴィング・スローに+2のアイテム・ボーナスを得る。
◆船の乗組員および乗客が伏せ状態になる効果を受けた時、そのクリーチャーはただちに伏せ状態にならないためのセーヴィング・スローを1回行うことができる。

フラッグ・オヴ・レジスタンス
Flag of Resistance/抵抗の旗 レベル6+ アンコモン
船の乗客と乗組員に、君を表す象徴があらゆる脅威に対して保護の盾を授ける。
レベル6 1,800 gp
レベル 16 45,000 gp
レベル 26 1,125,000 gp
船用設備
特性
船上、あるいはその5マス以内にいるとき、船の乗組員および乗客はすべてのダメージに対する抵抗5を得る。
レベル16: 抵抗10
レベル26: 抵抗15

ノーティカル・チャート・オヴ・トラッキング
Nautical Chart of Tracking/追跡の航海図面 レベル4+ コモン
この航海図は現在船を取りまく状況を映し出す。
レベル4 840 gp
レベル14 21,000 gp
レベル24 525,000 gp
船用設備
特性
この追跡の航海図面は船から100マイル以内にある主要な港と陸地のおおよその位置を表示する。
レベル14:1,000マイル以内。
レベル24:1,000マイル以内。加えて、1,000マイル以内にいる他の船との相対的な距離を名前付きで表示する。

オーシャンズ・キール
Ocean’s Keel/潜水の竜骨 Level 20 レア
この魔法がかかった竜骨は船を速やかに海の中へと潜らせ、その間泡の膜を張って保護する。
船用設備125,000 gp
汎用パワー◆一日毎 (標準アクション)
効果:船は水泳速度10を持ち、船とその荷物はダメージを受けることなく海中を航行できる。加えて生きているクリーチャーは、船から20マス以内にいる限りすべてウォーターボーン(フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド143ページ)の儀式の対象であるかのように保護される。同様に、船の中にある物体も船外に投げ出されたりしない限りは勝手に移動しない。この効果は12時間、もしくは船が水面から浮上するまで持続する。
特殊:船長だけがこのパワーを使用できる。

セイルズ・オヴ・スピード
Sails of Speed/疾風の帆 レベル10 コモン
魔法で教化された帆によって、船は海をより早く翔けていく。
船用設備5,000 gp
特性
◆帆がかけられたとき、船は通常の倍の速度で航行できる。
◆無風状態の時でも、船は微風が吹いているかのように航行できる。

シップボード・シュライン
Shipboard Shrine/船上の社 レベル10 アンコモン
瞑想と祈祷向けの静かな社。
その他のアイテム5,000 gp
特性
◆この社で執行される占術系統の儀式は、執行時間が通常の半分になる。
◆君は(この社で執行される)占術系統の儀式において[宗教]判定に+5のアイテム・ボーナスを得る。
◆一日に一度、君は構成要素の消費や焦点具なしにリード・オーメンの儀式を執行できる。何人が訪れても、この特性を使用できるのは一日に一人だけである。

スマグラーズ・ホールド
Smuggler’s Hold/密輸人の隠し場所 レベル15 アンコモン
秘密の部屋はご禁制のブツを隠す。
船用設備 25,000 gp
特性
スマグラーズ・ホールドは3インチ角の戸口なので容易に隠すことができ、開けると超次元的な一辺15フィート幅のスペースが現れる。閉じると非魔法的な手段では探知することはできない。船長は何もせずともスマグラーズ・ホールドの場所が分かり、自由に開閉できる。

スパイグラス・オヴ・パーセプション
Spyglass of Perception/知覚の覗き見メガネ レベル3 コモン
この手持ちの望遠鏡を通した世界は一層ハッキリとしたものだ。
その他の魔法のアイテム 680 gp
特性
君はこの道具を使用した[知覚]判定に+3のアイテム・ボーナスを得る。

スターン・ラダー
Stern Rudder/堅固な舵 Level 15 アンコモン
この舵は魔法的に君の船を強化し、戦闘においてより固い護りを授ける。
船用設備25,000 gp
特性
船はACと頑健防御値に+5のアイテム・ボーナスを得て、最大HPが50%増加する。

テレポーテーション・マスト
Teleportation Mast/瞬間移動のマスト レベル9 アンコモン
このマストには魔法のルーンが施されており、乗組員と乗客に船中の他の場所に移動させる力を持つ。
船用設備4,200 gp
汎用パワー[瞬間移動]◆無限回(標準アクション)
効果:君は自分でマストに手を触れることで、船の中で船長が立ち入り禁止にしていない場所以外に瞬間移動できる。望んだマスが他のクリーチャーによって占められている場合、君は何者も占めていない当該マスに最も近いところに現れる。(船外には出ない)
特殊:乗組員と乗客のうち、船長が指定した者だけがこのパワーを使用できる。

助っ人船員
以下に金で雇える専門の人物を挙げておく。これらのテンプレートはモルデンカイネンの魔法大百貨にあるハイアリングと同様に扱うこと。

狩人
費用:標準
狩人は銛や網を使って魚や海の生き物を捕まえる漁の達人だ。彼らはまた水棲クリーチャーのどの部分が金になるかを知っている。
特徴
ハンティング・エキスパート/狩りの達人◆オーラ5
このオーラの中にいる味方は[水棲]クリーチャーに関する知識判定に+2のパワー・ボーナスを得る。

医者
費用:標準×2
医者は切断、骨接ぎ、傷の縫合などを行う。船医は魔法の力を持たないため、彼らは現代でも見られる器具や薬草治療などを用いる。
特徴
ヘルピング・ハンズ/助けの手◆オーラ5
このオーラの中にいる味方は[治療]判定に+2のパワー・ボーナスを得る。

クレリック
費用:標準×4
クレリックは病気を癒したりひどい傷を治療したりするために魔法を使う。他にも儀式を執行して霊的な導きを得る。誰かが死んだなら、クレリックは人生を締めくくる儀式にふさわしい埋葬を海で行い、乗組員や乗客の心を慰める。裕福で社会的地位のある者は、旅をする際は自分にクレリックを付けるよう求めるのが典型だ。

特徴
ヘルピング・ハンズ/助けの手◆オーラ5
このオーラの中にいる味方は[治療]判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
キュレイティブ・キュア/救済の治療[治癒]
小休憩の間、クレリックは味方1人を補助できる。小休憩の間、その味方が回復力を消費するごとに追加で5点のhpを回復する。
セイクレッド・ナリッジ/聖なる知識
クレリックはレイズ・デッドの儀式を修得しており、これを執行できる。

ドルイド
費用:標準×3
荒れ狂う危険な海に立ち向かうとき、海に明るいドルイドがいれば貴重な灯となるだろう。彼らは気象予報の達人でもあり、また海のクリーチャーが船を襲ったなら、その敵意をなだめて攻撃を止めさせるための会話もできる。

特徴
ワン・ウィズ・ネイチャー/自然と共にあり ◆ オーラ5
このオーラの中にいる味方は[自然]クリーチャーに関する技能判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
プレディクト・ウェザー/気象予報
ドルイドはポーテンド・ウェザー(原始の書p159)の儀式を、構成要素を消費することなく執行できる。

メイジ
費用:標準× 3
メイジは風を司り、帆をはらませて速やかな旅をさせたり、海賊に巨大な海のクリーチャーの幻術を見せて追い払ったりする。たとえ幻術と見破られたとしても、ほとんどの海賊は相手の船にメイジがいることが分かるため、木の船を燃やされることを恐れるあまり追うのをためらう。

特徴
マスター・アルカニスト/熟達の魔術師◆オーラ5
このオーラの中にいる味方は[魔法学]判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
標準アクション
儀式の達人/儀式の達人◆[一日毎]
効果:味方1人が次に執行する儀式で行う[魔法学]の技能判定に+5のアイテム・ボーナスを与える。
サモン・ウインズ/風よ吹け◆[一日毎]
メイジは風を起こして船の運航を手助けできる。8時間の間、船の水泳速度は2マス上昇する。

アドベンチャー・フック
 いったん船を手にしたなら、PCは心躍る海の冒険を欲するだろう!以下のアドベンチャー・フックを、君のキャンペーンに導入したり、自分で考える際の手がかりにしたりするといい。
花競争:毎年、英雄たちの故郷で、その街の商家すべてが参加する船のレースが催される。船は百合島まで向かい、そこで希少な深紅色の百合を採取して持ち帰らなくてはならない。航路には危険がたくさんあり、対抗する商家が船を壊そうとしてしたり、沖に出てからも審判の目をかいくぐりつつ襲ったり襲われたりすることになる。
ありたがくない運命:とある商人が持つキャラック「貴婦人の運命」号が災難続きだ。ここ数カ月というもの、船は航路と時間を変えているにもかかわらず、毎度毎度の航海で海賊に襲われている。船の持ち主は航海の安全と厄除けのため、冒険者を雇う。実は乗組員の一人が海賊の一味だ。魔法の発信機を使い、船の居場所と積み荷がどの時点で最も高くなるか漏らしていた。海賊は襲撃して荷を奪い、次の港で内通者を使って盗品をさばくつもりだ。
海中探検:歴史書によると、海深くに華々しい繁栄を誇ったシー・エルフの都市があるそうだが、その場所を探検したことのある者は久しくいなかった。学者はその都市がどうなったのかに興味を持つ一方、商人はシー・エルフと交易協定を結ぼう、もし住民がいないのなら略奪してしまおうと考えている。
幽霊船:幽霊船がリヴンスカル島近辺に出没している。船の客が戦争勃発直前の国の間でつかわされた特使の一団であったことが分かり、物語は動き出す。彼らを殺したのは誰か?そして動機は?戦争が始まることで得をする黒幕が浮かび上がる。
静まらざる乙女:裕福な貴族が、長女の結婚の引き出物に船を一艘発注した。「優しき乙女」号は手彫りの手すりと息をのむほど美しい船首像で飾られた、とても手の込んだ優雅な船だ。しかし、ほどなく船は悲しみの叫びに憑りつかれ、未完成の船にひどい波が打ち寄せるようになる。水夫たちはこの船が呪われていると信じ込み、出航を拒否しだす。婚礼の日はわずか数日後に迫り、新婚旅行で新郎新婦を乗せる準備をしなければならない。実のところ、船首像は魔法で捕らわれたハマドライアドで、ひどい波は姉妹を助けようとするシー・ニンフによるものだ。船の建設を監督するウィザードは、ハマドライアドを船に縛り付けていることを知られたくないため、何かにつけて冒険者たちに横槍を入れる。
夜の島:千年に一度、神秘の島が現れるという言い伝えがある。月のない夜に姿を見せ、一昼夜留まり、そこから音もなく海に沈むそうだ。島にはどのようなお宝や神秘が隠されているのだろうか?島はどこから来るのか、そしてなぜそんなに稀にしか現れないのか?
もう歌えない:諸島の者たちが言う「歌石」が静まり返った。その子守唄はバードの語り草で、石は船乗りだけでなく、それを知る者みなにとっての標のようなものだったのだ。通りかかった船から、今や静まり返った島の周りで、バラバラにされたシー・ニンフの身体が浮いているのを見たという報告がある。
短剣岬の裂け目:船がいくつも短剣岬の近くで消息を絶っている。商人や港の政治的指導者は、事実上絶たれてしまった貿易路に頭を悩ませている。巨大な竜巻が短剣岬に現れ、その中心は元素混沌に向けて口を開けている。悪辣なイフリートが商船を元素混沌に引き込むために渦を使い、積荷は取引に、乗員は奴隷に売り飛ばすことでけしからん儲けをあげている!
王達の船:二つの争う国の王が休戦に同意し、何か月もの交渉の後、不道徳な側近たちの耳と目の届かない中立地帯で会うことにした。両者は冒険者の船に乗り、公海で会談の場を設ける。サファグンの男爵が両方の王国に宣戦布告し攻撃をかけたそのとき、冒険者たちのなすべきことはサファグンを退けること、そして二人の王に共通の敵がいることを分からせることになる。

海を舞台にした冒険向けの儀式
 以下に海を舞台にした冒険向けの儀式を挙げる。ウォーター・ブリージング(レベル8)、ウォーターズ・ギフト(レベル10)、ウォーターボーン(レベル14)はみな水中で呼吸できる能力がつくが、レベルが高いものほどおまけも大きい。ウォーター・ウォークで水上歩行ができるようになり、ローワー・ウォーターによって水を浅くできる。コントロール・ウェザーは恐ろしい嵐を収めたり、無風状態に風を吹かせたりするのに使う。ピュアリファイ・ウォーター(レベル1)によって海水が飲めるようになる。

著者について
 ローリー・アンダーソンはRPGAやニュー・イングランド・ゲーミング・コミュニティで活躍中だ。彼女はリビング・フォーゴトン・レルムズ(LFR)・アドベンチャーに寄稿しており、The Agony of Almraiven、Containing Shadow、Plain of Stone Spiders(すべて未訳)が挙げられる。
こちらはDAC愛知2012で行うセッションの資料の1つであり、
D&D Insider よりTavern Profile: Jaggerbad Skyhouse の関係部分を
まとめたものになります。モンスターのデータなど一部省略しておりますので
ご注意ください。

宿屋一覧:空飛ぶ家、ジャガーバッド
ウィル・ドイル

 ある者は噂する。ドラゴンの背中で旅をする宿屋のことを。この魔法をかけられた空飛ぶ宿屋は、星の宮廷にいる気まぐれなアーチフェイの契約に縛られ、次元界から次元界へと果てしなき旅を続けるそうだ。フェイより滞在できる栄誉を賜った者はドラゴンの名を唱え、欲する目的地へと旅立つのだと。

 次元の向こう側にいるお客、従業員として働くフェイに呪いをかけられた冒険者、君たちの見ていないところにもおよぶ見取り図などなど、この魔法をかけられた宿屋には冒険の要素がふんだんに散りばめられている。自分の冒険に次元間旅行を取り入れたい、もしくは神秘に満ちたフェイワイルドと星の宮廷の導入にしたいダンジョン・マスターにとって、空飛ぶ家ジャガーバッドは記憶に残る一歩になることだろう。

由来
 何百年もの昔のこと、あまりにも古くて誰も覚えている者がいないほどの過去に、空飛ぶ家ジャガーバッドは“緑の妖精族”の支配者オラン公の手によって“夏の女王”ティアンドラに贈られた。二人は一緒の翼で世界を旅し、あらゆる世界の驚異を目の当たりにしたり、敢えて怪奇を見に向かったりした。だがフェイの情愛は砂のごとく移ろい、ほどなくティアンドラはオランに家を返すことになる。彼女との恋愛ゲームに疲れた緑の王は、自らの最もお気に入りの僕であるフライに家を下賜し、好きに使えと命じた。
 それから数世紀の間、フライは空飛ぶ家に主人の客を乗せ、宮廷との送迎に供した。かつてオランとティアンドラが使っていた部屋は訪問客用のスイートルームに、ダイニング・ホールは他の世界へと旅する使節のためのバーとなった。物質界からの訪問者もよくある。事を単純にするため、フライは魔法を用いて彼らに干渉する。機会を見計らいつつ、この狡猾なフェイはどこからともなく空飛ぶ家を出現させ、次元界の向こう側へと旅することに何の疑問も持たない連中を騙し同然に運んでいく。中には裕福、あるいは英雄となって還れた者もいた。残りは永遠に忘れ去られた。

宿屋の見取り図
 草で葺かれた玄関が超巨大のアイロン・ドラゴンの背中に括り付けられている。建物全体が鞍の上に置かれ、飛行中も安定させるため、材木と布がコンサティーナ(蛇腹状の鉄条網)のように巻かれている。折りたたみの帆がドラゴンの横っ腹にロープと綱具で取り付けられ、木からできた喋らない乗組員が働く。離陸の間、階段と発射台、ブリッジは乗組員がせわしなく動き回る。
共用スペース:乗客はかごに入れられてドラゴンの背に吊り上げられると、まずこちらに案内される。遮光板付きのランタンから薄暗く光が漏れ、煙が空気を伝って妖精のように飛び回る。壁はマホガニーで葺かれ、暗く柔らかなカーテンで仕切られた先にあるのが打ち合わせ用の個室だ。
「いかがわしい」店ではないということ:空飛ぶ家は、次元を渡りながら力ある存在をおもてなしするホストとしての役割があり、その外と中の感覚の違いについて、スフィンクスのごとき意地の悪い謎が隠されている。アーチのかかった窓からは、どんな次元にいてもドラゴンが現在飛んでいる風景が見える。この家の入口をくぐった者は見た目よりも建物が大きいという感じを受けるが、それは目の錯覚だ。実のところは宿屋全体に強力な魔法がかかっており、お客のほうを小さくしてしまう。
従業員用の場所:乗客立ち入り禁止の部屋が魔法で隠されたドアの向こうにある。宿屋の支配人は合言葉を毎日設定し直すが、時にそれが日に幾度にも及ぶため、従業員が締め出されてしまうこともある。支配人の部屋は台所付きの豪華なもので、何より重要なのが飛行中にドラゴンと会話できる専用のバルコニーだ。
客室:二つある階段は吟遊詩人の楽屋や共用スペースにつながり、カーテンの向こうに客室がある。通路は誰も見ていないところで動き、お客を迷子に、あるいは間違った部屋へと連れていく。隠し通路は絵の額縁の裏にあり、魔法の錠がかかったドアは合言葉を言えば開くのかもしれない。そして長く使われていない部屋、ことによると別の次元界へと誘う。

宿屋の従業員
 料理人、食器洗いやバーのスタッフは、自発的だったりそうではなかったりの違いはあるが、すべて皆「フライとの取引」によって雇われた定命の存在だ。いったん契約が結ばれれば、契約が満了するその時まで魔法的な力で留め置かれる。フライの「お客」の扱い方は相手によってまちまちだ。ある者と関係を持って別な者に対して当てつけてみたり、またある者に対していきなり忍耐の限界を示したり。その取引条件は宿屋の主人ご本人と同じくらい意表を突くものであるため、宿屋の従業員名簿は絶えず変更がある。とある旅の間、冒険者は無垢な少女さながらに奉仕したとしても、次に気が付けば無慈悲なドラウの傭兵が後釜に据えられているかもしれない。
宿屋の主人、フライ:オラン公の特使は定命の者に対して数多くの名前を使い分ける。あるときはウィリアム=ファインソート、ありえないほどの異性を惹きつける神々しい美しさを備えた妖精、またあるときはグリーン=ネイヴ、人を不愉快にさせたり旅人の行く先を誤らせて片道の旅にしたりする嫌な奴、またあるときはホブ=ノッカー、定命の赤ん坊をチェンジリングとすり替え、(赤ん坊に化けたチェンジリングから)秘密を集めてばらす悪党。
 フライはたいがい若いハーフエルフのなりをしているが、所々年経た感じをにおわせる。感情は水銀のようにコロコロ変わり、ジョークを飛ばした次の瞬間にはひどく憂鬱な顔を見せる。仕事の時だけは人格が一貫しており、元気の良さと粘り強さ、しなやかな鞭のような柔軟性を兼ね備えている。
 フライはオランに熱烈な忠誠を誓っているが、その感情は賛美と恐怖相半ばといったところだ。公のお客様は常に最大級の贅沢と最優先の取り扱いを受ける。しかし、こうした忠義とはまた別に、フライは女王ティアンドラに対しても非常に大きな思慕の念を胸に秘めている。主人に気づかれることのないよう、フライは定期的にセイナリッセの新緑の木立に立ち寄る。そこでもう一人の主人に対し、自らの「わがままな」下僕の話をすることで彼女の物質界に対する愛着を深くさせているようだ。


ジャガーバッド:このアイアン・ドラゴンはオラン公に従属し、ただ一つの役目を負っている。それは時計。目的地に着くまで決して立ち止まることはなく、必ず時間通りに去り、航路を外れることもない。定刻を危うくするようなことでもない限り、彼が宿屋の中での出来事について関心を払うことはほとんどない。
 ジャガーバッドはフライのことを空の専門家だとは見ていないが、その指示に異を唱えることは決してない。次元間飛行で迷わないようにするため、目的地までの詳細な地図や方向を魔法で示した巨大な巻物を広げる。空飛ぶ家のことを呼ぶものはみな、ドラゴンが定刻通りに現れるなど考えもしなかったと話す。
 ジャガーバッドの物語について、さまざまな憶測がある。ある者によると、ジャガーバッドはエラドリンの都市で、次元の間で揺蕩う(たゆたう)イシミリエルで戦った。そこは昼の間は物質界にあるが、夜の帳が降りるとフェイワイルドへと姿を消し、護りを固めて戻ってくる。そこを落とすため、ジャガーバッドはアーチフェイと契約を結ぶ。イシミリエルの移動を止める代わり、オラン公に忠誠を誓うというものだ。それから後のこと、ドラゴンはお召しに遅参した。緑の王はジャガーバッドに千年の隷従、その間オランの空飛ぶ家を背負う罰を科した。もし再び遅れることあれば、誇り高きオラン公はさらに百年を追加するのだと。
 真実はどうあれ、ジャガーバッドはこと時間に関して厳格だ。また、自身の気質は数十年で丸くなったかもしれないが、いまだに己の解放を夢見ており、おそらくは長く自分のことを虐げた連中に目に物見せてやらんと我慢強く作戦を練っていることだろう。

木製水夫:長い昔、この自動機械は夏の女王によって作られた。単純な思考とある程度の自律行動能力を持つが、これらの役目に帆の扱い以上のものはない。非常時において、フライはこいつらに命じて招かれざる客を追い払うよう命じることもできるが、そういう使い方はほとんどされていない。


お客たち
 空飛ぶ家には常連客というものはいない。客はオラン公の宮廷に招かれたか、この気まぐれなフェイによって次元を跨ぐ旅をする機会を授かった旅行者のいずれかだ。一般に、よその次元界からのお客は社交的な部類の人物で、この旅を次元間貿易や違う世界の神秘を探るチャンスと考えている。もちろん悪人も紛れており、空飛ぶ家を窃盗や暗殺のためにある完璧な密室と見ている。キャラクターが訪れたとき、2度ロールしてみよう。一つ目がどんなお客がいるか、二つ目はどんな目的で旅をしているか。

d10 お客
1 ベールを被った姫とその侍従
2 刺青を入れたデヴィル・ハンター
3 次元探検家とお付きの地図職人
4 金のターバンを巻いたドワーフ
5 霜のテーブルにいる冬のフェイ
6 マインド・フレイヤーの海賊
7 ウォーロードのサラマンダーと護衛
8 逃亡中の天使
9 駆け落ちした恋人たち
10 ビホルダーに乗ったノームの幻術師

d10 旅の目的
1 囚人を護送する
2 神との謁見を求めて
3 行方不明の友人を探す
4 スリー・ドラゴン・アンティで勝負する
5 魂を入れた小箱を運ぶ
6 ベインのエグザルフと会見する
7 オラン公の宮廷で結婚式を挙げる
8 夢の次元界を探索する
9 呪いを解く
10 セレスティアまで王のご遺体をお運びする

空飛ぶ家を導入する方法
 大部分のお客はドラゴンの名を唱えて空飛ぶ家を召喚する。絶えずその気まぐれな好奇心を満たすことのできるような、オラン公の覚えがめでたい者達は、その褒美として呼ぶ方法を授かるかもしれない。また、とある強大な力を持つ王がオラン公の廷臣を虜囚から解放したが、農夫のしかけたウサギ罠に早速嵌っていた、というやり方もある。冒険者たちに、それとは気づかず何かフェイが恩に着るような筋書きをアレンジしてみよう。その後オラン公の特使が現れ、彼らにジャガーバッドの召喚方法を授ける。この特使はフェイでもいいし、喋る動物でもいいし、ある種の自律行動する物体でもいい。
 他にも宿屋を導入する方法がある。荒野のど真ん中でキャラクターと鉢合わせさせるのだ。フライはよく「消耗品」を補充するために寄り道し、「一泊しにいらしたお客様」を喜んで受け入れる。だがお約束として、この手の歓迎には裏があるものだ。「お客様」はドラゴンが発つ前に宿屋を離れなくてはならない。テーブルで居眠りし、気がつけば違う次元にいるかもしれないし、部屋に戻ろうとして動く廊下に邪魔されたりするかもしれない。そして悪意たっぷりの宿屋の主人が旅費として法外な金額を吹っかけ、その支払いができるのは彼とフェイの契約を結ぶしかない、という状況に仕向けてくる。
 第三にフライ自身が冒険者たちを探している、というやり方もある。フライは自由な旅と裕福で強力な権力者とのコネクションをちらつかせて誘ってくる。その実、彼との契約で親指を合わせた(同意した)人はみな魔法の束縛にかけられている。これは違う世界にいるキャラクターを、次元間のキャンペーンでパーティーを組ませるのにうってつけの方法だろう。空飛ぶ家が次元界を巡るうちに不思議な人、不思議な出来事に遭遇し、その一方で課せられた妖精の取引で裏をかくために協力する。

フライとの取引
 宿屋の主人との取引は、犠牲者を魔法の力によって奴隷として拘束する。各々が違った責務に四苦八苦し、空飛ぶ家を離れるのにも特別な許可がいる。仮に逃げおおせたとしても、眠りに就いて目が覚めると元の部屋に戻っているのに気づく。
 フライとの取引は一種の呪いのようなものだ。大休憩終了後、技能判定を行って呪いの進行を決定する。(注:詳細は別途)この判定はその日に行ったお客様への仕事や、宿屋の主人に対するご機嫌取りを意味している。判定で仲間の援護を行うと、自らの分は自動的に失敗する。呪いを解くために、キャラクターは自らの契約を満了させねばならない。内容は1週間ほど空飛ぶ家に乗っていれば済むということもあれば、ワーウルフの眉毛をむしってくるまでというのと同じくらい突飛なものもある。

フライとの取引 レベル19 呪い
「私と親指を合わせてください。それで妖精の取引は完了です」
宿屋の主人との契約がこれほど厄介で命をかけたものになるなど、この時誰が想像しえただろう!
段階0:呪いは不活性である。
段階1:目標は妙な囁きや怪しい影に煩わされ、すべての技能判定に-2のペナルティを受ける。
段階2:目標は絶えず悪戯な妖精に意地悪される。(段階1に加えて)セーヴィング・スローを行う際は2度ロールし、常に低い方の結果を採用する。
段階3:目標は夢と現実の区別がつかなくなる。(段階1・2に加えて)戦闘の開始時より、目標は幻惑状態(セーヴ・終了)になる。
判定:大休憩終了後、目標は技能判定(注)を行う。
○以下:呪いは1段階進行する。
○-○:変化なし。
○以上:呪いは1段階治癒する。(段階0の場合変化なし)
解呪:目標はフライとの取引に書かれた、複雑な契約の満了条件を満たす。

注:技能判定の詳細・方法は別途記載します。○には難易度が入りますが、
いくつになるかは現在のところ未定です。

空飛ぶ家を舞台にした冒険

 次元界の不思議がちょっと翼をはためかせるだけでできてしまうので、空飛ぶ家を舞台にした冒険は決して難しいものではない。以下の導入を君自身の物語に役立ててほしい。

導入:ドラゴンの遅参
 冒険者達はエラドリンの古代都市、イシミリエルの賢者からコンタクトを受ける。彼らの記録によると、ジャガーバッドの一千年に及ぶ隷従の刑がそろそろ終わろうとしているそうだ。彼らはドラゴンを恐れており、ドラゴンが自由の身になってしまえば都市に戻って破壊し尽くすのは目に見えている。都市の破滅を防ぐため、プレイヤーはドラゴンを遅れさせる方法を見つけ、オラン公を欺いて刑期を延長させなくてはならない。

導入:かっぱらえ
 エラドリンの貿易商が、ジャガーバッドの航路が書かれた巻物を盗むべく冒険者たちを雇う。貿易商の商売敵が空飛ぶ家で旅をするので、旅の最中にトラブルをしかけて出し抜くつもりでいるようだ。冒険者たちはどうやってドラゴンの飛行中にその荷物袋から巻物を盗み出すか、そしていつその商売敵が来るかについて検討をつけなくてはならない。

著者について
 ウィル・ドイルは英国在住のビデオゲームデザイナーだ。この記事によって、ダンジョン誌で自分の書いた文章が掲載される、という人生の目標の一つが達成された。D&Dをプレイしていないときは、彼女と一緒にビホルダー・パイ(http://beholderpie.blogspot.com/)というブログを更新している。

5/28追記 「セルダリン」と「セルダライン」の表記が混ざってました。
4版では「セルダライン」(次元界の書107ページ)なので、こちらで統一します。

2012/12/3 ヴィスターニ→ヴィスタニ に表記を修正

http://www.wizards.com/dnd/downloads/dragon/408/408_HC_Corellon_and_Gruumsh.pdf

ヒストリー・チェック:コアロンとグルームシュ
ジェフ・ラッサーラ

イントロダクション
 ダンジョンズ&ドラゴンズにまつわる豊富な歴史を探るシリーズ、最新号をお届けしよう。「ヒストリー・チェック」の各記事で、ゲームの象徴的な英雄、悪役、組織、出来事、D&Dの複雑に絡む歴史を取り上げて、よく知られたこと、そして新しいことに触れていく。本文およびコラムは、技能判定が成功すると冒険者たちが知っているかもしれないことについて書かれている。
今回は神話の戦いの一つに焦点を当てる。エルフの神コアロンと、オークの神グルームシュの激突だ。

エルフの谷
「友よ、荷を降ろすといい、今日はもうこれ以上進めないよ。どんなに急いでも日没までは駄目さ。木立の向こうにある橋が見えるかい?あれはエルフ谷の聖地の境界の印なんだ。そこに住む連中は、自らの領域を旅人が通るのを月夜の時だけに限っている。どうやってそれを知ったかって?あえて近づこうものなら、細い灰色の矛が地面に突き刺さる・・・そして樹上から命知らずの面々がお出迎え。それがエルフという連中の務めなのさ。まだ納得していないかな?ジョルジョ、信じなよ、さもないとお前さんは橋の向こうに辿り着く前に弓矢でハリネズミになっちまう。だから、少しお休み。お天道様がいる時は私らじゃない、連中の時間なんだ。動くのは慈悲深いコアロンのお許しを得て、セイハニーンの光が道を照らしてからさ。」

「お前さんを私の所に寄越したのはメノドーラ?それともマローブ?私は丸い耳や白目のどちらも持っていないけれど、彼らが私の仲間であることには変わらない。私の名はベンジャール、つまりエラドリンの生まれだよ。私のように、フェイの中にも他の種族より強い血の繋がりを断ち、他の者たちとの絆に変えるものもいる。私は誇りを持って自らをヴィスタニの一員であると言えるし、自分を追放した人たちのことを許せる。もう親類でもなんでもないけどね。もうわかったと思うけど、数十年前まではエルフ谷に架かった橋の向こう側が私の故郷だったんだ。エルフとエラドリンはその守護者による涙と血で彩られたコインの裏表みたいなものさ。物質界とフェイワイルドにまたがって住んでいる種族のね。」

「なぜ追い出されたのかって?失礼なことを聞くもんだね、ジョルジョ。でも今日はちょいと懐かしい感じで、古い話でもしたい気分さ。」

「私の追放はヴィスタニとは関係ないよ。エルフの絆が切れたことがヴィスタニへと向かうきっかけだったんだ。真実はもっと単純。私はオークの命を助けて、彼女とお友達になったのさ。それはそんなに許されざる罪なのかねぇ?あまねく世界にいる子供たちの守護者、セルダラインの第一人者、アルヴァンドールの宝冠、フェイワイルドの父であるコアロンにとってなら、確かに許せないんだろうね。こっちに来てお座り、これからなぜそうなのか語ってあげるから。」

「ヴィスタニはこの伝承について、ありとあらゆる異聞を集めたけれど、自分たちのものほど闇や噂から真実を引き抜いたものはなかった。これからあんたが聞くことこそがコアロンと宿敵「一つ目」グルームシュに関して最も真実に近いのさ。破壊の神はどんなときもその恐ろしい二つ名で呼ばれるわけじゃないんだよ?これはそういう話さ。それじゃあ始めようか。私からの直伝だよ。エラドリンとしては、私はかなりオークが好きな方なのさ。」

ザロヴァン族
 この「ヒストリー・チェック」の語り手はヴィスタニの一員であるザロヴァン族であり、シャドウフェルとほかの次元界をジプシーのように行き来する謎めいた連中だ。ザロヴァン族は過去と関連する未来の出来事に重きを置いており、寛容の精神、暗い陰謀、謎めいた好意から、ジョルジョ(ヴィスタニ外の者)に対して知恵を授けることがあるかもしれない。ヴィスタニに関しては、Player’s Option: Heroes of Shadow、The Shadowfell: Gloomwrought and Beyond、Dragon誌380号の「ヴィスタニ」(すべて未訳)に記載されている。

暁の戦の由来
「私が歩いてきたところすべてで、エルフはオークを罵り、関わり合いにならないよう避ける。オークはオークでエルフを片っ端から殺そうとする。二つの種族の間で血を見ないところなんてほとんどないね。これは単なる確執や文化の衝突なんかじゃない、世界そのものに古く、そして深く根付いている敵意なのさ・・・神の始めたね。かたやオークの激怒はほとばしるエネルギーさながら。こなたエルフがみな心に持つは原始的な憤怒の衝動。お前さんならそのお仕事でどちらも見ていることだろうね。」

「なんだけど、私の話の切り口はちょいと異端なところからさ。大っぴらにできないけどね。これはヴェクナのローアマスターや、神学者の中でもとりわけ勇気のある者が言いふらしているのさ。その連中曰く、あるところに双子の兄弟がいた。その双子の始祖神は、自らを犠牲にして生を授けたそうだ。片方の息子には類稀なる知性、光、美を、もう一方の息子には蛮勇、闇、混沌を授けた。その始祖神は、二人の息子によってプライモーディアルとの戦いを逆転できると信じていたようだね。魔法の力を与えられた兄のコアロンは、自らの持つ力を定命の世界に伝える必要があるということを悟っていた。また、知性や美という点で自分に劣っているグルームシュに対して深い同情を感じ、彼に神的な閃きを授けた。予言の神、アイウーンの持つそれに比べれば、ちょっとした先読み程度でしかないけどね。」

「この説が真実か確かめる術はないよ。双子の神について、とんがり耳や牙付きの連中に聞いて回るのはお利口さんとは言えない。だけどコアロンとグルームシュの間にいつも猛烈な敵愾心があったことは誰もが認めているね。二人の神は鏡の表裏さ。コアロンは優美と公正、グルームシュは粗暴と無慈悲。両者は再三再四やりあったよ、抜け目なくね。だけど、この時点では弓が張り詰めたり、斧が血に染まったりする永遠の憎悪とまでは至っていなかったんだ。」

「そして暁の戦が始まった。伝説によれば、創造のプライモーディアルが世界とそれを支配する神を破壊しようとしたそうだね。グルームシュが戦いに加わるころには、コアロンはすでにフェイワイルドに追いやられていた。コアロンは戦の終盤までセルダラインに引きこもって休んだので、フェイの神格としての神々の軍勢は、月の弓セイハニーンと、織りなすものロルスの二柱の女神が束ねることになった。セルダラインだけはアストラル海全体で荒れ狂った戦争の爪痕から逃れたため、世界全体が失っており、取り戻そうとしていた芸術や魔法、音楽を創造していたんだ。それこそがコアロン誕生以来の悲願だった、エルフという種の始まりでもある。広漠かつ誰も手を触れたことのないフェイワイルドの美の中で、その守護者が素晴らしさ、喜び、そして悲しみから流した涙が形となってエラドリン、エルフ、そしてダークエルフを創ったのさ。」

「悲しきかな、ロルスがセルダラインから離れ、コアロンは決して癒せぬ心の傷を負った。この複雑な悲劇の物語はまた機会にしておくよ。フェイワイルドにおいて内乱が勃発し、アルヴァンドールにあるセルダラインも今度は大いに荒れた。エラドリンとエルフは、嫉妬の力を持つ蜘蛛の女王に走った黒い同胞と戦うべく、武器を取って立ち上がった。 とうとうロルスとその強力な下僕はアビスに退き、ダークエルフは定命の世界の地下深くに追われコアロンに見捨てられた。私たちの集めたどんな話でも、「それが後のドラウである」っていうことになるね。」

「失ったものを振り返り、そしてアルヴァンドールも多くが廃墟と化してしまったことで、コアロン、セイハニーン、あとセルダラインの生き残りは、ようやくフェイワイルド全土に吹き荒れた暁の戦において、プライモーディアルが称した「創造」は建前に過ぎないことに気が付いた。ロルスの堕落は混沌邪霊が何をもたらすかという確信になっただろう。暁の戦が終わったとき、神々はようやく自分たちの支配する領分について好きに主張できるようになった。受け入れられないなら戦いも辞さないってね。まあ、犠牲ばかりで実のない勝利さ。プライモーディアル達は敗れたものの、神々が一致団結する可能性を潰すことができた。世界の続く限り、混沌と諍いは尽きないものだね。」

ヒストリー・チェック
 全てのキャラクターはエルフとオークの対立の基本的なところを(それぞれの宗教的な背景も含めて)知っているが、種族の起源についてはおぼろげに知っているに過ぎない。すべてのエルフとエラドリンおよび難易度20の<歴史>もしくは<宗教>判定に成功したキャラクターは、フェイワイルドにいた間のコアロンについてと、ロルスとダークエルフの反乱について知っている。コアロンとグルームシュが双子であるという異端の学説を知っているかどうかという判定は、難易度30で<歴史>または<宗教>に成功しなくてはならない。

眠らざる者
「グルームシュほど神的な混沌を持っている神格はいないね。ロルスも良い勝負だけど、彼女の悪は慎重かつ複雑、そして全く気まぐれなんだ。対照的に、グルームシュの怒りは嵐のごとく思慮がなくて小揺るぎもしない。神々の間でも初めから険悪で、決して助けあう関係にはならなかった。とあるお馬鹿な物語によると、神々が集まって自分たちの働きとその信奉者のためにどの領域が与えられるかくじを引いて決めることにしたんだそうだ。想像してご覧、神の支配が抽選で決まるだなんてさ!くじはグルームシュの番が来る前にすべてなくなり、彼には何も与えられなかった。だからそれ以来ずっと憤ってるんだってさ。」

「暁の戦において、グルームシュは誰よりも献身的に戦うコアロンとともに戦った。コアロンは芸術と歌の神であったけれども、将軍としての情熱、そして兄弟としての仲間意識を持って戦ったんだ。だがあるとき、グルームシュはアルヴァンドールで残忍な殺戮をする夢を見た。彼は混沌に抗ったものの、矛盾、暴力的な怒り、抑えつけられない悪に屈してしまったんだ。また、彼の二つ名は「眠らざる者」だった。他の神とくらべてもね。どんなオークの部族でも言い伝えられているのが、グルームシュはプライモーディアルとの戦いで、一度も休んだこともなければ一度も疲れたこともない。実際その体力たるや無尽蔵だったのさ。」

「実際のところ、グルームシュとコアロンの互いを活かした連携は戦いぬくため必要だった。ともにプライモーディアルを下して悪魔的な混沌の軍勢を食い止めてきたが、グルームシュの苦々しい感情と嫉妬は戦いを重ねるにつれ深まっていったのさ。多くに愛されたコアロンは、後から暁の戦に加わったのに軍略と魔術の英雄として称賛されてきた。この保護者はフェイワイルドではフェイにかしずかれ、麗しの定命の者達を自分の庇護下に置いている。それにひきかえグルームシュには、それにふさわしい敬意を払おうともしない。「眠らざる者」はエルフという種族とセルダリンすべてを嫌悪の目で見ていた。弱い、ムカつく、自分のことを好かない。戦争が終わり、自身の定命の存在に対する影響力を見て、グルームシュにはもう我慢できなくなったようだね。」

「おそらく始祖神から授かったかと思われる神的な予見の力のためか、グルームシュは自らが熱望した戦いとその余波について展望が見えた。彼はコアロンの死を夢に見た。コアロンの体がぶった斬りされ、グルームシュは魔法の領域における新しい支配者としてアストラル海を凱旋する自らの姿もね。自らであればそれを現実にできると信じていた。また、エルフなどという幼い種など叩き潰して、代わりに引き裂き、噛みついて定命の世界を戦場へと変えてしまう、己の作る種にとって変えようとも考えた。自分はそのきっかけを作ればいいはずだと。」

ヒストリー・チェック
 難易度20の<宗教>判定に成功したキャラクターは、上記に関連するグルームシュの性質とコアロンに対する嫉妬について理解している。同じく<宗教>判定で難易度30に達した場合は、グルームシュはかつて予見の力を持っていたのではないかという確信がある。そしてそれはもう失われているだろうということも。

血染めの谷
「この伝説の決闘について、ある説はコアロンから挑発したと伝えている。またある説はグルームシュが挑んだのだと主張している。本当のところは、両方とも来たるべき戦いに備え、しかるべき準備をしていたのさ。決闘の場となったのは、エルフがフェイワイルドから最初に抜け出した木々の繁る谷だった。フェイワイルドと定命の領域の境目だったのさ。グルームシュは谷の真ん中に仁王立ちした。巨人のごとき神が身に纏ったのは40匹のドラゴンを殺して作った、黒く染まったハイドアーマーさ。武器は手に持ってはいなかった。」

「『コアロン!』その叫び声は定命の世界のみならずどんな次元界にも響いたそうだ。グルームシュは哄笑して、コアロンのために造られた最初の寺院に植えられ、エルフの魔法によって育てられた樫の木を蹴り倒した。『臆病者の王!出てこい!』」

「間をおかず、コアロンが森の影から現れた。こっちもまた空手で現れたよ。『兄弟よ、我々は戦わなければならないのかな?』春の神は何でもないことを聞くかのように尋ねた。この神による片割れへの問いかけなんだが、大部分の見方は言い回しが反語だったと言っているが、異端の説によればこれは文字通りのものと主張しているよ。コアロンはしなやかな鎖帷子を纏い、空色の外套を羽織っていたよ。」

「『これが終わったら、お前の民は俺に仕える。』コアロンが姿を見せたので、グルームシュは地響きを上げて歩み寄った。『俺には分かるんだ』」

「『まず話し合いをしよう、グルームシュ。戦いは終わった。これは血で解決するようなことじゃない』」

「『いや、血さ。お前はもう血まみれ。』破壊の神は吐き捨てるように言った。『そして、話し合いなど弱い者のためにある。話せばロルスは裏切らなかったとでもいうつもりか?』」

「コアロンはそれを聞いて押し黙った。グルームシュはグルームシュで、話し合うつもりなど初めからなかった。グルームシュがコアロンに突撃するや否や、その手にグレートスピアが現れる。ロルスが破壊の神と共謀していたんだ。蜘蛛の女王はグルームシュの強力な武器に恐ろしい魔法をかけて見えなくし、先端に毒を仕込んでいた。グルームシュは一突きで殺してしまおうと目論んだのさ。勝利の雄叫びをあげ、コアロンの胸目がけて槍を突き入れた。」

「だが、どっちの神も正々堂々なんて戦ってはいなかった。コアロンの形をしていたものはセイハニーンが使う中でも最も強力な幻術で、緑の葉と月光の露が渦を巻いて消えた。一杯食わされたことに毒づき、グルームシュが周囲を見渡す。コアロンの実体は谷を隔てた岩の頂上にあり、グルームシュの鋭い目は必死に探していた。だが遅すぎたのさ。コアロンから神の力を帯びた矢が音を立てて放たれ、破壊の神の目に突き刺さらんばかりに近づいた。これを踏まえて、エルフの語り部なら『グルームシュが片目となったのはそのときからです』と言うところだろうけれど、それは眠らざる者を侮ってるし、才能を認めたくないんだろう。グルームシュの「先読み」はとっさに首を回させるだけの力があった。コアロンの矢は、血の線を額に1本引いて終わったのさ。」

「痛みでグルームシュはいきり立った。傷で活が入り、オークの戦士が暴力に飢えるかのごとく戦いへの渇望はいや増すばかりだ。グルームシュは激発して高笑いした。その轟く声たるや世界中でこだましたほどさ。二の矢をつがえる機会がないと悟ったコアロンは弓を捨て、岩から飛び上がり、谷の中心でグルームシュに相対した。その手には暁の戦の前から輝く星の欠片から鍛えた剣が一振り。ドワーフのクレリックですら、この世に造られた中で最初の、そして最強のロングソードと認めるほどの逸品さ。」

「二柱の神が激突したとき、セルダラインの神々と従者たちが谷の影から現われた。コアロンは知らなかったが、彼の親しい者たちも戦いに加わろうと来ていたんだ。戦いに加わることが公明正大かどうかなんて脇に置いて、自分たちの命運を決める戦いに手をこまねいていることなどできなかったんだろうね。一方グルームシュはそういう事態は織り込み済みで、セルダラインを落とさんと勇み立つ神々や、自らのエグザルフを率いていた。そして時は至り、両者は激突。谷は渦巻く泥、呪文の炎、それに血しぶきの溜まりと化した。神学者の中にはこれを「神々の戦い」と呼ぶ者もいるけれど、この戦いに加わった多くの神々はお互いの恨みからに過ぎず、コアロンとグルームシュの衝突をダシにしただけなんだ。」

「もちろん、戦いに加わらなかったのもいるよ。特にバハムート、エラティス、モラディンといった秩序の神は遠くから戦いを眺め、自らの同胞たちが混沌をまき散らすのに頭を振った。『プライモーディアルが天界の外側を壊したことだけでは飽き足らないのか?』って憤慨したのさ」

「戦いの第一幕では、コアロンとグルームシュの間に有効打は出なかった。両者はあらゆる点で相手の攻撃を完璧にいなした。コアロンの比類のない機敏さとグルームシュの無尽蔵の体力のため、お互いに武器を再三再四振ったもののことごとく防がれ、即死の一撃はどれも通らなかった。コアロンの方が早かったけれど、グルームシュの先読みはエルフの神の剣筋をすべて見切ったんだ。神の戦いは何日にもわたった。他の連中はみな疲れ果て、これ以上続けられずに退いた。永劫の時を生きる連中ですら疲れたみたいだね。」

「だがグルームシュもコアロンも止めようとはしなかった。コアロンの方は疲れを感じ始め、これ以上グルームシュと戦い続けられないと悟った。できるだけ定命の文明がない場所をと、コアロンは相手を未開の地に誘い込んだ。グルームシュはコアロンに合わせ、自分の槍を抱え、怒りの咆哮を上げて地を蹴る。彼らの通った後は峡谷が開き、丘はふもとから裂け、嵐が巻き起こった。足場の脆い、グルームシュの怒りを防げそうな場所を見つけ、コアロンは振り返って戦いを再開したんだ。ここまできて、ようやく両者とも本当に傷を負うに至った。神達の血が撒き散らされ、地面に浸み込んだ。コアロンの剣はグルームシュの肉を裂き、毒の槍は魔法の神を突き刺した。」

「コアロンはギザギザの山壁を背にした、抉られて陰鬱な荒れ地に逃れる。疲労の極みで休みを取ったんだ。やがて夜の帳が降り、闇の力が増したかに感じられた。世界の端にいたためか次元の境目は薄く、実際フェイワイルドからの精霊と歌の力を引き出すことができたのさ。グルームシュが後からやってきて、獲物の匂いを嗅ぎつけた。再び二つの神は激突し、最強のタイタンも倒れるほどに互いを傷つけあう。血は雨の如く降り注ぎ、とうとうコアロンは絶好の機会を見出した。」

リリジョン・チェック
 難易度25の<宗教>または<歴史>判定に成功したキャラクターは、神々の戦いとその解釈をいくつか知っている。とある王国が歴史について密かに管理していた中にも、古代史で神々の戦いを扱ったものはあり、難易度30の<宗教>判定に成功すればコアロンのグルームシュとの長い戦いについて「正確な」詳細が判明する。

曇った野望
「そしてとうとう、神話の戦いも最も解釈の分かれるところに来た。お客が気に入らない説を話すと・・・まあそれは相手によって違うけれど・・・弓を引かれたり、容赦のない呪文が飛んで来たり、武器を抜かれたりするよ。問題になるのは何がグルームシュを誤らせたか?ってことだね。」

「オークどもに言わせれば、デーモンのロルスが介入したということになっていて、その蜘蛛の姿よろしく山壁の亀裂から這い登り、グルームシュに闇のまやかしを放って気を逸らせたということになっている。他の説はセイハニーンの月が曇り空を裂き、容赦のない月光で目くらましさせたいうものもある。」

「最初の見方を取るとしよう。ドラウは子供たちに、ロルスがグルームシュの槍に仕込んだ魔法が最後に裏切り、グルームシュを麻痺させ相手に貴重な一瞬をあげたって教えているようだよ。だけどなぜ蜘蛛の女王は見返りなしでグルームシュを裏切ったうえ、憎きコアロンに勝利を贈ったかを説明できる者はいない。もっとも、愛と憎しみなんてときに一緒さ。どっちにしろ思い込みは危険だね。」

「セイハニーンが形勢逆転に一枚かんだという論もあるね。こっちだとコアロンに絶好の一瞬をあげたとしても否定の余地はない。グルームシュの動揺が仕組まれていたか偶然であったかどちらにしても、月の弓、セイハニーンはコアロンの妻だし、彼女の光が夫の最も不利なところで力を与えたんだろうさ。個人的には、セイハニーンが最後の局面に関わっていたことはほとんど疑っていないよ。ロルスが近くにいて、戦いを見ながら魔法を使い、何か謀っていたかもしれないけどね。」

「たいがいのエルフは、戦いがあまりにも長かったため、コアロンの体力がついに疲れ知らずのグルームシュを疲れさせたとか、隙ができた破壊の神に一撃を見舞ったという説のどちらも信じてはいないね。」

「だが実際にあったことなのさ。コアロンは素早く鋭く一撃を入れた。その剣はグルームシュの左目に突き刺さり、敵を壁に叩きつけた。グルームシュが吠え猛る中コアロンは剣を捻り、傷を治すことのできないよう蛮勇の神の頭に穴を穿ったんだ。グルームシュはコアロンを力任せに叩きつけ、地面に倒して動けなくした。麻痺毒を塗ったグルームシュの槍がようやく効くようになったんだろう。」

「これまで傍観を決め込んだロルスだったが、急に山の影から出てきてコアロンに近づいた。果たして戦いにつかれた保護者を殺しに来たのか、はたまた許しを請いに来たのか?今となっては知る由もないよ。というのも、セイハニーンがその前に立ちふさがり、蜘蛛の女王による嫉妬の力を止めたんだ。」

「グルームシュは明らかに乱入したどちらにも気が付かず、苦悶で地面に倒れた。目のあったところから黒い膿が溢れ出す。残りの目すら傷の痛みでかすみ、破壊の神は傷をかきむしる。グルームシュは選択を余儀なくされた。このまま戦ってもう一方の目も失うか・・・続けていればグルームシュですらそうなっただろうけれど・・・それとも退却するか。」

「そこで再び近づくことのできなかったロルスが、破壊の神の心に直接囁いてきた。『グルームシュ、私の所においでなさい。私があなたの傷を癒し、その心の奥底にある望みをかなえて差し上げましょう。ともにコアロンの栄えある死を奏でるのです。私は彼の秘密、彼の弱み、彼の恐れる物を知っているのですから。』甘美な誘惑だった。身の安全とコアロンの死は捨てがたかったろうが、グルームシュはロルスを相手にしなかった。ロルスは信用ならないデーモンで、過去に一度裏切られていたからね。」

「「片目の」グルームシュはコアロンに向かって咆哮したものの、その目はもうほとんど見えてはおらず、一息つこうとして、なおも戦いが続くなら危ういところだった。グルームシュは「保護者」に対してその行いを呪い、本人には永遠の苦痛、そのコアロンが創ったものすべてに復讐を、そして永遠にエルフを殺し続けると誓ったんだ。なんというか、雰囲気ばかりで中身のない話だね?もっとも誰かがあんたの目玉をくり抜いたとしたら、あんたの呪いや激情がグルームシュに力を与えるかもしれないね。」

「一方、オークはこの神話の戦いで全く異なる話をするよ。連中曰く、グルームシュはずっと前から一つ目であったそうだ。その額の真ん中には瞬きすらしない宝珠が埋まっており、「見つめる者」は誕生時に自ら目を引き抜いて自分の感覚を深め、また混沌への忠誠を誓ったそうだ。コアロンがグルームシュの目を奪ったという説は、オークにとって冒涜になるのさ。連中によると、二柱の神は戦ったものの、臆病者のコアロンはグルームシュの怒りを前にして、敵わないとみるや尻尾を巻いて逃げたと。この説によると、エルフの父はフェイのまやかしを使ってグルームシュの気を逸らし、それでどうにか逃げおおせたらしいね。」

「自分たちの神の目がいくつあろうと、オークのシャーマンは片目を抜くことを求められているね。たいがい左だ。なぜかって?これは見つめる者への献身やそれが受けた痛みを分かち合う行為だそうだ。オークは、片目のグルームシュがその儀式を漏らさず見ており、すべてに審判を下されると信じているよ。」

それから
「とうとうグルームシュは立ち上がって踵を返し、背後の山壁をぶち抜いて逃げたよ。汚れた膿が指の間から滴った。そして目はどうなったかというとね、前に触れたけど、グルームシュの左目は先読みの力の源だったんだ。そしてコアロンはそれを知っていた。」

「わかるかな、保護者がこの酷い戦争で賭けたのは己の矜持なんかじゃなかったのさ。コアロンはグルームシュが見ていた予見の夢の内容を知っていたんだ。おそらくアイウーンからだろうけど、かなりの対価を払って、コアロンはグルームシュからその能力を永遠に奪う方法を知った。保護者はグルームシュを殺すことがどうしてもできなかった。グルームシュも神であり、自分の世界を持っている。だが与えた予見の力に相応しいものではないため、放っておくといつかこの神はプライモーディアルほどの力を持ちながら、ただ殺すことのみを楽しむようになる。自分にはグルームシュを殺せないが、その目を奪うことはできる。で、そうしたのさ。」

「目は破壊された、少なくともそう思われる。グルームシュが撒き散らした自身の神髄は逃げた山の隙間に浸み込んだ。そこはプライモーディアルの懐で、新たな怪物が生まれたんだ。時に人が明るみにする、歪んだ欲望を持った恐ろしい獣さ。」

「物質界との境目が薄かったため、グルームシュの膿はフェイワイルドまで浸み込んで深く根を張った。それがフォモールだという者もいる。怪物じみた、フェイの世界を象徴するような巨人は怒れる神の残滓を浴びて邪眼を得たってね。すべてのフォモールは、祝福されたにしろ呪われたにしろ、片方の目が禍々しく膨張し、恐ろしい苦痛と恐ろしい力で苛んでくる。あとキュプロクスをご存じだろう。フォモールに仕える一つ目の巨人さ。あれはオークがグルームシュを模したのと似てはいないかな?偶然の一致なんてことはないと思うね。」

「勝者としてであろうと、敗者としてであろうと、グルームシュが戦場を離れた際、その意志、その憎悪、その血が最初のオークたちに悪意を植え付けた。特に血は戦ったすべての場所で定命の者達に混ざっていったんだ。自身の最も苦境の時、グルームシュは今一度黒い夢を見た。すべての種族が自分だけに仕え、コアロンの創ったものすべてを略奪して破壊する夢を。そしてオークはグルームシュの力強きスピアが開けたといわれる窪地、荒地、洞穴に住処を構え、エルフとその守護者に対して憎悪を燃やす。」

「オークの憎悪が激しいほど、グルームシュがコアロンに対して抱く殺意は増していく。コアロンによって奪われたのは目だけではなく、持っていた先読みの力まで失くしてしまったわけだからね。そのため、一つ目のグルームシュはコアロンをはじめとするすべての神々に復讐を誓った。眠らざる者は今日に至るまで神々の中でも凶暴な戦長としての顔を失っていないから、他の誰にも信用されることはないし、見ないふりをするにはその怒りは激しすぎるね。」

「一方、コアロンもまた戦いで定命の世界に自分の血を大量に撒き散らしていた。エラドリンがフェイワイルドの安全な隠れ家を好む一方、外の世界に踏み出したエルフは守護者の苦しみと痛みに深く触れることになったんだ。月の光がコアロンの血を照らしたとき、それは霧となってエルフたちを清めた。その心にある、グルームシュに対する抵抗の意志と憎しみが新たにされたね。コアロン達が戦い、とうとう勝った時に立っていた荒地は新緑の森となり、山壁の際は原生林となった。その地はたくさんの呼び名があり、エルフとオークは今日に至るまで争っているよ。」

ヒストリー・チェック
 ほとんどのキャラクターは、戦いの終わりにコアロンがグルームシュの目を見えなくしたことを知っている。<宗教>25か<歴史>30の判定に成功すれば、セイハニーンやロルスの介入や、グルームシュとフォモール、キュプロクスとのつながりなど、それからの出来事についても余さずわかっている。

シナリオフック
 コアロンやグルームシュをキャンペーンに使いたいマスター向けにいくつかヒントを書いておく。セルダラインに関してさらに知りたいときはドラゴン誌#386「チャネル・デイヴィニティ:コアロン」、ドラゴン誌#394「チャネル・デイヴィニティ:コアロンの信奉者たち」、ドラゴン誌#386「チャネル・デイヴィニティ:セイハニーン、月の弓から放たれた矢」を参照してほしい。

目は死せず
「見つめる者」を信奉する中でも異端のカルトが、オークの部族の中で勢力を増している。連中は、グルームシュの目がコアロンによって損なわれたことを(オークとしては珍しく)認めているが、失われたわけではないと主張し、その目はアーティファクトとして強力な力を持つと信じている。オークの従来の信仰にあるような、シャーマンが目を抜いて復讐を誓うようなことをしない代わり、オークの勇者を集めて版図を広げる勢いを見せている。信託の力を持つそれは、果たして本当にグルームシュの目なのであろうか、あるいは他のエージェントがオークを操り、何か他の、いや、もっと悪い何かをさせようとしているのではないだろうか?

ふたつからひとつを:フォモールは神を信仰しないが、とあるフォモールの魔女(ダンジョン誌#176)がエルフとエラドリンにご執心で、グルームシュに近づける形で自ら新しい種を作り出せると信じ込んでいる。ドラウ貴族の分家の助力を得て、有名なエルフの女ソーサラーと強力なオークのウォーロードを捕縛した。この魔女は儀式によって二人を融合させることで、新しい種族を生み出せると確信している。また、この行いが醜いフォモールを美しく変化させるための鍵になると思っているようだ。もし儀式が行われてしまえば、エルフとオークに新たな敵ができるのは火を見るより明らかだ。英雄たちはフェイダークに乗り込んで魔女の儀式を止めなくてはならない。

再戦:世界中のオークのシャーマンたちが「一つ目」グルームシュよりコアロンとエルフすべてに対して新たな戦いを挑むつもりだという予兆を授かる。簡単に言えばグルームシュは再戦を望んでおり、コアロンの目を奪うだけでは復讐にならないということだ。またアルヴァンドールが蹂躙され、フェイワイルドのエラドリンもグルームシュから逃れることはできないだろう。

著者について
 ジェフ・ラッサーラは推理物のフィクションの著作・編集やゲームデザイナーを生業にしている。彼の最初のエベロンの小説であるThe Darkwood Mask(未訳)には彼の闇と怪物、そして仮面に対する愛情が込められている。彼はたいがいニューヨークの深淵におり、ガーゴイルのごとくじっと座りjefflasala.com.を更新している。7歳の時、兄に金属製のダーツを目に当てられたことがあるジェフはグルームシュの痛みを理解できるのだ。(もっとも、彼はコアロンの側の人間だが)
さきほどDAC愛知の応募をしてきました。
まだ正式に決まったわけではありませんが、よろしければ参考にしてください。
(4/27追記 応募内容を変更しました)

[ マスター傾向 ] ややロールプレー重視
[ 採用ゲームシステム ] D&D4版
[ 英語ルールの採用 ] 可能
[ _初心者対応 ] 不可
[ 事前準備の必要性 ] 必要
[ 電源とLANの利用希望 ] 不要
[ 当日募集PLの参加 ] 可能
[ 募集の最小人数 ] 4
[ 募集の最大人数 ] 6
[ シナリオのレベル帯 ] 18
[ シナリオタイトル ] 飛ぶドラゴン、天空の宿屋
[ シナリオ概要 ]

「急募」
護衛求む。特殊技能のある方優遇。

酒場兼宿屋「ドラゴンの背中」亭の護衛を頼まれた冒険者たち。
ある者は多額の報酬につられ、ある者は興味本位で向かった先は
文字通りドラゴンの背中の上にある建物だった!

依頼内容は目的地到着まで道中の安全を確保すること。
契約成立と同時に呪いをかけられ、行動の自由を縛られる。
乗り合わせたお客は一癖も二癖もある者ばかり。

そしてあなた方はこの空飛ぶ宿屋の秘密と、
依頼に隠された別の目的を知ることに・・・

設定・関連資料等は後ほどブログにアップします。


[ レギュレーション ]
コンベンション当日までにWizards of the Coast社が発表したものすべて

※キャラクターの自作やシナリオ打ち合わせ等の準備があります。
※未経験者不可ですが、伝説級をプレイしたことがなくても大丈夫です。
※プレイヤー決定後にアンケートを取ります。運営の方を通して
 送付用のメールアドレスをお尋ねしますので予めご了承ください。

皆様の参加をお待ちしております。
(追記:2012/3/5 2011年6月エラッタ分を反映しました)

http://www.wizards.com/dnd/Article.aspx?x=dnd/dra/201105theme1

キャラクター・テーマ:自然と伝承の英雄達
リチャード・ベイカー

 君のキャラクターを豊かな経歴を持つ人物へと昇華させる過程は面白く、やりがいのある作業になりうる。君はやりたい種族やクラスがしっかり決まっているだろう。だがゲームの場に至るまでのキャラクターの人生は大雑把なところだけかもしれない。キャラクター・テーマは君のキャラクターを一新し、そのうえ面白そうなオプションで背景をさらに深めることができる。
 この記事はキャラクター・テーマをキャラクターとパーティー作成に使うにはどのようにすればよいかということ、そしてテーマとしてアルケミスト、アニマル・マスター、オーダー・アデプト・ウィザーズ・アプレンティスの4つを扱う。

キャラクター・テーマ

 君のキャラクターのテーマはこの世界における経歴・呼び名・アイデンティティとなる。種族やクラスだけでもキャラクターの基礎的な位置づけはされるだろうが、テーマはキャラクターの物語とアイデンティティを創る第三の構成要素となる。たとえば、ヒューマンのウィザードはアルケミストを選択できるし、また「ヒューマンのアルケミスト」は色々な形があり得る。君は村にいて、そこに住む人たちのために必要なものを作って売ることで生活しているのかもしれない。あるいは他のウィザードとともに街にいて、外の世界への旅に思いを馳せているのかもしれない。はたまた森や沼にいて、そこの自然のバランスを保とうと考えた君は、作った道具でそこの生き物を外敵から護っているのかもしれない。どんなキャラクター・テーマも、同じコンセプトの範囲内で独自のストーリーを多様に作ることができる。
 キャラクター・テーマの選択は特定のクラスに制限されない。たとえば、大部分のアルケミストはウィザードだろうが、姿くらましを好むローグが、錬金術の調合式を見つけて自分で作ってみることもある。ウィザーズ・アプレンティスは秘術の技に仕えているが、必ずしもウィザードである必要はない。このテーマのドルイドは初めウィザードに学び、後に袂を分かったのかもしれない。テーマによっては秘術のパワーを使うキャラクターやドワーフを想定したものもあるが、大部分はどんなキャラクターも選択できる。

テーマを選ぶ

 キャラクターは作成時にテーマを一つだけ選択できる。選択したテーマは記載された利益を与える。君は望まないならキャラクター・テーマを選択しなくてもよい。また、選ぶテーマの大部分は、君の冒険者としての特殊な背景や経歴を表したものであるため、1レベルの時点で十分に役に立つ。

テーマ開始時特徴:各テーマはキャラクター作成時に、選択したテーマに応じて利益を与える特徴がある。
テーマ追加特徴:大部分のテーマはレベル5と10で追加の特徴を与える。キャラクターはそのレベルに達した時点で自動的に取得する。これはクラス特徴と排他ではない。
選択パワー:大部分のテーマにおいて、キャラクターが成長して特定のレベルになったとき、(訳注:汎用パワーが得られる2・6・10レベルで)自分のクラスかテーマのいずれかからパワーを選択できる。たとえば、レベル6のファイターの場合、レベル6のファイターの汎用パワーか、レベル6の選んだテーマの汎用パワーのいずれかから修得する。

キャラクター作成のためにテーマを使う

 テーマはキャラクター作成の手段としてネタを豊富に取り揃えている。君は自分の役割を強化するため、選んだクラスと密接に結び付いたテーマを選べる。たとえば、ウィザーズ・アプレンティスは制御役向けのパワーを得られるため、もし君がウィザードをするつもりなら、ウィザーズ・アプレンティスはさらに役割を深化させる。
 また、君はテーマを別の方向から追うことも可能だ。そのキャラクターのストーリーを重視し、クラスでは得られないものを手に入れる。たとえば、アニマル・マスターを選んだファイターは使える撃破役のパワーを得る。この手の組み合わせは、キャラクターを作る際、自然に設定を盛り込める。なぜアニマル・マスターがファイターになったのか?その者は自然を司る神格の信奉者で、動物を助けることを目標にしているのだろうか?はたまたクリーチャーを操って敵を妨害するのが好きな戦士なのか?テーマであれば、たとえそれが明らかに合っていないようなものであっても、君のキャラクターに面白い設定をつけられる可能性がある。
 キャラクター・テーマを選ぶ際、以下が最良の方法かもしれない。冒険者になる直前のキャラクターは何をしていただろうか?ゲーム世界にいる他人に対し、キャラクターはどのように自己紹介するだろう?クラスすらもキャラクターの人となりを表すのに必要不可欠とは限らない。レザー・アーマーを纏った凄腕の剣士がいるとしても、その人物はファイター、ローグ、レンジャー、パラディンでありうる。一方、テーマはキャラクターが他の全員に対して持つ明確な何かがある。もしキャラクターが錬金術アイテムを作成するなら、それはアルケミストだろう。もしキャラクターが特定の団体の目標達成に貢献しているなら、それはオーダー・アデプトかもしれない。言い換えるなら、キャラクターのクラスとはテーマを追求するためにキャラクター自身ができることであり、テーマとはキャラクターが持つクラスの裏側にある物語だ。

パーティー内でのテーマ

 君のキャラクターのテーマが、他のプレイヤーのキャラクターのそれとどのように相互作用するか考えてみよう。マスターに相談をして了承が得られたら、各人の役割やクラスを相談してみる。以下のアイディアはどのようにして君のキャラクターが他のキャラクターと結びつくかというストーリーを作る助けになるかもしれない。
類は友を呼ぶ:テーマによっては、冒険の開始時でキャラクター同士を仲間、少なくとも知り合いくらいになる。たとえば、ウィザーズ・アプレンティスとオーダー・アデプトはともに秘術のギルドに所属するメンバーに設定できる。そのようなキャラクターであれば、旅に出たときにはもう十分お互いを知っていることだろう。
よく似た目的:多くのキャラクターは相通じる目標がある。少なくとも、最初のうちは。アルケミストがアニマル・マスターと一緒に行動するのは、希少な植物を探すためかもしれない。そうしたキャラクターは探索に向かった時点では互いのことをあまり知らないかもしれないが、似通った見解を持つことが多い。
違う願望:目標の違うテーマを選んだキャラクター同士は、異なった外見を超えて共通の目的を見出すかもしれない。この手のキャラクターは契約を結んでいたり、それぞれのクエストでお互いを助ける誓いを立てたりしていることもある。
みんなは一人のために:とあるテーマが好きなプレイヤーが複数いて、そのキャラクターが同じテーマを選ぶなら大変面白くなると思う。キャラクターは旧友、愛する家族、あるいはそれぞれの持つ意志や知識が互いを結びつけたライバル同士というのもある。こうしたキャラクターは、キャンペーンの開始時点ですでにチームとして動くだろう。
 もしこのアプローチを採るなら、積極的にテーマの背景の詳細について調整を図ろう。二人で作り上げたオーダー・アデプトは他のオーダーとは一味違うはずだ。

テーマを変更する

 自分のキャラクターが、その経歴のどこかで呼ばれ方が代わり、それに伴って君はテーマを変更したいと思うこともあるだろう。たとえば、君のキャラクターはウィザーズ・アプレンティスとして自身の経歴をスタートさせたが、数レベル成長した後、パーティーは自らの幹部であった悪のウィザードやウォーロックを打倒した。黒幕を除いた後、君のキャラクターにアーケイン・オーダー加入の申し出があったとする。君のキャラクターはウィザーズ・アプレンティスを続けて初心を貫いてもいいし、より多くを学ぶためオーダー・アデプトになることを選んでもいい。
 テーマから得た能力と、前提条件があるパワーや特技が関係してないなら、レベルが上がったときにテーマを変えてもいい。もし修得している特技やパワーの前提条件がテーマに由来するものであったら、まずはそれらを関係ないものに再訓練してからだ。キャラクターがテーマを失った場合、そこから受けていたクラス特徴の利益やアイテムも含めたすべてを失う。

(2011年6月エラッタにより、最後の文を追加)

楽しめる選択になるように

 君はキャラクターのテーマについてロールプレイするとき、他のプレイヤーの邪魔になったり不愉快にさせたりするのは避けること。たとえば、君のキャラクターはウィザーズ・アプレンティスであり、出身の小さな村で、ティーフリングのことをまったくもって邪悪な種族だと教え込まれ、またそう信じ込んでいた。だからといってその信条が君の友人のティーフリングを攻撃していい理由にはならないし、とてもじゃないがよいセッションのためのプレイングとは言えないだろう。たとえ君のキャラクターと友人のティーフリングが一対一で出くわしたのが馴れ初めだったとしても、いきなり攻撃するよりも、ここはそのティーフリングを観察しながらついていくのが賢い方法だ。やがて二人は互いを知り、たとえ友人ではなくとも仲間と呼べる時が来るだろう。
 何をもってロールプレイと言うかに関わらず、全員の楽しみのため、黙って座っているのがよい時もある。とある状況において、君は自分のキャラクターならこうするだろうと考えたが、だがそうすると他のキャラクターがいい顔をしないことも分かっていた。なら他のプレイヤーの反応を考えてみよう。君のキャラクターによる悪戯や「だいたいあってる」言動、お馬鹿な振る舞いが卓にいる全員に受けることもあるだろう。だがそのような行動が自己中心的でしかなく、他人の興を削いでしまうこともある。この二つの違いをよく肝に銘じておくこと。

アルケミスト

 古く類稀なる技を修めた者であるアルケミスト(錬金術師)は、この世の物質と魔法学的性質について研究している。彼らは物質界の鋭い観察者であり、多くのアルケミストは天文学から動物学に至るまで広い分野にわたる知識に興味がある。
 多くのウィザードが錬金術に価値を見出すが、すべての錬金術師がウィザードというわけではない。錬金術は呪文の発動や秘術の力が必要ではなく、試薬さえあれば錬金術の智がどんな魔法も再現してくれる。信頼できる調合式と必要な材料、厳密な精製に耐えうる専門知識のある者なら誰でも錬金術製の薬品や道具を作り出すことができる。たとえば、ファイターやパラディンの中には攻城兵器や軍事技術に役立てるべく錬金術を修める者もいるし、ローグは煙幕や岩溶かし酸、眠らし粉の使い方をたくさん知っている。
 実験と経験こそがアルケミストのたどる道であり、そのためほとんど大部分のアルケミストは広い研究室に多数の実験器具と試薬を揃えている。錬金術の研究室はとても高価なため、大部分のアルケミストは王侯貴族や市当局などのスポンサーを探している。地方によっては有名なアルケミストの後援者となるのは大変な名誉であるため、そうした都市や宮廷は先を争って自分の縄張りに名高いアルケミストを迎えようとする。アルケミストのうちパトロンが支配階級ではない者は、他の職人や軍事(あるいは犯罪)に使えるものを精製することで、己の研究や実験を続けることができる。スポンサーのいないアルケミストは自分の実験に割ける時間も資源も乏しいが、財布のひもを握られている主人やご婦人に煩わされることもなければ、無茶な注文をつけられることもない。

アルケミストを作る

 冒険に出るアルケミストには大きな研究室を構えたり、長く体系だった研究に勤しんだりする間などない。その代わり、自分の仕事場に留まる者では得られないような利点もある。「座りっぱなし」のアルケミストにはなかなか手に入らないような珍しくて変わった材料にお目にかかる機会が頻繁にあるため、普通の材料しか使えないアルケミストよりも少ない試薬かつ簡単な手順で調合物なり精製品なりを作り出せる。役に立つ試料が少々、持ち運び用の器具、観察ノートの詰まった「移動研究室」という名の大きなカバンをひっさげれば、冒険中のアルケミストでも立派な研究室を持ったよくある同業者のできる大体のことはこなせてしまう。アルケミストの冒険者は、面白い材料がないか絶えず目を配っているため、冒険中に見つけた欠片やサンプルがどんどんたまっていく。

錬金鞄(れんきんかばん)
価格:40 gp
重量: 20 lb.
この丈夫な旅行用鞄には、ガラス器具、バーナー、すり鉢とすりこぎ棒、一般的な錬金術の試薬の入った瓶がうまく収納されている。アルケミストのパワーを使用するには、錬金鞄か錬金術の研究室のいずれかを所有していなくてはならない。

テーマの選択パワーを使うためには錬金鞄を持っていなくてはならない。

開始時特徴

 ≪錬金術師≫の特技によって、調合式さえ知っていれば君はアルケミスツ・ファイアーやアンチヴェノム、スモークスティックにサンダーストーン(どれも詳しくは冒険者の宝物庫参照)といった錬金術アイテムを作成できる。アルケミストのテーマによって、錬金術アイテムを一つ手元に置くことができる。普通なら錬金術アイテムの作成に構成要素の費用がかかるが、君は一度に一つだけ無料で作成できる。
利益:君はボーナス特技として≪錬金術師≫を得る。君は1レベルの錬金術アイテム(アルケミスツ・ファイアーなど)の調合式を一つ知っている。君はこの調合式を関連する技能を習得しているか否かに関係なく使用できる。
小休憩の終了時、君は自分のレベル以下の錬金術アイテムを費用なしで作成できる。ただし、作成するアイテムの調合式を知っていなくてはならず、この特徴によって作成したアイテムは一度に一つしか持てない。

≪錬金術師≫ Alchemist
研究と実験を通して君は錬金術の秘儀を解き明かすことができ、さらなる探索へと赴く準備が整った。
利益:君は自分のレベル以下の錬金術アイテムを作成することができる。そのためには、君は正しい調合式を保持し、適切な技能を取得していなければならない。
特殊:君がクラス特徴として≪儀式修得者≫の特技を得られる場合、君はその特技のかわりに≪錬金術師≫の特技を得ることができる。

アルケミスツ・ファイアー
Alchemist’s Fire/錬金術師の火 レベル1+ コモン
小瓶が砕かれると、そのあたり一帯を錬金術の炎が舐め尽くす。
レベル 1  20 gp  レベル16  1,800 gp
レベル 6  75 gp  レベル21  9,000 gp
レベル11 350 gp レベル26 45,000 gp
錬金術アイテム
パワー([消費型]◆[火]):標準アクション。遠隔範囲1・爆発1・10マス以内、+4対“反応”の攻撃を行い、ヒットした場合1d6の[火]ダメージを与える。ミスの場合は半減ダメージ。
レベル 6: +9 対“反応”2d6の[火]ダメージ。
レベル11: +14対“反応”3d6 の[火]ダメージ。
レベル16: +19対“反応”3d6 の[火]ダメージ。
レベル21: +24対“反応”4d6 の[火]ダメージ。
レベル26: +29対“反応”4d6 の[火]ダメージ。

(注≪錬金術師≫は冒険者の宝物庫21ページ、アルケミスツ・ファイアーは同24ページ)

テーマ追加特徴
レベル5 での特徴
研究室の周りの探索、そして面白そうな試薬の実験が実を結び、得難い錬金術の調合式 をまた一つ発見できた。
利益:君は自分のレベル以下の錬金術の調合式1つを修得する。

レベル10での特徴

 実験を通して、錬金術の調合式を君は完全にものにした。君は通常よりも強力な生成物やアイテムを作成できる。
利益:君は自分で作成した錬金術アイテムの攻撃ロールに+2のボーナスを得る。また、君は自分のレベル以下の錬金術の調合式1つを修得する。

選択パワー

 冒険をするにつれ、君の調合のレパートリーは増える一方で、自分の調合式のより良い使い方も学んでいく。君が旅をした経験と、アルケミストとして、そしてウィザードとしての知識が融合し、凶悪なモンスターとの遭遇を通してその有用性が示されて新たな精製品ができあがる。

レベル2 汎用パワー

 アクア・レジアは、錬金術において金やプラチナさえ溶かす「王水」にあたる。君は自前の材料から数オンスばかり調合し、錠やドアの蝶番、鉄の棒に使える。

アクア・レジア アルケミスト 汎用2
Aqua regia /王水
君は強酸を金属の物体に注ぎ込む。
[遭遇毎]
マイナー・アクション 近接1
必要条件:使用者は自分の錬金鞄を所持していなくてはならない。
目標:金属の物体1つ
効果:使用者の次のターン終了時まで、次にクリーチャーが目標となった物体を開く、ぶち破る、曲げる、あるいは破壊する目的で<盗賊>もしくは【筋力】判定を行う際、+5のパワー・ボーナスを得る。

レベル 6 汎用パワー

 君は揉め事から逃がれるため、ちょっとした火付けの種を忍ばせている。手首を素早く動かせば、脱出できるだけの煙幕が立ち込める。

アルケミスツ・エスケープ
Alchemist’s Escape /錬金術師流逃亡 アルケミスト 汎用6
濃い赤色の煙幕を張って君は退散する。
[遭遇毎]◆[区域]
移動アクション 近接爆発1
必要条件:使用者は自分の錬金鞄を所持していなくてはならない。
効果:爆発の範囲内は重度な遮蔽をもたらす区域となり、使用者の次のターン終了時まで持続する。それに加えて、使用者は自分の移動速度まで移動することができ、この移動は区域の中にいるクリーチャーからは機会攻撃を誘発しない。

レベル10 汎用パワー

 多くのアルケミストは、悪魔的な何かを発明するとすればゴブリンだろうと信じているためこの名がつけられた。ゴブリン・オイルは無色透明の潤滑油だ。堅い地面に小瓶を放り込めば、たちどころに表面がつるつるだ。突撃してくる敵の足を鈍らせるには最適だろう。

ゴブリン・オイル
Goblin Oil/ゴブリン油 アルケミスト 汎用10
錬金術のオイルは床の部分をほとんど通行不能にし、これまた実によく燃えてくれる。
[一日毎]◆[区域]
標準アクション 遠隔爆発2 10マス以内
必要条件:使用者は自分の錬金鞄を所持していなくてはならない。
効果:遭遇の終了時まで、爆発の範囲内は“移動困難な地形”の区域となる。区域の中に入ったすべてのクリーチャーは、難易度10+(使用者のレベルの半分)の<運動>判定に成功しない限り、倒れて伏せ状態となる。区域内で伏せ状態となったすべてのクリーチャーは、そのクリーチャーの次のターン終了時まで、[火]に対する脆弱性5を得る。
(1から続く)

アニマル・マスター

 野生の動物と仲良くなったり訓練したりする不思議な力に恵まれたためか、アニマル・マスターは人間よりも動物といる時の方が安らぐ。人間の仲間に恵まれないなら動物を旅の道連れにするのもあり得る話だが、アニマル・マスターは単なるペット・コレクターなどではなく、動物の仲間と本物の仲間関係を築き上げ、訓練して操る専門家だ。動物はヒューマンや文明化された種族が失った危険を感知する力を持っており、よく訓練されたパートナーとして協働することで、アニマル・マスターはその感覚と能力の恩恵にあずかることができる。
 戦闘の相棒として大型で獰猛な動物と一緒にいる者もいるが、大部分のアニマル・マスターはごく一般的に飼いならせる動物を訓練する。こうした動物は人間に対して親しみやすいか辛抱強く、厳密な意味で野生の動物よりも複雑な技や動作を学ぶ能力がある。パンサー(豹)、ベア、ウルフや他の肉食動物を使って敵をバラバラにしたいなら、危険な獣を戦闘で手助けできるパワーを修得できるドルイドやレンジャーをおすすめする。

アニマル・マスターを作る

 アニマル・マスターとなる者はどんなクラスでもありうる。ファイター、パラディンその他戦士系は、忠実な動物の鋭い感覚が待ち伏せを回避や夜警に役立つことを分かっている。他はもうちょっと俗っぽい使い方をする者もおり、ローグの中には、小さく賢い動物を使えるコソ泥やスリに仕立ててしまう。もっとも、一番よくあるのはレンジャーのアニマル・マスターだろう。一匹狼であることが多い彼らは、危険な動物でないならあらゆる生き物を友達にしてしまう術を身につけている。

開始時特徴

 アニマル・マスターとなることで得られる、目に見えない恩恵は君がどんな動物とも関係を持ち、それを維持していく能力だろう。目に見える恩恵は君の周りで見えるものだ。君はよく訓練された動物の手下を操る主であり、忠実な連れや仲間は己の能力を君に役立ててくれる。
 君の動物の手下だが、それ自体で使える戦闘要員というわけではない。だが、君は突然手下を敵の顔めがけて襲わせたり、踵に噛みつかせたりして不意打ちさせることで迫りくる相手を邪魔することができるうえ、奇襲攻撃した後その場でぐずぐずしていない限りは安全に退かせられる。
利益:以下に記されているキャット・ドッグ・ホーク・モンキー・レイヴンの5つから1つを選ぶこと。選んだものが君の動物の手下になる。このクリーチャーは生きている限り君に同行する。この動物は通常とれるアクションを持たないが、君が移動アクションを取ったとき、これも取ることができる。この動物がパワーを持っている場合、それを使えるのは君のターンの間だけである。(DMの同意がある場合、君は上記の動物の代わりのものを使い、また変更を加えてよい。たとえば、カワウソなら登攀と跳躍の代わりに、水泳する際の技能判定でボーナスが付くだろうし、アナグマは大きさや能力などが小型犬のそれにとても近いだろう。)
 それに加えて、君はディストラクティング・アタックのパワーを得る。

ディストラクティング・アタック
Distracting Attack/搦手  アニマル・マスター/攻撃
君の命令のもと、動物の友達は敵めがけて噛みついたり、引っかいたり、突っついたりする。
[遭遇毎]◆[武勇]
マイナー・アクション 近接爆発5
必要条件:君の動物の手下が君から5マス以内にいなければならない。
目標:爆発内の敵1体
効果:使用者は自身のターン終了時まで、目標に対して戦術的優位を得る。

(訳注:2011年6月のアップデートにより、動物の手下を倒しても経験点は得られない旨明記されました。また防御値もACは14+マスターのレベル、頑健・反応・意思は13+マスターのレベル(ドッグの反応のみ10+マスターのレベル)になります。また、取り替えにかかる期間も「現在の冒険の修了時から一か月後のいずれか早い方」から「現在の冒険の終了時か一週間後のいずれか早い方」になりました。)

キャット

 静かで機敏なキャットは気づかれず潜入するのにうってつけだ。君のキャットは飼い猫でも、小さな野良猫でも、ボブキャット(アカオオヤマネコ)でもリンクス(オオヤマネコ)でもなんでもいい。

キャット レベル1 雑魚 遊撃役
超小型 自然・野獣 XP 25
HP 1;ミスした攻撃は雑魚にダメージを与えない。イニシアチブ+6
AC 14+(マスターのレベル)、頑健13+(マスターのレベル)、反応13+(マスターのレベル)、意志13+(マスターのレベル)、 感覚<知覚>+1 夜目
移動速度7
特徴
キャッツ・ステルス/猫の忍び足
キャットから10マス以内にいる間、そのマスターは移動速度の半分まで(2マス以上移動する際に受ける)-5の<隠密>ペナルティを被ることなく移動できる。
技能:<運動>+2、<隠密>+9
【筋】4(-3)【敏】19(+4)【判】12(+1)
【耐】11(+0)【知】2(-4)【魅】11(+0)
属性:無属性 言語:—

ドッグ

 ドッグの血統は多岐にわたる。君のそれはおおよそ25ポンドから50ポンドの範囲の雑種犬でもいいし、ジャッカル・フォックス・コヨーテあるいは野生の犬でもいい。痕跡を辿らせるのに使うならドッグだろう。

ドッグ レベル1 雑魚 遊撃役
小型・自然・野獣 XP 25
HP1;ミスした攻撃は雑魚にダメージを与えない。イニシアチブ+4
AC 14+(マスターのレベル)、頑健13+(マスターのレベル)、反応10+(マスターのレベル)、意志13+(マスターのレベル)、 感覚<知覚>+7
移動速度7
特徴
オン・ザ・トラック/いざ追跡
ドッグから10マス以内にいる間、そのマスターは足跡の発見や追跡のための<知覚>判定に+4のボーナスを得る。
技能:<知覚>+7
【筋】8(-1)【敏】15(+2)【判】14(+2)
【耐】13(+1)【知】2(-4)【魅】11(+0)
属性:無属性 言語:—

ホーク

 素早く、鋭い目、鋭い爪を持ったホークは最高の斥候になる。

ホークレベル1 雑魚 遊撃役
超小型 自然・野獣XP 25
HP 1;ミスした攻撃は雑魚にダメージを与えない。
イニシアチブ+5 AC 14+(マスターのレベル)、頑健13+(マスターのレベル)、反応13+(マスターのレベル)、意志13+(マスターのレベル)、 感覚:<知覚>+6 暗視
移動速度4 飛行7
特徴
ホークス・アイ/鷹の目
ホークから10マス以内にいる間、そのマスターはクリーチャーを視認するための<知覚>判定に+4のボーナスを得る。
技能:<知覚>+6
【筋】4(-3)【敏】17(+3)【判】12(+1)
【耐】11(+0)【知】2(-4)【魅】9(-1)
属性:無属性 言語:—

モンキー

 ここでのモンキーは10ポンド以下の、カプチン、マーモセット、ミドリザルのような小さな猿を指す。登ることならお茶の子さいさいのモンキーだが、物を操作することもそつなくこなす。

モンキー レベル1 雑魚 遊撃役
超小型 自然・野獣 XP 25
HP 1;ミスした攻撃は雑魚にダメージを与えない。イニシアチブ+5
AC 14+(マスターのレベル)、頑健13+(マスターのレベル)、反応13+(マスターのレベル)、意志13+(マスターのレベル)、 感覚<知覚>+0
速度6、登攀6
特徴
ニンブル・フィンガーズ/敏捷な指先
モンキーから10マス以内にいる間、そのマスターは標準アクションを消費することで、モンキーにフリー・アクションとしてすりのための<盗賊>判定をさせられる。この判定にはマスターの<盗賊>修正値に+2のボーナスを得て行う。
技能<運動>+8
【筋】5(-3)【敏】17(+3)【判】10(+0)
【耐】12(+1)【知】4(-3)【魅】13(+1)
属性:無属性 言語:—

レイヴン

 高い知能を持った鳥であるレイヴンは、オウムと同様に人間の言葉に似た声を発して会話ができる。連中はまた泥棒として悪名高く、小さな光り物をかっさらうことなら折り紙つきだ。

レイヴン レベル1 雑魚 遊撃役
超小型 自然・野獣 XP 25
HP 1;ミスした攻撃は雑魚にダメージを与えない。イニシアチブ+6
AC 14+(マスターのレベル)、頑健13+(マスターのレベル)、反応13+(マスターのレベル)、意志13+(マスターのレベル)、 感覚<知覚>+4
移動速度4、飛行8
特徴
スナッチ・アンド・スクート/掴んでおさらば
レイヴンから10マス以内にいる間、そのマスターは標準アクションを消費することで、レイヴンにフリー・アクションとして手先の早業のための<盗賊>判定をさせられる。この判定にはマスターの<盗賊>修正値に+2のボーナスを得て行う。
技能<隠密>+9
【筋】3(-4)【敏】19(+4)【判】15(+2)
【耐】10(+0)【知】3(-4)【魅】10(+0)
属性:無属性 言語:—

(訳注 ルールズ・コンペンディウム136ページ<隠密>、147ページ<知覚>、151ページ<盗賊>参照。判定のペナルティを緩和するキャットを除き、どれも使い方の一つにボーナスを与える形になっています。)

戦闘での動物の手下

 戦闘中、君の動物の手下はふつう火の粉が降りかからないような所にいて待っているが、君はディストラクティング・アタックを使って自分を助けるよう指示することもできる。君は動物の手下を敵に嫌がらせ目的で使わないなら、君の動物はどこか安全なところにいて敵の注意を引いたりしないとみなせるだろう。現れるや一発かまして素早く戦闘から逃れるため、ディストラクティング・アタックをしても、君の動物に対して何かされることは普通ない。
 DMの裁定によっては、君の動物の手下は自立行動をとることができる。たとえば、君が身動き取れなくなったとき、手下が君のもとに駆けつけて助けてくれるかもしれない。

動物の手下を取り換える

 君の動物の手下が殺された場合、5レベルになるまでは、現在の冒険の終了時か一週間後のいずれか早い方でその後釜を見つけることができる。(レベル5時点での特徴も参照)

(2011年6月のエラッタにより、一か月後から一週間後に変更)

テーマ追加特徴

レベル5での特徴

 ちょっとの食べ物と1~2時間の慎重な努力で、君は自分の周りにいる動物を新しい友達にすることができる。ほとんどの人間が動物に芸を仕込むのに数週間、時に数か月かかるところをわずか数時間でやってのける。
利益:君は大休憩の終了時に新しい動物の手下を見つけて訓練することができるようになる。周りに適したクリーチャーがいない場合、適当な場所に移るまで待たなくてはならない。君が持てる手下が一度に1体までなのは変わらない。

レベル10での特徴

 君は動物とうまくやっていく術を身に付けた。君はどのタイミングで近づき、いつ膝を曲げたり手を伸ばしたりして餌付けし、またいつ猛獣から十分な距離を取るために退けばよいか知っている。
利益:君は(自然・野獣)のキーワードを持っているクリーチャーに対して、<はったり>、<交渉>、<看破>、<威圧>判定に+2のボーナスを得る。

選択パワー

 君と君の忠実なペットは超常とも呼べるほどの絆を得て、君は自分の望みを伝えることができ、そして君に対して見返りに何を欲しがっているかをわかっている。

レベル2 汎用パワー

 君の動物の手下が普段するような仕草をしていないのは、君が止めさせているからだ。たとえば、君は猫に倒れた仲間の所にポーションを運ばせ、歯で留金を外すよう命じることができるし、犬に飛び上がってレバーをくわえ、そのまま引かせるよう指図できる。

タイムリー・トリック
Timely Trick/見計らった動き アニマル・マスター 汎用2
君は動物の手下に特務を命じる。
[無限回]◆[原始]
標準アクション・近接爆発10
目標:爆発の範囲内にいる使用者の動物の手下
効果:使用者の動物の手下は、使用者が指示するように移動アクションと標準アクションを行う。(DMの許可を得たうえで)物理的に可能な範囲内でどんなアクションも行える。

レベル6 汎用パワー

 君の動物の手下にとって近接戦闘は最高の見せ所というわけではないだろうが、時として時間稼ぎができるかどうかに君の命がかかることもある。勇敢なる君の友達は戦場の端から矢のごとく飛び、そばに来て側面を突こうとする敵を阻む。

ガード・マイ・バック
Guard My Back/背中は預けた アニマル・マスター 汎用6
君の動物が君の背中を護るべく戦場に飛び込んでくる。
[遭遇毎]◆[原始]
即応・対応 使用者
トリガー:敵が使用者を挟撃する位置に移動し、かつ使用者の動物の手下が使用者に接している。
効果:使用者の次のターン終了時まで、使用者はすべての防御値に+2のパワー・ボーナスを得て、すべての敵は挟撃することにでは使用者に対して戦術的優位を得られない。

レベル10 汎用パワー

 君の動物の手下に対し最大限の集中力を向けることで、君は一時的に魂の絆を結ぶ。君のペットが行くところは君も行くところ。その目を通して君は物を見て、君の行ってほしいところに向かわせる。

シェアード・サイト
Shared Sight/視界共有 アニマル・マスター 汎用10
君は動物の手下を通して物を見る。
[遭遇毎]◆[原始]
標準アクション 遠隔 1マイル
効果:使用者の動物の手下は、使用者が指示するように移動アクションと標準アクションを行うことができ、使用者の次のターン終了時まで手下と感覚を共有できる。使用者はこのパワーの使用や維持をするために、動物の手下が視界に入っていたり効果線が通っていたりする必要はない。
維持・標準:使用者と動物の手下は使用者の次のターン終了時まで感覚を共有し、移動アクションと標準アクションを行うことができる。

オーダー・アデプト

 生まれつき偉大なウィザードなどいない。皆鍛えられてこそのものだ。生来の能力や才覚など、秘術の技を究める序の口でしか求められないのだから。真に秘術を自分のものにするために必要なのは、己の献身と自律、精力的な訓練、それに古代の魔術書やぼろぼろになった巻物で溢れかえった図書館だ。ほとんどの場合、ごく普通の組織や慣行をウィザードや他の秘術使いが牛耳ったという話は聞かない。魔法使いは自分が必要とされているときに来て、存分に力や技を揮うものだ。だが場所によっては、魔法を独学している半端者を捨て置くにはあまりにもったいない、あるいは危険すぎるということもある。こうした所では、魔法は特殊な組織やギルド、社会、同胞団体、そして使用を自分たちの支配下に置こうとして、外部から油断なく守る秘密結社によって教えられている。
 秘術の組織は様々な理由でできあがる。あるものは秘術の伝統を守り、この道における新米の術者を導くため。またあるものは価値ある使命(たまにそれほど価値はない使命)に尽力するため。たとえば、オーダー・オヴ・ザ・ゴールデン・フレイムはサーナルの王位に仕えるための組織で、その参加者には王室直参の役人として幅広い権限が付与される。ルアザー・エラドニはデーモンの破壊にその身を捧げるエラドリンのウィザードで、メンバーは世界をあまねく旅し、どこに現れようともデーモンの侵略に対処する。エメラルド・オーブは、ウィザードこそが下等の定命を統べるべきと信じる厄介者の秘密結社で、主要な支配者に対して影響力を増そうとしたり、見える形で魔法の有無を元にしたカースト制度を確立しようと画策したりしている。ある組織は大きなもので、公式に階層がありその構成員は上位の者に従うことになっている。またある組織は小さな内々のもので、仲間同士上も下もない。
 アーケイン・オーダーは公然と活動するものもあれば、裏社会として存在するものもある。たとえば、ゴールデン・フレイムのウィザードは豪華な刺繍の入った黄色の外套を纏い、ルアザー・エラドニのメンバーは銀の星形のブローチや留め金を身に付ける。他のアーケイン・オーダーには、刺青に特徴的な髪形や身なり、特定の意匠をあしらった装具を帯びたものもある。秘密のオーダーであればもちろん外見上の特徴は排するだろうが、よくグループに所属する他の者に自分を証明するべく秘密のサインを忍ばせている。シャツの下にかけたペンダント、何気なく見るものにはよくわからない指輪、ローブの内側に隠されたマークがそれかもしれない。

オーダー・アデプトを作る

 当然の話だが、ほとんどのアデプトはウィザードかウォーロックだ。一つのオーダーに両者がいることは稀だが、どちらにも言えるのは、こうした組織というものは伝統的に彼らの密やかな社会の中で価値観を分かち合える人間を集めている。それに加え、多くのオーダーは秘術に関する彼らの研究を補うような他の能力を持った人材も加わる。魔法の神に身を捧げるクレリックや戦闘魔術師の一団が、剣と鎧を纏ったファイターを探しているという設定は、そうした人物がアーケイン・オーダーに所属する最高のきっかけとなるだろう。ときたま他のクラスの者が、研究に挫折するまでウィザードとしての野心に燃えていたということもあるだろう。そうした人間は残りの人生の間、若い頃の研究に関する記憶(あるいはそれは若さゆえの過ちというものかもしれない)を抱きつつ、背を向ける、もしくは追い出されるまでに学んだ、わずかばかりの魔法の有用さを噛みしめる。

開始時特徴

 秘術の同胞団やウィザードのオーダーは、それぞれの団独自の技がある。君のオーダーのそれは、炎の弾丸をあたり一帯に降らせる呪文だ。
利益:君はアージェント・レインのパワーを得る。

アージェント・レイン
Argent Rain/銀の雨 オーダー・アデプト 攻撃
君は青白い溶けた金属の雨を召喚し、君の敵と敢えてその中に足を踏み入れるすべてのクリーチャーに浴びせる。
[遭遇毎]◆[秘術]、[火]、[装具]、[区域]
標準アクション・遠隔爆発1 10マス以内
目標:爆発の範囲内のクリーチャーすべて
攻撃:【最も高い能力修正値】対“反応”
ヒット: 1d10 + 【最も高い能力修正値】 [火]ダメージ。
効果:爆発の範囲内は使用者の次のターン終了時まで持続する区域となる。この区域内に進入するか、区域内でターンを終了したすべてのクリーチャーは5点の[火]ダメージを受ける。この方法でクリーチャーがダメージを受けるのは1ターンに1回までである。
レベル11: 10点の[火]ダメージ。
レベル21: 15点の[火]ダメージ。

テーマ追加特徴

レベル5 特徴

 もはや見習いとは言えなくなり、正式な意味でオーダーの一員となった。君は所属するオーダーの主要な秘術の教義を学ぶようになる。
 正式なメンバーには特定の色のローブ、大きくて目立つタトゥー、独特のヘアースタイルやあごひげのような、特別な紋章や服、あるいは印章をつけることが許される。君の紋章やそれとわかる印章は、どのようなものであれ多くの国で広く知られている。味方も敵も、君の第一印象は君の仕えるオーダーに基づいたものになるだろう。
利益:君は<魔法学>判定に+2のボーナスを得る。君が呪文書を使用するクラスである場合、(呪文書に)2レベルのウィザードの汎用パワーを1つ追加する。君が呪文書を使用しないクラスの場合、汎用パワーを得るか再訓練するとき、2レベルのウィザードの汎用パワーを選択することができる。

(訳注:原文ではこの特徴によって、レベルアップ・再訓練を重ねると複数のウィザードの汎用パワーを選択できるようにも読めますが、キャラクター・ビルダーの表記では2レベルパワー1つだけです。)

レベル10特徴
 君はオーダー内で賢人、歴戦のマスターとして信を置かれる地位に登りつめた。マスターとして、君はオーダーに関して発言権を持ち、オーダーは君に対して最大限の便宜を図る。君はオーダーを危うくするような立場の決定や契約の締結について慎重さを求められるが、難しい決断が求められる時でもオーダーは君を信頼している。
 多くの秘術のオーダーは階級制を採っており、年功を経て地位を得た者は組織の中にオフィスを構えている。上位のマスターは下位のメンバーにミッションを命じ、その活動を評価する。オフィスを持つということはオーダー内の活動について大きな影響力を持つとはいえ、時間と献身が求められる。多くのマスターはそうした責任から逃れ、私事で忙しくする方を好む。いずれにしろ、オーダーの指導者としての立場を引き受けるか、身軽なままでいるかは君次第だ。
自分の組織の影響力と責任を増すのに加え、君は秘術の技をさらに磨いていく。戦闘で魔法を使うことによって得た君の知識と経験は、魔法での戦いに際して恐るべき切り札となる。君の精神を攻撃してくるような呪文に対し、避けたり効果を最小限にしたりしてくれるのだ。
利益:君は意志防御値に+1のパワー・ボーナスを得る。君の<魔法学>に対するボーナスは+4に増加する。

(訳注:2011年6月のエラッタにより、意思防御値は+2のボーナスから+1のパワー・ボーナスに変更)

テーマ選択特徴

 アーケイン・オーダーはふつう若い見習いに魔法の理論と儀式に関して徹底的な訓練を施す。君は他の呪文の影響を修正する、いわゆる「呪文修正呪文」をいくつか知っている。呪文修正呪文があれば、君は魔法の効果の持続時間を延長できるし、とても離れた距離にいる目標を攻撃できるし、欲しいタイミングで使用済の呪文を自分の精神に戻すことができる。

レベル2 汎用パワー

 君は複数のパワーを同時に維持するのに役立つ呪文を詠唱する。もうちょっとの間不可視でいたり、魔法の力で飛ぶのを長くしたりすることが生と死を分けるかもしれない。

エクステンション
Extension/延長 オーダー・アデプト 汎用2
君は呪文の効果時間をほんの数秒間だけ延長させる。
[一日毎]◆[秘術]
フリー・アクション 使用者
効果:使用者は、維持するのにマイナー・アクションが必要なパワーを維持する。
特殊:このパワーは維持するのに移動アクションが必要なパワーに対してはマイナー・アクションとして使用できる。

レベル6 汎用パワー

 君は遠隔呪文を飛躍的に伸ばす呪文修正呪文を修得した。どんな術者も超遠距離からの対処こそがベストな方法であるとわかっており、君もそのような状況において無力ではない。

ファー・リーチング
Far Reaching/遠当て オーダー・アデプト 汎用6
君は限界を超えて呪文の射程を延ばす。
[遭遇毎]◆[秘術]
フリー・アクション 使用者
トリガー:使用者が[秘術]の遠隔もしくは遠隔範囲攻撃パワーを使用する。
効果:使用者はトリガーを引いたパワーの射程を倍にする。たとえば、遠隔5のパワーは遠隔10のパワーになり、“遠隔爆発2・10マス以内”は“遠隔爆発2・20マス以内”になる。爆発のマス数に変更はない。

レベル10 汎用パワー

 この強力な呪文は君の消費した呪文を補充する能力を持ち、各戦闘で1回しか
使えないはずの呪文を2回使えるようになる。ニーモニック・エンハンサーがあれば、君はさっき唱えたばかりの呪文を使ってしまったことを後悔するんじゃないかという心配からおさらばできる。

ニーモニック・エンハンサー
Mnemonic Enhancer/記憶力増強術 オーダー・アデプト 汎用10
君はこの戦いで既に使用した呪文を精神に呼び戻す。
[一日毎]◆[秘術]
マイナー・アクション 使用者
必要条件:使用者は[秘術]の遭遇毎攻撃パワーをすべて使用済でなくてはならない。
効果:使用者はレベルが最も低い[秘術]の遭遇毎攻撃パワーの使用回数を回復する。

ウィザーズ・アプレンティス

 弟子というものはどんな生業にもあるものだが、最も有名、また悪名高いのはウィザーズ・アプレンティスをおいて他はない。間抜けな弟子が禁忌の書を覗き見し、危険な魔法を面白そうなおもちゃ同然に扱ったため、恋の魔法で大惨事になったり、変成術でやらかしたりする物語もあれば、賢い弟子が師匠の留守中に呪文を使いこなして村を救ったり、探求に赴いて日ごろの訓練を役立てたりした伝承もある。当人が軽率だろうが臨機応変だろうが、ウィザーズ・アプレンティスにとって、なくてはならない重要なことがある。経験を積んだ師匠による個人授業と指導だ。
 魔法を学べるという特権の代わりに、普通ウィザーズ・アプレンティスはマスターが俗事と見なすような骨折り仕事や雑用をする年季奉公に何年間か従事する。典型的なヒューマンのウィザーズ・アプレンティスは11か12の頃に研究を始め、5~6年の間マスターの家に住み込む。経験を積んだ術者は様々な理由で弟子をとる。秘術の技に対する哲学を共有するため、見込みのある生徒をものにし、教えた対価として働かせるため、また貴族の子弟の教師になって稼ぐため。驚くべきことに、もっとも孤独好きや疑い深い部類の者達、そして悪の者ですら術者は弟子を取る。弟子の指導は自身の責務であると考える者、若くて才能のある魔術師をゆくゆくは仲間(ないし手下に)というつもりの者、己の企てを横から見ている存在を欲しがる者、さまざまだ。悪であるマスターはよく冷酷であったり搾取的だったりするが、自分の弟子を虐待して喜ぶのは最も愚かな部類の者だけだ。まわりまわって、自分から憎まれるように仕向けた相手と秘密の力を共有するのは頭が良いとは言えない。
 冒険に出たウィザーズ・アプレンティスは、大なり小なり修業を終えた青年だろう。もう師匠の家に住み込みではないし、講義の合間に床掃除やポット磨きをしなくてもいい。そのような人物が時期を得て師匠から一人立ちできたなら、その弟子は重要な時に援助してくれる著名なパトロンの一人でも得ている頃だろう。ウィザーズ・アプレンティスの多くは生涯を通じて自らのマスターへの忠誠心を持ち続ける。自分の業績が師のそれを凌ぐようになったとしてもそれは変わらない。
 とりわけ強力、または高名な師匠についた弟子は、代理人や協力者として仕えることもあり、そうした弟子は自らのことを名誉ある伝統の選ばれた守護者と考える。古のウィザードやソーサラーにさかのぼり、多くの有名な魔法使いは師匠から弟子へとその関係を受け継いできたのだ。

ウィザーズ・アプレンティスを作る

 ほとんどのアプレンティスは術者であるウォーロックかウィザードだ。伝統的にどちらのクラスも知識の伝承を一度に魔術の技を究める能力を持ち、また期待を裏切らないということを示せた選ばれた一人だけに限っている。
 しかしながら、秘術の生徒候補生の多くは師匠と同じ道を辿らない。たとえば、ある若いろくでなしは街のソーサラーの講義と雑用に追いまわされ、長年に渡る奴隷同然の奉公に甘んじていたが、魔法の技が金になると知った途端マスターを放り出してローグの道を歩んだ者もいる。裕福な貴族は、将来別な方面を歩むとしても、魔法の基礎を身に付けさせようとして子供に教師をつける。つまり、冒険者になる前に、ほとんど誰もが魔法の勉強をする可能性があるということだろう。

テーマ開始時特徴

 君は多くのウィザーズ・アプレンティスが最初に学ぶような便利な攻撃呪文を身に付けた。とあるウィザードの塔では、カラー・オーブが見習い組の荒っぽい「ゲーム」に向いた呪文として教えられる。

カラー・オーブ
Color Orb/彩色の球体 ウィザーズ・アプレンティス 攻撃
君は色の渦巻いて輝く球体を敵目がけて放ち、瞬間的に幻惑させる。
[遭遇毎]◆[秘術]、[装具]、[光輝]
標準アクション遠隔5
目標:クリーチャー1体
攻撃:【最も高い能力修正値】対“意志”
ヒット:1d8 +【最も高い能力修正値】[光輝]ダメージ、目標は使用者の次のターン終了時まで幻惑状態となる。
レベル11:2d8 +【最も高い能力修正値】[光輝]ダメージ。
レベル21:3d8 +【最も高い能力修正値】[光輝]ダメージ。

テーマ追加特徴

レベル5特徴

 君の技と冒険での活躍は君のマスターの耳に届いた。もしマスターがこの世の人でないのなら、その友人や仲間に聞こえているだろう。君の働きを認め、君のマスター(ないし仲間)は君の助けになるようにと心尽くしの品を贈る。
利益:君は6レベル以下の装具、鎧、首スロットのいずれかであるコモンのアイテム1つを得る。

レベル10特徴

 長きにわたる冒険を経て多くを学んだ君は、過去に写しておいた秘術の理論や謎めいた記述が今こそ理解できるようになった。要領を得なかった概念はもう明解で、謎かけの意味や馬鹿げているように思われた問題はとうとうはっきりした。
利益:君は<魔法学>に+3のパワー・ボーナスを得て、神界語以外の言語を一つ修得する。

(訳注:2011年6月のエラッタにより、<魔法学>は+2のボーナスから+3のパワー・ボーナスに変更)

選択パワー

 若い弟子時代に綴った学習帳やノートには役に立つ可能性を秘めた呪文の概略が記されている。これらは君の師匠から個人指導を受けていた期間のものかもしれないし、思索に耽っている頃に閃いたものかもしれない。君の師匠は余計な研究をする弟子に仕事を増やしたり罰したりはしなかったかもしれないが、君は自分の研究ができるその日が来るまでひとまず置いておくことにした。

レベル2 汎用パワー
 君はちょっとした姿くらましの呪文が非常に役に立つということを知っている。効き目は長くないが、敵に君がいなくなったと気づかれる前に、角を曲がったりドアを通り抜けたりできる。敵の隙を打つために使うというのも良い手だ。

ディスアピアー
Disappear/消失 ウィザーズ・アプレンティス 汎用2
君は瞬時に視界から失せる。
[一日毎]◆[秘術]、[幻]
マイナー・アクション 使用者
効果:使用者はターン終了時まで不可視状態になる。

レベル6 汎用パワー

 囁くような言葉とただ一歩の優雅な跳躍によって、君は空に飛び上がる。君は長く空中に留まってはいられないものの、屋根に登ったり襲いかかる敵から逃れるにはこの上なく便利な方法だ。

ウイングド・ステップ
Winged Step/翼つきのステップ ウィザーズ・アプレンティス 汎用6
君は1度きりの短い跳躍の間、空で自分を支えられる半固体の翼を自分のかかとに作る。
[遭遇毎]◆[秘術]
移動アクション 使用者
効果:使用者は6マスまで飛行して(訳注:ダメージを受けることなく)着地する。この移動は機会攻撃を誘発しない。

レベル10 汎用パワー
君は小型で無害な動物へと姿を変える呪文を学んだ。この姿では満足に戦うことはできないが、自らの2本の足では行けないような所や、君であると気づかれずに敵を見張るには実によい手段だろう。そして、他の物に化けることこそウィザーズ・アプレンティスの楽しみなのだ。

マイナー・ポリモーフ
Minor Polymorph/小動物変化 ウィザーズ・アプレンティス 汎用10
君は小さく、無害な動物に変身する。この姿は戦闘で非常に有効というわけではないものの、逃げおおせるには役に立つかもしれない。
[一日毎]◆[秘術]、[変身]
標準アクション 使用者
効果:使用者は次のターン終了時まで、超小型の自然・野獣キーワードを持つ動物形態になる。この形態の間使用者は攻撃ができず、選んだ動物形態の感覚と移動モードを持つ。選んだ形態が[水棲]キーワードを持つ場合、この形態にある間使用者は[水棲]を持つ。使用者はマイナー・アクションを消費して元の形態に戻ることができる。使用者が飛行中に元の形態に戻った場合、使用者は落下ダメージを受けることなく地面に着陸する。使用者を見る者は難易度(15+使用者のレベルの半分(端数切捨て))の<看破>判定に成功すれば、使用者の動物形態を見抜くことができる。
維持・マイナー:使用者の動物形態は使用者の次のターン終了時まで持続する。

(訳注 「動物形態の感覚」は暗視、疑似視覚や振動感知など、「移動モード」は穴掘り・飛行などを指します。変身したクリーチャーに該当がある場合、前者は感覚の欄の隣に、後者は移動速度の欄の隣に記載されています。)

著者について

 リチャード・ベイカーは次元界の書、Dark Sun® Campaign Guide(未訳)やGamma World®(未訳)を筆頭に多数のゲームやサプリメントを作成し、受賞経験がある。また、ニューヨーク・タイムズ紙でフォーゴットン・レルム関連のCondemnation, the Last Mythal trilogyやthe Blades of the Moonseaシリーズを紹介されたベストセラー作家でもある。リッチは現在ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社でダンジョンズ&ドラゴンズの制作部門の編集長を務めている。

http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201111history

2012/12/3 ヴィスターニ→ヴィスタニ に表記を修正

ヒストリー・チェック:裏切り者レアリー
ステアリング・ハーシー

イントロダクション
 ダンジョンズ&ドラゴンズにまつわる豊富な歴史を探るシリーズ、最新号をお届けしよう。「ヒストリー・チェック」の各記事で、ゲームの象徴的な英雄、悪役、組織、出来事、D&Dの複雑に絡む歴史を紐解いていこうと思う。
今回の「ヒストリー・チェック」は、誰もがお目にかかったことがあるであろう、このゲーム史上最古かつ最も有名なキャラクターである、裏切り者レアリーと八者の円の物語だ。本文とコラムを通じて、技能判定に成功した冒険者が何を知っているか解説していく。

イッツショータイム!

「旅の方々、私たちのショーにようこそ!・・・なんだけど、残念なお知らせがあってね。踊り子たちがちょっと遅れるそうだ。まあまあ、座っとくれ。ちょっとした不運な事故があってね、とにかく急いで来るからさ。」

「その間、私ことマローブ・ザロヴァンが語り部となって、強力なウィザードが、ほかならぬ自分自身の不実と裏切りによって破滅した話でお楽しみいただこう!ここだけの話、長が教えてくれたところによれば、お前さんがたにとってもこの話がいつか役に立つときがくるだろうとさ。」

「それでも踊り子さんが待ちきれないみたいだねぇ?聞こえてるよ、後ろの間抜け面!こんどお前さんの友達が隊列を組むとき、モンスターの真ん前に行くよう配置されて戦死しちゃうかもね?なに、難しいことじゃないさ!話をきいてりゃ、しまいにはその価値がお分かりいただけることだろうよ。お前さんは自分の冒険がどうなるかなんてわかりっこない。だがこの話は、きっとどこかで身を助けてくれるだろうね。わかったら自分の席にお座り。始めさせてもらおうじゃないか。」

ザロヴァン族

 この「ヒストリー・チェック」の語り手は、ヴィスタニにいるザロヴァン族の一員である。ザロヴァン族は、シャドウフェルとほかの次元界をジプシーのように行き来する謎めいた連中だ。ヴィスタニはAdvanced Dungeons & Dragons Ravenloft adventure(未訳)が初出だが、記憶に残るようなキャラクターが溢れ、よその設定にもその名前を見ることができる。今回の記事ではマローブ・ザロヴァンという、若くて少々尊大であっても立派にヴィスタニの語り手たる彼女をお目にかけたい。
 ヴィスタニに関しては、Player’s Option: Heroes of Shadow、The Shadowfell: Gloomwrought and Beyond、Dragon誌380号の「ヴィスタニ」(すべて未訳)に記載されている。


八者の円

「風が腹を空かせたオオカミの群れのごとく吠え、悪事を照らす月を暗雲で覆い隠すような憂鬱な夜、大陸オアースと大グレイホーク市を我が手にと企む、史上最強のウィザード達による勃興と悲劇的な転落の物語が始まる。八者の円さ。何?そんなの知らないって?少なくともお前さんがたのうち何人かは聞いたことくらいはあるはずさ。秘術の道を志す者なら誰でも・・・ああ、お前さんのスタッフの長さは分かった。でもここで振り回す必要はないからね。そうだ、いくつかその名を冠した呪文が使えるかもしれないね?ビグビーズ・ハンドなんかどうだい?ないだって?ふん、冗談が上等すぎて掴みはいまいちだったようだね。」

「高名かつ強大な八者の円だが、その前身となるものがあって、モルデンカイネンが偉大な英雄を自らの黒曜石の城塞に招いたことがある。公明正大に善を助けることがあるモルデンカイネンだが、その目指すところは善と悪、秩序と混沌の均衡だ。それゆえにこの偉大なる魔導師は、力や影響力を持ち過ぎたと考える個人・集団・国を損なうよう密かに謀るのさ。お利口さんか、お節介焼きか、はたまた扇りなのか?それを決めるのは歴史であって、私じゃあない。ともあれ、一握りの英雄を選抜し、「八者の城塞」のメンバーにした過去があったのさ。」

「八者の城塞の顔ぶれだが、まずはモルデンカイネンにその弟子ビグビー。続いて強力な戦士のロビラー卿、クレリックのリグビーにその熱烈な弟子のイラグ。ウィザードのテンサーが加わったが、その正義感は時にモルデンカイネンのバランスを絶対視する信念とぶつかった。そしてテンサーは友人のサーテンを誘うんだが・・・なんというか、控えめに言っておバカなんだ。最後に、森の住人オティスがくる。」

「八者の城塞による功績はフラネス全土に知れ渡り、メンバーは名声、知識、力を得た。時が経ち、それぞれが己の冒険と探索に没頭するあまり、オアースで起ころうとしていた惨事に気づくことができなかった。それゆえ元素邪霊の群れが来襲したとき、八者のうち七者がお留守だったのさ。勇敢で間抜けのサーテンだけは善の側に立って戦い、とうとうやられてしまう。性格とやり方の違いから、八者の城塞の友誼などすでに色褪せてしまった後だった。関係修復のチャンスはあったにせよ、サーテンの死は決定的だったね。」

「八者の城塞のメンバーは各々の本拠地に戻って活動していたが、小康状態は長くは続かず、数年後に邪悪な半神、アイウーズが帰還した。モルデンカイネンはアイウーズと戦うための助けが必要だったが、過去の過ちは繰り返すまいと決めていたようだ。八者の城塞には、メンバーの目的が別々であるために弱点が生じたと。そのため、モルデンカイネンは次の仲間を自らと同類である練達のウィザードから探したんだ。敬虔なクレリックや屈強のファイターはお呼びじゃない。強大な秘術の技と智を備え、知識への渇望を持つ者をこそと。最も大事なのが、その持てる能力と地位を世界の均衡を保つために使う意思があるかどうかだね。」

「数か月以上もの間、モルデンカイネンは新たに組む「八者の円」のために奔走した。メンバーも出たり入ったりで、今日でもその全貌が知られているわけではない。私にもわからないのさ。信頼のおける弟子、ビグビーが再登場だ。海を愛するドローミジ、変装に戦術、そしてダジャレの達人ニストゥル、これまた大げさに言えば、かつてボカブのクレリック、今や秘術の技にすべてを捧げる偉大なるオットーも来た。レアリーも長らく積み上げてきた自らの知識と研究、助言を役立てた。最後にキーオランドからニロンドにかけての宮廷魔導師でおなじみのバックナードがくる。

「9人だろって?そうさ、その通り。(注1)まだワインに頭がやられてないようだね。名前を一つ一つ挙げていかなかったのに、ちゃんと9人だったのに気が付いたわけだ。おそらくウィザードという連中は、パン屋や領主の徴税人のように数え方も独特なんだよ。モルデンカイネンが8人の魔導師を率いていた、そこんところが大事。」

(注1 本文を読む限りでは人数が足りません。モルデンカイネンが率いるビグビー、オティルーク、ドローミジ、テンサー、ニストゥル、オットー、レアリーにバックナードで9人になります。)

「ほどなく、『円』は以前の『城塞』よりずっと強力であることが示され、オエリック東部での征伐は大いにうまくいったのさ。力だけでなくその術策の巧みさによって、円のメンバーはオアース中にエージェントによる情報網と交友関係を広げ、自ら手を下す代わり、手下や冒険者たちに諸問題を解決させることもよくあった。」

「『円』の成功に感服したテンサーが、かつての友人サーテンを失った苦い思い出を克服する一方で、モルデンカイネンはもう一人メンバーを加えるためオアースを翔けていた。魔導師協会の会長であり、大グレイホーク市の議会に席を持つオティルークを加え、円の政治的影響力と地位はいや増した。2年ほど姿を消したままのバックナードの代わりに、ジャラージ・サラヴァリアンがお試しのメンバーになった。強情な年寄りウィザードのどもの中で唯一の女性だったジャラージにとって、それはもう大した「お試し」だったわけだね!」

ヒストリー・チェック
 難易度10の<歴史>もしくは<魔法学>の判定に成功したキャラクターは、八者の円の存在と主だったメンバーについて知っている。難易度20では八者の円の歴史と初期メンバーもわかっている。難易度25までいけば、上記に加えてメンバーそれぞれの詳細と、その部下のことも把握している。

壊れた円

「円は滅多なことで軽挙妄動したりしない。だからモルデンカイネンがヴァーボボンク南部の丘陵地帯に出向いたほどの兆候や警告というのは、それはそれはすごいものだったんだろう。残忍なるハルマンダールの古墳に異変を見つけた。ハルマンダールが墓を出て彼らと対峙した時、連中は事態が手遅れであることを悟った。ハルマンダールが悪の半神、ヴェクナの手と目をつけていたんだ。ヴェクナの手と目による、時を操る力によってモルデンカイネン以外の八者は瞬きする間に殺された。」

「この悲劇は不具の神ヴェクナとその副官、破壊者カースの暴力と裏切りの物語に端を発している。そのあたりはメノドーラ・ザロヴァンがよく話してくれてるよ。(注2)結果だけ話しておくと、ヴェクナの計画は失敗した。円の手で使わされた連中の働きにより、ほとんど奇跡的な確率でグレイホークは救われたんだ。」

(注2:ヒストリー・チェック:カースとヴェクナ参照)

「八者の死はオアース全体に力の空白を生じさせたため、モルデンカイネンは事態の隠蔽と収拾に全力で取りかかった。失ったメンバーの後釜を探すということもできたろうが、採った手段は死んだ魔術師のクローンを魔法で造ることだった。難しい呪文を使うのに数か月もかけている間に、北からさらなる脅威がやってくる。円が復活する頃には、オアース全土がグレイホーク戦争に巻き込まれたのさ。」

「八者の円のメンバーはその大部分が戦いに加わったが、綻びはたちまちのうちに現れ円が崩れ始める。原因の大部分はレアリーだった。オティルークをはじめ他のメンバーといさかいが絶えず、バランスを保つという方針が自分にとって報われないと感じだしたんだ。とうとうレアリーはロポーラにある自らの塔に帰り、戦いに加わるのを拒否した。 他のメンバーにも会わなくなり、重要な会合の時にしか顔を出さなくなる。その間、メンバーの幾人かはレアリーから凶相、そして心ここにあらずのようだと見て取った。彼の関心は何か他の所にあると。」

「そしてようやく、フラネス全土を覆った戦争にも政治的解決が図られた。大調印式と呼ばれる式典がグレイホークで開かれ、闘争を公式に終結させるべく重鎮や指導者が調印のため一堂に会した。式典は暗殺者やテロリストにとって絶好の機会だったろう。それを分かっていたからこそ、八者の円とそのエージェントは出席者の中に裏切り者がいないか懸命に探した。だが己の内部は見もしなかったのさ。」

ヒストリー・チェック
 難易度20の<歴史>もしくは<魔法学>判定に成功したキャラクターは大まかな八者の円崩壊に至るまでの話を知っている。30の成功でハルマンダールが倒される詳細な部分まで把握している。難易度15の<歴史>でグレイホーク戦争の主要な事柄が分かり、30でこの間のレアリーの行動まで精通している。

裏切り者の攻撃

「調印もいよいよ終わりに差しかかったころ、ビグビー、テンサー、オティルークの三者がようやく大会議場の異変に気が付いた。それでも、彼らの尊敬するレアリーが準備万端整えて登場したときのショックは察するね。歴戦のウィザードには見た瞬間にわかった。レアリーが石や木、さらに空間そのものを操って、式典に居合わせた人間すべてを殺せる呪文を放つつもりだとね。」

「レアリーは逃亡を試みたが、ことごとく三人に阻まれた。袋の鼠のごとく追いつめられ、己の計画が他の八者のせいで無にされてしまい、レアリーはその鬱積した怒りをかつての盟友にぶつけたのさ。」

「グレイホークの誇る最強のウィザードのうち、4人までもが参加した魔法合戦だ。それはもうすごい見物だろうね、想像できるかい?まずレアリーは、式典で使うために準備していた呪文を放った。秘術のエネルギーによって風が切り裂かれ、大爆発、炎の噴出、おまけとばかりさらに魔法の火が炸裂。それらがみな治まると、強力なるテンサーが倒れていた。裏切り者、レアリーによる最初の犠牲者だった。」

「オティルークは果敢に反撃し、レアリーを防戦に追い込んだ。ビグビーもそれに加わったが、狡猾なレアリーは次の罠を起動させ、両者をひどく痛めつけたのさ。奇襲によってオティルークは不意を打たれてしまい、レアリーの攻撃は魔法防御を切り裂き、オティルークに致命傷を与えた。レアリーは残った罠を発動させて離脱したため、その場はヤバい魔法と炎、飛び交う残骸で一杯になった。」

「ビグビーは辛くも生き残った。オティルークとテンサーは蘇生の見込みがなかったが、ビグビーにはお友達とまた会える、という確信があった。ハルマンダールにやられた教訓から、再び殺されても大丈夫なよう自らのクローンを作ってあったんだ。まあ、レアリーにとってはこれも想定内だったんだけどね。」

秘めたる計画

「レアリーが大会議場で円と戦っている間、テンサーとオティルークのクローンも攻撃を受けて破壊され、二人の死は決定的なものになった。だが、何よりも衝撃的だったのは、二人のクローンを襲撃した部隊の中にロビラーがいたことだ。これまでの間に何があったかは謎のままだが、とにかく偉大な戦士はレアリーの側について円に刃を向けた。グレイホークの軍隊はただちにロビラーの居城を落とすべく向かい、ロビラーは手勢とともに敗走を余儀なくされた。レアリーの祖国ケットにあるロポーラの塔も、跡形もなく消し去った。」

「レアリーをして八者の円を裏切らせたのは何か?お前さんがたの中には、何があったにせよ、レアリーのしたことは誤りだと言うのもいるかもしれないね。気高い理想を持ったこの男は、円の崇高な使命が内部の妨害や些細な違いによって損なわれるのを目にしてきた。また、紳士で通ったこの学者は、己の手による巧妙なアイディアが邪魔されるのみならず、オティルークやモルデンカイネンによって笑いものにされたりさえすることがよくあった。均衡を保つことに己を捧げた魔術師は、破壊と混乱によって己の努力を幾度も幾度も無に帰されるのに憤った。そして答えとなるものをあちこちに探し求め、半神アイウーズ、緋色団、暴君アエルディの歴史に辿り着いたんだ。考察したのは両雄並び立たずということで、現にそれらはみな、経緯は違えど同じ轍を踏んでいるね。だがレアリーは、自分はそれらの経験から学んでおり、八者の円との抗争や妨害なしで真の変化をもたらせるとでも信じ込んでいたようだ。」

「他の連中がグレイホーク戦争で忙しい中、レアリーは禁じられた呪文の探求と、ケットを超える規模の征服者にまつわる歴史の研究に勤しんだ。彼は中立という立場と縁を切り、剣と魔法を通じた秩序はどのようにすれば最も効率的に維持できるかということについて歴史を研究し始め、ロビラーを頼りになる自らの右腕として迎えた。だが実は、本当のロビラーはその少し前から他の次元界に囚われており、バイラッロという名の偽者が成り代わっていたんだ。もしも大調印式で全員を殺害すること、そして緋色団の焼き打ちがうまくいったなら、混乱に乗じたレアリーは先んじて力をその手におさめただろう。さらに八者の円は自分が牛耳ることになり、腰抜け魔術師どもは下僕同様、秩序のための「やむを得ない」損失を埋めるべく働いてくれたに違いない。そしてレアリーはたやすくグレイホークの新しい支配者となり、すべての戦争の結果はレアリーの命令で動く軍隊次第、すべての外交の報告はレアリーあてということになっただろうね。」

「ありがたいことに、レアリーと偽ロビラーの企みは成功しなかった。だがどちらも諦めたわけじゃない。大会議場で行われた調印式襲撃が失敗に終わった後、グレイホークから遠く離れた荒廃砂漠に退いている。レアリーはそこにある真鍮の丘に塔を建て、ブライト・ランド(荒廃の地)と称した国を興した。偽ロビラーとその手勢は、国内の遊牧民の部族やノーカー(注3)、その他諸勢力をレアリーの傘下に収めるべく足元固めに励んでいるようだね。」

(注3:「元素の混沌」に晒されて理性を失ったゴブリン類)

「レアリーにとって、点在する砂漠の民の支配者なんぞ眼中にない。荒廃砂漠の古代史を学んで、そこから裏切り者は隠された秘密とアーティファクトの発見に次々と乗り出し、自分の国を富ませて影響力を増している。ロビラーとその配下の将軍はブライト・ランドに自分の領地を持ち、またレアリーは新しい呪文を研究するいっぽう、休みなしで動き、自分の領地を侵略する輩をいつでも粉砕できるような自動機械を開発している。八者の円も含め、この裏切り者には実に多くの敵がいる。その円も欠けたメンバーを補って余りあるほどさらに強力になった。オティルークは残念だったが、テンサーはオアースの月に隠していた別のクローンのおかげで生き返ることができた。だが、彼は八者の円への復帰を拒否したね。いなくなった分の後釜は“ゼイフの賢者”アルハマザード、セオダイン・エリアソンにウォーンズ・スターコート。みな恐るべき闘士さ。」

「さてお前さんがた、これで裏切り者レアリーがいかにして八者の円を裏切ったかについての真相を知っている数少ない人間になったわけだ。今日テンサーやモルデンカイネンを冠した呪文は簡単に見つかる一方、レアリーはさっぱりだ。この魔術師の魔法に対する貢献は、本人が悪に堕ちたため禁忌扱いされたのかもしれないね。ひょっとするとお前さんがたの中に、そんな呪文を学んでみたいと思っているのがいるかもね?ヴィスタニがそのお手伝いをできるかどうかって?ハハハ、たぶんね。」

「さあ、とうとう踊り子のお出ましだ。私たちの馬車に忍び込んでお縄になった盗賊と一緒にね。じゃあ踊りを楽しんでおくれ。私はおマヌケな盗賊を長の所に連れて行くのさ。長は隠している秘密を探り出すのが何より好きなんだ。そう、ヴィスタニが面白い物語より好きなのは貴重な秘密だけさ。」

ヒストリー・チェック
 難易度15の<歴史>もしくは<魔法学>に成功したキャラクターは、レアリーの背信とロビラーの手助けについて知っている。25で裏切りがあった日の詳細を、30までいけばレアリーの長期的な目論見と「ロビラー」の正体までわかっている。

レアリーの呪文

レアリーは術者や目標の精神作用に影響する呪文に特化しており、最もよく知られているのはレアリーズ・ニーモニック・エンハンサーとレアリーズ・テレパシック・ボンドだろう。前者はドラゴン誌#399“Character Themes: Heroes of Nature and Lore”(未訳)にあるオーダー・アデプトの10レベル汎用パワーとして、後者は秘術の書にあるテレパシック・ボンドの儀式がその由来だ。

シナリオフック

 以下に示すのは、裏切り者レアリーや八者の円をキャンペーンに使いたいマスター向けだ。サプリメント“Mordenkainen’s Magnificent Emporium”(未訳)にもヒントがあると思う。

◆ パーティーの影響力、利用できる資源、エージェントによる広大なネットワークに目を付けた円のメンバーの誰かが、キャラクターに大変革をさせるべくあらゆる冒険へと誘う。英雄たちはいつも善への大義を掲げて送り込まれるが、円の目的である「均衡を保つ」ことを踏まえるに、実際には善である勢力の妨害や、悪の片棒担ぎをさせられるかもしれない。円は明らかな道徳上や属性の対立は避けるものの、グレーゾーンなら巧みに誘導しうる。

◆荒廃砂漠やブライト・ランドを舞台にした英雄級のキャンペーンで、レアリーとロビラー(バイアッロ)に仕える悪役が出てくるかもしれない。

◆モルデンカイネンやビグビーが、キャラクターたちをレアリーの調査や、レアリーの手に落ちたアーティファクトの奪還に送り込む。アーティファクトは墳墓や宝物庫など元の場所に置かれたままかもしれないし、レアリーやロビラー(バイアッロ)のところに送られる途中かもしれない。

◆砂漠を旅している途中、キャラクターたちはロビラー(バイラッロ)の命令で動くノーカーに襲われる。ノーカーの例は、英雄級なら雷鳴山の迷宮、伝説級ならモンスター・マニュアル3を参照のこと。

著者について
ステアリング・ハーシーは建築士兼フリーランスのゲームデザイナーだ。Monster Vault™: Threats to the Nentir Vale(未訳)の著者の一人で、D&D Insiderにも寄稿している。また、ステアリングは遠い遠い、銀河の向こうでスターウォーズ・ロールプレイングゲームやスターウォーズ・ミニチュアゲームの本や製品のデザインに多数携わっている。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201108history

2012/12/3 ヴィスターニ→ヴィスタニ に表記を修正

ヒストリー・チェック:カースとヴェクナ
ケン・ハート

イントロダクション

 ダンジョンズ&ドラゴンズにまつわる豊富な歴史を探る、この新シリーズにようこそ。「ヒストリー・チェック」の各記事で、ゲームの象徴的な英雄、悪役、組織、出来事、D&Dの複雑に絡む歴史を紐解いていこうと思う。本文のほか、随所にコラムを挿入して技能判定に成功した冒険者たちがどのようなことを知っているか書いておく。
 それでは、秘密の神ヴェクナと破壊者カースの確執の起源から始めよう。

招かれざる客

「これはこれは!予想通りの招かれざるお客さんだ。さっきは踊りを楽しんでいただけたようで何よりだね。踊った後で私を探しに来た男はあんたが最初ってわけじゃぁない。だがここに来たのは、飢えててヤりたいからってわけじゃないんだろう?知りたいことがあって私を探した。そうしなきゃ痛い目を見る、いや、もっと酷いことになるからね。目下一番の関心事は、キャラバンを待ち伏せしている鬼の妖術師のことだろう。長はカードを使ってお前さんが本当のことを言っているか確かめている。嘘をついたならヴィスタニにしばらくいてもらうよ。兄弟分のセルゲイが新しいナイフ投げの的が欲しいってさ。」

「さあ、取引の時間だよ。その通り、私は踊り子なんかじゃあない。名はメノドーラ・ザロヴァン。一族は古代史に関する知識の集積、とくに魔法学関連を誇りにしている。私たちは数千もの神話に隠された真実を知っているのさ。たまに取るに足らん馬鹿どもや阿呆たちに知恵をつけてやり、その対価をいただく。ジョルジョ、今はあんたが知りたくてたまらないことを教えてやるよ。そして後々やって欲しいことを言いに行くから、それをやってくれれりゃいい。」

(訳注1:ヴィスタニ外の者を指す)

「今宵は汚い行いと、ド汚い裏切りのお話をしてやるよ。秘密の神が、どのようにして信頼していた戦士と自分自身の馬鹿らしいプライドに裏切られて不具にされたかってね。破壊者カースと、不具の神ヴェクナの物語さ。」

ザロヴァン族

 この「ヒストリー・チェック」の語り手は、ヴィスタニにいるザロヴァン族の一員だ。ザロヴァン族は、シャドウフェルとほかの次元界を目的もなくジプシーのように行き来しているように見えるが、特に不可解な歴史、奇怪な物語、難解な出来事に興味を持ち収集に勤しんでいる。贈り物の対価、地元の伝説に敬意を表して、単なるきまぐれ、黒い陰謀など、さまざまな動機から、ザロヴァン族は自分たちの情報をよそ者に流すかもしれない。
 ヴィスタニに関しては、Player’s Option: Heroes of Shadow™、The Shadowfell: Gloomwrought and Beyond™、Dragon誌380号の「ヴィスタニ」(すべて未訳)に記載されている。

欺きの元祖:ヴェクナとアサーラック

「約二千年もの昔にフラネスと呼ばれた大陸があり、その名をバードに詠われ、クレリックに忌み嫌われる、ヴェクナというリッチがいた。彼はどのようにしてリッチになり、なぜフラネスを我が物にせんと欲したか?そしてお前さんの頭に疑問が浮かぶだろう。『メノドーラさん、じゃあなぜ今はシャドウフェルにいるんですか?ってね。』ヴェクナのカルトでは、ヴェクナはその力を妬まれて他の神に呪いをかけられた、って教えてるね。狂人用の病院に押し込まれた、とある修道士の絶え間ないお喋りによると、ヴェクナは自身の死に臨む際、永遠の責め苦に苛まれる次元にある、灰色の砂上に建つ城に己を封じたそうだ。」

「面白いことに、ほとんどの話において、ヴェクナはこの上なく優秀なウィザードであったが、愛する母親が死んでからというもの、死を超越するということに取りつかれたようだ、という点で一致してるね。ヴェクナは死霊術の実験体を得るべくフラネスの村をいくつも征服した。数百にも上る失敗の後、ヴェクナはとうとう次元から精気を吸い出して生なき体を操るべく与え、リッチとしての不死性を得る儀式を編み出したんだ。ぞっとしないねぇ、母親恋しさのため生贄にされ、魂を汚された連中のことを考えるとさ。」

「多くの者を悩ませる謎がある。ヴェクナはなぜ秘密にこだわるのか?それはヴェクナが行った大規模な侵略のうち、最初期のやつにさかのぼる。ヴェクナは配下の将軍のうち、アサーラック(訳注2)という名の、ハーフデーモンの魔術師にとある街の攻略を命じた。そいつはかつてペイロアのクレリックに滅ぼされそうになっていたのを、ヴェクナが助けてやったのさ。当時リッチだったヴェクナは、恩賞として、自らの本拠地であった腐敗の塔の上層部への立ち入りを許した。」

(訳注2:アサーラックはOpen Grave: Secrets of the Undead(未訳) 200ページに記述があります。)

「そう、アサーラックという名前に憶えがあるかもしれないね。さてジョルジョ、ここで質問だ。狡猾で自分自身も強力なリッチになってやろうという地獄生まれさんが、「恐怖の墓」と呼ばれる、それはそれは危険なところにいて、単なる魔術師として大人しく仕えていると思うかい?アサーラックが危うく殺されかけられたのも、ヴェクナに助けられたのもすべて自身の仕組んだことだった。強力な主に取り入って地位を得て、そいつが持ってるいわくつきの強力な秘密を盗むためにね。」

「それからしばらく、アサーラックの計画はうまく進んでいた。数年後にヴェクナがその裏切りに気づいたとき、アサーラックはヴィスタニからの入れ知恵でばれたのを知らされ、粛清から逃げおおせたのさ。」

「常日頃から恐ろしいヴェクナの怒りだが、このときは桁が違った。死すら超越したほどの魔術師が、最も大事に守ってきた知識をばらされ、あまつさえ盗人には罰も与えられず逃げられた。それからなのさ、ヴェクナが神がかり的な情熱をかけ、自分の持つあらゆる秘密を守ると誓ったのは。ヴェクナの力が増すにつれ、その秘密に対する姿勢が崇拝する人々にとって文字通りの宗教になる。その狂信者どもの中に、無慈悲で残酷な戦士がいた。その名はカース。」

ヒストリー・チェック
 難易度25の<歴史>または<宗教>判定に成功したなら、アサーラックの関与以外のことを知っている。30以上ではアサーラックとの絡みまでわかる。これとは別に、難易度22の<宗教>あるいは<魔法学>判定の成功で、アサーラックは正確にはデミリッチ的な存在であり、信奉者たちがアサーラックの罠まみれの墳墓の上に、魔法と宗教を研究する「荒廃の学舎」を作っていることを知っている。

カース:ヴェクナの血塗れた右手

「お前さんは、これまで何度潰しても死なない蚊と部屋をご一緒したことはないかい?その蚊を6フィート半の大きさにして、鎧で覆われ、マムシの狡猾さと神の力を持っている。裏切り者、カースはそんな感じさ。」

「アサーラックがヴェクナへの裏切りに勤しんでいた頃、カースはヴェクナに仕える、血に酔い己の力を試せる敵に飢えたヒューマンのパラディンだった。前は別の死の神に忠誠を誓っていたが、すぐに単なる死には飽き足らなくなった。死に至る過程が暴力的であればあるほどそれを楽しめる。カースは終わりなき戦いの中で血に酔っていたかった。ヴェクナの野望に加担したのは、己の望みを叶えるためでもあったわけさね。そしてそれは期待以上のものだった。」

「ヴェクナが自らの目標に向けて邁進するなかで、カースの戦いに対する情熱や剣技、その無謀さに好奇心をそそられた。また、フェアな戦いを主張しておきながら、容赦なく敵を切り捨てるその偽善も大いに楽しんだ。カースは必要なら邪魔者を排除することもためらわず、ヴェクナの信者中での序列を上げていき、とうとう「その名を囁かれしもの」のなかでも最上位の副官に登りつめた。カースはヴェクナ生誕の地を征服した際、「血塗れの手」二つ名をヴェクナより授けられたんだが、これは戦いの後、市民の生命の保証についてたっぷり嘆願しておかなかった愚かな支配者への見せしめ、という理由だけで、適当に選んだ家の住人皆を拷問して八つ裂きにしたのが由来さ。」

「勝った後の鮮血の様から、ヴェクナはカースを、血まみれになっている限りは頼れる駒だと確信したようだ。それでもアサーラックの裏切りのことは忘れちゃいない。ただアサーラックと違うのは、カースはヴェクナの持つ秘術の知識について全く興味がなかった。求めているのは流血、鋼、戦いで敵を支配すること。ヴェクナは忠誠心という点でカースのことを信用していたようだね。」

「それから数十年の間、ヴェクナとカースは腐敗の塔でよく相談をしていた。次の侵略の目標や、近頃見つかったアーティファクトなんかが話題だったね。また、ヴェクナはカースに戦術を教えていた。カースは個人として十分に強かったが、リッチの力に挑もうとする強力な敵を退けるため、副官としての働きも必要だからね。」

「信頼のおける武器をできるだけ長く使おうと、ヴェクナは死霊術を用いてカースの寿命を延ばしていた。カースの定命の肉体が、いよいよヴェクナの呪文をもってしても保てないところまでくると、ヴェクナはカースに牙を生やした銀の仮面をあてがい、不死のエネルギーを込めた。銀の仮面と死霊の抱擁を纏い、カースはヴァンパイアという闇の贈り物を己の意志で授かったんだ。」

ヒストリー・チェック
 難易度25の<歴史>または<宗教>に成功したキャラクターは、カースがヴェクナを裏切った強力なヴァンパイアであるということのみを知っている。30でヴェクナとの関係、35でヴァンパイアとなった経緯が分かる。

裏切りの本当の理由

「ずいぶんと訝しげだねぇ?信じられないってかい。きっとお前さんが聞いているのは、カースがヴァンパイアになったのは、かの有名な裏切りの結果として、どんな魂でも凍りつくという灰に覆われた次元にある、ヴェクナのカヴィティウス神殿に閉じ込められた後だっていう説だろうね。それはヴェクナの信徒どもがモーゼレンの書を引用したのさ。連中は、ご主人様が信用した相手に二度までもこっぴどく裏切られたのを認めたくないんだろうね。だけど、最も信頼していた戦士を「下級の」アンデッドにしてやったのはヴェクナ本人であり、カースの血の渇きを満たしてさえいれば、不死の秘密になんか興味を持たないだろうと思っていた、と信じるのがそんなに難しいのかねぇ?」

「ヴェクナの帝国が膨らんでいくにつれ、その名を囁かれしものは、己の奴隷どもと、試したい実験すべてには目が行き届かなくなることがわかった。ヴェクナは力を分かち合う他の誰かが必要だったわけで、その役にカースが選ばれたのは必然だったろうね。だがヴェクナには計画の実現と裏切りのジレンマに陥った。アサーラックの背信からすでに百年がたっていたが、屈辱の記憶は消えていなかったようだね。秘密を司る主人は、カースが持ちうるどんな野望も見逃すまいと考えた。そこでカースへもう一つ贈り物をくれてやることにしたのさ。堕ちた星の凍りつくような核で鍛え上げたショート・ソードだ。最後の魔法を籠める際、自身の意識の欠片から作った影でこの闇の剣を念入りに覆った。それ以来、カースがこの剣を身に着けている限り、ヴェクナはその行動、ときには考えていることさえ把握できるようになったのさ。」

「カースはヴェクナからの賜り物に驚き、飛び上がらんばかりに喜んだ。身は吸血鬼と化していても、己に課した武勇の掟では、主人の手によって剣を贈られるのは名誉の中の名誉だそうだ。ドッペルゲンガーの皮で作った鞘から引き抜いた瞬間にこの剣の力を感じ取ったカースは、自分が何を仕掛けられたのかもわからないまま「ソード・オヴ・カース」とお粗末な命名をしたものさ。」

「ヴェクナの自信は頂点に達した。カースの剣・呪文・爪によって支配地はどんどん広がっていく。自分の最強の下僕は従順、少なくとも己の支配下にある。もう自分が神への道を進むのに何の妨害もないってね。」

「ククッ、そんな過信は脆くも崩れ去るのが相場さ。現にヴェクナはそうなった。カースを見張る試みは巧妙に過ぎた。ソード・オヴ・カースにはヴェクナの意識だけでなく、強欲、秘密への妄執、知識への渇望まで籠められていたんだ。剣の持つ知性はたちどころにヴェクナ自身から逃れ、ヴェクナにはカースの忠義に疑いなしと報告しつつ、カースには裏切りをそそのかしていたんだよ。皮肉な話だと思わないかい?」

「剣が創造主を裏切ったのは、秘密の主は世界に一人だけでいい、そうなるためにはヴェクナを倒すしかないと考えたからさ。おそらく剣にはそれだけの力などなかったろう。だが、疑いもしない使い手を染めるには十分すぎるくらいだった。年が経つにつれ、その力は徐々にカースの意識に影響するようになり、ヴェクナは力を独り占めしたがっていると信じ込ませた。そして、ヴェクナが剣を通じて自分の意識を読み取らせていることをそれとなく気づかせたのさ。」

「その事実はカースの確固たる忠誠心を粉砕した。カースはただちに報復をくれてやろうと思ったが、剣が絶好の時期が訪れるまで待つよう止めた。カースにはもちろん剣の本当の目的などわからなかったし、忠誠を捧げているのは自分に対してだと信じ込んでいた。剣がカースに力を貸すのは、ヴェクナを滅ぼそうとする限りなのにね。」

ヒストリー・チェック
 難易度30の<歴史>または<宗教>判定に成功したキャラクターは、基本的な事実関係を把握している。35以上であれば、突き詰めるとソード・オヴ・カースこそがカースの裏切りの元凶であったことを知っている。

不具の神と裏切り者

「アーティファクトや儀式、その恐るべき才能、そして数千もの犠牲者から得た精気によって、ついにヴェクナは神位を得る儀式を行えるだけの力を持つに至った。ソード・オヴ・カースはそれを察知し、持ち主にまさにその時と知らせた。儀式只中のヴェクナを倒し、帝国をその手におさめ自らこそが神位を得るべし、とね。」

「ヴェクナが腐敗の塔の最上階で星々に向かって呪文を詠唱していたとき、カースが塔へと突入した。護衛は即座にカースの謀反を見てとったものの、その怒りの咆哮が、剣の囁きがもたらす狂気じみたものからであるのはわからなかった。連中は刈取りの小麦さながらに切り伏せられたのさ。護衛が倒され、はじめてヴェクナはカースの存在に気が付いた。また、はじめてヴェクナは剣が自分を欺いていたこと、忠義者の忠義がねじ曲がり、もはや手遅れなのを悟った。儀式を中断しようとしたヴェクナだったが、いったん解き放った神のごとき力は止められない。まさにそのとき、カースは腐敗の塔の最上部に達した。牙と剣から血を滴らせてね。ヴェクナがそうしたときのために頼りにして、また育てたのはまさにカースの力だったのにね。」

「そこからは文字通り神話の戦いだったよ!ヴェクナの信者どもは、主が万全の状態であったなら、ただのヴァンパイアなど即座に倒していたろうと言う。まあそうかもしれないね。だが、儀式中の奇襲であったこと、剣が想像主の攻撃を予測して教えたこと、カースの並外れた力と不屈の意志もあって、これがまた勝負になったのさ。」

「カースは魔法陣の真ん中にヴェクナを追いつめた。両者に混沌で溢れんばかりの、轟く雷鳴のエネルギーが浴びせられる。ヴェクナはカースに向けて稲妻を放とうとしたが、呪文を詠唱しきる前にカースが突進し、ヴェクナの左手を切り落とした。」

「カースは、ヴェクナの呪文をくらって苦しみながらも攻撃の手を緩めなかった。「これでもう覗き見などできまい!」と叫び、剣をヴェクナの左目に突き刺して抉り出す。カースの剣は勝利を確信し、ヴェクナに向かって光輝のエネルギーの波動を放ったんだ。」

「剣のやったことは、油田に火を放つようなものだった。爆発はもうすさまじく、腐敗の塔は吹き飛ばされ、遠く何マイルも離れていても耳をつんざかんばかりだった。魔法の嵐の中心にいたヴェクナとカースは、アビスから噴き出したエネルギーに襲われ、他の次元界へと逃れざるを得なかった。瓦礫と化した塔から見つかったものはと言えば、斬られたヴェクナの手と抉られた眼にカースの剣。あとは爆発に巻き込まれた不運な連中の亡骸ばかりさ。」

憎悪は死せず

「戦いの詳細をどうやって知ったかって?確かに何があってどう言ったかなんて、ヴェクナとカース当人にしか知らないはずさ。この私が、さっきお前さんがお楽しみだったダンスで身をくねらせたくらい真実を曲げたとでも思っているのかい?それともヴィスタニの情報網やここまでかと恐れ入ってくれたかな?」

「大事なのはその後どうなったかだ。戦いでヴェクナの肉体は滅されたが、その意志は生きていた。何世紀もの間次元界を漂いながら、新しく作られた自らのカルトの崇拝者から少しずつエネルギーをもらい続けた。それはそれは長い時間だった。だがとうとうヴェクナは、アストラル海の中でも最も堕ちたデミゴッドとして認められるようになったのさ。」

「謀反を企てた副官の方は、そこまで大変なことにはならなかった。得る物もなかったけどね。カースはヴェクナに比べれば、爆発から傷もなく生き延びた。持っていた剣が創造主の知識を利用し、カヴィティウス神殿を抜け、かねてからヴェクナが避難用に造っていたアストラル海の城へと案内したためさ。だがほどなく剣はカースを見捨てた。しくじったヴァンパイアに嫌気がさしたのかもしれないし、もうこいつといても面白いことはないと思ったのかもしれない。伝説によれば、闇の剣は世界のあちこちに顔を出しては、愚かで力に飢えた者に幻の栄光を見せて誘っているらしい。そしてカース自身なんだが・・・神位を得るには至らなかったが、それでもずいぶんと力を蓄えた。グルームロート(訳注2)の交易商人曰く、カースは今シャドウフェルのどこかにあるヴァンパイアの王国を支配しているそうだ。秘密の情報を取引している私でも、噂の真偽を調べるのは御免こうむるね。」

(訳注3:次元界の書57ページ参照)

「今ヴェクナはシャドウフェルにいるっていう話もある。ギザギザ峠の死の谷の近く、カヴィティウス神殿が注意深く模された影の準次元界において、不具の神に挑んだ強力な冒険者のことを私の親戚が話してくれた。話によると、ヴェクナはより強力な存在によって、さながらぜんまい仕掛けのオルゴールのごとく、娯楽のために狭い牢獄に幽閉されていた。あるいはカースもまた同じ状態になったのかもしれない。面白い話だね。この話に疑いの余地はないよ。他の誰でもないヴィスタニの人間が、嘘を話す必要もない冒険者の生き残りから直接聞いたことだからね。何はともあれ、ヴェクナはその牢獄を首尾よく抜け出し、カースもまたその機会を窺っている。ことによると、カースの牢獄っていうのは、さっき話したシャドウフェルの王国のことかもしれないね?」

「カースがいたころはカヴィティウス神殿に籠ることを好んでいたヴェクナだったが、いまや広く遠くまで赴くようになった。数多の世界を旅するのは、秘密を蓄えていくためだと言われている。ひょっとしたら最初のヴィスタニはヴェクナなのかもね?おいおい、そんなに怒りなさんな。冗談だよ、冗談。」

「ヴェクナのカルトは今なお失われた目と斬られた手を探し求めている。お前さんの歴史に対する興味を見るに、どこまで知ってるんだかねぇ。カースにも信者やエージェントがいる。二つの集団が出会うことは稀だけど、そうなったらもう凄惨な流血沙汰だろうね。」

「最初に見えた一瞬の戦い以来、カースとヴェクナが戦ったことがあるかどうかは知らないよ。互いの憎悪、両者の力の強さを考えるに、そんな激突を間近で見て、生き延びて様子を語れる人間なんていないだろうね。」

「ちょいと失礼するよ。なんだい、ルシア?」

「吉報だよ。お前さんは無事に帰れる。長があんたの動機は評価されるべきで、知識に対する情熱は誠実だそうだ。彼女が言うにはあんたはメンバーの一人なんだろ?あの・・・おっと、これは口に出されちゃ困るんだったね?じゃあ、これは秘密だ!ザロヴァンが秘密好きなのを話したろう?まあまあ、いいワインがあるんだよ・・・」

ヒストリー・チェック
難易度25の<歴史>または<宗教>判定に成功したなら、キャラクターはカースとヴェクナの争い、その末の惨事、さらに両者がなお生きていることを知っている。難易度30では、キャラクターは穢れたアーティファクトとしてアイ・アンド・ハンド・オブ・ヴェクナ、そしてソード・オヴ・カースの存在とともに、シルヴァー・マスク・オブ・カースについてもわかっている。難易度35までいけば、メノドーラが語った、カースとヴェクナの最近の動向について把握している。

シナリオフック

 以下のシナリオフックは、カースとヴェクナをキャンペーンに絡ませたいマスター向けのものだ。このほかにカースやヴェクナ、そして両者にまつわるアーティファクトについて参考になりそうなものとして、Open Grave: Secrets of the Undead™(未訳)とドラゴン誌395号「チャネル・ディヴィニティ:ヴェクナ」(訳注4)がある。

(訳注4 http://dendrobium.diarynote.jp/201102071635144939/ 参照)

◆カースに仕える練達の幻術師がシルヴァー・マスク・オブ・カース(Silver Mask of Kas  Open Grave: Secrets of the Undead(未訳)出典)を発見した。この世界におけるカースの影響力を増すため、幻術で真の性質を隠しつつ、垂涎のマジック・アイテムに見せかける。そしてパーティーの誰か(伝説級)あるいはその知り合いで強力な人物(英雄級)の手に入るよう仕組んだ・・・。

◆彼方からの領域より厄災が迫る。とても手に負えそうにないパーティーの前に意外な味方が現れた。なんとヴェクナの信徒たちが、彼方からの領域がもたらす世界の荒廃を防ごうとしていたのだ。(伝説級)

◆噂ではソード・オヴ・カースがレイザー・ハイドラ(モンスター・マニュアル2)の巣、あるいは強力なレイス(Open Grave: Secrets of the UndeadのKravenghast)または同種のクリーチャーの所にあるらしい。冒険者たちはとある教団の一党に手にされる前に見つけなければ(伝説級)、あるいは件のクリーチャーを避けつつ剣を永遠に葬り去らねばならない(英雄級)。

◆ある地方の支配者が、普段ではありえないようなほど精彩を欠いている。一方で、高潔として知られ、近頃振る舞いが急に野心的でやり方を選ばなくなった貴族が台頭しつつある。原因:貴族はハンド・オヴ・ヴェクナを発見し、その闇の力に屈した。(伝説級、アスペクト・オヴ・ヴェクナを使うなら神話級)、もしくは支配者はヴェクナのカルトによって魔法的に支配されており、そのカルトの狙いは貴族の子女である(英雄級)。

著者について

 ケン・ハートはGoodman Games社のDungeon Crawl ClassicsとEtherscope(共に未訳)の開発に携わった。D&Dでの最近の記事はドラゴン誌#397の“Faith and Heresy”と同#398より“Strange Gods”がある。学校に上がる前の娘にゼラチナス・キューブについて教えているときを除いて、彼は自身のサイト(ken-of-ghastria.livejournal.com.)でゲーム、ポップカルチャー、サバイバルについてブログを書いている。

お久しぶりです。
DACの総括とか反省とか多々ありますが、目に入ったこれを取り急ぎ。
ソースはInsiderのアンケートより、当該部分を適当にざっくりと。
(http://www.surveygizmo.com/s3/673929/Miniatures-Game-Survey-2011)

ウィザーズ社は各々のクリーチャーを操って自分の軍団を組み、多人数で
スカーミッシュできる新しいボードゲームを開発しています。戦場はマス目
つきの両面タイルを組み合わせ、様々なものを構築します。従来のものと違う
点は、プレイヤーがミニチュアを操作するにはカードを使い、ダイスは全く
使用しません。ゲームが進行するにつれ、プレイヤーはより強力で多彩な
クリーチャーを戦場に投入することができるようになり、いずれか1つの
ウォーバンドの士気が崩壊することでゲームが終了します。

ファクション・パック(注:スターターと思われる)は一つ45ドルで販売され、
ゲームに必要なものすべてが入っています。パック一つ当たり塗装済みの12の
ミニチュアが入っており、そのうち1~3体が大型です。そしてクリーチャー・
カードが12枚、クリーチャーを操作するためのカードが36枚、アドベンチャー・
システムに使うカード(注:詳細不明)が12枚、また戦場用にマス目の入った
マップが4枚入っています。

以上です。
いつになるか、本当に出るかどうかもわかりませんが、私たちにできるのは
待つことだけ。値段も気になるものの、それ以上に気になるのは製品の出来、
そしてセッションで使用して、従来のものと混ぜてもサイズ的に問題がないか。

まあ、期待しましょう。

追記

アンケートの中に、好きなミニチュアとその理由は?という設問があったので、
迷わずOgre Exucutionerと入力しておきました。セッションで使う際、
田舎のおばちゃんからお付きのコックまで使いまわせる汎用性が魅力。
次点はTrebuchet。ゴブリンを弾にして射出いたします。
プレイヤーのスティーブンさんがキャラクターの設定を送ってくれました。
和訳は以下の通りになります。

カイタンシウス=シルバーリーフ

 数十年前、エルフのキャラバンが狂暴な人間の略奪者に襲われた。裕福であったシルバーリーフ家が所有するこの隊商が守っているのは、交易品の香辛料だけでなく、家の末娘であるサラファイナまでも含まれる。彼女は、フォールクレストの街にいる友人の20回目の誕生日を祝う道中であった。

 略奪者どもは護衛と御者すべてを殺し、金目のものを奪いつくし、最悪なことにサラファイナを暴行して打ち捨てた。幸運にも、親切なハーフリングたちが彼女を見つけ、家族の元に戻してくれた。彼女の父は烈火のごとく怒り、ウォーロック、ウォーロード、スレイヤーからなる1ダースほどのティーフリングを雇い、鬼畜の所業を働いた人間どもに復讐を果たした。しかし、取り返しのつかない傷があった。ほどなくサラファイナに子供ができたことがわかったのだ。

 恥と外聞から、家族は、外界とほとんど接触をしない、ハーケン森深くにいる遠くの親類と一緒に住まわせるため、彼女を追い払った。そこでサラファイナは息子、カイタンシウスを産む。悲しいことに、サラファイナは出産がもとで亡くなった。そしてシルバーリーフ家の肉親たちはフォールクレストに移り住み、ハーフエルフに関わり合いを持とうとはしなかった。彼の世話はハーケン森にいる親戚に押し付けられたのだ。幸いにも、彼らは優しく親切であり、愛情と献身でカイタンシウスを育てた。

 彼らはコアロン(美と芸術の無属性の神)を崇拝していた。そして、音楽や詩、語りに優れた彼らは、カイタンシウスがいつかバードとなり、世界の中で自分の居場所を作ってほしいという望みを持って、自分たちが持てるすべてを教えた。また、彼らはヒューマンという生き物はすべて邪悪で狂暴、野蛮であると彼に教えこんだ。恐れ、できる限り避けるようにと。

 二つの秘密がカイタンシウスの幸せな時間に影を落とした。

 成長するにつれ、カイタンシウスは自分が他のエルフの一族とどのように異なるか理解しだすようになる。彼は自分がエルフの遊び友達より丈夫であるという以外に、自分の精神や感情が他人を動かすことができることがわかった。エルフの親族の誰もそのようなサイオニックの才能を持っていないので、彼はそれがヒューマンである父から受け継がれたものであろうことも。カイタンシウスが家族に隠した一つ目の秘密である。

 ハーケン森南側の境界にペイロア(善属性の太陽と夏の神)を奉ずる小さなヒューマンの修道院があった。そこで、夜明け前から日没後まで修練を重ね、心身を磨いている修行者たちがいた。カイタンシウスは子供時代にその修道院を発見した。彼はたまに木の向こうに隠れつつ高い枝に登り、輝く太陽に照らされたヒューマンたちが訓練を受けている様子を見ていた。特に彼の心を惹いたのは、家族が常日頃話しているヒューマンの粗暴さと違う、規律を守るその振る舞いであった。年を重ねるにつれ、カイタンシウスは足しげくこの修道院を見に行くようになる。これが二つ目の秘密であった。

 カイタンシウスの人生は、枝が折れた日によって転機を迎える。鈍い音とともに地面に落ちたカイタンシウスは足を痛めてしまった。痛みをこらえながらどうすべきか考えているうちに、彼は若い僧侶に見つかった。ペイロルスという名前のヒューマンは、カイタンシウスに肩を貸して修道院へと運んだ。そこで他の者が傷に包帯を当てて治療した。カイタンシウスの傷が治るまでの間、ペイロルスは片時もそばを離れなかった。この間に二人は様々な話をした。ペイロルスもまた孤児であった。夏至の前日、修道院のドアの前に赤ん坊が捨てられていたと。この子が誰であるか、どこから来たのかという手がかりは何もなかった。そして、右足に太陽の形をしたあざがあることを見つける。修道院の者達は、彼らの崇める神からの吉兆であると考え、その子にペイロアにちなんだ名を授けた。

 カイタンシウスがこれまでヒューマンと出会ったことがないように、ペイロルスもまた他と隔絶した修道院で育ち、ハーフエルフというものを見たことがなかった。二人は「カイ」、「ペリー」と呼び合い、二人とも強いサイオニクスのパワーを備えていることを発見して喜びあった。彼ら自身の魅力は互いを惹きつけ、とても深い、疑うことのない友誼になった。そして、その友誼はさらに深いものとなった。

 カイタンシウスはペリーとともにしばらく離れていたハーケンの一族の元へと赴いた。ペリーについては触れず、バードとして世をさすらうことに決めたことを伝えるために。突然の申し出に一族は驚いたが、それでもその決意を認め、カイタンシウスにハーケン森の中でも最高の木で作ったリュートを餞別に贈った。

 カイとペリーは広く、遠くに赴いて、多くの時を一緒に過ごした。冒険の際には他の仲間を加えることもあったし、二人だけで旅に出たこともあった。バードとしての腕前も上がったが、カイは自分のサイキック・パワーを高めることの方に興味を持っていた。そして時が経ち、味方を助け、敵を邪魔する術を学んでいった。生来の魅力と心地よい人柄のおかげで、彼らはどこに行っても人気者であった。カイはペリーに、生真面目な若者が人生を楽しむ方法を教えた。ペリーはカイに、親切と慈悲、他人を理解するという信仰心を教えた。コアロンに学ぶべきところはあったが、無属性の神を信じることにもはや満たされなくなったカイは、ペイロアの教えを受け入れることにした。

 3年ほど前、二人が30歳くらいになったとき、カイとペリーはペリーの生い立ちの秘密を探るため、二人だけで旅に出ることに決めた。旅は遠い山にある寺院へと続き、この次元と遠く離れたところへの亀裂が見つかった。二人が生い立ちについて決定的な手がかりを見つけたまさにそのとき、デマゴーグの群れが襲いかかってきた。その戦いで、カイは意識を失った。彼が意識を取り戻したとき、亀裂とデマゴーグは失せており、ペリーはどこにも見当たらなかった。我を忘れて取り乱し、何か月も最愛の人を死に物狂いで探したが、その甲斐はなかった。

 ペリーの損失が彼を苦しめ、カイタンシウスはフォールクレストにあるペイロアの大きな寺院で心の慰めを探した。1週間にわたる断食の後、彼は深い眠りに陥った。眠っている間、彼はこれまでにない夢を見た。華やかな金色の服を纏った、背の高い、美形の男がそこにいた。その男は低く、優しくカイタンシウスに語りかけた。安心するように。ペイロルスがいなくなるのは運命だったのだ。だが、それも永遠には続かない。いつの日か、時が来て、二人は必ず一緒になる。

 カイタンシウスは希望も新たに目を覚ました。再び冒険の道を歩み始め、周りを勇気づけるさまは以前の通りである。彼は仲間たちとの友情を嬉しく思い、また彼らとの旅を楽しむ。時に彼は憂いを見せることもある。だが、彼の夢の記憶は心の中で燃える太陽のように明るく輝き続けているのだ。

・二つ首のレッドドラゴン・フォライ

ドラゴンは誓った。
必ずかの島に住む虫どもを焼き殺すと。
そして、自ら浄火した地を、我が主ティアマトに捧げると。
かくして、ごく簡単なメッセージが虫に届けられた。

「従え、さもなくば滅ぼす。」

・バハムートの僧侶、長老アランサム

アランサムは悩んでいた。敵と味方の両方に。
かくも恐ろしきティアマトの軍勢と何とか戦えているのは、
白金の鍵爪団の勇猛あってのものだ。だが、彼らは殺しすぎる。
敵のみならず、味方を。「穢れた魂を開放する」という名目によって
どれだけの者が処断されたことだろう。アランサムは悩んでいた。
この戦いはただ死を増やすのみではないだろうか。

・ドワーフの傭兵隊長、モーグリエン

モーグリエンは激怒した。
自らを虫扱いするドラゴンに、そのドラゴンに従うしかない己に、
いっそのこと鍵爪団に入って戦ってはどうかという笑えない冗談に。
モーグリエンは激怒した。
ひとたび咆えれば、野郎共が勇み立つ。
ひとたび斧を振るえば、血の渇きが目を覚ます。
ひとたび血を見れば、あとは永遠の戦い。
モーグリエンは激怒した。

「白金の鍵爪団」団長、ジョセス=クラウンブレイド

ジョセスは決意した。
恐怖に屈してはならぬ。たとえどれほど卑劣な手段で迫ろうとも。
悪を許してはならぬ。たとえ昨日までの同胞であっても。
神聖なる使命をしくじってはならぬ。たとえどのような犠牲を払っても。

この戦いで失われた魂は数え知れぬ。敵のそれは穢れた滅すべき悪であり、
味方のそれは必要な尊い犠牲であった。いずれも無意味に失われてはいない。

聞けば、アランサムが新たなバハムートの勇者を招いたそうだ。
結構なことだ。彼らを試さねばならぬ。
我等が使命を生き残れるだけの力と、穢れることのない強靭な魂
を兼ね備えたものであるならば、よし。ないのであれば・・・
注:セッションの都合上、お見せできる部分のみになります。
このまま使用するわけではありませんが、データセクションは
一部を除きDAC終了後になるかと思います。
くわえて、予告なく加除修正をしますので、予めご了承ください。
(8/24 まだ修正はあるかもしれませんが、ひとまず終了します)


神格と半神:バハムート
ロバート・J・シュワルブ


 ドラゴンの祖父は、すべての悪に対し抜かりなく備え、出会う悪すべてに対しこれを滅ぼすよう我らに命じている。だが、かの神の色を纏う者たちの多くは、いずれ来るであろう闇を待つだけに甘んじている。悪がその恐るべき姿を晒すときに備え、己の準備は抜かりないとでも思っているのだ。兄弟姉妹たちよ、悪は決して自らを明かすことはない。邪悪を心に秘めた者たちは光が我慢できないため、輝ける標を避けるとでもいうのだろうか?否、悪の僕は自らを生み出す闇を好むだけなのだ。奴らは時節を窺う。奴らは不浄の種を思いもよらぬ無辜の民に撒き散らし、拒めぬ誘惑をする。我々は自らの地を護るために戦うあいだ、こうした癌が広がるのをみすみす許しているのだ。我々は明らかな脅威と戦う。だが友よ、これこそが悪の思う壺なのだ。悪は我々に持てる力全てを囮に浪費させるよう仕向け、我々の浅はかさに高笑いする。方々の小火(ぼや)に気を取られている我々が、憎むべき大火を消し止めるなどどうしてできようか?
 白金の竜は弱きを保護し、無辜なる者を魔の手から防ぐことを命じてはいるが、次々にそうした者たちが誘惑に屈する。我々にもはや猶予はない。次の日まで待つことすら許されない。闇の貴婦人や他の邪悪な軍勢が、目の届かぬところで悲惨な運命の筋書きを練っている。我々は己が心の深きところを覗き、その純潔を見極めなければならない。我々は誘惑と疑念を取り去るべく、己が肉体に鞭打たねばならない。我々は友を試し、家族を試して、そのなかに影なきことを確かめねばならない。もしも影あったならば、我々は肉体を浄化せねばならない。魂を開放するのだ。

聖なる任務をしくじれば、我らは負ける。
我らが恐怖に屈すれば、悪が勝つ。
慈悲を与えてはならぬ。悪を許せば、我らは戦っている相手まさにそのものになろう。
兄弟姉妹よ、我らがいるのは戦場なのだ。

騎士団「白金の鍵爪」バハムートの聖堂騎士(テンプラー) ジョセス・クラウンブレイド

 プラティナム・ドラゴンは世界に光り輝く。バハムートは高徳と正義を体現する存在だ。彼は定命の存在に対して、気高き志を抱くよう、取り巻く世界をより良くするよう強く求める。その聖典において、共同体の調和を荒らすような、恥ずべき破壊的な感情を排するためのやり方を学ぶことができる。エラティスであれば、定命の存在に手つかずの場所に進み、さらなる世界と権利を築くよう啓発するところだが、バハムートはその進歩がかえって定命の存在の命取りとならないよう、知恵を授けている。プラティナム・ドラゴンにとって、美徳と秩序とは同義である。いうなれば同じ理想を別の角度から見たものだ。善なき秩序は専制であり、秩序なき善は弱き者、護るべき者、貧しき者になすべき責任を放棄した、当てにならぬものである。
 この世界で善が生き残る方法は、秩序ある社会をおいて他にない。他と比較することで成り立つ道徳もまた存在しない。善とは個々の外側にあり、時にあいまいではあるものの、順守するも拒絶するもすべて己の選択によってである。
 秩序ある社会とは、定命の存在に道徳を守らせて、寛容、節度、調和を勧める一方、法律が共通善を脅かしたり蝕んだりするような、許されない行動を定義する。秩序ある社会において、道徳がとるべき道は明らかなものだ。
 そして正義は世界における善を示すのに不可欠だ。たとえば村ぐるみで盗賊をしている共同体のように、共通の善に反する行為をして罰せられないような社会において、法など無意味である。

世界におけるバハムート

バハムートは、神々の中でも善を体現する存在としてその先頭に立っている。正義・平等・高徳に基づいて作られた共同体は、プラティナム・ドラゴンに祈りを捧げる。その教えすべてに賛同するわけではないにしても、そうした者達は、バハムートを自らの問題を解決してくれる存在と考えている。
 絶対的な善などというものは、多くの定命の存在にとって厄介事の種になる。善と悪は文化や社会の欲するところによって形作られる主観的な概念だ。大部分の者にとって、倫理の規範をよそから取り入れて云々するというより、道徳的規範となる指針が己の中にある。バハムートの信徒においてさえ、共同体がどこまで道徳の理想を目指すべきかは意見が分かれるし、共同体の法の中における善の追求について論争を重ねている。
 神に関する定期的な講話と包括的な宗教施設がなければ、大半の信仰は脆くも崩れ去る。特定の戒律に対する個人の解釈など、大体のところは似たり寄ったりなためだ。だが最も危険なセクトは特定の戒律を取り上げてことさら重視し、神の他の教えすべてに影響するように仕向ける。そのためそうした行為は神の意図を曲げることになりかねず、世界を大いに害するのだ。
 そのバハムートの信者の中でも、最過激派が彼の教えであると信じて実行に移す所業を以下に記す。
 名誉と正義:領主がその領地において、法による裁きを公平に下せないようなら、各地をあまねく巡察するバハムートの聖職者が代わって正義を示す。いかに些細なことであろうと、すべての罪には等しく死、あるのみ。
 弱きを護る:とあるバハムートのセクトが、男爵による搾取に喘いでいる地に旅したことがあった。貧しき民、そして富んで身の安全も保証された男爵とを見比べたそのセクトは、男爵の城をはじめその財産何もかもを没収した。それに飽きたらず、そのセクトは領地を乗っ取り、プライバシーを暴き自由を制限することで、より良い生活の保証、少なくとも誰もが平等な生活を実現している。
 ただ秩序を護るべし:貴族が女王に反旗を翻すと、バハムートのテンプラーは女王のルールを宗教的な戒律さながらに受け止め、女王の側についた。件の女王が近隣の国を侵略するべく密かに軍隊を送り込んでいたとしても、テンプラー達は関知しない。
 虐げられた者達を解放すべし:あるドルイドの王によって統治される共同体が、近隣の王国によって開かれる集まりに参加を拒否した。バハムートの聖職者は、共同体を無法で道徳的に混乱しており、指導者によって騙されていると断じた。「抑圧されている」人々を解放せんと、ドルイドの王をその座から引きずり降ろすべく、聖職者は軍隊を引き連れて乗り込み、自身と同類の者を後釜に据えた。

信仰の距離

 バハムートとその教義に対して分別のある見方ができる者なら、なぜこの神が信者の間違いを正そうとしないのか疑問に思うことだろう。過激派のやっていることは、教えの正反対であるベインのそれですらある。正義と名誉、気高さを体現する神にありながら、信者らしき者達による、このような振る舞いをなぜ黙ってみたままなのだろうか?識者たちはこの問題について長いこと議論を重ねたが、いまだにこれといった結論は出ていない。
 ある者は、合理的な考え方が神性を理解するのを誤らせるのではと述べている。ひょっとしたら神は狂信を勧めているのかもしれない。ことによると、世界で己の目的を達するために、神は盲目的な信者に頼らざるを得ないということもありうる。あるいは自分たちが仕損じたときにどんな恐ろしい目に合うかは急進派が一番よくわかっており、そのために一層励むのかもしれない。そうした連中が追い求めた理想が誤ったものであるとしても、彼らの善に対する働きがより崇高な目的につながることも考えられる。
 寒気がくるような考えだが、ことによると当たっているかもしれない。しかし学者はあくまで推測の域を出ないということで、その説についてそれ以上考えることを止めている。その代わり、「暁の戦」以来、原始の精霊は神々に定命の存在に直接関わるのを禁じたことへの反動ではないかと主張している。計り知れないほどの荒廃を受け、精霊は自然界が再び神とプライモーディアルの戦場にならぬよう、神々に固く禁じたのだ。定命の存在の側が神に近づこうとするのは自由なため、その戒律をどう解釈するかもまた個人の自由である。神はとても離れているためその逸脱を咎められないし、そうすることも禁じられている。
 もちろん、最も簡単かつ愚かしい答えは「定命の存在の数はあまりに多すぎるため、神はそのような些細なことに構っていられない」という決まり文句だ。遥かな次元で起こっている巨大な問題に比べれば、定命の世界で起こっていることはかわいい茶番に過ぎず、方向を誤った集団が何をしようが、自らの次元界での大事に比べて何ほどかあろうということになる。

白金の鍵爪団
「咎人に苦しまされてはならん!」
 歴史が示す通り、悪を待っていたところで何も勝ったことにはならない。悪は気が付かぬ間にはびこって隅々まで広がり、定命の心に悪しき種を植え付けてあるべき秩序から踏み外させる。戦いの相手が悪の僕である限り、勝利などはない。闇を打ち払うため、この世界から追い払うために、真の戦士というものはすべての裏切りを疑い、すべての心の純潔を確かめ、腐敗が見つかれば滅しなくてはならない。
 バハムートにその身を捧げながら、その狂信によって神の意図するところから外れているかもしれない集団の行いを以下に記す。

白金の鍵爪団に関する知識
<歴史>
 よく知られている話: 白金の鍵爪団はバハムートの騎士団である。闇に身を捧げる邪悪な信者どもを一掃するべく、どんな辺境にも団を派遣する。彼らの名において多くの善と異端審問がなされている。
 <歴史>難易度15: 鍵爪団の悪に対する勇猛は評価すべきではあるが、彼らはその視野の狭さにより、自らの聖戦の結果を予期せぬものにしかねない。鍵爪団の行くところ、暮らしは引き裂かれ、共同体は滅ぼされる。何をしようが結局のところ自らの行動を正当化しだすため、鍵爪団の辞書に謝罪という言葉はない。
 <歴史>難易度20: 残忍な鍵爪団の行くところ、後に残るは灰と骨ばかりだ。とある者が「四本樫」について、どのようにすればよいか鍵爪団に伺いを立てた。かつて栄えた村にある「四本樫」は魔女崇拝や悪魔信仰との結びつきを噂されていたためだ。昔ながらの原始の精霊を祭った祠とも違っており、そこにお供えをしていた人々は全くの無関係であった。鍵爪団は疑念を抱いて村を抜き打ち検査した。40人ほどを取り調べたが何も出てはこなかったため、鍵爪団は村を丸ごと焼き討ちにした。なぜそんなことをするのかと問われたが、「命あるものはみないつか死ぬが、悪が息絶えた試しはない」という答えがあったのみ。

<宗教>
 よく知られている話:鍵爪団は調和と秩序ある社会を作り上げるため、文明の地から不正を撲滅すべく励んでいる。
 <宗教>難易度15:あらゆる意味で悪と戦え、というバハムートの命に忠実であろうとするのはよいが、鍵爪団は自らの地で腐敗を一掃することに専念していればバハムートが求めることはすべて満たしていると思い込む節がある。賢い敵なら、鍵爪団がどこまで目の曇った連中なのかがわかるため、彼らのいる国や町の中だけでなく、団の中にも間諜を送り込む。もっとも、鍵爪団は自らが保護しているものと等しく自らの組織の内部も疑うため、鍵爪団の中でそれなりの地位を得ている顔ぶれは変わらない。
 <宗教>難易度20:鍵爪団はその残忍なことで悪名高い。共同体を調査するとき、連中は怪しいものを片っ端から捕まえ、取り調べでは自白を引き出すために拷問を使う。そのようにして得られた自白など良くて眉唾ものであるため、鍵爪団はよく偽情報に踊らされる。

組織
 白金の鍵爪団はバハムートを信奉する急進派であり、プラティナム・ドラゴンの教えを自らの計画のため歪めている。自分たち以外の権威というものを認めず、その権威に挑むような存在があれば、周到な調査をして陥れる。鍵爪団に「浄化された」地は裂かれ、焼かれ、その宗教的権威によって屈服させられる。
リーダー:ジョセス・クラウンブレイドが白金の鍵爪団を立ち上げ、今もなお急進派を率いている。彼を疑う人は、その説教を聞けば自らの不安が一蹴されるという。彼は情熱的なバハムートの信者で、俗世の快楽と贅沢を絶った禁欲的な生き方をしている。
本拠地:鍵爪団はネラス帝国の遺跡から得た財産を蓄えている。聖戦を唱える者たちは、古い寺院や砦、堅く守られた集落さえも、破壊した者の特権とばかりに欲望のまま振る舞う。生殺与奪はクラウンブレイドが掌握している。最近では、ジョセスは信奉者たちに白の封印の頃からある、古くからある孤児院を焼き払うよう命じた。
序列:鍵爪団は命令の裁可をジョセス・クラウンブレイドに仰ぐ。7人の僧侶が戦略ならびに神的なことにも助言している。クラウンブレイドは彼らの立てた誓いと精神の純粋さによって選んだのだが、第三者から見れば何を考えているのか理解しかねるところだ。
 鍵爪団の軍事的な階級はこれまでの功績と経験に基づいている。役職持ちは隊長であり、それぞれの隊を率いて兵士や審問官に命を下す。スパイや情報屋は、有用ではあるものの、鍵爪団に心から仕えているとは言い難いために高い地位を得ることはない。
団員徴募:鍵爪団の新規団員はほとんど一般人から採られる。元いた共同体とのつながりを絶たせるため脅しを用い、より大きな組織に縛りつける。そうした「新規入団者」は正式に入団が許されるそのときまで、団と関係のある寺院で宗教的教化と訓練の日々を味わう。

主要人物
白金の鍵爪団は以下の2人で成り立っている。

ジョセス・クラウンブレイド
「悪は痛みを嫌うものだ」

白金の鍵爪団の精神的、かつ軍事的なリーダーであるジョセス・クラウンブレイドは、己が組織を率い、世界に自らの目的を体現する。白の皮鎧を纏い、肩から雪のような外套を羽織ったこの初老の男性は、その年にもかかわらず衰えを全く見せない。光る碧眼はぎょろりと動き、その往くところ魂を震わせる。

ジョセスに関する知識
<歴史>難易度25
 白金の鍵爪団の現在の指導者であり、精神的支柱でもあるジョセスは、今日のような独善的な男ではなかった。若い頃は冒険者稼業でならしていた。財宝の略奪と名誉を目当てに、恐ろしい怪物を相手にまわし、幾度も退けた。だがどれほど集めた財宝を積み上げても、ジョセスの心は何かが欠けていた。アンダーダークでデーモン崇拝者を打ち負かした後、彼は己に足りないものが何なのか知恵を授かるべく、バハムートの寺院に立ち寄って不眠の祈祷に入った。
 食物と睡眠を絶ち、七日七晩の間彼は跪いて祈りを捧げた。そして七日目も終わりに差しかかるとき、老人が寺院を訪れる。陽気に鳴いているカナリアをその肩に乗せて。
 バハムートの伝説まさにそのものであり、ジョセスは自身が神の御側にいるのだと感じた。ジョセスは老人の足元に跪き、触れるどころか目を合わせようとすらしなかった。老人はジョセスに触れて顔を上げるよう言ったが、それでもジョセスはそうはしなかった。バハムートは尋ねた。なぜ苦しんでいるのか、それほど祈って自分を痛めつけてまで、どんな望みや目標があるのかと。ジョセスは心の隙間を埋められるような目的を得るための知恵を授けてほしいと願った。老人は答えた。「ジョセスよ、汝が求めるものは安全な寺院になどではなく、世界中にある。あらゆるものに影と隠れ、その闇の胎動は恐怖と憎悪によって蠢き、己が目的によって人々を圧する。息子よ、これこそが汝の運命なのだ。もはや寺院の壁にもたれている時ではない。これまでのように世界の中で汝の未来を探し求めよ」
 老人は外へと出て、ジョセスに自分が言ったことをどのようにとるかは彼の好きにさせた。ジョセスは冒険者生活を引退し、世界の「浄化」に身を捧げる決心を固めた。悪あらば、これを速やかに滅すべし。

ジョセスを使う
 ジョセスは有能な戦士だが、すでに高齢である。技の衰えを正義への残忍さで埋め、力の衰えを己の信奉者を使って埋める。ジョセスは己の傍らで戦う者達を叱咤激励し、聖なる力を授けることで信奉者の戦闘力を引き出す。ジョセスとともにあれば、あらゆる疑いはどこかに行ってしまい、良心の呵責は悪を粉砕するという揺るぎない献身によって消え去ってしまう。

ジョセスのロールプレイ
 ジョセスは常軌を逸している。己の信心が合理的な思考を妨げており、何事もその場その場で閃いたことに基づいて決めている。彼が正義や秩序について語るとき、何を言い出すかわからないところがあるため、彼以外の人間すべてにはっきりわかっていることでも、妙な結論を導き出す。ジョセスが自らの非を認めることはない。一つの穢れた魂を葬るため千の無垢な魂が失われたとして、その犠牲は尊くはあるが正当化できるものなのだ。

ジョセスの戦術
 戦いはジョセスの怒りを呼び覚ます。この指揮官は最も近い敵に突撃し、我に続けと味方に促す。接敵したなら、ブリリアント・リビュークとオーダーズ・ヴァーチューで敵を自らの意図に沿うよう仕向け、場を支配する。そしてサファー・ナット・ジ・インフィディルで味方の攻撃を増やす。

サラヴァール・ダグ
「命令に従ったまでさ」

 サラヴァール・ダグはジョセス・クラウンブレイドの最も信任厚き追従者の一人だ。ジョセスが倒れるようなことがあれば、彼がその遺志を引き継ぐことになるだろう。

 巨体のハーフオークの男で、髪は短いブロンド、平たい顔に冷たく光るブルーの双眸という特徴のこの騎士は、輝く板金鎧と空色の外套を纏い、波型刃のバスタード・ソードを帯びている。

サラヴァールに関する知識
<事情通> 難易度20
 サラヴァール・ダグは3人目のジョセスの後継者候補だ。前の2人が戦いで失われため、クラウンブレイドは機知や創意によってではなく、強さと任務遂行の意志でダグを選んでいる。サラヴァールは一介の戦士として優秀だ。彼はいかなる不快な任務であっても、命令された通り従順に実行する。

サラヴァールを使う
 サラヴァールは宗教には全く無知で、どんな宗教的な事柄も道徳の失墜だと密かに思っている。彼は指揮官としては無能だが、部下は彼にそう見なされることを恐れているため、持てる力を振り絞って戦う。

サラヴァールのロールプレイ
 サラヴァールは使える僕ではあるが、自分自身というものが欠如している。彼には信仰心というものが全くなく、考え方は完全に俗世のものだ。彼は宗教的な議論には加わらない。そしてとかく物事を白か黒で判断するため、いかなる灰色もいっしょくたに堕落と断ずる。命令には極端なまでに従順で、疑うということをしない。白金の鍵爪をまとめるには不足な男だが、そのあたりこそジョセスが欲するところなのかもしれない。

サラヴァールの戦術
 サラヴァールの戦い方は猪だ。支援なしで敵の最も集まるところに突撃をかます。囲まれたら囲まれたでキリング・アークを使って敵を分断する。狡猾さや駆け引きなど、サラヴァールには無縁のもの。

白金の鍵爪団を使う
白金の鍵爪団は伝説級で使うのが最適だ。英雄級の終わりに差しかかった冒険者たちにとって、鍵爪団はやがて訪れるステップアップの手助けやお世話をしてくれる存在になりうる。そして鍵爪団の化けの鱗がはがれ、過度の暴力によって自らの手を無垢の血で染める真実が明らかになる。彼らは僕に狂信的な奉仕を求め、絶対服従以外を許さない。
かつて仲間だったものは、最も危険な敵になりうる。キャラクターは共通の敵のみならず、白金の鍵爪団の暴走にも気をつけなくてはならない。

共通の目的(伝説級序盤)
 冒険者たちは規模の大きく勢い盛んな街に辿り着く。そこでティアマトのカルトの企みを知る。己が目的のため、その街を破滅させようと暗躍しているようだ。あらゆる試みは愚かな役人どもの妨害に阻まれ、冒険者たちは悪を突き止めるすべを失ったかに見えた。幸運にも、そこで白金の鍵爪団と出会う。彼らの助けもあって、冒険者たちはティアマトの隠れ寺院を発見してカルトを壊滅させ、教団の目的をくじいて街を救うことができた。報酬の一部として、鍵爪団は英雄たちを組織の一員として迎え、ティアマト打倒のための頼もしい味方となる用意があることを示す。

メッキがはがれたプラチナ(伝説級中盤)
 鍵爪団に加わろうと加わるまいと、この組織の聖なる目的とやらによって、組織の欠陥やひび割れ、腐敗が見えてくる。その堅すぎる決意が、冒険者達に鍵爪団がどこかおかしい組織であると感じさせるようになる。遠くの村が鍵爪団によって焼き払われたといううわさを聞くかもしれないし、一般人が鍵爪団の悪口を言っているのを小耳にはさむかもしれない。黒い噂はやがて拷問、聖戦という名の強奪、そして殺しにまで及ぶ。鍵爪団は冒険者たちが問い詰めてくることなど先刻承知であり、うまくいなして疑念を晴らそうとする。団の人間が再び依頼をするが、ふたを開けてみれば無属性の英雄ですらも見て見ぬふりをできないような所業であった。とうとう、鍵爪団はキャラクターたちを背教者であると断じて葬ろうとする。

汝邪悪なり(伝説級終盤)
 白金の鍵爪団と敵対すると、冒険者たちはそのエージェントに悩まされる。英雄たちがどのような善行をしようと、彼らの行いは鍵爪団によって妨害されたり、得られるはずの名誉を無にされたりする。冒険者たちが妨害活動にうんざりしたところで、鍵爪団が現れ、より良い目的のために尽くす最後のチャンスを与えよう、拒否すれば滅ぼすと引導を渡しに来る。そしてジョセス・クラウンブレイドとの決着の時だ。彼らの本拠地に乗り込んで対峙し、この狂人の支配を止めるため、盲信者と天使、そして欺かれたまま使われている使用人と戦うことになるだろう。首尾よく勝ったなら、団の未来は君の手の中にある。立て直しを図るなら、旧弊を改めるのに苦労することになるだろう。あるいは解団してしまう手もある。だが、これによって神話級での新たな敵ができるかもしれない。

抽選のこともありますので、もしできたらということになりますが、
皆様の参加を心よりお待ちしております。

以下、応募内容です。

[名前(よみがな)] airo(あいろう)
[参加希望日] 両日
[セッションタイトル] Dance with Dragons
[使用システム] D&D第4版
[PL人数] 4~6
[レベル帯] 16
[ワールド] オリジナル(ただし、神格は4版コアのものを用いる)
[レギュレーション]
これまでに発行されたD&D第4版書籍およびD&D insider
注意:準備の都合上、D&D第4版未経験の方は参加いただけません。
あしからずご了承ください。また、キャラクター設定やアンケートなど、
開催まで打ち合わせがありますので、セッション用掲示板を頻繁に
見る必要があります。また、今回は外国人の方が参加するかもしれません。
日本語もしくは英語のいずれかが話せれば大丈夫ですし、私も
可能な限りサポートさせていただきますが、通訳のため
聞き取りやすく話していただきますようお願いいたします。

[セッション経験] あり(単発4回・キャンペーン中)
[経験者向け]
[自己紹介]
こんにちは、airoです。今年もお世話になります。
両日開催の長丁場ですが、最後までよろしくお付き合いください。

[シナリオの概要]
オーソドックスなストーリーと一風変わった遭遇からなる
バハムートとティアマトの信奉者の戦いを描いた英雄譚です。
バハムートの英雄とその仲間であるあなたがたは、さまざまな作戦
に参加する過程で、この戦いの裏にある真実へと近づきます。

はたしてあなたがたは陰謀渦巻くこの戦いを生き延び、
真の勝利へと辿り着くことができるのでしょうか?

なお、遭遇は単に出てくるモンスターを倒すというよりは
課される目的を達することで成功になります。


・モンスターから避難民を守りつつ、無事に離脱させる
・城に仕掛けられた爆薬が作動する前に解除する
・味方というよりライバルのNPCと撃破数を競う

キャラクター作成に当たっては以下のハンドアウトの中から1つ
選ぶか、マスターと相談の上作成してください。

・バハムートの勇者
・城主の後継者候補
・竜に仇なす者
・祖霊に導かれし者
・きままだった傭兵

このほかにマスターと相談の上で設定することもできます。

[その他]
英語対応可。日本語・英語いずれか片方のみ話せる方も、
両方話せる方も歓迎します。D&Dを通して交流しましょう!
オレイカルコス 設定(danさんの文章を引用)

オレイカルコスは秘術を用いる傭兵として各地を転々としている流浪のウォーロック(呪詛士)である。
彼は賞金首や盗賊団などの悪党をしばき倒し、役人に引き渡すような依頼を好んで引き受ける。
それは依頼の報奨金以外に、彼らが溜め込んだ宝や金を必要経費として接収することができる(報酬の二重取り!)のが理由だ。
彼が金に執着する理由は、一重にマジックアイテム、特にアーティファクトに魅了され、その蒐集に並々ならぬ執念をもっているからである。
そんな彼はここ最近、バリンズゲイトの安宿に逗留しいくつかの依頼をこなしている。
この町は最近ごたごた続きでトラブル解決の依頼に事欠かないためだ。
ドラゴンが支配者の町だけあって、依頼の報酬もなかなかにいい。
あわよくばドラゴンの宝物を一目みてみたい、ひょっとしたらその中にあるアーティファクトを頂戴できる依頼にめぐり合うかもしれない。
そのような欲望を胸に、今日も彼は悪党をしばきたおしている。

オレイカルコスのクエスト「濡れ手で粟を」

町のトラブルに困っている市長につけい・・・もとい積極的に手助けし、報酬としてドラゴンの宝の一部を頂・・・譲りうけられるような依頼を成功させる。

これまでオレイカルコスは市長のエージェントからの依頼を何件かこなしており、彼女の信頼を勝ち取った。今回の依頼が舞い込んだのもそのためだ。もっとも、向こうから見れば今までが試金石だったのかもしれないが・・・

また、手紙や使いでのやり取りはこれまで幾度もあったが、オレイカルコスが市長と会うのはこれが初めてだ。(セッション冒頭のシーン予定)報酬はこれまでと桁が違うし、何よりもこれから倒す連中の持つお宝も期待ができそうだ。

クエスト:ドラゴンからお宝を貰う。デーモンからお宝を奪う。

補足:ドラゴンのお宝について

ドラゴンといえばお宝、お宝といえばドラゴン。バリンスゲイトのドラゴンもその例に漏れず、自身の財産を増やすべく勤しんでいる。ちょっと違うのは、手っ取り早くよそから奪ってくるのではなく、商売によって倍にしようと考えているところだが・・・
当然のことながら、そのお宝を狙って忍び込んでくる賊も後を絶たない。留守を見計らって忍び込んだ連中のほとんどは生きて出てくることはなかった。仲間とともに運よくお宝のところまで辿り着いたはいいが、そこで散々な目にあい、ようやく一人生きて帰ることのできた者の言によると、「宝の山にむしゃぶりついたところ、それがドラゴンの罠だった。たちまち動けなくなり、家来どもが出てきて仲間はみんなやられてしまった」とのことだ。

「本当に大事なものからは、絶えず目を離さぬように」
-市長心得のひとつ

設定:ファルグリム (望月さんの文章より、一部編集)

ファルグリムは洞窟に住むドワーフのレンジャーの集落で育ったが、18の頃、集落はヒューマンに襲撃され、ある国の奴隷となった。しかしその国は奴隷の反逆とドゥームガード達の介入により転覆、彼の集落は故郷に戻った。

ファルグリムは強調性をやや欠いたが、ドワーフらしく頑固で強情で何より貪欲で勇敢でありドゥームガードと意気投合、その一員となり傭兵として暮らした。

それから150年、様々な国家に介入、多くの左翼組織に助力し体制から多くを略奪、体には多くの反逆者の烙印が刻まれ、彼はそれを勲章として誇った。

彼が暫くぶりに集落に戻ったとき、出迎えてくれるはずの仲間は皆魂を失った抜け殻となっていた。ドゥームガードの顔役の一人を頼ると、神殿に携わる人間の中に同様の症状が出ているバリンスゲイトの名が挙がり、情報と引換えに町を救うよう指示が出た。

彼は略奪者の混成組織であるドゥームガードと山賊の町であるバリンスゲイトの関係を訝しんだが、生まれ育った故郷の危機の前には瑣末なことだった。

ファルグリムのクエスト:解放せよ

君が久々に氏族のところに戻ったとき、出迎えてくれるはずの仲間は、みな文字通り魂を失った抜け殻となっていた。聞けばイリシッドとその配下に襲われたという。だが妙なことに、脳みそを食らわれた同胞は一人もいなかったのだ。疑問を差し挟む暇もなく、君は後を追った。まだ彼らを救えるかもしれないという期待を抱いて。

クエスト:一族を救う。

補足:妙なイリシッド

脳を食らうのをやめたイリシッドがいる。これは別に菜食主義者になったからでも、まして平和主義者になったからでもない。「もっと美味いものがある」というのがそいつの言い草だ。「食われてしまった」犠牲者は魂が抜けたように崩れ落ち、生きてはいるが目を覚まさなくなるという。
近頃、そいつは手下を引き連れてドワーフの集落を襲った。全員から食べたい部分を引き抜いたあと、保存食として、そして何かのための交換用にとっておくことにした。残念ながらこれは一度にたくさん食べられるものではないし、そいつの「お友達」はこれをとても欲しがるのだ。お友達は今バリンスゲイトにいるので、いい値段で売ってやろうと思っている。場合によってはお困りごとを手伝ってやり、たっぷりと恩を売るつもりらしい。

エンゲル 設定 (airo加筆)

エンゲルはこの地域に点在している導きの手の思想と、ペイロア崇拝の騎士団「蒼穹騎士団」団長。メンバーは今のところ彼といつもその背中にいるフルブレードのスターレス。誰もが認めるほどの実力、そして誰もが認めるほどの人望のなさ。
半年前、そんなエンゲルがバリンスゲイトに神殿長として赴くという話があった。これでついに自分が認められるときが来たかと、もらった支度金で大勢の従者を雇い、必要そうなものを揃え、勇んで向かった先に待っていたのは「ペイロア神殿建設予定地」の看板、あとは草と石ころばかりの更地。隣のロルス神殿のドラウが慇懃に教えてくれたところによると、建設計画も許可も資金もあったのに、いつの間にか話が立ち消えになってしばらくたつとのこと。「よろしく、神殿長殿」極上の冷笑を浮かべて去っていったそいつ。愛刀をぶちかましたい衝動を辛うじて堪えた。そして急に静かになった後ろを振り返る。そこには誰もいなかった。否、長年苦楽を共にした相棒、スターレスだけは彼を裏切ることはなかったのだ。
そのときは失意でバリンスゲイトを去ったエンゲル。だが、転機はすぐに訪れた。市長の使者が持ってきたのは一連の事件の解決依頼、そして約束された報酬はペイロア神殿の建設。良くする者の笑顔のため、ペイロア神殿建設のため、エンゲルは走る。使者を遥か向こうに置いてきて。

クエスト:良くする者の笑顔のために。(そしてペイロア神殿建設!)

ベイロンのクエスト

獣の命か、人の命か。考える暇のない苦渋の決断だった。

狂える動物の話は耳にしていた。重傷のボアのごとく理性をなくし、
暴れまわって手の付けられなくなった獣が近頃出るということを。

目の前にそれが現れたとき、君の呼びかけにも、精霊たちのいさめる声にも
一切耳を貸そうとはしなかった。まるで何かに操られているかのよう。

己だけであったなら、傷ひとつ負わずその獣を土に還すこともできたろう。
だがその場に居合わせたエルフの娘をかばうため、薄手とはいえ
もらわざるを得なかった。

ややあって、己の異変に気がつく。傷は治るどころか妙な痣へと変わり、
尋常ならざる力が湧くたびに大きくなる。いかなる治療や儀式も
消し去ることはかなわなかった。

唯一わかったのが、似た呪いを撒き散らす者がバリンスゲイトに
いるということ。雲をつかむような話ながら、君の足はそこに赴いた。

クエスト:自分にかけられた呪いを解く。

アルバート キャラクター背景

幼い頃迷い子だった彼は、ヒューマン傭兵団に拾われ彼らによって育てられた。傭兵団のメンバーは彼を我が子のように可愛がり、アルバートという名前を与えた。そして彼はその名を何より大事にしている。

傭兵団の生活は決して楽なものではなかったが、彼は成長し、彼らとともに何十年と戦った。ひとりが病に倒れ、ひとりが団を抜け、ひとりが戦で倒れ、彼の幼い頃を知る最後のひとりが寿命を迎えたとき、かれは傭兵団を離れた。傭兵団には彼が育てた若い戦士が明日を夢見ている。彼の団への恩返しは終わったのだ。

今彼は、あてどない旅の中で探している。
また背中を預け戦える戦友を。

マシュー・ジャスタス キャラクター背景

「過去は忘れた。今これからのみがすべてだ」

昔の話を聞かれるたび、返ってくる答えはいつもこれだ。飄々としている彼に語りたくない何かがあるのか、はたまた単に忘れてしまっただけなのか、実際のところを分かっているのは本人ばかり。

マシューいわく、自分は魔法魔法戦士-ソードメイジとウィザードの二役をこなすハイブリッド・クラスだ。戦場では、相手の出方を待ってカウンターを狙うことを好む。そのためかどうかは知らないが、普段から即断即決が己のモットー。

また、マシューには妙な格言癖がある。

『先んずれば、戦術的優位』
『ゴブリンも10匹集まればドラゴンを屠るという』

仲間内ではいつものことであるため、深く受け止められることはあまりないが、実は過去の経験や教えからのことかもしれない。推測の域を出ないが。

趣味はスリードラゴン・アンティでカードをいつも持ち歩いているが、秘術使いゆえイカサマを疑われ、なかなかプレイする機会に恵まれない。たまにプレイできたかと思えば、この上なく怪しいトゥムを押し付けられそうになった。すんでのところで難を逃れたマシューだが、それでも彼はスリードラゴン・アンティが好きだ。

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