ヒストリー・チェック:イグヴィルヴとグラズズト
2012年10月13日 ゲーム2012/12/3 ヴィスターニ→ヴィスタニ に表記を修正
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201208history
ヒストリー・チェック:イグヴィルヴとグラズズト
ジョン“ロス”ロッソマーニョ
シリーズ、ヒストリー・チェックではダンジョンズ&ドラゴンズの豊富な歴史を解き明かしていく。それぞれの記事でゲームの象徴的な英雄、悪役、組織、出来事に新解釈を加えて可能な限り複雑に絡む歴史を解きほぐす。本文のほか、コラムでは技能チャレンジに成功したキャラクターがどのようなことを知っているか示していく。今回のお題は魔女の母、そして悪名高きデモノミコンの著者でもあるイグヴィルヴ、そしてある時は敵、またある時は恋人のデーモンの王子、グラズズトについてみていこう。
愛は失われず
「失われた恋人を探し求める男ほど尋常ならざるものはないね。目を見ればわかるよ。お探しの人はお前さんを闇の中に置き去りにし、彼女を見つけるためにはあたしらの助けが入り用ってわけだ。」
「気楽にしな、友よ。彼女はもうあたしらの手の中さ。あたしらもまた彼女のことを探していたと聞かされてもお前さんは驚かないと思うけどね。あたしらの情報をお前さんと共有することで、最後はどっちも得をすることになるよ。いやね、一族の者が今晩遅くに戻って、あんたの恋人がどこで何してるか教えてくれることになってるんだ。お前さんから逃げることができたとしても、あたしらからは逃げられないよ。」
「そんなしかめっ面をしなさんな。お前さんはきっとあたしらが彼女のことを狩ろうとしているとでも思ってるんだろう。友よ、心配しなさんな。一族の者が戻るまで、時間つぶしがてらお前さんに昔々のロマンスのお話をして差しあげよう。多くのバードが多元宇宙の中でも最大規模の恋物語と思っているよ。欲望という形定まらざるものの根底を明らかにしてくれるんだ。」
「それじゃあ、イグウィルヴとグラズズトの話でもして、お前さんを悶々とさせてあげようじゃないかね。お前さんの心を支配している愛について省みてみるがいいよ。彼女の言葉や行動を思い返してご覧。そうすればお前さんの身に何が待っているかも腰を据えて考えられるってものさ。」
ザロヴァン族
この「ヒストリー・チェック」の語り手はヴィスタニの一員であるザロヴァン族であり、シャドウフェルとほかの次元界を部屋から部屋のごとく簡単に行き来する謎めいた放浪者たちだ。ザロヴァン族は過去と関連する未来の出来事に重きを置いており、寛容の精神、暗い陰謀、謎めいた好意から、ジョルジョ(ヴィスタニ外の者)に対して知恵を授けることがあるかもしれない。ヴィスタニに関しては、Player’s Option: Heroes of Shadow、The Shadowfell: Gloomwrought and Beyond、Dragon誌380号の「ヴィスタニ」(すべて未訳)に記載されている。
かの古き黒魔術
「では、我らが乙女のことから始めようかね。その娘は長年に渡って様々に名前を変えて伝えられている。ナターシャ、ヒューラ、そしてターシャ、最後にイグヴィルヴ。イグヴィルヴはお前さんの記憶を刺激したみたいだね?ついでに言うなら、知ってると言っても名前を聞いただけってところだろう。お前さんはデーモンの召喚についてあれこれ議論するより、農夫に救いの手を差し伸べる人のようだからね。そしてお前さんのツレは芸術の類の弟子で、そのいなくなった相手は何かにご執心じゃなかったかい?どっちだって構いはしないよ。あたしゃお前さんがそんな泥沼にはまるほど愚かじゃないことを願ってるのさ。」
「イグヴィルヴは魔女の母として、デモノミコンを著した一人として知られているね。敢えて言うけど、彼女が書いたっていうのは言い過ぎさ。というのも、イグヴィルヴはすべての魔女の母、バーバ・ヤガーの義理の娘なんだ。そしてこれからお前さんもおなじみの名前が出てくるよ。」
「イグヴィルヴの闇の修業が始まったのは悪名高き老婆の小屋の中。若さゆえの犯行の懲罰として、悪い定命の者が近づかれないよう封印をされた魔法の財宝が詰まった蔵に押し込められた。そこでイグヴィルヴはより深い闇の神秘に興味を持ったのさ。」
「やがて彼女は大魔導師ザギグ・イラジャーンに取り入った。力あるウィザードだったが、純然たる欲望という名の武器には弱く、ほどなく彼とその弟子の不適切な関係を非難する者の耳を聞こえなくしたり、その姿を変えさせて口を封じるようになったんだ。」
「ザギグの指導の下、イグヴィルヴのアビスとその住人に対する執着は真っ盛りの頃だ。二人はアビス第四階層の欺きの大公、フラズ・アーブルを呼び出し、グレイホーク城の地下牢に幽閉してのけた。ザギグは弟子にこのフィーンドに接するときの心配だの注意だのを噛んで含ませたが、イグヴィルヴは捕らえたデーモンからずっと多くのものを手にした。欺きの大公が自由を求めて争う間、囁かれた偽りと虚実織り交ざった言の葉から、数えきれないほどの秘密を得たのさ。」
「ザギグとフラズ・アーブルからめぼしいものをすべて抜き取った後、イグヴィルヴは闇に紛れておさらばしたんだけれど、愛する師の書庫を荒らすのも忘れなかったんだ。彼女の持ち逃げした最も価値ある文書が魔法の解説を扱ったザギグの書で、これがイグヴィルヴのデモノミコンの基になった。彼女はザギグからお宝を奪っただけでなく、業績まで泥棒したのさ。」
「おやおや・・・何か問題があったみたいだね。でも、夜の間に盗まれた禁忌のブツの話なんかをしたせいじゃないよ? それが残酷で予期できない裏切りっていうやつさ。ザギグもきっと自分の恋人の頭に裏切りがいつからあったのか考えたことだろうね。」
求愛と惨禍
「イグヴィルヴがザギグの元を出奔してヤーチル山に逃れたとき、彼女の欲望はもっと力が欲しい、目に映る世界をもっと支配したいという単純なものだった。だから彼女が住処に選んだ場所は偶然でなく必然だったのさ。その山にはツォーカンスという名の魔導師が葬られていると言われていた。だがツォーカンスが実はハーフデーモンであり、その父フラズ・アーブルの欺きの力を受け継いでその事実を隠しおおせていたことを知っている定命の存在はほとんどいなかったのさ。」
「ザギグからかすめ取った束縛の知識とフラズ・アーブルとの対話で得た知識を活かし、イグヴィルヴはツォーカンスとの途方もない精神対決に打って出て見事に勝利を収めた。彼女に縛られたハーフデーモンは、長い年月もの間招請に応じては彼女がアビスのフィーンドに関して造詣を深めるのに一役買ったんだ。」
「新しい発見を武器にしつつ、それからのイグヴィルヴはデーモン・プリンスにグラズズトいう名を与えて牢に閉じ込めた。フラズ・アーブルの時と違い、すべてに通じる古代の洞窟に押し込めつつ、闇の王子の身体はイグヴィルヴの手元に置いたんだ。そのハンサムなお顔を毎日独り占めするためにね。ザギグの書を発展させ、デモノミコンの最初の章を執筆するためにグラズズトから情報を得るにつれ、イグヴィルヴはグラズズトがいないと我慢できないことに気が付いた。グラズズトだけが自分の関心を惹くのに値したんだ。」
「イグヴィルヴは魔女の女王として知られるようになり、ヤーチル山の麓のペレンランドを支配下におさめた。その力の源はイグヴィルヴが閉じ込めていたデーモンであったが、その間にイグヴィルヴが連れ合いとして見ていたのはグラズズトただ一人だった。ごくわずかにいる、彼女の宮廷に足を踏み入れて生きて帰ってきた者いわく、彼女の隣に闇の王子が座っていたそうだ。だが抜かりはない。グラズズトの意志は最初にアビスから引っ張り出されたときのまま、イグヴィルヴに束縛されていたのさ。」
「そしてイグヴィルヴとグラズズトの間に、穢れた魂の息子、アイウーズが産まれた。この忌み子は数えきれないくらいの厄災を世界にもたらし続けるんだが、この汚らわしい夫婦の落とし子について触れるのはまたにしておこう。少なくとも、今回はいい。」
「おそらく、かつてザギグを自身の虜にしたように、グラズズトのことを征服したという確信が自惚れにつながったんだろう。ひょっとすると前と同様、今回もうまくやったと思いこんでいたかったのかもね。どっちにしろ、闇の王子による避けられない裏切りは彼女にとっては驚きだったのさ。」
「頻繁な召喚の儀式のために、イグヴィルヴの聖域の下にあるアビスへの裂け目が危険な状態になったんだ。そこでグラズズトは(訳注 イグヴィルヴから現在の名前を与えられることによって)切り離されたツォーカンスの力を自分に戻してくれれば、アビスからの封印を施せるともちかけた。イグヴィルヴは了承したが、彼女が儀式を終えたとき、自分が飼いならしたと信じ込んでいたハーフデーモンは、圧倒するほどの凶暴さで殴りかかってきたのさ。」
「グラズズトは自らの女主人との戦い、そして彼女が裏切られたと分かったその瞬間を大いに楽しんだ。ひどく力を削がれていたが戦いには勝ち、グラズズトはイグヴィルヴを情け容赦なく叩きのめした。夫婦の憎悪からくるその情熱は互いの欲望ほどに激しく、両者の壮大な戦いはヤーチル山を根元から揺るがす。アイウーズですら争う二人を離そうとして、人間の部分とデーモンの部分、二つに割かれたんだ。」
「とうとう、グラズズトは連れからの束縛を絶ってアビスに還った。一方イグヴィルヴはというと、滅茶苦茶にされ、力のほとんどを奪われて打ち捨てられた。闇の王子は仕返しはできてもとどめを刺せずに去ったのか、あえてイグヴィルヴを生かしたのか疑問をはさむ者もいる。そうしたのは慈悲か、半死のまま捨てる方が残酷だからか、どっちだろうね?お前さんの今の心痛を思うに、答えを聞くのはよしておこう。」
ヒストリー・チェック
難易度20の<歴史>判定に成功すれば、イグヴィルヴがヤーチル山に要塞を構えて、アイウーズの補佐の元ペレンランドを支配していることを知っている。さらに30の<魔法学>または<歴史>判定に成功していれば、ツォーカンスの捕獲、イグヴィルヴがグラズズトとして首輪をつけることで力を抑え、その終いに戦いの末グラズズトの逃亡を許したことを把握している。
業とともに生きる
「その間何を分かち合ったにせよ、グラズズトはどうあっても自分のしたことを忘れないだろうとイグヴィルヴには分かっていた。力を盛り返し、領地がズタズタになったときに失われた魔法の宝物を取り返す途上にあり、魔女の母はグラズズトのエージェントが自分のことを突き止めるのではという恐れを抱いていたのさ。実行に移すのは早かった。闇の王子の残酷な気まぐれから逃れるため、二人はアザクラトとして知られる、三層からなる領域に移った。」
「あたしゃフィーンドの名前を挙げて自分の舌を汚しはするけれど、最も救いのないダンジョンであるゼラタールの街で起こった、非常に不愉快な悪行について話すつもりはないからね。汚らわしい行いの結果、さらなる怪物と共に新たな発見が産まれたってことさ。イグヴィルヴはああいう中で「お子様」とみられていたようで、そういうのは情け容赦なく獲物にされてしまう。そして、グラズズトは敵の目から自分の子供の素性と所在を隠しおおせるようえらい苦労をしたのさ。」
「グラズズトとイグヴィルヴは、彼らの間にある愛より大きなものは憎しみしかなく、彼らの間にある憎しみよりより大きなものは愛しかないことがわかった。闇の王子にいた他の配偶者を幻滅させて取り除かせ、イグヴィルヴはかつての囚人、そして恋人、今は捕らえ人の参謀兼愛人に納まって銀白宮(ぎんぱくきゅう)を闊歩したんだ。」
「彼女の助言とデーモンへの造詣は、グラズズトの策謀と征服計画に大いに役立った。イグヴィルヴは、グラズズトの敵にその信用する部下を物質界に放逐させ、そこで言葉にできないような荒廃をもたらさせるという策を多く画策している。そしてグラズズトの敵が十分に抗う力のない状況に陥れ、下級のデーモンの軍勢を召喚して戦場に送り込む。この召喚されたデーモン軍団はどんなところにも現れ、怒り狂い血に飢え、物質界にある国をいくつも滅亡へと導いたよ。」
「グラズズトは嫉妬から過去にイグヴィルヴと付き合いのあったどんなフィーンドも滅そうとした。もう狂気の沙汰にしか聞こえないんだが、フラズ・アーブルすらも、単に自分以外にかつてイグヴィルヴに囚われ、オモチャだったことがあるからっていうことで猛烈に攻め立てた。グラズズトを置いて、何人たりともそのような「特権」など認められないっていうことなんだって。」
「イグヴィルヴとグラズズトはいつも互いが張り巡らせる陰謀にそれはそれは慎重だったため、両者の関係には信頼というものがまったく欠けていた。もしそんな言葉が彼らの間にあるのならね。それにもかかわらず、この二人は爛れた絆に付け込もうという輩に対してはものすごい団結を見せた。グラズズトは、イグヴィルヴに近づく自らの敵にあえて寝取らせ、閨で得た秘密が敵の命取りになるという手口をよくやる。この手の密会が増えるたび、イグヴィルヴが焚き付ける闇の王子の嫉妬の炎はいや増すばかりで、そのたび本当にグラズズトのことを裏切るんじゃないかとわからなくなるね。」
「銀白宮は噂で渦巻いているよ。そのほとんどはひねくれた二人の行いからくる真実だけれど、地位や片割れを奪おうとする敵対者が流すデマだったりもする。数えきれないほどの敵が二人の仲を裂こうと試みている。闇の王子と魔女の母が組めば、アビスの階層など片っ端から征服してしまえるだけの実力があるからね。」
「物質界では無慈悲なるチューニィという名のデーモンが陰謀を企てたことがあって、とうとう腐敗した二人の結びつきを断つことに成功した。グラズズトを害そうと、そしてイグヴィルヴに自分の息子、アイウーズを巻き込んだ自らの計画で助力を得るために、チューニィはイグヴィルヴを魔法で拘束する闇の王子の力を無効化したんだ。」
「銀の宮殿中を大破壊の嵐が吹き荒れたけど、イグヴィルヴもグラズズトも決着をつけようとはしなかった。代わりに宮殿中の価値ある宝物を無に帰し、互いのお気に入りの召使や愛人を殺し、悪意に満ちた辛辣な言葉を不浄の舌で応酬するに留めたんだ。以前戦って、その後盛り返すまでのことを覚えていたのか、両者とも力を温存した。」
「とうとうグラズズトは、イグヴィルヴにアザクラトから安全に出られる道を授けた。デーモンの主人は、下僕にアストラル海のどこかにある彼女の領地まで儀式の研究や蓄えたレリックを運ばせた。デーモンの離婚騒動としちゃ、考えうる限り平和的な解決だよねぇ、そうは思わないかい?」
ヒストリー・チェック
難易度25の<魔法学>判定か難易度30の<歴史>判定に成功したキャラクターは、イグヴィルヴの虜囚、二人が「和解」したこと、二人の敵に対して行われた一連の策略と征服についての詳細、そして関係の破滅についても知っている。
危ういバランス
「そして今や二人の間には燻るような未練だけが残り、魔性のつがいは、互いが相手にした仕打ちですら自身を苦しめたんだ。二人の間に秘密などほとんど残っておらず、それゆえにあらゆる裏切り全てが茶番だったのかもと考えさせたのさ。」
「その裏腹に、グラズズトとイグヴィルヴはお互いにエージェントを使って、相手の企みを妨害させることに興じるようになった。互いの敵愾心は、今やかつて互いに親密な関係があったことを思い起こさせるためだけにある。二人の間で愛情として通る物は殺意に満ちた筋書きと狡猾な罠だけさ。」
「かつて他のデーモン・プリンスの力を削ぐために二人が組んでやっていた策略と比べても、なんというか、より陰険になっているね。グラズズトもイグヴィルヴもお互いを陥れようという人物なら誰にでも援助の手を差し伸べるよ。だがそれが額面通りの物であったことなど一度もない。お互いにね。時に片割れが、相手の側にプレゼントよろしく陰謀家を相手の玄関先に送りつける。多くの冒険者は自分たちが彼らの大事な記念日の「引き出物」だってことを知ってさえいれば首がつながったのにさ。援助を授かったんじゃない、自分たち自身が相手への贈り物だったんだってね。気が付いた時にゃもう遅いよ。」
「一方で、グラズズトとイグヴィルヴのガキどもは次元界をうろついていた。あるときは親の七光りをちらつかせ、報復を恐れて思いきった手に出られない敵を破滅させたりもしたんだが、たいがい奴らは闇の王子と魔女の母の狭間に置かれる永遠の駒さ。姿が見えなくなって久しい両親の姿を愚かにも追い求め、偶然出会うわずかな可能性にかけて・・・何を求めているんだろうかねぇ?愛?」
「友よ、お言い。邪悪の血を受け継ぐものをどのくらい知っている?お前さんはどうしたいのかな?残念ながら、イグヴィルヴとグラズズトの出来事にはお前さんが気付くよりも多くの中身があるんだよ。」
「お前さんはそのような両親から生まれた子供など腐敗の権化そのものだと信じるかい?アビスの子宮から生まれた相手を愛してしまったことに気が付いただろうか?そしてもっと大事なのは、そんな女があんたのことを愛するだろうか?あたしらがあんたの失われた恋人を探している間、今の問いをよく考えてほしいね。間違いなく見つかるよ、二人で話し合うことが山とあるだろうからさ、その時にまた別な話をしてあげよう。」
ヒストリー・チェック
難易度25の<魔法学>または<歴史>判定に成功すれば、イグヴィルヴとグラズズトとの間にあったといういわば休戦協定のような秘密の取引があったこと、そして彼らの子供たちが物質界やさらにその向こうまであまねく散らばっていることを知っている。
フック
グラズズトとイグヴィルヴのよじれた関係をキャンペーンに使おうと考えているダンジョン・マスターに以下のフックを用意した。参考までにサプリ「デモノミコン」や「次元界の書」を参照してほしい。
◆グラズズトとイグヴィルヴの子供たちには、自らに眠る真の遺産に気が付いていないことがよくある。PCやNPCの中に、自分にグラズズトかイグヴィルヴ、あるいは両方の血を受け継いでいるかもしれないと疑い、闇の王子や魔女の母が伏せたままにしておきたい答えを探し求めることだろう。パーティーは「我儘な子供」を誘拐する計略に巻き込まれることになる。陰で糸を引いているのは親の片方か・・・はたまた大勢いるその敵か。
◆アザクラトにおいて虜囚に遭うまでの間、最大級に強力な力を持つアーティファクトやレリックのいくつかがイグヴィルヴの手にあった。冒険者はダーウーズ・ウンデラウス・ランタン(ダーウードの不思議なランタン)、プリズン・オヴ・ザギグ(ザギグの檻)、6章からなるデモノミコンの1章の噂を耳にするかもしれない。だがこの話は失った自分の物を取り返したいという魔女の母との競争にもなるわけだ。
◆賢者いわく、イグヴィルヴが真に愛したのはその娘ドレンザだけであると。この子供は謎に包まれており、父親が誰かということ、彼女がヴァンパイアであることの原因が分かっていない。彼女はその母によって破壊されたツォーカンスの洞窟跡において、守ってやった結果か、楽にしてやったためかはわからないが冒険者の手にかかった。娘を生に戻すべく、魔女の母は極秘裏に、だが絶え間なくその魂を探し求めている。イグヴィルヴは目的のためなら、どんな手段やクリーチャーを使うことも厭わない。それが英雄であったとしても・・・
著者について
ジョン“ロス”ロッソマーニョは以前にもダンジョンズ&ドラゴンズで書いたことのあるフリーランスのライターだ。彼が以前にプレイしたグレイホークでのゲームでの経験のみならず、絡み合った爛れた関係を扱う緻密さが記事にエッジを利かせている。「イグヴィルヴっていったい何よ?」という素晴らしい質問をしてくれた女性と最近結婚した彼は、自分のことを幸せ者だと思っているようだ。
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ヒストリー・チェック:イグヴィルヴとグラズズト
ジョン“ロス”ロッソマーニョ
シリーズ、ヒストリー・チェックではダンジョンズ&ドラゴンズの豊富な歴史を解き明かしていく。それぞれの記事でゲームの象徴的な英雄、悪役、組織、出来事に新解釈を加えて可能な限り複雑に絡む歴史を解きほぐす。本文のほか、コラムでは技能チャレンジに成功したキャラクターがどのようなことを知っているか示していく。今回のお題は魔女の母、そして悪名高きデモノミコンの著者でもあるイグヴィルヴ、そしてある時は敵、またある時は恋人のデーモンの王子、グラズズトについてみていこう。
愛は失われず
「失われた恋人を探し求める男ほど尋常ならざるものはないね。目を見ればわかるよ。お探しの人はお前さんを闇の中に置き去りにし、彼女を見つけるためにはあたしらの助けが入り用ってわけだ。」
「気楽にしな、友よ。彼女はもうあたしらの手の中さ。あたしらもまた彼女のことを探していたと聞かされてもお前さんは驚かないと思うけどね。あたしらの情報をお前さんと共有することで、最後はどっちも得をすることになるよ。いやね、一族の者が今晩遅くに戻って、あんたの恋人がどこで何してるか教えてくれることになってるんだ。お前さんから逃げることができたとしても、あたしらからは逃げられないよ。」
「そんなしかめっ面をしなさんな。お前さんはきっとあたしらが彼女のことを狩ろうとしているとでも思ってるんだろう。友よ、心配しなさんな。一族の者が戻るまで、時間つぶしがてらお前さんに昔々のロマンスのお話をして差しあげよう。多くのバードが多元宇宙の中でも最大規模の恋物語と思っているよ。欲望という形定まらざるものの根底を明らかにしてくれるんだ。」
「それじゃあ、イグウィルヴとグラズズトの話でもして、お前さんを悶々とさせてあげようじゃないかね。お前さんの心を支配している愛について省みてみるがいいよ。彼女の言葉や行動を思い返してご覧。そうすればお前さんの身に何が待っているかも腰を据えて考えられるってものさ。」
ザロヴァン族
この「ヒストリー・チェック」の語り手はヴィスタニの一員であるザロヴァン族であり、シャドウフェルとほかの次元界を部屋から部屋のごとく簡単に行き来する謎めいた放浪者たちだ。ザロヴァン族は過去と関連する未来の出来事に重きを置いており、寛容の精神、暗い陰謀、謎めいた好意から、ジョルジョ(ヴィスタニ外の者)に対して知恵を授けることがあるかもしれない。ヴィスタニに関しては、Player’s Option: Heroes of Shadow、The Shadowfell: Gloomwrought and Beyond、Dragon誌380号の「ヴィスタニ」(すべて未訳)に記載されている。
かの古き黒魔術
「では、我らが乙女のことから始めようかね。その娘は長年に渡って様々に名前を変えて伝えられている。ナターシャ、ヒューラ、そしてターシャ、最後にイグヴィルヴ。イグヴィルヴはお前さんの記憶を刺激したみたいだね?ついでに言うなら、知ってると言っても名前を聞いただけってところだろう。お前さんはデーモンの召喚についてあれこれ議論するより、農夫に救いの手を差し伸べる人のようだからね。そしてお前さんのツレは芸術の類の弟子で、そのいなくなった相手は何かにご執心じゃなかったかい?どっちだって構いはしないよ。あたしゃお前さんがそんな泥沼にはまるほど愚かじゃないことを願ってるのさ。」
「イグヴィルヴは魔女の母として、デモノミコンを著した一人として知られているね。敢えて言うけど、彼女が書いたっていうのは言い過ぎさ。というのも、イグヴィルヴはすべての魔女の母、バーバ・ヤガーの義理の娘なんだ。そしてこれからお前さんもおなじみの名前が出てくるよ。」
「イグヴィルヴの闇の修業が始まったのは悪名高き老婆の小屋の中。若さゆえの犯行の懲罰として、悪い定命の者が近づかれないよう封印をされた魔法の財宝が詰まった蔵に押し込められた。そこでイグヴィルヴはより深い闇の神秘に興味を持ったのさ。」
「やがて彼女は大魔導師ザギグ・イラジャーンに取り入った。力あるウィザードだったが、純然たる欲望という名の武器には弱く、ほどなく彼とその弟子の不適切な関係を非難する者の耳を聞こえなくしたり、その姿を変えさせて口を封じるようになったんだ。」
「ザギグの指導の下、イグヴィルヴのアビスとその住人に対する執着は真っ盛りの頃だ。二人はアビス第四階層の欺きの大公、フラズ・アーブルを呼び出し、グレイホーク城の地下牢に幽閉してのけた。ザギグは弟子にこのフィーンドに接するときの心配だの注意だのを噛んで含ませたが、イグヴィルヴは捕らえたデーモンからずっと多くのものを手にした。欺きの大公が自由を求めて争う間、囁かれた偽りと虚実織り交ざった言の葉から、数えきれないほどの秘密を得たのさ。」
「ザギグとフラズ・アーブルからめぼしいものをすべて抜き取った後、イグヴィルヴは闇に紛れておさらばしたんだけれど、愛する師の書庫を荒らすのも忘れなかったんだ。彼女の持ち逃げした最も価値ある文書が魔法の解説を扱ったザギグの書で、これがイグヴィルヴのデモノミコンの基になった。彼女はザギグからお宝を奪っただけでなく、業績まで泥棒したのさ。」
「おやおや・・・何か問題があったみたいだね。でも、夜の間に盗まれた禁忌のブツの話なんかをしたせいじゃないよ? それが残酷で予期できない裏切りっていうやつさ。ザギグもきっと自分の恋人の頭に裏切りがいつからあったのか考えたことだろうね。」
求愛と惨禍
「イグヴィルヴがザギグの元を出奔してヤーチル山に逃れたとき、彼女の欲望はもっと力が欲しい、目に映る世界をもっと支配したいという単純なものだった。だから彼女が住処に選んだ場所は偶然でなく必然だったのさ。その山にはツォーカンスという名の魔導師が葬られていると言われていた。だがツォーカンスが実はハーフデーモンであり、その父フラズ・アーブルの欺きの力を受け継いでその事実を隠しおおせていたことを知っている定命の存在はほとんどいなかったのさ。」
「ザギグからかすめ取った束縛の知識とフラズ・アーブルとの対話で得た知識を活かし、イグヴィルヴはツォーカンスとの途方もない精神対決に打って出て見事に勝利を収めた。彼女に縛られたハーフデーモンは、長い年月もの間招請に応じては彼女がアビスのフィーンドに関して造詣を深めるのに一役買ったんだ。」
「新しい発見を武器にしつつ、それからのイグヴィルヴはデーモン・プリンスにグラズズトいう名を与えて牢に閉じ込めた。フラズ・アーブルの時と違い、すべてに通じる古代の洞窟に押し込めつつ、闇の王子の身体はイグヴィルヴの手元に置いたんだ。そのハンサムなお顔を毎日独り占めするためにね。ザギグの書を発展させ、デモノミコンの最初の章を執筆するためにグラズズトから情報を得るにつれ、イグヴィルヴはグラズズトがいないと我慢できないことに気が付いた。グラズズトだけが自分の関心を惹くのに値したんだ。」
「イグヴィルヴは魔女の女王として知られるようになり、ヤーチル山の麓のペレンランドを支配下におさめた。その力の源はイグヴィルヴが閉じ込めていたデーモンであったが、その間にイグヴィルヴが連れ合いとして見ていたのはグラズズトただ一人だった。ごくわずかにいる、彼女の宮廷に足を踏み入れて生きて帰ってきた者いわく、彼女の隣に闇の王子が座っていたそうだ。だが抜かりはない。グラズズトの意志は最初にアビスから引っ張り出されたときのまま、イグヴィルヴに束縛されていたのさ。」
「そしてイグヴィルヴとグラズズトの間に、穢れた魂の息子、アイウーズが産まれた。この忌み子は数えきれないくらいの厄災を世界にもたらし続けるんだが、この汚らわしい夫婦の落とし子について触れるのはまたにしておこう。少なくとも、今回はいい。」
「おそらく、かつてザギグを自身の虜にしたように、グラズズトのことを征服したという確信が自惚れにつながったんだろう。ひょっとすると前と同様、今回もうまくやったと思いこんでいたかったのかもね。どっちにしろ、闇の王子による避けられない裏切りは彼女にとっては驚きだったのさ。」
「頻繁な召喚の儀式のために、イグヴィルヴの聖域の下にあるアビスへの裂け目が危険な状態になったんだ。そこでグラズズトは(訳注 イグヴィルヴから現在の名前を与えられることによって)切り離されたツォーカンスの力を自分に戻してくれれば、アビスからの封印を施せるともちかけた。イグヴィルヴは了承したが、彼女が儀式を終えたとき、自分が飼いならしたと信じ込んでいたハーフデーモンは、圧倒するほどの凶暴さで殴りかかってきたのさ。」
「グラズズトは自らの女主人との戦い、そして彼女が裏切られたと分かったその瞬間を大いに楽しんだ。ひどく力を削がれていたが戦いには勝ち、グラズズトはイグヴィルヴを情け容赦なく叩きのめした。夫婦の憎悪からくるその情熱は互いの欲望ほどに激しく、両者の壮大な戦いはヤーチル山を根元から揺るがす。アイウーズですら争う二人を離そうとして、人間の部分とデーモンの部分、二つに割かれたんだ。」
「とうとう、グラズズトは連れからの束縛を絶ってアビスに還った。一方イグヴィルヴはというと、滅茶苦茶にされ、力のほとんどを奪われて打ち捨てられた。闇の王子は仕返しはできてもとどめを刺せずに去ったのか、あえてイグヴィルヴを生かしたのか疑問をはさむ者もいる。そうしたのは慈悲か、半死のまま捨てる方が残酷だからか、どっちだろうね?お前さんの今の心痛を思うに、答えを聞くのはよしておこう。」
ヒストリー・チェック
難易度20の<歴史>判定に成功すれば、イグヴィルヴがヤーチル山に要塞を構えて、アイウーズの補佐の元ペレンランドを支配していることを知っている。さらに30の<魔法学>または<歴史>判定に成功していれば、ツォーカンスの捕獲、イグヴィルヴがグラズズトとして首輪をつけることで力を抑え、その終いに戦いの末グラズズトの逃亡を許したことを把握している。
業とともに生きる
「その間何を分かち合ったにせよ、グラズズトはどうあっても自分のしたことを忘れないだろうとイグヴィルヴには分かっていた。力を盛り返し、領地がズタズタになったときに失われた魔法の宝物を取り返す途上にあり、魔女の母はグラズズトのエージェントが自分のことを突き止めるのではという恐れを抱いていたのさ。実行に移すのは早かった。闇の王子の残酷な気まぐれから逃れるため、二人はアザクラトとして知られる、三層からなる領域に移った。」
「あたしゃフィーンドの名前を挙げて自分の舌を汚しはするけれど、最も救いのないダンジョンであるゼラタールの街で起こった、非常に不愉快な悪行について話すつもりはないからね。汚らわしい行いの結果、さらなる怪物と共に新たな発見が産まれたってことさ。イグヴィルヴはああいう中で「お子様」とみられていたようで、そういうのは情け容赦なく獲物にされてしまう。そして、グラズズトは敵の目から自分の子供の素性と所在を隠しおおせるようえらい苦労をしたのさ。」
「グラズズトとイグヴィルヴは、彼らの間にある愛より大きなものは憎しみしかなく、彼らの間にある憎しみよりより大きなものは愛しかないことがわかった。闇の王子にいた他の配偶者を幻滅させて取り除かせ、イグヴィルヴはかつての囚人、そして恋人、今は捕らえ人の参謀兼愛人に納まって銀白宮(ぎんぱくきゅう)を闊歩したんだ。」
「彼女の助言とデーモンへの造詣は、グラズズトの策謀と征服計画に大いに役立った。イグヴィルヴは、グラズズトの敵にその信用する部下を物質界に放逐させ、そこで言葉にできないような荒廃をもたらさせるという策を多く画策している。そしてグラズズトの敵が十分に抗う力のない状況に陥れ、下級のデーモンの軍勢を召喚して戦場に送り込む。この召喚されたデーモン軍団はどんなところにも現れ、怒り狂い血に飢え、物質界にある国をいくつも滅亡へと導いたよ。」
「グラズズトは嫉妬から過去にイグヴィルヴと付き合いのあったどんなフィーンドも滅そうとした。もう狂気の沙汰にしか聞こえないんだが、フラズ・アーブルすらも、単に自分以外にかつてイグヴィルヴに囚われ、オモチャだったことがあるからっていうことで猛烈に攻め立てた。グラズズトを置いて、何人たりともそのような「特権」など認められないっていうことなんだって。」
「イグヴィルヴとグラズズトはいつも互いが張り巡らせる陰謀にそれはそれは慎重だったため、両者の関係には信頼というものがまったく欠けていた。もしそんな言葉が彼らの間にあるのならね。それにもかかわらず、この二人は爛れた絆に付け込もうという輩に対してはものすごい団結を見せた。グラズズトは、イグヴィルヴに近づく自らの敵にあえて寝取らせ、閨で得た秘密が敵の命取りになるという手口をよくやる。この手の密会が増えるたび、イグヴィルヴが焚き付ける闇の王子の嫉妬の炎はいや増すばかりで、そのたび本当にグラズズトのことを裏切るんじゃないかとわからなくなるね。」
「銀白宮は噂で渦巻いているよ。そのほとんどはひねくれた二人の行いからくる真実だけれど、地位や片割れを奪おうとする敵対者が流すデマだったりもする。数えきれないほどの敵が二人の仲を裂こうと試みている。闇の王子と魔女の母が組めば、アビスの階層など片っ端から征服してしまえるだけの実力があるからね。」
「物質界では無慈悲なるチューニィという名のデーモンが陰謀を企てたことがあって、とうとう腐敗した二人の結びつきを断つことに成功した。グラズズトを害そうと、そしてイグヴィルヴに自分の息子、アイウーズを巻き込んだ自らの計画で助力を得るために、チューニィはイグヴィルヴを魔法で拘束する闇の王子の力を無効化したんだ。」
「銀の宮殿中を大破壊の嵐が吹き荒れたけど、イグヴィルヴもグラズズトも決着をつけようとはしなかった。代わりに宮殿中の価値ある宝物を無に帰し、互いのお気に入りの召使や愛人を殺し、悪意に満ちた辛辣な言葉を不浄の舌で応酬するに留めたんだ。以前戦って、その後盛り返すまでのことを覚えていたのか、両者とも力を温存した。」
「とうとうグラズズトは、イグヴィルヴにアザクラトから安全に出られる道を授けた。デーモンの主人は、下僕にアストラル海のどこかにある彼女の領地まで儀式の研究や蓄えたレリックを運ばせた。デーモンの離婚騒動としちゃ、考えうる限り平和的な解決だよねぇ、そうは思わないかい?」
ヒストリー・チェック
難易度25の<魔法学>判定か難易度30の<歴史>判定に成功したキャラクターは、イグヴィルヴの虜囚、二人が「和解」したこと、二人の敵に対して行われた一連の策略と征服についての詳細、そして関係の破滅についても知っている。
危ういバランス
「そして今や二人の間には燻るような未練だけが残り、魔性のつがいは、互いが相手にした仕打ちですら自身を苦しめたんだ。二人の間に秘密などほとんど残っておらず、それゆえにあらゆる裏切り全てが茶番だったのかもと考えさせたのさ。」
「その裏腹に、グラズズトとイグヴィルヴはお互いにエージェントを使って、相手の企みを妨害させることに興じるようになった。互いの敵愾心は、今やかつて互いに親密な関係があったことを思い起こさせるためだけにある。二人の間で愛情として通る物は殺意に満ちた筋書きと狡猾な罠だけさ。」
「かつて他のデーモン・プリンスの力を削ぐために二人が組んでやっていた策略と比べても、なんというか、より陰険になっているね。グラズズトもイグヴィルヴもお互いを陥れようという人物なら誰にでも援助の手を差し伸べるよ。だがそれが額面通りの物であったことなど一度もない。お互いにね。時に片割れが、相手の側にプレゼントよろしく陰謀家を相手の玄関先に送りつける。多くの冒険者は自分たちが彼らの大事な記念日の「引き出物」だってことを知ってさえいれば首がつながったのにさ。援助を授かったんじゃない、自分たち自身が相手への贈り物だったんだってね。気が付いた時にゃもう遅いよ。」
「一方で、グラズズトとイグヴィルヴのガキどもは次元界をうろついていた。あるときは親の七光りをちらつかせ、報復を恐れて思いきった手に出られない敵を破滅させたりもしたんだが、たいがい奴らは闇の王子と魔女の母の狭間に置かれる永遠の駒さ。姿が見えなくなって久しい両親の姿を愚かにも追い求め、偶然出会うわずかな可能性にかけて・・・何を求めているんだろうかねぇ?愛?」
「友よ、お言い。邪悪の血を受け継ぐものをどのくらい知っている?お前さんはどうしたいのかな?残念ながら、イグヴィルヴとグラズズトの出来事にはお前さんが気付くよりも多くの中身があるんだよ。」
「お前さんはそのような両親から生まれた子供など腐敗の権化そのものだと信じるかい?アビスの子宮から生まれた相手を愛してしまったことに気が付いただろうか?そしてもっと大事なのは、そんな女があんたのことを愛するだろうか?あたしらがあんたの失われた恋人を探している間、今の問いをよく考えてほしいね。間違いなく見つかるよ、二人で話し合うことが山とあるだろうからさ、その時にまた別な話をしてあげよう。」
ヒストリー・チェック
難易度25の<魔法学>または<歴史>判定に成功すれば、イグヴィルヴとグラズズトとの間にあったといういわば休戦協定のような秘密の取引があったこと、そして彼らの子供たちが物質界やさらにその向こうまであまねく散らばっていることを知っている。
フック
グラズズトとイグヴィルヴのよじれた関係をキャンペーンに使おうと考えているダンジョン・マスターに以下のフックを用意した。参考までにサプリ「デモノミコン」や「次元界の書」を参照してほしい。
◆グラズズトとイグヴィルヴの子供たちには、自らに眠る真の遺産に気が付いていないことがよくある。PCやNPCの中に、自分にグラズズトかイグヴィルヴ、あるいは両方の血を受け継いでいるかもしれないと疑い、闇の王子や魔女の母が伏せたままにしておきたい答えを探し求めることだろう。パーティーは「我儘な子供」を誘拐する計略に巻き込まれることになる。陰で糸を引いているのは親の片方か・・・はたまた大勢いるその敵か。
◆アザクラトにおいて虜囚に遭うまでの間、最大級に強力な力を持つアーティファクトやレリックのいくつかがイグヴィルヴの手にあった。冒険者はダーウーズ・ウンデラウス・ランタン(ダーウードの不思議なランタン)、プリズン・オヴ・ザギグ(ザギグの檻)、6章からなるデモノミコンの1章の噂を耳にするかもしれない。だがこの話は失った自分の物を取り返したいという魔女の母との競争にもなるわけだ。
◆賢者いわく、イグヴィルヴが真に愛したのはその娘ドレンザだけであると。この子供は謎に包まれており、父親が誰かということ、彼女がヴァンパイアであることの原因が分かっていない。彼女はその母によって破壊されたツォーカンスの洞窟跡において、守ってやった結果か、楽にしてやったためかはわからないが冒険者の手にかかった。娘を生に戻すべく、魔女の母は極秘裏に、だが絶え間なくその魂を探し求めている。イグヴィルヴは目的のためなら、どんな手段やクリーチャーを使うことも厭わない。それが英雄であったとしても・・・
著者について
ジョン“ロス”ロッソマーニョは以前にもダンジョンズ&ドラゴンズで書いたことのあるフリーランスのライターだ。彼が以前にプレイしたグレイホークでのゲームでの経験のみならず、絡み合った爛れた関係を扱う緻密さが記事にエッジを利かせている。「イグヴィルヴっていったい何よ?」という素晴らしい質問をしてくれた女性と最近結婚した彼は、自分のことを幸せ者だと思っているようだ。
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