(補足)「次元界の書」94ページに白鳥の塔、ケリスアルドの記述があります。併せてご参照ください。

http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201103ioun

チャネル・ディヴィニティ:アイウーン
白鳥の塔の賢人達

ケン・シルヴァーマン

 君は見たか?白鳥の塔が地から天へと輝かしい弧を描くのを!そのまばゆい白い輝きは、塔にある真実を表すかのようだ。だが、見てくれなど、その中にある驚異に比べれば何ほどのことでもない。そこでは得難い才能を持つ歴史家、筆記者、予見者が定命の千世の夢にも勝る量の知識を記録しているのだから。そして賢者。ああ、栄えある賢者よ!アイウーンにすべてを捧げる、伝承に科学、そして秘術の巨匠達がそこにいる。そうだ友よ、白鳥の塔は並び立つ者なき真なる智なのだ。

 ケリスアルドの学び舎、またの名を白鳥の塔と呼ばれるそこは、敬愛されるアイウーンが賢者達の居所である。この永遠の賢者たちは宇宙の、ひょっとしたら宇宙さえも超越したところから知識のかけらを学び、発見し、記録に残す。大部分のものがアイウーンに身を捧げており、いつしか、栄誉ある「啓発の間」と呼ばれる、居ながらにして最も素晴らしく、かつ最も多様な研究資材を集められるという、研究や実験に最高の場所に地位を得ることを願っている。そして、その中でもごくわずかな者が、考えうる限り最高の名誉を手に入れようと励む。すなわち、「アイウーンの柱」と称されること。

白鳥の塔の記録者
 ケリスアルドにおいて最も名誉ある役目というわけではないが、記録者は白鳥の塔の生命線だ。賢者が学んで新たな真実を発見するのに時間を費やすかたわらで、記録者はそれが失われることのないように書き記す。やり方を工夫していくうち、彼らの努力の結果が珍しい光景と音に満ちた塔の内部を作り上げた。数世紀ほど前、記録者はどんな記録も簡単にやれる方法を編み出した。各人の仕事を、異なる種別の音階で魔法的に符号化するのだ。塔の住人がとある項目を参照したいと思ったら、その項目に関連する箇所がそれぞれ異なった調子の音階を発する。探し事が見つかるか、もう必要ないと念じるまで音は続く。塔の忙しい日は、一大楽曲よろしく音で溢れるが、うるさくなりすぎて集中できなかったり、音が混ざり合い、わけが分からなくなったりすることはどういうわけか起こらない。
 白鳥の塔の中にいる者なら誰でも、どこにいてどれだけ離れているかに関わらず白鳥の塔にある音階記録すべてにアクセスすることができる。だが、音階が鳴るのを自らの精神だけに留めておけるのは記録者だけだ。こうした措置によって、塔は住人によって造りだされる記録を適切に管理している。

白鳥の塔の予見者
 掌にある無限に近い知識のおかげで、白鳥の塔の予見者は既知の宇宙にいる他のいかなる巫女や神の信託者よりも確度が高く、詳細な予兆をもたらすことができる。白鳥の塔の予見者はこうした能力を特定の幻視について経験したり、将来を予言したりするのに役立てる。
 予見者が、得られた情報から2通りの予兆を解釈できる場合、どのように対処するかは予見者それぞれの責任において行われる。ある場合、幻視を最も有効活用する方法は、賢人達を手助けして予見の指し示す世界の神秘を解き明かすことになる。またある場合、予見者が示した未来へのドアは、賢者一人では急すぎるか問題が大きすぎて手に余る。この場合、より現実的な対処法として、事態に対処できる英雄を募るよう賢者を導く。

白鳥の塔の賢者
 白鳥の塔の賢者達は、宇宙が無限であるということを知っており、その真実に脅かされることはない。ケリスアルドで働く賢者の仕事は現実の中の秘密を休むことなく発見し続けることなのだ。ある者は調査に、別の者は哲学に、また別の者は実験に特化している。これらの賢者の研究や理論は定命の専門家の理解を越えるところがあり、そうした業績に「大雑把な思いつき」というレッテルを張ろうとする、懐疑論者(論を理解できない者)や批判論者(密かにヴェクナとつながっている者もいる)を招く。
 賢者は白鳥の塔の住人でも最も知られた存在である。この塔を訪れた者は、ときおり賢者に集まる名声が妬ましいという記録者や予見者の嫉妬の言葉を耳にするかもしれない。ほとんどないとはいえ、そのような名声を持つ者がヘスタヴァールの街から漏れ出ることがあったとしても、アイウーンが見逃すことはない。彼女はあまねく宇宙を探し、そうした技能や専門を持った者を見つけては取り立てている。

DMに:キャンペーンでの白鳥の塔
 既知宇宙における智の城として、ケリスアルドは興味を引く。よくある「軽くスポットライトを当てる」(訳注:背景設定の一部として使う)キャンペーンでは、白鳥の塔は伝説や神話のいくつかに登場させることができる。一般人やほとんどの英雄級の冒険者にとって、白鳥の塔は子供に語るようなおとぎ話にすぎない。だが、ごくわずかに、これが実在のものであることを学んだ者がいる。ある者にとっては、このことはアイウーンもしくは彼女のエグザルフからしか知らされることはなく、啓発の間に蓄えられた知識に添えた祝福として授けられる。またある者にとっては、この事実は古文書の研究やアストラル海の探索の中で得られる。
 多くが気高い志を持って塔を訪れんと欲しているが、それと同じだけ知識に対する我欲から塔を探す連中もいる。だが、もっと危険なのは、破壊を欲し、価値ある物事を否定することで、世界を無知と暗闇に陥れんと望む輩だろう。
 キャンペーンの中には、知識を入手するのがそんなに難しくないものもあるかもしれない。たとえば、荒れていない王国には大きな研究所がありそうだ。もっとも、そのような場合でも、白鳥の塔はいかなる定命の図書館を超える情報量を持つ。知識が通常より入手しやすいのなら、白鳥の塔は定期的にセミナーを開いているかもしれないし、年ごとに「啓発の間」に留学できる人間の選考会を行っているかもしれない。塔の特使が、他の賢者に助言したり手助けしたりするために、定命の領域にある大きな教養・文化的な施設に赴くことがあるだろう。
 キャンペーンの背景設定によって、白鳥の塔は両極端、あるいはその中間のどこにでも成り立ちうる。たとえば、大きな戦争の惨禍で、ただ一つの国が生き残っていたとする。この最後の施設は白鳥の塔とのつながりを何とかして残したがっており、さもなくば戦争が定命の領域と白鳥の塔を切り離してしまうだろう。時が流れるにつれ、白鳥の塔はある者からは忘れ去られるものの、そうでない者には実在し続ける。ひょっとしたら白鳥の塔は再建を手助けするために賢者を送っているのかもしれない。ただし、争っている文明同士が塔の存在に気づけば何が起こるか分かったものではないため、こうした援助は秘密裏に行われる。
 その重要性がキャンペーンによって変わるとはいえ、白鳥の塔は、英雄級の時点では単なるうわさ話にすぎないだろう。伝説級になると、英雄はストーリー上重要な箇所やクエストの場面として、白鳥の塔を訪れることができるようになる。そして神話級に達したとき、キャラクターは折に触れ白鳥の塔を訪れて目下の問題について調査したり、ひょっとすると塔に新しい知識をもたらしたりするかもしれない。

アイウーンの柱
 白鳥の塔の創設以来、アイウーンは目覚ましい働きを見せた賢者を賞する場を設けている。賢者それぞれで業績は異なるものの、ただひとつ確かなことがある。それぞれの示す技能や気概、そして理想は、他の白鳥の塔にいる賢人だけにではなく、アイウーンに従う者すべてに捧げられる。
 これらの賢者を祝福するため、アイウーンは石膏でできた記念碑を造り、自らの認める最も優れた者たちを讃えた。碑の一つ一つが賢者それぞれを表し、エネルギーの源として供されている。中に込められた魔法の力は永遠に燃え続け、この力はアイウーン・ストーンが作られるたび使用される。それぞれの石はアイウーンの最も優れた賢者に敬意を表して贈られるものであるため、それ以外のことでアイウーンが作ることはない。
 現在まで、アイウーンに讃えられた賢者は7人いる。以下が「アイウーンの柱」と称され、敬愛される者たち。
カーリアラン・マーライズ:変化を胸に抱く者として知られた彼女は、自らの研究も1世紀以上一つの分野だけをやり続けたことはない。定命の存在がアイウーン・ストーン・オヴ・アダプテーションを使用したとき、カーリアランが持つ、変化を通じて繁栄をもたらす能力を与えられる。
チューベロン・ケロ:彼は神格の研究で名高い。その発見は他のいかなるものよりも内容が充実しており、アイウーンをして、自らよりもこの身を知っているかもしれないと言わせるほど。チューベロンによる、神に関する驚嘆するほどの知識は、アイウーン・ストーン・オヴ・ディヴァイン・ノーリッジを使ったときにその価値を示す。
ラー・ケイ・キリ:アイウーンがラー・ケイを賞した業績は、当初「片手間のこと」として始め、結果としてすぐに一生の仕事となったものだった。彼はあらゆる字体と言語において話し言葉・書き言葉を修めた。アイウーン・ストーン・オヴ・パーフェクト・ランゲージを使うと、彼の業績の偉大さがわかる。
グラージ・ツアマリー:能力がありながら努力が不運に終わることがよくあった彼だが、それでも学問への献身を失うことは決してなかった。アイウーン・ストーン・オヴ・リジェネレーションを使った者は、グラージの失敗から学ぶ精神に触れている。
ローイア・ディクワット:ローイアは逆境にあっても自分の節を曲げない不屈の精神を持っている。ついに彼女の信念が実を結んだかのごとく、アイウーン・ストーン・オヴ・ステッドファストネスを使用したものはその力を引き出せる。
ハメイル・フェリオ:食事すらも週の終わりに一度だけで済ませてしまうほど、仕事に専念することで知られた彼は、仕事に対する愛情だけで生きているという驚くべき能力を持っている。アイウーン・ストーン・オヴ・エンデュランスを使ったものは、ハメイルの専心と持久力を呼び起こす。
ジェラリー・リリム:間違った伝説のおかしいところ、意図的に歪められた文章の矛盾を指摘させることにかけてこの賢人の右に出る者はいない。アイウーン・ストーン・オヴ・トゥルー・サイトを起動させたものだけが、身を持ってジェラリーの洞察力を知る。

シナリオフック

◆ アイウーンの知識と塔の住人を亡き者にするべく、ヴェクナとその信奉者が白鳥の塔の所在を探し求めている。目的を達するため、ヴェクナ信徒が塔に忍び込み、大事な巻物や書物を盗み出そうとする。盗まれた巻物は比較的簡単に所在を特定できるとはいえ、取り返すとなると一筋縄ではいかない。さらに、ヴェクナとその僧侶どもには、音階記録化した塔の知識を解読したり改変したりできっこない、などと誰が言えるだろう?

◆ 白鳥の塔の予見者による、予言や未来に関する強力な幻視はキャラクターに対して新しいクエストを授ける良い手段になる。誰かがアイウーンを信仰しているならばなおさらだ。さらに、予見者からのメッセージは、現在進行している冒険が行き詰ったときの助けとなり、良い意味で修正が図れる。予見者の物の見方については適度な幅を持たせること。英雄に未来のことについて相談するとき、示す幻視は深刻なものであったほうがよい。

神話の運命

セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワー
Sage of the Swan Tower/白鳥の塔の賢者
前提条件:21レベル、アイウーンを信仰していなければならない。

 君の学問に対する貢献とアイウーンに対する献身は、ついに他に並び立つもののない地位へと押し上げた。白鳥の塔の賢者として、栄えある啓発の間から無限の知識を引き出すことができる。だが、君は他の賢者とは一線を画する。書物を読みふけって学ぶだけでは足りないということが分かった君は、知識の獲得や仮説の実証のため、時間の大部分を外で費やす。
 新たに得た貴重な知識、新たに得た啓発のひとつひとつが、君の胸に抱いたゴールへと近づけていく。君が発見と解明という偉業を成し遂げ、新たな知識となったとき、アイウーンが君のことを呼ぶのを感じる。そして君の夢は現実のものとなり、白鳥の塔における永遠の賢人に名を連ねるのだ。
 ケリスアルドでの賢人仲間達との生活はまさに君の望んだものであるが、アイウーンの柱のもとを訪れるたび、自分にも同じだけの力があると感じるようになる。とはいえ、アイウーンが賢者にそのような地位を与えるまでに長い時間がかかった。君が自分の石膏の記念碑を得るその日まで、今少しの忍耐が必要になるだろう。

セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワーの特徴
レベル21:専攻分野のエキスパート
調査と研究によって君は自分の実力を示してきた。それゆえ己の土俵において右に出る者はいない。
利益:君の【知力】または【判断力】は2上昇する。加えて<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>の技能のうち、君が習得しているものを一つ選ぶ。選んだ技能の判定をする際はいつでも、2回ロールして任意の結果を用いる。

レベル24:信仰の秘術
君にとって、信仰と秘術の境目がはっきりしなくなる。
利益:[秘術]の攻撃パワーを使用したとき、次のターン終了時までに行う、次の[信仰]の攻撃パワーで君は戦術的優位を得る。また、[信仰]の攻撃パワーを使用したとき、次のターン終了時までに行う、次の[秘術]の攻撃パワーで君は戦術的優位を得る。

レベル26:応用できる知識
白鳥の塔から得た知識は君独りのものではない。君は必要に応じて仲間に情報を分け与える能力を磨いた。

セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワーのパワー
ノーリッジ・アプライド
Knowledge Applied/応用できる知識 セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワー/汎用 26
白鳥の塔に蓄えられた知識を引き出して、君は味方の行動を成功へと導く。
遭遇毎◆[秘術]、[信仰]
フリー・アクション 近接爆発5
トリガー:爆発範囲内の味方が1回の技能判定、能力判定、セーヴィング・スローに失敗する。
効果:トリガーを発生させた味方は使用者の【知力】または【判断力】修正値分のボーナスを得て新しい判定を行い、任意の結果を用いる。

レベル30:柱の秘密
アイウーンの柱には記念碑以上のものが贈られる。アイウーンは、定命の危険のうちごく近いものに対処できる閃きを授ける。
利益:遭遇毎に1回、ダメージを受けたときフリー・アクションとして【知力】判定か【判断力】判定を行うことができる。使用者は判定結果を差し引いたダメージを受ける。

新しい神の賜物
リンク・トゥ・ザ・ピラーズ
不屈の信徒に報いるため、アイウーンはたまに、「アイウーンの柱」の記念碑につながる魔法的なつながりを授ける。

リンク・トゥ・ザ・ピラーズ レベル7+アンコモン
アイウーンの柱との信仰的なつながりが、その身の力となる。
レベル7 2,600 gp  レベル22 325,000 gp
レベル12 13,000 gp レベル27 1,625,000 gp
レベル17 65,000 gp
神の賜物
特性:使用者は儀式に必要なすべての技能判定に+2のアイテム・ボーナスを得る。
レベル17:+4 アイテム・ボーナス
レベル27:+6 アイテム・ボーナス
パワー([一日毎]):即応・割込。トリガー:いずれかの種別を持つダメージを受ける。効果:使用者はトリガーを発生させた種別に対する抵抗5を得る。トリガーを発生させたダメージが2種類以上の種別を持つ場合、それらのうち1種類を選ぶ。この効果は遭遇の終了時まで持続する。
レベル12:抵抗10
レベル22:抵抗15

筆者について
 ケン・シルヴァーマンは脱「熱烈なファン」であることに決めた熱烈なファンかつライターだ。彼は愛する妻と動物園(天使が1体、海軍大将が1体、小神が2体)とともに居心地の良い家に住んでいる。彼にとって犬の吠える声、猫の鳴き声、妻の言葉はみな励ましで、それらにいたく感謝する。


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