風変わりなマジック・アイテムのバザール:エラドリンの伝説のマジック・アイテム
マット・サーネット

http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drbaz/20101213

 魅惑の調べは、フェイワイルドの常夏の宵に浮かぶ瞬く星の只中を抜けていく。軽快な鳥の歌のような言の葉は森の中を抜け、樹と同じほどの時を過ごす者たちの、敏い耳へと届く。魔法はエラドリンを形作り、その力に深く触れた者たちが、伝説となった物を多く形作ってきた。こうした物語は語られ、繰り返し語られるたび、当時の人々、場所、そして世界の中に失われていた物事は生命の息吹を取り戻す。
 やがて時が経ち、物語はおぼろげな歴史に、おぼろげな歴史は霧のような神話となり、魔法のアイテムに関わる伝承は雲をつかむようなものになる。それでもまだ、記憶を保つことができ、トランスによる追体験によって長く歴史を見ていられる種族は、他と比べて真実が現在も生きていることが多い。生活の中の何気ないことが、突如バードの想像力を刺激するかのような、そうした者たちの頭の中にしかないことなど誰が分かりえようか?

リング・オヴ・ウィンター
 エラドリンの聖遺物が持つ力の大部分は、他の種族にとっては未知であるものの、リング・オヴ・ウィンターの強大な力は多くの種族にも伝説の宝物となっている。この指輪が着用者に与える魔法の力については諸説あふれるものの、すべての言い伝えは2点において共通している。この指輪は酷寒の時代の先駆けとなる力を持っていること、そしてこの指輪をつける者は、時間の流れによって老いず、また死ぬこともないということ。
 不死の確約は愛する者を引き裂き、国を戦争へと追いやる。永遠の生、永遠の若さはそれを保てるものが持つべきだという甘い幻想は、たかが指輪をつけるだけで叶うことが分かったとき、最高の美徳さえも狂気と化す。エラドリンはリング・オヴ・ウィンターの伝説を他の種族よりもよく学ぶ。強力な魔力の込められたマジック・アイテムともなると、単純明快なことなどありえない、ということをわかっているのだ。
 エラドリンによると、リング・オヴ・ウィンターの伝説は「霜の大公」についての話それ自体と重なる。かつて夏の宮廷の主である、「太陽の王子」として知られたエラドリンが、他の王国にいた“喜びの娘”と呼ばれた美しいエラドリンの乙女の一人と恋に落ちた。悲しきかな、彼女の想いは季節の移ろいとともに色褪せていき、そして定命の者を愛した。拒絶された王子は彼女と契りを結ぶことを宣言し、必要とあらば彼女を囚われの身とすることも辞さないと迫った。彼女は申し出を拒絶したものの、太陽の王子の力に脅かされ、レイヴン・クイーンに訴えるに至った。彼女は魂の運命を司る女神に祈り、自身と恋人の精神を時間の先へと飛ばし、未来に生まれ変わるよう願った。その願いは受け入れられ、そして王子の心は凍てつき、残酷なものになった。
 多くのエラドリンがこの悲劇のロマンスを良く知っているが、このときエラドリンの娘によって投げ捨てられた婚約指輪がリング・オヴ・ウィンターになったということを知る者はほとんどいない。太陽の王子の暖かな愛を、永遠の夏に例えて誓った指輪であったが、彼の心変わりによって、指輪もまた変化してしまった。指輪の見かけが変わり、霜の大公にとって氷の美をつまらぬものとしてひどく嫌うがごとく、リング・オヴ・ウィンターもかつて霜の大公が感じた痛みを世界にまき散らさんとしているのかもしれない。
 リング・オヴ・ウィンターをつけたとき、着用者は骨まで凍りつかんばかりの強烈な寒気を感じるが、やがてその感覚も薄れ、暖かさと活力が取って代わる。この活力こそが指輪の持つ不老の力なのだ。指輪の持ち主がこれをつけている限り、時の流れに干渉されることはない。もう額のシワも心配いらないし、髪も白くなることはない。指輪が外れるその時まで、生命は持ち主をそよ風のごとく包み込み、身は老いでうつろうこともない。それゆえ、身に着けた者が若ければその活力を保つことができ、年経た指導者であれば、数世紀にわたって玉座にいられるだけの知恵と力を失わずにすんだ。
 多くにとって、不滅を約束してくれるのは祝福と映るが、このリング・オヴ・ウィンターは独特の呪いがある。身に着けている間、半径数マイルの気候は徐々に寒冷なものへと変化する。最初は、朝霜が日中まで残るように。次第に雨にみぞれが混ざる。盛夏ですら持ち主の住む場所では吹雪く。冬が長くなる。あまりに頻繁につけたり、つけている時間が長くなりすぎると、指輪は着用者を新たな氷河期の前触れにしてしまう。リング・オヴ・ウィンターを探し求める者にとっては、数える程度の作物の不作など、得られる時に比べれば見合った対価に過ぎない。そうでない者にとっては、指輪のもたらす嵐など永遠にごめんであり、指輪が目覚め、冬がその地を支配しようものなら破壊にかかる。
 とある蛮族の戦長「冬の王」が指輪の最後の所有者として知られている。1世紀前の不自然に長い冬の間、彼はヒューマンの都市いくつかとドワーフの王国一つを征服した。伝説によると、霜の大公と幸運を得るための取引をしたと云われている。
 しかし、霜の大公と長きにわたって対立していたレイヴン・クイーンが、この冬の王に自らが触るものすべてを氷に変えてしまう、という呪いをかけた。冬の王が霜の大公に呪いを解くよう要求したところ、その不遜を咎められ、彼と王国はすべて氷漬けにされた。もしおとぎ話を信じるのなら、リング・オヴ・ウィンターは今も、凍りつき横たわる冬の王が握りしめているのだろう。

マジック・アイテムのストーリー
 この記事のストーリー要素は、君を触発してゲームにおける冒険やストーリーを思いつかせるのに使えそうな、面白い云われを持つアイテムを提供するためにある。ストーリーがキャンペーンやキャラクターに合わないなら、どうぞ自由に変えてほしい。リング・オヴ・ウィンターが複数あってもいいし、オーブ・オヴ・ドラゴンカインドが一つしか作られていなくてもいい。ウイングド・シールドは蝙蝠の翼の形をしており、ドラウの手によって造られたことにしてもかまわない。すべては君次第だ。

ルール対ストーリー
 アイテムの魔法的効果がルールで述べられていないような箇所がある場合、アイテムはルールであるかのように扱われる。マジック・アイテムはフレーバー・テキストを違うフォントで書くとか、まつわるストーリーが必要とかというわけではない。たとえば、不滅を約束するリング・オヴ・ウィンターはただの言い伝えにすぎないかもしれないし、はたまたキャラクターが本当に利益を得ることができるかもしれない。いずれにしても、それはゲームに直接影響を与えるものではないし、アイテムが機能するかどうか、機能するならばどのように機能するかを決めるのはDMだ。ゲームにおいて、リングを指に通すことで訪れる冬は、PCが数か月、あるいは数年経ってから気が付くほどのとらえがたい効果かもしれないし、ほんの数日後に大寒波が押し寄せ、氷河期の引き金になるかもしれない。

リング・オヴ・ウィンター
Ring of Winter/冬の指輪 レベル14+ レア
溶けずの氷からできたこの輝く指輪は、君を冷気から守るのみならず、取り囲む敵まで凍てつかせる。
レベル14 21,000 gp
レベル19 105,000 gp
レベル24 525,000 gp
レベル29 2,625,000 gp
アイテム・スロット:指輪
特性:着用者は以下に示す通りの[冷気]に対する抵抗を得る。
レベル14:抵抗10
レベル19:抵抗15
レベル24:抵抗 20
レベル29:抵抗 25
パワー(遭遇毎):即応・割込。君が自分の抵抗の値を越える[冷気]ダメージを受けたときにこのパワーを使用する。君は次のターンの終了時まで[冷気]に対する完全耐性を得る。
パワー(遭遇毎◆[冷気]):マイナー・アクション。次の使用者のターンの終了時まで、使用者に隣接してターンを終了した敵は5点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル19: 使用者に隣接してターンを終了した敵は10点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル24: 使用者に隣接してターンを終了した敵は15点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル29: 使用者に隣接してターンを終了した敵は20点の[冷気]ダメージを受ける。

オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
 伝説に名高いオーブ・オヴ・ドラゴンカインドの活躍は、ドラゴンスレイヤーやワームライダーの夢に似ている。エラドリンの長老が古代のドラゴンとの戦いで用いたことで知られており、それぞれのオーブは使用者にドラゴンを支配する力を与える。そういう使われ方をした過去があったために、このアイテムはドラゴン族を支配しようとする者および、ドラゴン自身によって探し求められる。
 世界とそこへの道ができたてで、フェイワイルドが栄えていた頃、ドラゴンは華やかなエラドリンの王国を魔法のベールを通して観察し、かの地は略奪の頃合いであり、容易く我が物にできると舌なめずりした。力も智も、ただの定命の存在より神に近い存在であったため、多くのドラゴンは、他を地面に映った翼の影を汚すだけの劣等種として支配しており、フェイワイルドのエラドリンの王国とて例外ではなかった。
 世界に爪痕を刻むドラゴンが増えれば増えるほど、怒りもいや増す一方であった。だがいかにして盾のごとき鱗と、槍のごとき爪を持つ暴君を退けることがすればよいだろう?その顔にある剣のような歯と死のブレスを前にして、怯える以外なにができるだろう?ドラゴンと戦わんとする心勇ましき者は数多いたものの、悲しいかな、事を成すに足る業物を帯びた者はいなかった。
 他に並び立つもののないエラドリンのウィザード達が、強大なるワーム相手に形勢を逆転できるだけの魔法を編み出すべく、宇宙へと潜った。雲と魔法の影に覆われる空飛ぶ塔の中で、エレメンタルの怒りによる激しいマグマに囲まれた鉄の砦で、銀の海を渡る金の船の中で、彼らは己が魔法を磨いた。経験を活かし、ドラゴンに対して効果のあるアイテムを造りえた者もいた。だがそれ以外は、新しい魔法が自身の使命には役立たずであると悟った者、もっと多かったのが、ドラゴンとその下僕に見つかり、それらの手にかかった者。ただ一人、コアロンに知恵を授けられたというエラドリンのウィザードが、確実にドラゴンの無力化ができる魔法を編み出すことに成功した。
 オリジナルのオーブ・オヴ・ドラゴンカインドは数多くあった中の一つにすぎなかった。エラドリンのウィザード達は大量のオーブを装備し、パーティーで波状攻撃をかけてドラゴン相手に立場をひっくり返すことに成功した。ついには、ドラゴンたちもエラドリンの力を認めざるを得なくなり、同胞の様に倒れて骨をさらすよりはと逃げるに至る。
 オーブの脅威により、ドラゴンと“下等種”は比較的平和な状態を長く保つことができた。しかし時が流れ、宝探しどもがドラゴンの財宝につられてやってきた。ドラゴンはオーブを我が物にしようと、リーダーの欲深さに付け込んで口車に乗せた。数多くのオーブ・オヴ・ドラゴンカインドは持ち主の手から失われ、さらにたくさんのオーブが危険を招くとして砕かれ、わずかな残りは隠された。今日ではその製法は謎であり、この次元全体で、どれだけオーブ・オヴ・ドラゴンカインドが散逸したのか知る者はいない。
 最も古い説によれば、エラドリンのウィザードが最も多く使用したという話に加え、オーブに浮かぶ色と同じドラゴンに対して使うと最も効果的だという、特殊なオーブ・オヴ・ドラゴンカインドがあるそうだ。それが本当なら、ドラゴンは同類と戦うのにふさわしい武器として称賛することだろう。また、すべてのオーブを揃えた者がいたとして、そのオーブから力を引き出そうと試みたとき、それがどれほどのものになるか、知っている者などいるのだろうか?

オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Orb of Dragonkind/竜封じのオーブ レベル12+ アンコモン
色が渦巻く、このなめらかな水晶のオーブは、ドラゴンに命令を下す力を君に与える。
レベル12 +3 13,000 gp
レベル17 +4 65,000 gp
レベル22 +5 325,000 gp
レベル27 +6 1,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいは(ドラゴン)に対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20;目標は(ドラゴン)のみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。

レッド・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Red Orb of Dragonkind/赤竜封じのオーブ レベル14+ レア
怒り狂うマグマで満たされたかのような赤が渦巻くこの水晶球には、紅竜を制する力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはレッド・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
パワー([一日毎]◆[火]):マイナー・アクション。使用者が次に行う攻撃は、本来のダメージに加えて[火]の種別を得る。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はレッド・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。

グリーン・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Green Orb of Dragonkind/緑竜封じのオーブ レベル14+ レア
ガスが蠢くこの重たい碧色ガラスの球の中に、緑竜を操る力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはグリーン・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
特性:このオーブは[毒]に対する抵抗を以下の通り与える。
レベル14:抵抗10
レベル19:抵抗15
レベル24:抵抗20
レベル29:抵抗25
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はグリーン・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。

ホワイト・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
White Orb of Dragonkind/白竜封じのオーブ レベル14+ レア
ゴブリンの頭ほどの真珠に見えるこの氷のオーブは、白竜を抑え込むがための力を持つ。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはホワイト・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
特性:この装具を装備している間、動けない状態になったり、減速状態になったり、横滑りさせられたり、押しやられたり、引き寄せられたりする効果を受けたとき、ただちにセーヴィング・スローを行う。セーヴィング・スローに成功した場合、動けない状態になったり、減速状態になったり、横滑りさせられたり、押しやられたり、引き寄せられたりする効果を受けない。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はホワイト・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。

シルヴァー・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Silver Orb of Dragonkind/銀竜封じのオーブ レベル14+ レア
躍動する心の臓のごとく、熱を持ち収縮するこの磨かれた銀の球には、銀竜を思いのままにする力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはシルヴァー・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
特性:この装具を装備している間、使用者はすべての脆弱性を失い、またダメージに関するいかなる脆弱性も得ない。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はシルヴァー・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。

ベール・オブ・ナイト
 セイハニーンは訳ありの恋人に加護を与え、二人の逢瀬を秘めるべく闇を送る。多くが女神からのお恵みをいただいたと感じる一方、その祝福たるやいかばかりのものかと顧みる者はほとんどいない。
 かつて、エラドリンの伝承と同じくらい星の巡り合わせが悪い恋人たちがいた。イーシアという若い娘が、エラドリンの氏族をつなぐ目的でウィザードに嫁いだ。結婚当初、イーシアはウィザードに惚れ、結婚生活の最初は魅惑の時を過ごせた。やがて時は流れ、ウィザードは研究に没頭し、彼女を顧みなくなる。イーシアはエルフとの争いに備えるため、二つの家をつなぐため、いつも精力的に、だが満たされぬ想いを抱きながら、木製細工と戦闘訓練に身を投じた。
 イーシアは夫ともに数多くの戦いを経るなかで、ウィザードは、彼女が余りに身を危険に晒しすぎており、時として彼自身の魔法によって傷つくこともあることを感じていた。イーシアと夫とは距離を取って戦うようになったあるとき、自分とよく似た魂を持つ、ハンサムなエルフの戦士を捕らえた。二人は敵同士、道理、種族、義務さえも超えた愛情を芽生えさせる。二人の、互いへの情熱は新たな運命を歩ませることとなり、片割れとともに戦争只中のエラドリンの氏族を捨てるに至る。
 セイハニーン曰く、この恋人たちに憐れを覚えたという。イーシアを見て自分と重なるところがあり、ウィザードからコアロンに近いものを感じたようだ。この三角関係はセイハニーンに世界が始まって間もない頃の出来事を思い出させた。セイハニーンはどこまでも広がる夜空を切り取ってイーシアの頭と肩にかけ、ベール・オブ・ナイトを造った。この素晴らしい贈り物のおかげで、イーシアと恋人は彼らを消そうとする敵から情熱の炎を守ることができたという。
 この話にはもっとロマンティックな異聞もあり、ベールを造ったのは実はウィザードで、彼女にセイハニーンからの贈り物であると信じ込ませ、己は身を引くことでエルフよりも深い愛情を示したとも伝えられている。ベールの造り主はさておいて、この話の結末はどの説も変わりない。エルフは信用していた友人にベールの持つ力を見せてしまった。友人は裏切り、エラドリンの氏族の長に密告した。イーシアと恋人は氏族に見つけられ、当然のことながら戦いとなった。そのどさくさに紛れ、裏切り者はベールを手に逃げおおせたという。エルフの側はベール・オブ・ナイトを戦いに役立て、エラドリンの氏族は滅亡したそうだ。
 今日のエラドリンの間では、この話は教訓話となっている。面白いことに、それは伴侶に対する操や、エルフに気をつけろ、などではない。どんな愛情でも視野が狭くなりすぎてはならず、本当に大切なものならよくよく注意していなくてはならない。盲信という名前のベールにまかせて目を曇らせることなく、熱くなりすぎずに澄んだ眼で見定めること。

ベール・オブ・ナイト
Veil of Night/夜のベール レベル18 レア
この半透明の布地は、影と星の瞬きから造られているように思える。これがあれば君は視界から消え失せる。
アイテム・スロット:頭部 85,000 gp
特性:<隠密>判定に+4のアイテム・ボーナスを得る。
パワー([一日毎]◆[幻]):移動アクション。使用者と隣接する味方1人は、いずれかが現在いるマスから離れるか、遭遇の終了時まで不可視となる。このパワーを使用したときに隣接する味方がいなかった場合、味方が移動して使用者に隣接したとき、即応・対応アクションとしてその味方を不可視にすることができる。
パワー([一日毎]◆[幻]):即応・割込。トリガー:敵1体が使用者か隣接する味方1人を攻撃したときにこのパワーを使用する。
効果:使用者の次のターン終了時まで、目標はその敵の攻撃に対して不可視となる。

ウイングド・シールド
 ミンダルティスと彼のウイングド・シールドの物語はとても有名で、何世代にもわたって多くのエラドリンに伝えられてきた。エラドリンの親が女の子にミンダルテと名付けるのは彼にならってのものであり、伝説から遠く離れた親戚であるエルフですらもミンドールとミンダという伝統的な名前がある。
 ミンダルティスはエラドリンの伝説において、英雄の中の英雄として扱われている。黒裂森のドラゴン「死の牙」殺し、時に埋もれし都市アスタロイヘンの救済、愛のために冠を捨てたセンダリアを銀の玉座に戻し、名誉あるものが手にすると歌いだすといわれる剣エプシリアンを所持、かつて邪悪なフォモールの王国、今や幽霊が住み着くだけの廃墟となったハグの女王、アンゴサの打倒。ミンダルティスは行いそのものもさることながら、いかにしてそれを成し遂げたかについても知られている。
 ミンダルティスは最初のクエストにおいて、黒舌族のゴブリンの女神である、蛇の髪をしたザッサリアと戦い、これを滅ぼした。 メデューサの女王との戦いのさなか、ミンダルティスは自らが石へと変わっているのに気付いた。死を免れるべく、彼はしぶしぶ、かつて拒絶したニンフの女王、ヴァンティアを呼んだ。彼女は呼び出しに応え、奇跡的な登場によって一命は取り留めたものの、気まぐれなフェイのキスは完全修復には及ばず、石化を止めただけであったのだ。それからというもの、ミンダルティスの片腕は石であった。
 容姿と戦士としての力に傷がついたミンダルティスは、エプシリアンも歌うのをやめるほどの黒い殺戮と征服を行うようになった。だがジェレンナの愛が彼の善なる心根と名誉を取り戻す。このエラドリンの娘は、ミンダルティスのため、戦うときにジェレンナ自身が彼を守るかのようにひらひら飛び回る、翼のある銀の盾を造った。
 彼が数多赴いた冒険のいずこかで、ミンダルティスはウイングド・シールドを失ったものの、手を取り戻している。この出来事は物語の重要な場面なので、どのタイミングでくるかは語り手によって違うようだ。この不思議なアイテムの運命がどのようなものであったかに関わらず、翼の盾はエラドリンにとって献身と救いの象徴である。この盾は、自らの過ちを悔い改めたい者によって身に着けられることがよくあり、また「翼の盾のもとに」とは不滅の絆を誓った言葉である。

ウイングド・シールド
Winged Shield/翼持つ盾 レベル15 レア
この幅狭い銀の盾は、両側から折りたたまれたミスラルの翼を生やしている。手を放すと、君の周りを飛び回って守ってくれる。まるで君自身で持っているかのよう。
アイテム・スロット:腕部25,000 gp
シールド:ライト
特性:使用者は、ACに盾ボーナスを得るためにこの盾を手で持つ必要はない。この盾は使用者の間合いの範囲内で、使用者が装備しているかのように浮遊する。使用者は空いた手で他のアイテムを持ったり、登攀したり、武器を装備したり、(訳注:両手武器を使用した、もしくは1つの手が空いていなければならない)攻撃を行うことができる。もし手が空いているなら、フリー・アクションとしてこの盾を装備できる。この盾を奪おうとする(訳注:<盗賊>判定を行おうとする)試みは、装備中の物品に対するものとして処理する。
パワー([一日毎]):即応・割込。このパワーは使用者のACに対する攻撃がヒットしたときに使用できる。使用者はその攻撃に対するACに+2のパワー・ボーナスを得て、回復力を1回分消費できる。

筆者について
 マット・サーネットはウィザーズ社所属の、ダンジョンズ&ドラゴンズとマジック・ザ・ギャザリングに関わっているライターであり、ゲームデザイナーでもある。最近クレジットがある作品としてはMonster Vault(未訳)、 Neverwinter Campaign Guide(未訳)、 Hero Builder’s Handbook(未訳)、 マジック・ザ・ギャザリング:ミラディンの傷痕がある。彼がモンスターや世界を造っていないときは、君の思いもよらないような、そして深く触れないほうが身のためな、酷いファンタジー映画に嵌っている。

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