DAC愛知 設定資料その2
2011年6月28日 ゲーム コメント (4)バリンスゲイトのドラゴン
実質的な政務を市長に任せるようになってから、ドラゴンが姿を見せることはほとんどなくなった。市長および市長からの使い、そしてわずかな従者を除いてこのドラゴンの姿を見る者はまずいない。
冒険者が(市長などを通して)ドラゴンとの謁見を要求した場合、よほどの理由がない限りドラゴンは承諾しない。そうせざるを得ない場合、自らの巣穴ではなく、街のどこかを指定して待ち合わせをする。ひよこを連れた老人や、5つ首のドラゴン(ゴールド、シルヴァー、ブロンズ、ブラス、ミスラル)のアミュレットを身に着けた女性に姿を変えて現れる。その信条によっては眉をしかめる者もいるが、自身の生き方を示したドラゴンなりのユーモアなのだろう。
バリンスゲイトの市長
市長の仕事は多岐にわたる。市の重要な取り決めや会議の主催から、ドラゴンがいないときの代理、さらにこの市を力づくで我が物にしようとする不届き者が現れたとき、軍を率いて示威的に市の護りを示す役目まで負っている。もちろん、この街の最高戦力はドラゴンなのだが、お出まし願うのはいよいよもって奥の手だ。
だが、それよりも大事な役目はドラゴンの意志を遂行すること。別にドラゴンは暴君でも暗君でもないが、そのエージェントとしての役割に市長は細心の注意を払う。いかに権限を持とうと、自らの立場はドラゴンの信任あってのものなのだ。
歴代の市長の特徴として、任期が一定しない。1年ともたなかった者もいるし、数十年にわたって勤め上げた者もいる。種族もまちまちで、ヒューマン、エルフ、ドラウと多岐にわたる。一方で市長となる、言い方を変えるとドラゴンに選ばれる者は女性が多く、有能で、特に商才や宝物に関する知識はずば抜けている。
市の仕事というわけではないが、市長にはもう一つ大事な務めがある。ドラゴンを言いくるめ、自身にとって代わろうとする不相応な野心を持つ痴れ者を排除することだ。この市の短い歴史の中に、市長の代理人としてドラゴンの巣穴に赴き、「不興を招いて」二度と出てこられなかったものが相当いる。事情を知る者はこの始末を「巣穴送り」と呼ぶ。
現在の市長は手紙の署名通り、スティーラ=デイブリンガー。エラドリンの中年の女性で、左目につけた眼帯が印象的だ。その眼帯は伊達で、実際には常人には計り知れない何かが見えるため、普段は隠して見えないようにしていると噂する者もいるが、本人がそれについて語ることはない。
バリンスゲイトの住人
まず言えるのは、バリンスゲイトに「よそもの」、「流れ者」という見方はあまりない。誰もが来たい時に来て、居たいだけ居て、去りたければ去っていく。いた期間が3日か30年かというだけで、それで何か違ってくるだろうか。そんなことをあえて口にするのは、「古くからの」、「由緒正しい」という言葉が好きなお貴族様くらいだろう。連中にとって皮肉なことに、それを言えば言うほど己の出自-つまり何代かさかのぼればケチな盗賊でしかなく、ドラゴンに認められてそう名乗れているだけ-なのをばらしているのだが。お里の話は彼らと交渉したいならタブーであり、挑発したいなら最高の手段だ。
また、バリンスゲイトには、るつぼと言ってよいくらいの多様な人種が存在する。数でいえば約一万人、その7割ほどがヒューマンとはいえ、ドワーフ、エルフ、ドラゴンボーン、エラドリンから、他所では疑いの目がついて回るようなチェンジリング、オーク、ティーフリング、はてはドラウに至るまでありとあらゆる種族がドラゴンのもと共存している。それはドラゴンの掟のためであったり、己の利益のためであったりするが、個人的な好き嫌いをひとまず棚に上げられさえすれば、バリンスゲイトで成功するチャンスは十分にあるだろう。一つ補足しておくと、ゴブリンやコボルトもどこかの店やギルドで下働きし、街はずれにあるスラムに住み着いている。連中は街の出来事を案外よく知っているかもしれない。話をさせたいならお小遣いがいる。その口止めをしたいなら、もっとお小遣いがいる。口止めをした口を割らせたいなら、もっともっとお小遣いがいる。
実質的な政務を市長に任せるようになってから、ドラゴンが姿を見せることはほとんどなくなった。市長および市長からの使い、そしてわずかな従者を除いてこのドラゴンの姿を見る者はまずいない。
冒険者が(市長などを通して)ドラゴンとの謁見を要求した場合、よほどの理由がない限りドラゴンは承諾しない。そうせざるを得ない場合、自らの巣穴ではなく、街のどこかを指定して待ち合わせをする。ひよこを連れた老人や、5つ首のドラゴン(ゴールド、シルヴァー、ブロンズ、ブラス、ミスラル)のアミュレットを身に着けた女性に姿を変えて現れる。その信条によっては眉をしかめる者もいるが、自身の生き方を示したドラゴンなりのユーモアなのだろう。
バリンスゲイトの市長
市長の仕事は多岐にわたる。市の重要な取り決めや会議の主催から、ドラゴンがいないときの代理、さらにこの市を力づくで我が物にしようとする不届き者が現れたとき、軍を率いて示威的に市の護りを示す役目まで負っている。もちろん、この街の最高戦力はドラゴンなのだが、お出まし願うのはいよいよもって奥の手だ。
だが、それよりも大事な役目はドラゴンの意志を遂行すること。別にドラゴンは暴君でも暗君でもないが、そのエージェントとしての役割に市長は細心の注意を払う。いかに権限を持とうと、自らの立場はドラゴンの信任あってのものなのだ。
歴代の市長の特徴として、任期が一定しない。1年ともたなかった者もいるし、数十年にわたって勤め上げた者もいる。種族もまちまちで、ヒューマン、エルフ、ドラウと多岐にわたる。一方で市長となる、言い方を変えるとドラゴンに選ばれる者は女性が多く、有能で、特に商才や宝物に関する知識はずば抜けている。
市の仕事というわけではないが、市長にはもう一つ大事な務めがある。ドラゴンを言いくるめ、自身にとって代わろうとする不相応な野心を持つ痴れ者を排除することだ。この市の短い歴史の中に、市長の代理人としてドラゴンの巣穴に赴き、「不興を招いて」二度と出てこられなかったものが相当いる。事情を知る者はこの始末を「巣穴送り」と呼ぶ。
現在の市長は手紙の署名通り、スティーラ=デイブリンガー。エラドリンの中年の女性で、左目につけた眼帯が印象的だ。その眼帯は伊達で、実際には常人には計り知れない何かが見えるため、普段は隠して見えないようにしていると噂する者もいるが、本人がそれについて語ることはない。
バリンスゲイトの住人
まず言えるのは、バリンスゲイトに「よそもの」、「流れ者」という見方はあまりない。誰もが来たい時に来て、居たいだけ居て、去りたければ去っていく。いた期間が3日か30年かというだけで、それで何か違ってくるだろうか。そんなことをあえて口にするのは、「古くからの」、「由緒正しい」という言葉が好きなお貴族様くらいだろう。連中にとって皮肉なことに、それを言えば言うほど己の出自-つまり何代かさかのぼればケチな盗賊でしかなく、ドラゴンに認められてそう名乗れているだけ-なのをばらしているのだが。お里の話は彼らと交渉したいならタブーであり、挑発したいなら最高の手段だ。
また、バリンスゲイトには、るつぼと言ってよいくらいの多様な人種が存在する。数でいえば約一万人、その7割ほどがヒューマンとはいえ、ドワーフ、エルフ、ドラゴンボーン、エラドリンから、他所では疑いの目がついて回るようなチェンジリング、オーク、ティーフリング、はてはドラウに至るまでありとあらゆる種族がドラゴンのもと共存している。それはドラゴンの掟のためであったり、己の利益のためであったりするが、個人的な好き嫌いをひとまず棚に上げられさえすれば、バリンスゲイトで成功するチャンスは十分にあるだろう。一つ補足しておくと、ゴブリンやコボルトもどこかの店やギルドで下働きし、街はずれにあるスラムに住み着いている。連中は街の出来事を案外よく知っているかもしれない。話をさせたいならお小遣いがいる。その口止めをしたいなら、もっとお小遣いがいる。口止めをした口を割らせたいなら、もっともっとお小遣いがいる。
DAC愛知 設定資料その1
2011年6月19日 ゲーム勇敢で名誉ある冒険者たちへ
バリンスゲイトの市長、スティーラ・デイブリンガーより
バリンスゲイトを預かる身として、あなたがたに調査をお願いしたい。
ここ数か月というもの、この街の犯罪は倍になり、市当局への襲撃も後を絶たない。
街を荒らそうと、とりわけ市の統制力を弱めようとしているのが目的と思われるが、
一連の出来事の関連性や手引きをしている黒幕が分かっていない。
情けない話だが、我々は外部からの助けなしでは問題を解決できない状況にある。
君たちのような人材がまさに必要とされている。
知っての通り、バリンスゲイトは周囲との貿易によって成り立つ街であり、
この街の機能が止まるということは、地域全体が立ち行かないことを意味する。
災禍はいずれバリンスゲイトの外にも広がる。あなたがたならお分かりだろう。
この手紙を運んだ使者にはすぐに返事を持ち帰るよう言ってある。
事は急を要するのだ。
もちろん、報酬は惜しまない。それは私の意志でもあり、竜の意志でもある。
平和のためにあなたがたの力を貸してほしい。
メインクエスト:黒幕の正体を突き止め、バリンスゲイトに平和を取り戻す。
バリンスゲイトの歴史
この街を作ったのはドラゴンだ。歴史家も町人もみな口を揃えて言う。
もともとこのあたり一帯にあったのは、開拓民の集落などではなく、むしろあたり一帯を略奪していた山賊たちの根城だった。ほどなく彼らは、自らが本拠地を構えたすぐ近くにドラゴンの巣穴があることを知ることになる。おっかなびっくり、彼らは貢物を差し出して自らの「稼業」を認めてもらおうとした。
当初無関心であったドラゴンだったが、やがてどうすれば目の前の財宝を倍にできるか考えるようになる。そして出した結論は「自らが関与してこれを元手に商売をする」というものだった。ほどなく山賊どもの首領は「ドラゴン並みの力を持った奴」になる。
200年ほどの時が過ぎ、山賊どもの根拠地は商館の並ぶ貿易拠点に、古くからの山賊は貴族に様変わりしていた。みなドラゴンの知恵である。竜の権威と力を背景に、バリンスゲイトは1本の苗木が大樹に育つくらいの短い期間で大いなる変貌を遂げたのだ。
街に一通りの経済と治安が整うと、ドラゴンは表立って街に関わるのをやめ、代わりに市長をたてて代わりに統治させることにした。ドラゴンの意志を代弁する市長は傀儡に過ぎないとも言えるが、この統治方法は下手な王政よりよほど安定したシステムでもある。
バリンスゲイトの異変
それが明らかになったのはつい数か月前から。それまで順調に行われていたはずの統治が機能しなくなったのだ。思えば兆候は以前からあった。護民官に任命するはずの人物が直前に川に浮いていた。許可したはずのペイロア寺院建設は全く進んでいない。だが治安パトロール隊が襲われて死傷者を出したり、魂が抜かれたかのように長らく人事不省になり、目を覚ますや気が狂ったとしか思えないように暴れる人間が出たりする事例が頻発するようになり、収拾困難なことが頻発している。何が起こるかわからないなか、住民は互いを疑うようになり、街は緊張が支配している。市長の書いた手紙は多少誇張したところはあるものの、決して誤りではない。
バリンスゲイトの法(ルール)
法というほどのものでもない。ぶっちゃければドラゴンこそが掟でありルールだ。
そうは言っても、バリンスゲイトを統治するドラゴンは、ドラゴンとしては最大級に柔軟でバランスのとれた思考の持ち主だ。ヒューマンであろうとドラウであろうと分け隔てなく、自分のコントロールできる範囲内で好きにやらせることで、結果的に最大の利益を産むという方針のもと、多様な種族がそれなりに共存している。(もっとも、今回の異変でその共存も危ういものになりつつある。) もちろん、デーモンのような存在やイリシッドのような捕食者が出入りを許されるはずはない。
冒険者に関係しそうな決まりとしては以下のようなものがある。
敵対する種族・宗派・部族の人間であっても、自衛以上の争いは許されない。降参をした者に、それ以上の危害を加えることは禁じられる。(この行間にある不文律として、喧嘩は重傷状態になったら負け、いったん降参をし、隙を見て切りかかるような場合は始末してよし)
揉め事は当事者間で解決すべし。ただし、市の権限を有する者はその位に応じて仲裁に入ったり、訴えを取り上げたりすることができる。ドラゴンの前に万人は平等であり、身分のあるなしに関わらず全ての者が裁きにつく。
市長はドラゴンの意志を代弁するものである。ドラゴンが不在の時はその権限を代行する。市長はドラゴンが認めた者でなければならない。市の運営は、役人、貴族、商人らの代表、場合によっては宗教的指導者が加わって合議し、最終的な判断は市長が行う。
バリンスゲイトの市長、スティーラ・デイブリンガーより
バリンスゲイトを預かる身として、あなたがたに調査をお願いしたい。
ここ数か月というもの、この街の犯罪は倍になり、市当局への襲撃も後を絶たない。
街を荒らそうと、とりわけ市の統制力を弱めようとしているのが目的と思われるが、
一連の出来事の関連性や手引きをしている黒幕が分かっていない。
情けない話だが、我々は外部からの助けなしでは問題を解決できない状況にある。
君たちのような人材がまさに必要とされている。
知っての通り、バリンスゲイトは周囲との貿易によって成り立つ街であり、
この街の機能が止まるということは、地域全体が立ち行かないことを意味する。
災禍はいずれバリンスゲイトの外にも広がる。あなたがたならお分かりだろう。
この手紙を運んだ使者にはすぐに返事を持ち帰るよう言ってある。
事は急を要するのだ。
もちろん、報酬は惜しまない。それは私の意志でもあり、竜の意志でもある。
平和のためにあなたがたの力を貸してほしい。
メインクエスト:黒幕の正体を突き止め、バリンスゲイトに平和を取り戻す。
バリンスゲイトの歴史
この街を作ったのはドラゴンだ。歴史家も町人もみな口を揃えて言う。
もともとこのあたり一帯にあったのは、開拓民の集落などではなく、むしろあたり一帯を略奪していた山賊たちの根城だった。ほどなく彼らは、自らが本拠地を構えたすぐ近くにドラゴンの巣穴があることを知ることになる。おっかなびっくり、彼らは貢物を差し出して自らの「稼業」を認めてもらおうとした。
当初無関心であったドラゴンだったが、やがてどうすれば目の前の財宝を倍にできるか考えるようになる。そして出した結論は「自らが関与してこれを元手に商売をする」というものだった。ほどなく山賊どもの首領は「ドラゴン並みの力を持った奴」になる。
200年ほどの時が過ぎ、山賊どもの根拠地は商館の並ぶ貿易拠点に、古くからの山賊は貴族に様変わりしていた。みなドラゴンの知恵である。竜の権威と力を背景に、バリンスゲイトは1本の苗木が大樹に育つくらいの短い期間で大いなる変貌を遂げたのだ。
街に一通りの経済と治安が整うと、ドラゴンは表立って街に関わるのをやめ、代わりに市長をたてて代わりに統治させることにした。ドラゴンの意志を代弁する市長は傀儡に過ぎないとも言えるが、この統治方法は下手な王政よりよほど安定したシステムでもある。
バリンスゲイトの異変
それが明らかになったのはつい数か月前から。それまで順調に行われていたはずの統治が機能しなくなったのだ。思えば兆候は以前からあった。護民官に任命するはずの人物が直前に川に浮いていた。許可したはずのペイロア寺院建設は全く進んでいない。だが治安パトロール隊が襲われて死傷者を出したり、魂が抜かれたかのように長らく人事不省になり、目を覚ますや気が狂ったとしか思えないように暴れる人間が出たりする事例が頻発するようになり、収拾困難なことが頻発している。何が起こるかわからないなか、住民は互いを疑うようになり、街は緊張が支配している。市長の書いた手紙は多少誇張したところはあるものの、決して誤りではない。
バリンスゲイトの法(ルール)
法というほどのものでもない。ぶっちゃければドラゴンこそが掟でありルールだ。
そうは言っても、バリンスゲイトを統治するドラゴンは、ドラゴンとしては最大級に柔軟でバランスのとれた思考の持ち主だ。ヒューマンであろうとドラウであろうと分け隔てなく、自分のコントロールできる範囲内で好きにやらせることで、結果的に最大の利益を産むという方針のもと、多様な種族がそれなりに共存している。(もっとも、今回の異変でその共存も危ういものになりつつある。) もちろん、デーモンのような存在やイリシッドのような捕食者が出入りを許されるはずはない。
冒険者に関係しそうな決まりとしては以下のようなものがある。
敵対する種族・宗派・部族の人間であっても、自衛以上の争いは許されない。降参をした者に、それ以上の危害を加えることは禁じられる。(この行間にある不文律として、喧嘩は重傷状態になったら負け、いったん降参をし、隙を見て切りかかるような場合は始末してよし)
揉め事は当事者間で解決すべし。ただし、市の権限を有する者はその位に応じて仲裁に入ったり、訴えを取り上げたりすることができる。ドラゴンの前に万人は平等であり、身分のあるなしに関わらず全ての者が裁きにつく。
市長はドラゴンの意志を代弁するものである。ドラゴンが不在の時はその権限を代行する。市長はドラゴンが認めた者でなければならない。市の運営は、役人、貴族、商人らの代表、場合によっては宗教的指導者が加わって合議し、最終的な判断は市長が行う。
明かされた魔法:助っ人と雇われ人
2011年6月6日 ゲーム明かされた魔法:助っ人と雇われ人
ロバート・J・シュワルブ
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201103henchmen
冒険者は世界にいる一般人より優れた存在だ。才能に恵まれ、特殊な訓練を積み、魔法を操る彼らは、定命にとって神のような存在だろう。まあさすがにそれは言い過ぎとして、それでも英雄は何かしら特別な存在だ。冒険者をおいて、ねぐらにいるドラゴンに誰が立ち向かえるだろうか?洞窟に住み着いたゴブリンを退治するため、荒れはてて罠の仕掛けられた所に乗り込んで誰が生き残れるだろうか?ゾンビをダース単位で薙ぎ払える者など、他にいるだろうか?
さて、英雄はみな、多くの人々が思いもしないようなことをやってのける。それはいいのだが、冒険者もまた普通の人々が必要だ。一般人は英雄にはできない、もしくはやりたがらないことをやる。誰かに造ってもらった鎧がなければ、ナイトのどこが強いだろう?手にしている剣を鍛える者がいなければ、パラディンは探索行をどうやって生き延びることができるだろう?誰かが冒険者にご飯を作ってやらなくてはならないし、訓練もしてやらなくてはならない。冒険が終わって英雄たちが戦利品を携えて帰還したとき、連中は小さな開拓村が提供できる熱々の食事と、寝るためだけの温かいベッドに飢えていることだろう。普通の仕事は普通の人々がやるものであり、英雄たちがそんなことにかまけていれば、怪物とやりあってお宝を略奪するチャンスなどほとんどなくなること請け合いだ。
一般人は、冒険者稼業は専門家にお任せする。彼らは喜んでコインを受け取り、見返りに奉仕を提供する。彼らは冒険者の語る、冒険、危険、向こう見ずなところから生きて帰ってきた物語に耳を傾けるが、その一方でそうした生活に関わらず、似たような挑戦をしなくて済んでいることに安心してもいる。
こうした一般人は、やり方を誤らなければ、英雄たちを安全な場所から広い世界の冒険へと焚き付け、英雄のクエストについて行ったり、手助けをしたり、細かいことをやったりして、目的を達成するのを助ける。この手のお助けキャラは助っ人であり、従僕であり、雇われ人であり、召使だ。見合う対価を支払えば、彼らはその独自の才能を冒険者の抱えた問題に役立ててくれる。
雇われ人と助っ人は、ダンジョンズ&ドラゴンズができてからずっとその一部であった。古い版では、助っ人は冒険者のパーティーに加わってちょっとした追加の戦力となり、敵の矛先を逸らし、英雄の目的達成、障害排除、そして生還を助けてきた。そして時が流れ、第4版は部下の概念について違うやり方を示そうということで、キャラクターに相棒を持たせてみた。野獣使いレンジャーやsentinel(歩哨)ドルイドにはペットがいる。ダンジョン・マスターズ・ガイドⅡは同行キャラクターの作り方について、一から作成したり、既存のクリーチャーに役割をつけて補完したりする記載(訳注:同書27ページ)があった。この方法は多くのグループでは十分かもしれないが、欠けているものもある。古き伝統に倣う、リーダーシップ(統率力)のような要素だ。今回の記事では、既存のオプションを拡張して雇われ人と助っ人を得る方法および必要なノンプレイヤー・キャラクターを作る方法を扱う。
以下のルールはレベルに関係した複雑なところがあり、すべてのグループにしっくりくるわけではないと思う。多人数のパーティーにとって、助っ人と雇われ人はテーブル上にたくさんの人々を登場させてしまうため、ちょっと難しくなる。初心者はごちゃ混ぜにキャラクターが出てくると複雑すぎて扱えなくなるかもしれないし、ノンプレイヤー・キャラクターを入れ過ぎると、他のキャラクターが持つパーティーでの役割を薄められる。
その一方、プレイヤーが足りないのがネックになっているグループでは、助っ人と雇われ人が解決策になりうる。欠けていた役を埋め、厳しい時も己の役割を果たしてキャラクターを叱咤激励し、ロールプレイに興を添え、クエストを補完する。キャンペーンでストーリーが展開するのに貢献してくれるわけだ。この記事を活用する前に、ダンジョン・マスターズ・ガイドをよく読んで、自分のグループにどんなキャラクターが合っているのか吟味してほしい。
雇われ人
若者は明かりを掲げ、ダンジョンの梯子を下る道を照らす。小姓は君の服を洗濯して整え、王に謁見する前の最後の身だしなみをしてくれる。用心棒はキャンプで不寝番をして、商人の娘を攫ったトロルを追う君を休ませる。旅やミッションを簡単にしてくれるために君が雇う男女、こうしたキャラクターはみな雇われ人だ。
雇われ人は君についてくるという意味で同行キャラクターに似ているが、持っている能力が異なる。雇われ人は端役であり、同行キャラクターほどの貢献はしない。また、同行キャラクターならお宝の分け前にあずかるところでも、雇われ人は君と直接雇用関係があり、その分は賃金に含まれている。
雇われ人を雇う
雇われ人など探すまでもない。適当な施設に行って、必要な人材を見繕う目のある仲介屋に声をかけるだけだ。金さえ払えば傭兵、荷物持ち、その他どんな仕事でもやってのける連中が好きなだけ。雇われ人を雇うためには、候補となる人間を見つけ、賃金の折り合いをつけなくてはならない。DMの判断によっては、同行するのを納得させるために<はったり>、<交渉>、<威圧>、<事情通>あたりを使った技能判定の成功が求められる。また一方で、雇われ人を報酬の一部として得ることがあるかもしれない。変な話に聞こえるかもしれないが、モンスターが捕らえている人々が、後々雇われ人になることもある。ドラゴンが手元に吟遊詩人を置いて娯楽に供したり、芸術家に自画像を描かせたり、牛や羊を貪り食らいたいときに略奪させにいく傭兵がいたりしても不思議ではない。
雇われ人のデータ
雇われ人の職業に関係なく、共通していることを以下に記す。
レベル:どんなレベルの雇われ人も存在する。英雄級の雇われ人は人の集まるところならどんなところにもいるくらいありふれた存在だ。伝説級の雇われ人はその分野の専門家であり、このレベル帯で、誰かのために働く意思のあるノンプレイヤー・キャラクターを見つけるのは難しくなるかもしれない。神話級の雇われ人は非常に稀な存在だ。道を究めた巨匠ともいえる職人や芸術家だろう。そのようなキャラクターには自身の計画や思惑、追求するべきゴールがあるため、DMの同意なしには雇用できない。
価格:雇われ人の価格はそのレベルによる。価格は通常一日単位の奉仕であり、長期間の雇用は時に相場が安くなるかもしれないが、その代わり探検や仕事で得た利益の取り分を支払うことになるかもしれない。価格には雇われ人の支度金、給料、食費、装備費用、その他雇われ人が必要になりそうなものが含まれる。留意すべきは、こうした価格の設定は雇われ人を獲得と維持のプロセスを簡単にするためだ。
期間:雇われ人は君が給料を支払い続ける限り従事する。
雇われ人 レベル:さまざま
忠実な従僕は、君の冒険の邪魔になりそうなちょっとした障害を排除する。
(訳注:個々の値段はレベルおよび職業を参照。以下は基準通りの場合)
Lvl 1 15 gp Lvl 11 350 gp Lvl 21 9,000 gp
Lvl 2 20 gp Lvl 12 520 gp Lvl 22 13,000 gp
Lvl 3 25 gp Lvl 13 680 gp Lvl 23 17,000 gp
Lvl 4 35 gp Lvl 14 840 gp Lvl 24 21,000 gp
Lvl 5 40 gp Lvl 15 1,000 gp Lvl 25 25,000 gp
Lvl 6 70 gp Lvl 16 1,800 gp Lvl 26 45,000 gp
Lvl 7 100 gp Lvl 17 2,600 gp Lvl 27 65,000 gp
Lvl 8 135 gp Lvl 18 3,400 gp Lvl 28 85,000 gp
Lvl 9 170 gp Lvl 19 4,200 gp Lvl 29 105,000 gp
Lvl 10 200 gp Lvl 20 5,000 gp Lvl 30 125,000 gp
端役(マイナー・キャラクター)
特性:君は雇われ人の奉仕を受ける。このクリーチャーは君と君の仲間の味方である。雇われ人は、1ターンに標準アクション1つ、移動アクション1つを持つ。イニシアチブは君の直後で行動する。雇われ人は回復力を持たない。(訳注:明記されていませんが、即応アクション・機会アクション不可、フリーアクション可)
雇われ人 レベル さまざま
中型・自然・人型
HP 1;ミスした攻撃は雇われ人にダメージを与えない。イニシアチブ(上記参照)
AC レベル+ 14、他の防御値レベル+ 12、感覚<知覚>+0
移動速度 6
標準アクション
近接攻撃(武器) 無限回
攻撃:近接1(クリーチャー1体);レベル+ 5 対AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
遠隔攻撃(武器) 無限回
攻撃:遠隔10(クリーチャー1体);レベル+ 5対 AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
DMに:悪用
お金で雇われ人の忠誠が買えてしまうところが問題になる。冒険者が依頼主による虐待に我慢がならないのと同様、雇われ人もひどい扱いを受ければついては来なくなるだろう。自らの従者を死地へと送る冷酷な主人から教訓を得て、意趣返ししてくるかもしれない。
君はこうした非違行為の記録や犠牲者リストを作る必要などない。冒険者の人となりを、そしてどのように雇い人を扱うか考えてみよう。もし雇われ人にとって我慢できそうもない画が浮かぶようなら、早い段階で彼らの逃げ道を作ってやろう。冒険者に対する悪評が聞こえるようなら、従者を雇うのに必要な技能判定の難易度を上げてもよいかもしれない。
職業
雇われ人を得るということは、そのサービスなり利益なりを得るということだ。こうした利益は雇われ人の職業と結びついている。以下の職業から1つ選んで、その特徴を雇われ人のデータに付け足すこと。
飼育係/Beast Handler
価格:基準通り
君の獣の面倒をみる人たち。馬のコンディションを最高に整えたり、犬にえさをやったり、隼が狩りに出られるよう支度する。
特徴
ビースト・ハンドラー(Beast Handler)/飼育係 オーラ 5
オーラの範囲内にいる味方の野獣は頑健と意志に+1のパワー・ボーナスを得る。
案内人/Guide
価格:基準通り
荒野の探索は、よく訓練されたガイドがいて初めて実のあるものになる。こういう雇い人は英雄に先行して道に目印をつける。危険な地域を案内するなら倍払いだ。
特徴
トレイルブレイザー(Trailblazer)/目印設置人 オーラ5
オーラの範囲内にいる味方は<地下探検>と<自然>に+2のパワー・ボーナスを得る。
レベル15: +3 パワー・ボーナス
レベル25: +4 パワー・ボーナス
DMに:雇われ人の特徴
同行キャラクターのように、雇われ人もちょっとした特徴があれば、罠のばねやドアの金具より存在感が増す。細かいところまでたくさんやる必要はない。彼らのちょっとした生き様がうかがい知れればもうそれで十分だ。
種族:雇われ人の種族がデータに影響を及ぼすことはないが、人柄や外見には多分に表れうる。また、雇われ人は自分たちに寛大な主人を好むだろう。
身体的描写:1つか2つくらい目立つ特徴を入れてやろう。身長・体重・肌の色などがやりやすいが、引きずった足、斜視、吹き出物、赤ら顔という感じの要素も面白い。
性格:雇われ人ともなれば、動機や秘密、癖などを気にするには及ばない。単語1つを充てて、それでその人物をまとめられるようなものにしよう。例を挙げると、生真面目、猪突猛進、臆病、錯乱、無謀、忠義者など。
灯り持ち/Linkboy
価格:基準通り
パーティーの光源確保のため、二刀流や盾をあきらめるファイターなどいるはずもない。誰も手が空いてなかったり、持とうともしなかったりする場合、灯り持ちが両手を用立ててくれる。
特徴
トーチ(Torch)/松明 オーラ5
オーラの範囲内は明るい光で照らされる。
傭兵/Mercenary
価格:基準の3倍
傭兵は雇うためにいる兵士としては完璧だ。準備万端、支払さえよければいつでも己の剣と盾を役立てる。
特徴
ヴェテラン・ウォーリアー(Veteran Warrior)/歴戦の戦士 オーラ1
オーラの範囲内にいる味方はACと反応防御値に+1のパワー・ボーナスを得る。それに加え、傭兵自身もACと反応防御値に+2のパワー・ボーナスを得る。
標準アクション
近接攻撃(武器) 無限回
攻撃:近接1(クリーチャー1体);レベル+ 5 対AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
遠隔攻撃(武器) 無限回
攻撃:遠隔10(クリーチャー1体);レベル+ 5対 AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
操縦士/Pilot
価格:基準の2倍
舵輪を握ってグレートシップを操るにしろ、ワゴンの部隊を駆るにしろ、エアシップをドッグに入れるにしろ、熟練の操縦士の存在はすべての乗組員にとって精神的支柱となる。
特徴
シーズンド・パイロット(Seasoned Pilot)/熟練の操縦士
操縦士として乗り組んでいるとき、この雇い人は乗り物の移動速度に+1のボーナスを与える。
荷物持ち/Porter
価格:基準通り
荷物持ちの生業は運搬要員。彼らはかなりの荷物を背負いながら、ロバや馬では辿りつけないところにも行ける使い勝手の良い雇い人だ。
特徴
ストロング(Strong)/力持ち
この雇われ人の軽荷重は75ポンド、重荷重は150ポンド、最大荷重は375ポンドである。
レベル1~5:基本移動速度5、1日当たり6時間移動できる。
レベル6~10:基本移動速度6、1日当たり8時間移動できる。
レベル11~30:基本移動速度7、1日当たり10時間移動できる。
賢者/Sage
価格:基準の3倍
賢者はある特定の分野の専門家だ。自分の行動範囲からあえて出ようとする賢者などほとんどいないが、いったん自分についてくるよう説得できたなら、彼らの知識は君の知識になる。
特徴
セージ・ノーリッジ(Sage Knowledge) 賢者の知識 オーラ 5
以下の技能から一つ選択する。<魔法学>、<地下探険>、<歴史>、<自然>、そして<宗教>。オーラの範囲内にいる味方は、選んだ技能の判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
レベル15:+3パワー・ボーナス
レベル25:+4パワー・ボーナス
標準アクション
ロア・ユーズ/Lore Use 知識の使い道[一日毎]
効果:味方1人は、セージ・ノーリッジで選択した、次に行う技能判定に+5のアイテム・ボーナスを得る。
記録人/Scribe
価格:基準の2倍
画工や書写など、こうした訓練を受けた者は君の目の前にあるものなら何でも記録や模写をやってのける。
特徴
スクライブ・ドキュメント(Scribe Document)/書類作成
小休憩および大休憩の間、この雇われ人は文章かイラスト1ページを作成する。小休憩であれば下書き、大休憩であれば完成品ができあがる。
歴戦の乗組員/Seasoned Crew Member
価格:基準通り
有能な乗組員たちがいれば、遠い港までの航海も無事が約束されたようなものだ。
特徴
エイブル・クルー(Able Crew)/有能な乗組員
乗り物の乗組員すべてが歴戦の乗組員である場合、その乗り物はすべての防御値に+1のボーナスを得る。
スパイ/Spy
価格:基準の3倍
スパイがいれば、必要な時に必要なだけ情報を得られる。
特徴
エスピナージ(Espionage)/諜報活動
これを雇用しているキャラクターは<事情通>判定に+2のボーナスを得る。
レベル15:+3パワー・ボーナス
レベル25:+4パワー・ボーナス
従者/Valet
価格:基準通り
上流社会を渡り歩くため、金持ちや権力者とうまくやれる立ち居振る舞いを知っている付き人の存在は欠かせない。
特徴
エチケット(Etiquette)/作法 オーラ3
場にふさわしい衣装を着ている場合、オーラの範囲内のこれを雇用しているキャラクターとその仲間は<交渉>判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
レベル15:+3パワー・ボーナス
レベル25:+4パワー・ボーナス
ペット
ペットは君のキャラクターの個性や外見を深める面白いやり方だ。飼い猫、小さな蛇、カラスや他の動物でも、何かしらキャラクターの持つ興味を明かしてくれる。もし君が同行する動物の相棒が欲しいと思うなら、以下のオプションを検討してほしい。
クラス:前述したとおり、2つのクラスで野獣の相棒が手に入る。一つが武勇の書で出てきた野獣使いレンジャー、もう一つがHeroes of the Forgotten Kingdoms(未訳)のsentinel(歩哨) ドルイド。いずれの場合でも、キャラクターは相棒の利益を得ることができるし、目的達成のためにパワーを使って支援してくれる。どちらのクラスでもないのなら、プレイヤーズ・ハンドブック3から野獣使いのクラス特徴とプレイしたいクラスを混ぜてみることもできる。
使い魔:別なオプションとして、特に[秘術]タイプのキャラクター向けに、秘術の書で特技≪秘術の使い魔≫がある。キャット、ファルコン、サーペント、変わったところではバウンド・デーモンやブック・インプ。[秘術]クラスならどれでも取得することができるため、マルチクラス・ハイブリッドクラスのキャラクターまで選択できるとても良いオプションだ。
乗騎:乗騎が欲しいなら≪騎乗戦闘≫特技を取ろう。これは乗騎を取得するためのものではない(買わなければならない)が、持っていないと乗騎の利益を得られない。
同行キャラクター: DMの許可があれば、モンスターをダンジョン・マスターズ・ガイドⅡのルールにある同行キャラクターとして使える。ペットをパーティーの一員として使えるため、通常より頭数が少ないパーティーなら良い解決法になるだろう。
ペットの背景:おそらく、ペットを得る最もやりやすい方法は、キャラクターシートに背景の要素として記入することだろう。背景要素としてのペットは、数値や能力など戦闘に意味のあるものとしては出てこないだろう。ペットの蛇、訓練されたレイヴン、家猫、小さな犬がこうしたオプションにふさわしい。そのペットをどうやって手に入れたか、そしてどう思っているかについて考えてみよう。少なくとも1つ過去にそのペットを助けた出来事を出してみる。そして忘れずに名前をつけること!
もしペットをキャラクターの背景として使うなら、DMと相談して適当な技能を決めよう。小さな物体をくすねるよう仕込まれたレイヴンは<盗賊>判定に+2のボーナスがつくかもしれない。小さいがよく吠える犬は<威圧>か<知覚>に+2のボーナスだろう。おしゃべりなオウムやレイヴンは、<はったり>判定に+2のボーナスを与えてくれるかもしれない。
助っ人
雇われ人が端役として冒険者のパーティーを限定的な方法で支える一方、助っ人はほとんど独立した一個のキャラクターとして関わり、冒険者のグループに交じって存在感を示す。こうしたキャラクターはパーティーの一員と言って差し支えない。助っ人にはプレイヤー・キャラクターが使う特徴や性能・パワーがたくさんあるが、簡略化することでプレイヤーが(自らのキャラクターと)同時に補助的キャラクターとして使えるよう調整している。
また助っ人は同行キャラクターのようにさまざまな形をとりうる。モンスター・マニュアルやMonster Vault(未訳)からの野獣であったりモンスターであったりするかもしれない。あるいはキャラクター同様、英雄たちと同種のパワーを使う場合もある。さらにDMが作る、あるいは以下に示すようなサプリメントを応用した独自のものもいるかもしれない。
助っ人を得る
自分のパーティーで助っ人を得る方法だが、簡単なやり方なら田舎の酒場で募集でもしてみればいいし、手の込んだものは補助クエストの達成、賃金交渉をする、もしくは仲間となる者を都市や野外、ダンジョンまで探してみる、などがあるだろう。
仲間として:助っ人はパーティーで欠けている役割を補ったり、休んでいるプレイヤーの代役を務めたりするために使われる。指揮役がいないなら冒険を成功に導けるような人材が必要だろう。常にいてもいいし、必要に応じてでもいい。ゲームの必要に応じて、仲間はどのようにも存在させることができる。
用心棒として:時に危険なミッションをこなすため、ちょっと手助けが欲しくなることもあるだろう。防衛や撃破を務める人間が増えるのは大きく違う。特にそうした役目の人間が足りないならきっとそうだろう。助っ人はお金などの見返りで冒険者のグループについてくることもあるだろうが、パーティーに加わって支援させることが主要ないし副次クエスト達成になる、ということもあるかもしれない。また、雇った人間は無期限で仲間というわけではない。その契約にはいつ終わりがくるかがきちんと書かれている。
助っ人への支払いが金銭の場合、金額はパーティーのレベルに等しいマジック・アイテムの5分の1になる。
友軍として:冒険をしていれば、中には友好的・協力的なキャラクターと会うこともあるだろう。共通の敵に対して一時的に手を組むこともあるだろうし、ライバルのパーティーに対して力を合わせることもあるだろう。重要人物を救出したところ、身の安全が確保されるまで君たちと一緒に闘ってくれることがあるかもしれない。
助っ人を作る
雇われ人と違い、助っ人を作るのはDMの仕事だ。ダンジョン・マスターズ・ガイドⅡの中に、モンスターを同行キャラクターとして使う方法および独自の同行キャラクターを作るのに必要なルールが記載してある。
助っ人を使うのは
作るのはDMであっても、助っ人はプレイヤーの側で戦闘や技能チャレンジに臨む。遭遇外では、DMがそのキャラクターの性格・動機・秘密に沿って運用する一方、遭遇ではDMの裁量でキャラクターの操作を任されることもある。
助っ人を使用する際に
助っ人を君のグループで使用する際に頭に入れておいて欲しいことをいくつか。まず、助っ人にマジック・アイテムは必要ない。よってマジック・アイテムの配分には助っ人を含めなくてよい。次に、助っ人は英雄と同等の経験値を得るため、一人当たりの経験値を計算する際に頭数に含める。最後に、助っ人はグループのキャラクターとまったく同様にレベルアップして成長する。
DMに:サンプルの助っ人を使う
ここに記載されている助っ人は2レベルで統一されている。必要に応じてダンジョン・マスターズ・ガイドⅡの32ページに記載されたルールを適用してほしい。キャラクターを描写する要素をふんだんに盛り込んでみたが、変えたいなら一向に構わない。最後に一つ。こうしたキャラクターは、キャンペーンにおける縁の下の力持ちであるように。
助っ人の例
てっとり早く助っ人を作りたい場合、以下のキャラクターを活用してほしい。
アナキシアナ
命知らずな戦闘魔術師
アナキシアナはエラドリンの魔術師、正しくは復讐に飢えた命知らずの戦闘魔術師。痩せぎすと言えるまでにほっそりしており、険しい顔つきと高い鼻が、武闘派な人となりを表す。彼女は無地の灰色のローブを好み、ロングソードを腰の鞘にさしている。
オークやドラウ狩りといった依頼は最も容易くアナキシアナをグループに誘える口実になる。こうしたモンスターと容赦なしにやりあい、また戦いを大いに楽しむ。彼女は自らの敵を駆り殺すような目的の旅にはしばらくの間同行するかもしれないが、血の渇きが満たされないようならいなくなるだろう。
アナキシアナ レベル2 制御役
中型・フェイ・人型 エラドリン
HP 27; 重傷値13; 回復力使用回数7; 回復力値6 イニシアチブ+4
AC 15; 頑健15、 反応17、 意志14 <知覚>+0
速度6 夜目
セーヴィング・スロー:[魅了]効果に対して+5
標準アクション
ロングソード[武器] 無限回
攻撃: 近接1 (クリーチャー1体); +9 対 AC
ヒット: 1d8 + 1 ダメージ。
マジック・ミサイル/魔法の矢 [力場]、 [装具] 無限回
遠隔20 (クリーチャー1体)
効果:7[力場]ダメージ。
バーニング・ハンズ/火炎双手 [火]、[装具] 遭遇毎
攻撃:近接噴射5 (範囲内のクリーチャー); +6 対反応
ヒット:2d6 + 5 [火]ダメージ。
ミス:半減ダメージ
フリージング・バースト[冷気]、[装具] 無限回
攻撃:遠隔範囲・爆発1 ・10マス以内 (爆発内のクリーチャー); +6 対反応
ヒット: 1d6 + 5[冷気]ダメージ、さらにアナキシアナは目標を1マス横滑りさせる。
移動アクション
フェイ・ステップ/フェイの一跳び [瞬間移動] 遭遇毎
効果:アナキシアナは5マスまで瞬間移動する。
即応アクション
シールド/盾 遭遇毎
トリガー:アナキシアナに対する1回の攻撃がヒットする
効果(即応・割込): アナキシアナは次のターン終了時までACと反応に+4のパワー・ボーナスを得る。
正確さのワンド 遭遇毎
トリガー:アナキシアナが自身のターンを開始する
効果(フリー・アクション):アナキシアナはターン終了時までに行うワンドを用いた次の攻撃ロールに+3のボーナスを得る。
技能<魔法学>+10、<歴史>+10、<看破>+5
【筋】10 (+1) 【敏】17 (+4) 【判】 8 (+0)
【耐】13 (+2) 【知】19 (+5) 【魅】10 (+1)
属性:無属性 言語:共通語、エルフ語
装備品:ローブ、ロングソード、ワンド、標準冒険者キット
マイケル・エバードン卿
堕ちた騎士
かつては武勇と自らの家柄を誇る有望な騎士であったが、その栄光も失われ、今やかつていた地では最下層民同然の扱いである。彼は決してこれまでどうしてきたのか自ら語ることはないものの、気が沈んだり泥酔したりすればその一端を窺い知ることができる。
マイケルは太鼓腹、赤鼻、しょぼくれた目のがっしりした男であり、やつれた見かけによらず、戦いにおける技量と力、そして苛烈さは失われていない。そのぼろぼろの甲冑はかつての武勲を、消えかかった「突進するイノシシ」の紋章は、盛んだった昔の地位を窺い知ることができる。
この堕ちた騎士は救いを求めている。名誉回復につながりそうなことをする冒険者のグループなら熱心に加わりたがる。高貴な探索行にあって、彼は一切の酒を断つ。退屈と不満で我慢できなくなるまでは・・・。
マイケル・エバードン卿 レベル2 防衛役
中型・人型・ヒューマン
HP 35; 重傷値17; 回復力使用回数11; 回復力値 8 イニシアチブ+1
AC 21; 頑健18、反応14、意志16 <知覚>+2
移動速度 5
標準アクション
ロングソード[武器]無限回
攻撃:近接1(クリーチャー1体); +9対AC
ヒット:1d8 + 5ダメージ、さらにマイケルは目標を次のターン終了時までマークする。
タイド・オヴ・アイアン/打ち寄せるくろがね [武器] 無限回
必要条件:マイケルは盾を使用していなければならない。
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +9 対AC
ヒット:1d8 + 5ダメージ、さらにマイケルは目標を1マス押しやり、それまで目標が占めていたマスにシフトすることができる。
マイナー・アクション
グローワリング・スレッド/睨めつける脅威 遭遇毎
効果:近接爆発2 (爆発内の敵すべて) マイケルの次のターン終了時まで、各目標はマイケル以外に行う攻撃ロールに–5のペナルティを受ける。
機会アクション
ヒロイック・エフォート/英雄的奮闘 遭遇毎
トリガー:マイケルが1回の攻撃ロールをミスするか、1回のセーヴィング・スローに失敗する。
効果:マイケルはトリガーとなった攻撃ロールまたはセーヴィング・スローに+4の種族ボーナスを得る。
パワー・ストライク/猛打撃 遭遇毎
トリガー:マイケルがロングソードで敵にヒットを与える。
効果(アクションではない):トリガーを発生させた攻撃は1d8の追加ダメージを与える。
技能 <運動>+10、<持久力>+8、<威圧>+8
【筋】18 (+5) 【敏】11 (+1) 【判】12 (+2)
【耐】14 (+3) 【知】 8 (+0) 【魅】14 (+3)
属性:善 言語:共通語、巨人語
装備品 プレート・アーマー、ヘヴィ・シールド、ロングソード、標準冒険者キット
ケドラ・フォージスウォーン
盲信の僧侶
ケドラ・フォージスウォーンはモラディンの熱烈な信者だが、信心も行き過ぎて狂信者ともとれる。彼女が氏族を離れたのは成功や栄光を求めてではなく、この世界におけるモラディンの教えの体現者たらんとしてのことだった。
ほとんどのドワーフがそうであるように、ケドラも背が低くがっしりしている。己の信念がいかなる物理的な力の不足も埋め合わせるし、主義主張が絡んだときの彼女の粘り強さときたら、胃袋に新鮮な死体が入ったトロルのごとくだ。彼女は自らの頭を丸め、モラディンの好戦的な聖職者が好む聖典「ブック・オヴ・スパイト(悪意の書)」に記された戦闘のくだりをそこに書いている。
他の何よりも優先して、ケドラの望みはモラディンの命ずるまま、この世界にその御印を刻みつけることにある。だが、何をどうすればよいということが分かっているわけではない。そして、その目的を達するためには冒険者という生き方が最も確実だと疑わない。彼女は以前にも他のグループと協働したことがあるが、毎回ひどい別れ方をしている。その癪に障る人格に問題があるのだ。
ケドラ・フォージスウォーン レベル2 指揮役
中型・人型・ドワーフ
HP 34; 重傷値17; 回復力使用回数10; 回復力値8 イニシアチブ+2
AC 17 頑健15、反応13、意志17 <知覚>+5
速度5 夜目
セーヴィング・スロー:[毒]の効果に対して+5
特徴
スタンド・ユア・グラウンド/踏ん張り
何らかの効果(押しやり、引き寄せ、横滑り)がケドラを強制移動させようとしたとき、ケドラが実際に移動させられるマスの数はその効果の定められる数値よりも1マス少なくなる。加えて、何らかの攻撃によってケドラが伏せ状態になったとき、ケドラは即座に1回のセーヴィング・スローを行なうことができ、成功すれば伏せ状態にならずにすむ。
標準アクション
ウォーハンマー[武器] 無限回
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +8 対AC
ヒット:1d10 + 1ダメージ。
スローイング・ハンマー[武器] 無限回
攻撃:遠隔5/10 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d6 + 2ダメージ。
ブレッシング・オヴ・ラース/怒りの祝福 [武器] 無限回
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d10 + 5ダメージ。
効果:ケドラもしくは彼女から5マス以内の味方1人は、彼女の次のターン終了時までに行う、目標に対する次のダメージ・ロールに+3のパワー・ボーナスを得る。
サンクチュアリ/聖域 遭遇毎
効果:遠隔10 (ケドラかクリーチャー1体) 目標はすべての防御値に+5のボーナスを得る。この効果は目標が攻撃を行うか、ケドラの次のターン終了時まで持続する。
ディヴァイン・グロウ/信仰の輝き [装具]、[光輝] 遭遇毎
攻撃:近接噴射3 (範囲内の敵すべて); +6 対反応
ヒット:1d8 + 5[光輝]ダメージ。
効果:噴射内の味方は、ケドラの次のターン終了時まで攻撃ロールに+2のパワー・ボーナスを得る。
マイナー・アクション
ヒーリング・ワード/癒しの言葉 [回復] 遭遇毎2回
効果:近接爆発5 (ケドラか爆発内の味方1人) 目標は回復力を消費する。
ドワーヴン・リジリアンス/ドワーフの底力 遭遇毎
効果:ケドラは底力を使用できる。
技能<地下探険>+10、<持久力>+11、<治療>+10
【筋】11 (+1) 【敏】12 (+1) 【判】19 (+5)
【耐】17 (+4) 【知】 8 (+0) 【魅】10 (+1)
属性:秩序にして善 言語:共通語、ドワーフ語
装備品:スケイル・アーマー、ウォーハンマー、スローイング・ハンマー、聖印、標準冒険者キット
ゲシュ
傭兵隊長
かつては傭兵の隊を束ねる頭であった男も、今は売剣の身であり、最も高い値を払った者に剣を捧げている。
ゲシュは人目を引く男だ。背が高く筋肉質で、青銅に輝くスケイル・アーマーを身に纏う。毎晩寝る前に、彼は自分の鎧と槍を磨いて油を差し、申し分のない状態に整えている。
指図がゲシュから次々飛んでくる。自らの意見を胸に仕舞っておくというところがこの男にはない。武器の握り方から戦術に至るまで、自分の戦場での経験が僚友の知恵となると固く信じているためだ。ゲシュの経験に口をはさむ者はいないが、あいつは横暴だと思っている者はいる。
ゲシュ レベル2 指揮役
中型・人型・ドラゴンボーン
HP 30; 重傷値15; 回復力使用回数8; 回復力値8 イニシアチブ+2
AC 17; 頑健17、反応13、意志15 <知覚>+4
速度5
特徴
ドラゴンボーンの怒り
重傷である間、ゲシュは攻撃ロールに+1のボーナスを得る。
標準アクション
ロングスピア [武器] 無限回
攻撃:間合い2 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d10 + 5ダメージ。
ヴァイパーズ・ストライク/毒蛇の打撃 [武器] 無限回
ヒット:1d10 + 5ダメージ。
効果:目標がゲシュの次のターンの開始時までにシフトを行ったなら、目標はゲシュが選んだ味方1人から機会攻撃を誘発する。
ハンマー・アンド・アンヴィル/鎚と金床 [武器] 遭遇毎
攻撃:間合い2 (クリーチャー1体); +8対反応
ヒット: 1d10 + 5ダメージ。目標に隣接する味方1人はフリー・アクションとして目標に1回の近接基礎攻撃を行なう。味方はこの攻撃のダメージに+3のボーナスを得る。
移動アクション
ナイツ・ムーヴ/桂馬跳び 遭遇毎
効果:遠隔10 (味方1人) 目標は1回の移動アクションを行なう。
マイナー・アクション
ヒーリング・ワード/癒しの言葉 [回復] 遭遇毎2回
効果:近接爆発5 (ゲシュか爆発内の味方1人) 目標は回復力を消費する。
ドラゴン・ブレス[火] 遭遇毎
攻撃:近接噴射3 (噴射内のクリーチャーすべて); +6対反応
ヒット:1d6 + 2[火]ダメージ。
技能:<歴史>+6、<威圧>+9
【筋】19 (+5) 【敏】12 (+1) 【判】 8 (+0)
【耐】13 (+2) 【知】10 (+1) 【魅】16 (+4)
属性:秩序にして善 言語:共通語、竜語
装備品:チェインメイル、ロングスピア、標準冒険者キット
ルーク
影の殺し屋
ルークはドラウの都市、エレルハイ・シンル出身の典型的なドラウだ。裏切りの街において、ルークはあらゆる意味で生きるということを学び、自由を勝ち取るためにナイフ使いの技を究めた。数年ののち都市を後にした彼は、己の仕事に疑問を差し挟まぬプロフェッショナルな無関心さを持つ殺し屋となった。
ルークの背は特に高いとはいえず、やせ気味の己の身を灰色のフードがついた外套と黒服で包んでいる。戦いにおいては、彼は隠れたところから短剣とクロスボウで敵を不意打ちする。あらゆる場面が殺し合いに発展しうると考えているため、自らの出番でないとみるやその場から離れる。
ルークは己自身とその行動について決して後悔はしない。実用主義者である彼は、仕事の遂行に必要だと思うことすべてを躊躇いなく行う。ルークは友人を作ったりしない。作るのは顧客だ。彼のする約束はみな仕事の契約であり、己の働きに見合った支払いをこそ望んでいる。
ルーク レベル2 撃破役
中型・フェイ・人型生物・ドラウ
HP 29; 重傷値14; 回復力使用回数7; 回復力値7 イニシアチブ+5
AC 17、頑健13、反応17、意志15 <知覚>+1
速度5 暗視
標準アクション
ダガー[武器] 無限回
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +9対AC
ヒット:1d4 + 5ダメージ。
ハンド・クロスボウ[武器] 無限回
攻撃:遠隔15/30 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d6 + 5ダメージ。
スライ・フラーリッシュ/狡猾にして優美
効果:ルークはダガーもしくはハンド・クロスボウで攻撃を行い、ダメージに+3のボーナスを得る。
インパクト・ショット/衝撃の一射 [武器] 遭遇毎
攻撃:遠隔15/30 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:2d6 + 5ダメージ、ルークは目標を1マス押しやる。
移動アクション
タンブル/曲芸移動 遭遇毎
効果:ルークは5マスまでのシフトを行う。
マイナー・アクション
クラウド・オヴ・ダークネス/闇の雲 遭遇毎
効果:近接爆発1 この爆発は闇の雲を生み出す。この雲はルークの次のターンが終了するまでその場所に留まる。この雲は視線を妨害し、この雲の中にあるマス目は“完全な遮蔽”となり、この雲の中に完全に収まっているクリーチャーは、この雲の外に出るまで盲目状態になる。ルークはこれらの効果に対する完全耐性を得る。
機会アクション
ストライカーズ・エッジ/撃破役の刃 無限回(1ターン1回)
トリガー:ルークが戦術的優位を有する敵1体にヒットを与える
効果(アクションではない):トリガーを発生させた攻撃は1d6の追加ダメージを与える。
技能<運動>+10、<威圧>+9、<隠密>+10
【筋】10 (+1) 【敏】19 (+5) 【判】11 (+1)
【耐】12 (+2) 【知】10 (+1) 【魅】16 (+4)
属性:無属性 言語:共通語、エルフ語
装備品:レザー・アーマー、ダガー2本、ハンド・クロスボウ、ボルト20本、標準冒険者キット
筆者について
ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズ、ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ、A Song of Ice and Fire RPG、 Star Wars RPG、d20システムにおいて200近いタイトルのTRPGのデザインや開発にかかわって表彰されたゲーム・デザイナーだ。ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社での最近の作品はD&D® Gamma World: Famine in Far-Go、Dark Sun Campaign Setting、モンスター・マニュアル3があり、またドラゴン・ダンジョンマガジンの両方で、レギュラーのライターをしている。著者に関してさらに知りたい場合は、彼のウェブサイト( www.robertjschwalb.com.)を参照してほしい。
ロバート・J・シュワルブ
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201103henchmen
冒険者は世界にいる一般人より優れた存在だ。才能に恵まれ、特殊な訓練を積み、魔法を操る彼らは、定命にとって神のような存在だろう。まあさすがにそれは言い過ぎとして、それでも英雄は何かしら特別な存在だ。冒険者をおいて、ねぐらにいるドラゴンに誰が立ち向かえるだろうか?洞窟に住み着いたゴブリンを退治するため、荒れはてて罠の仕掛けられた所に乗り込んで誰が生き残れるだろうか?ゾンビをダース単位で薙ぎ払える者など、他にいるだろうか?
さて、英雄はみな、多くの人々が思いもしないようなことをやってのける。それはいいのだが、冒険者もまた普通の人々が必要だ。一般人は英雄にはできない、もしくはやりたがらないことをやる。誰かに造ってもらった鎧がなければ、ナイトのどこが強いだろう?手にしている剣を鍛える者がいなければ、パラディンは探索行をどうやって生き延びることができるだろう?誰かが冒険者にご飯を作ってやらなくてはならないし、訓練もしてやらなくてはならない。冒険が終わって英雄たちが戦利品を携えて帰還したとき、連中は小さな開拓村が提供できる熱々の食事と、寝るためだけの温かいベッドに飢えていることだろう。普通の仕事は普通の人々がやるものであり、英雄たちがそんなことにかまけていれば、怪物とやりあってお宝を略奪するチャンスなどほとんどなくなること請け合いだ。
一般人は、冒険者稼業は専門家にお任せする。彼らは喜んでコインを受け取り、見返りに奉仕を提供する。彼らは冒険者の語る、冒険、危険、向こう見ずなところから生きて帰ってきた物語に耳を傾けるが、その一方でそうした生活に関わらず、似たような挑戦をしなくて済んでいることに安心してもいる。
こうした一般人は、やり方を誤らなければ、英雄たちを安全な場所から広い世界の冒険へと焚き付け、英雄のクエストについて行ったり、手助けをしたり、細かいことをやったりして、目的を達成するのを助ける。この手のお助けキャラは助っ人であり、従僕であり、雇われ人であり、召使だ。見合う対価を支払えば、彼らはその独自の才能を冒険者の抱えた問題に役立ててくれる。
雇われ人と助っ人は、ダンジョンズ&ドラゴンズができてからずっとその一部であった。古い版では、助っ人は冒険者のパーティーに加わってちょっとした追加の戦力となり、敵の矛先を逸らし、英雄の目的達成、障害排除、そして生還を助けてきた。そして時が流れ、第4版は部下の概念について違うやり方を示そうということで、キャラクターに相棒を持たせてみた。野獣使いレンジャーやsentinel(歩哨)ドルイドにはペットがいる。ダンジョン・マスターズ・ガイドⅡは同行キャラクターの作り方について、一から作成したり、既存のクリーチャーに役割をつけて補完したりする記載(訳注:同書27ページ)があった。この方法は多くのグループでは十分かもしれないが、欠けているものもある。古き伝統に倣う、リーダーシップ(統率力)のような要素だ。今回の記事では、既存のオプションを拡張して雇われ人と助っ人を得る方法および必要なノンプレイヤー・キャラクターを作る方法を扱う。
以下のルールはレベルに関係した複雑なところがあり、すべてのグループにしっくりくるわけではないと思う。多人数のパーティーにとって、助っ人と雇われ人はテーブル上にたくさんの人々を登場させてしまうため、ちょっと難しくなる。初心者はごちゃ混ぜにキャラクターが出てくると複雑すぎて扱えなくなるかもしれないし、ノンプレイヤー・キャラクターを入れ過ぎると、他のキャラクターが持つパーティーでの役割を薄められる。
その一方、プレイヤーが足りないのがネックになっているグループでは、助っ人と雇われ人が解決策になりうる。欠けていた役を埋め、厳しい時も己の役割を果たしてキャラクターを叱咤激励し、ロールプレイに興を添え、クエストを補完する。キャンペーンでストーリーが展開するのに貢献してくれるわけだ。この記事を活用する前に、ダンジョン・マスターズ・ガイドをよく読んで、自分のグループにどんなキャラクターが合っているのか吟味してほしい。
雇われ人
若者は明かりを掲げ、ダンジョンの梯子を下る道を照らす。小姓は君の服を洗濯して整え、王に謁見する前の最後の身だしなみをしてくれる。用心棒はキャンプで不寝番をして、商人の娘を攫ったトロルを追う君を休ませる。旅やミッションを簡単にしてくれるために君が雇う男女、こうしたキャラクターはみな雇われ人だ。
雇われ人は君についてくるという意味で同行キャラクターに似ているが、持っている能力が異なる。雇われ人は端役であり、同行キャラクターほどの貢献はしない。また、同行キャラクターならお宝の分け前にあずかるところでも、雇われ人は君と直接雇用関係があり、その分は賃金に含まれている。
雇われ人を雇う
雇われ人など探すまでもない。適当な施設に行って、必要な人材を見繕う目のある仲介屋に声をかけるだけだ。金さえ払えば傭兵、荷物持ち、その他どんな仕事でもやってのける連中が好きなだけ。雇われ人を雇うためには、候補となる人間を見つけ、賃金の折り合いをつけなくてはならない。DMの判断によっては、同行するのを納得させるために<はったり>、<交渉>、<威圧>、<事情通>あたりを使った技能判定の成功が求められる。また一方で、雇われ人を報酬の一部として得ることがあるかもしれない。変な話に聞こえるかもしれないが、モンスターが捕らえている人々が、後々雇われ人になることもある。ドラゴンが手元に吟遊詩人を置いて娯楽に供したり、芸術家に自画像を描かせたり、牛や羊を貪り食らいたいときに略奪させにいく傭兵がいたりしても不思議ではない。
雇われ人のデータ
雇われ人の職業に関係なく、共通していることを以下に記す。
レベル:どんなレベルの雇われ人も存在する。英雄級の雇われ人は人の集まるところならどんなところにもいるくらいありふれた存在だ。伝説級の雇われ人はその分野の専門家であり、このレベル帯で、誰かのために働く意思のあるノンプレイヤー・キャラクターを見つけるのは難しくなるかもしれない。神話級の雇われ人は非常に稀な存在だ。道を究めた巨匠ともいえる職人や芸術家だろう。そのようなキャラクターには自身の計画や思惑、追求するべきゴールがあるため、DMの同意なしには雇用できない。
価格:雇われ人の価格はそのレベルによる。価格は通常一日単位の奉仕であり、長期間の雇用は時に相場が安くなるかもしれないが、その代わり探検や仕事で得た利益の取り分を支払うことになるかもしれない。価格には雇われ人の支度金、給料、食費、装備費用、その他雇われ人が必要になりそうなものが含まれる。留意すべきは、こうした価格の設定は雇われ人を獲得と維持のプロセスを簡単にするためだ。
期間:雇われ人は君が給料を支払い続ける限り従事する。
雇われ人 レベル:さまざま
忠実な従僕は、君の冒険の邪魔になりそうなちょっとした障害を排除する。
(訳注:個々の値段はレベルおよび職業を参照。以下は基準通りの場合)
Lvl 1 15 gp Lvl 11 350 gp Lvl 21 9,000 gp
Lvl 2 20 gp Lvl 12 520 gp Lvl 22 13,000 gp
Lvl 3 25 gp Lvl 13 680 gp Lvl 23 17,000 gp
Lvl 4 35 gp Lvl 14 840 gp Lvl 24 21,000 gp
Lvl 5 40 gp Lvl 15 1,000 gp Lvl 25 25,000 gp
Lvl 6 70 gp Lvl 16 1,800 gp Lvl 26 45,000 gp
Lvl 7 100 gp Lvl 17 2,600 gp Lvl 27 65,000 gp
Lvl 8 135 gp Lvl 18 3,400 gp Lvl 28 85,000 gp
Lvl 9 170 gp Lvl 19 4,200 gp Lvl 29 105,000 gp
Lvl 10 200 gp Lvl 20 5,000 gp Lvl 30 125,000 gp
端役(マイナー・キャラクター)
特性:君は雇われ人の奉仕を受ける。このクリーチャーは君と君の仲間の味方である。雇われ人は、1ターンに標準アクション1つ、移動アクション1つを持つ。イニシアチブは君の直後で行動する。雇われ人は回復力を持たない。(訳注:明記されていませんが、即応アクション・機会アクション不可、フリーアクション可)
雇われ人 レベル さまざま
中型・自然・人型
HP 1;ミスした攻撃は雇われ人にダメージを与えない。イニシアチブ(上記参照)
AC レベル+ 14、他の防御値レベル+ 12、感覚<知覚>+0
移動速度 6
標準アクション
近接攻撃(武器) 無限回
攻撃:近接1(クリーチャー1体);レベル+ 5 対AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
遠隔攻撃(武器) 無限回
攻撃:遠隔10(クリーチャー1体);レベル+ 5対 AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
DMに:悪用
お金で雇われ人の忠誠が買えてしまうところが問題になる。冒険者が依頼主による虐待に我慢がならないのと同様、雇われ人もひどい扱いを受ければついては来なくなるだろう。自らの従者を死地へと送る冷酷な主人から教訓を得て、意趣返ししてくるかもしれない。
君はこうした非違行為の記録や犠牲者リストを作る必要などない。冒険者の人となりを、そしてどのように雇い人を扱うか考えてみよう。もし雇われ人にとって我慢できそうもない画が浮かぶようなら、早い段階で彼らの逃げ道を作ってやろう。冒険者に対する悪評が聞こえるようなら、従者を雇うのに必要な技能判定の難易度を上げてもよいかもしれない。
職業
雇われ人を得るということは、そのサービスなり利益なりを得るということだ。こうした利益は雇われ人の職業と結びついている。以下の職業から1つ選んで、その特徴を雇われ人のデータに付け足すこと。
飼育係/Beast Handler
価格:基準通り
君の獣の面倒をみる人たち。馬のコンディションを最高に整えたり、犬にえさをやったり、隼が狩りに出られるよう支度する。
特徴
ビースト・ハンドラー(Beast Handler)/飼育係 オーラ 5
オーラの範囲内にいる味方の野獣は頑健と意志に+1のパワー・ボーナスを得る。
案内人/Guide
価格:基準通り
荒野の探索は、よく訓練されたガイドがいて初めて実のあるものになる。こういう雇い人は英雄に先行して道に目印をつける。危険な地域を案内するなら倍払いだ。
特徴
トレイルブレイザー(Trailblazer)/目印設置人 オーラ5
オーラの範囲内にいる味方は<地下探検>と<自然>に+2のパワー・ボーナスを得る。
レベル15: +3 パワー・ボーナス
レベル25: +4 パワー・ボーナス
DMに:雇われ人の特徴
同行キャラクターのように、雇われ人もちょっとした特徴があれば、罠のばねやドアの金具より存在感が増す。細かいところまでたくさんやる必要はない。彼らのちょっとした生き様がうかがい知れればもうそれで十分だ。
種族:雇われ人の種族がデータに影響を及ぼすことはないが、人柄や外見には多分に表れうる。また、雇われ人は自分たちに寛大な主人を好むだろう。
身体的描写:1つか2つくらい目立つ特徴を入れてやろう。身長・体重・肌の色などがやりやすいが、引きずった足、斜視、吹き出物、赤ら顔という感じの要素も面白い。
性格:雇われ人ともなれば、動機や秘密、癖などを気にするには及ばない。単語1つを充てて、それでその人物をまとめられるようなものにしよう。例を挙げると、生真面目、猪突猛進、臆病、錯乱、無謀、忠義者など。
灯り持ち/Linkboy
価格:基準通り
パーティーの光源確保のため、二刀流や盾をあきらめるファイターなどいるはずもない。誰も手が空いてなかったり、持とうともしなかったりする場合、灯り持ちが両手を用立ててくれる。
特徴
トーチ(Torch)/松明 オーラ5
オーラの範囲内は明るい光で照らされる。
傭兵/Mercenary
価格:基準の3倍
傭兵は雇うためにいる兵士としては完璧だ。準備万端、支払さえよければいつでも己の剣と盾を役立てる。
特徴
ヴェテラン・ウォーリアー(Veteran Warrior)/歴戦の戦士 オーラ1
オーラの範囲内にいる味方はACと反応防御値に+1のパワー・ボーナスを得る。それに加え、傭兵自身もACと反応防御値に+2のパワー・ボーナスを得る。
標準アクション
近接攻撃(武器) 無限回
攻撃:近接1(クリーチャー1体);レベル+ 5 対AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
遠隔攻撃(武器) 無限回
攻撃:遠隔10(クリーチャー1体);レベル+ 5対 AC
ヒット:レベル半分(訳注:端数切捨)+ 3ダメージ
操縦士/Pilot
価格:基準の2倍
舵輪を握ってグレートシップを操るにしろ、ワゴンの部隊を駆るにしろ、エアシップをドッグに入れるにしろ、熟練の操縦士の存在はすべての乗組員にとって精神的支柱となる。
特徴
シーズンド・パイロット(Seasoned Pilot)/熟練の操縦士
操縦士として乗り組んでいるとき、この雇い人は乗り物の移動速度に+1のボーナスを与える。
荷物持ち/Porter
価格:基準通り
荷物持ちの生業は運搬要員。彼らはかなりの荷物を背負いながら、ロバや馬では辿りつけないところにも行ける使い勝手の良い雇い人だ。
特徴
ストロング(Strong)/力持ち
この雇われ人の軽荷重は75ポンド、重荷重は150ポンド、最大荷重は375ポンドである。
レベル1~5:基本移動速度5、1日当たり6時間移動できる。
レベル6~10:基本移動速度6、1日当たり8時間移動できる。
レベル11~30:基本移動速度7、1日当たり10時間移動できる。
賢者/Sage
価格:基準の3倍
賢者はある特定の分野の専門家だ。自分の行動範囲からあえて出ようとする賢者などほとんどいないが、いったん自分についてくるよう説得できたなら、彼らの知識は君の知識になる。
特徴
セージ・ノーリッジ(Sage Knowledge) 賢者の知識 オーラ 5
以下の技能から一つ選択する。<魔法学>、<地下探険>、<歴史>、<自然>、そして<宗教>。オーラの範囲内にいる味方は、選んだ技能の判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
レベル15:+3パワー・ボーナス
レベル25:+4パワー・ボーナス
標準アクション
ロア・ユーズ/Lore Use 知識の使い道[一日毎]
効果:味方1人は、セージ・ノーリッジで選択した、次に行う技能判定に+5のアイテム・ボーナスを得る。
記録人/Scribe
価格:基準の2倍
画工や書写など、こうした訓練を受けた者は君の目の前にあるものなら何でも記録や模写をやってのける。
特徴
スクライブ・ドキュメント(Scribe Document)/書類作成
小休憩および大休憩の間、この雇われ人は文章かイラスト1ページを作成する。小休憩であれば下書き、大休憩であれば完成品ができあがる。
歴戦の乗組員/Seasoned Crew Member
価格:基準通り
有能な乗組員たちがいれば、遠い港までの航海も無事が約束されたようなものだ。
特徴
エイブル・クルー(Able Crew)/有能な乗組員
乗り物の乗組員すべてが歴戦の乗組員である場合、その乗り物はすべての防御値に+1のボーナスを得る。
スパイ/Spy
価格:基準の3倍
スパイがいれば、必要な時に必要なだけ情報を得られる。
特徴
エスピナージ(Espionage)/諜報活動
これを雇用しているキャラクターは<事情通>判定に+2のボーナスを得る。
レベル15:+3パワー・ボーナス
レベル25:+4パワー・ボーナス
従者/Valet
価格:基準通り
上流社会を渡り歩くため、金持ちや権力者とうまくやれる立ち居振る舞いを知っている付き人の存在は欠かせない。
特徴
エチケット(Etiquette)/作法 オーラ3
場にふさわしい衣装を着ている場合、オーラの範囲内のこれを雇用しているキャラクターとその仲間は<交渉>判定に+2のパワー・ボーナスを得る。
レベル15:+3パワー・ボーナス
レベル25:+4パワー・ボーナス
ペット
ペットは君のキャラクターの個性や外見を深める面白いやり方だ。飼い猫、小さな蛇、カラスや他の動物でも、何かしらキャラクターの持つ興味を明かしてくれる。もし君が同行する動物の相棒が欲しいと思うなら、以下のオプションを検討してほしい。
クラス:前述したとおり、2つのクラスで野獣の相棒が手に入る。一つが武勇の書で出てきた野獣使いレンジャー、もう一つがHeroes of the Forgotten Kingdoms(未訳)のsentinel(歩哨) ドルイド。いずれの場合でも、キャラクターは相棒の利益を得ることができるし、目的達成のためにパワーを使って支援してくれる。どちらのクラスでもないのなら、プレイヤーズ・ハンドブック3から野獣使いのクラス特徴とプレイしたいクラスを混ぜてみることもできる。
使い魔:別なオプションとして、特に[秘術]タイプのキャラクター向けに、秘術の書で特技≪秘術の使い魔≫がある。キャット、ファルコン、サーペント、変わったところではバウンド・デーモンやブック・インプ。[秘術]クラスならどれでも取得することができるため、マルチクラス・ハイブリッドクラスのキャラクターまで選択できるとても良いオプションだ。
乗騎:乗騎が欲しいなら≪騎乗戦闘≫特技を取ろう。これは乗騎を取得するためのものではない(買わなければならない)が、持っていないと乗騎の利益を得られない。
同行キャラクター: DMの許可があれば、モンスターをダンジョン・マスターズ・ガイドⅡのルールにある同行キャラクターとして使える。ペットをパーティーの一員として使えるため、通常より頭数が少ないパーティーなら良い解決法になるだろう。
ペットの背景:おそらく、ペットを得る最もやりやすい方法は、キャラクターシートに背景の要素として記入することだろう。背景要素としてのペットは、数値や能力など戦闘に意味のあるものとしては出てこないだろう。ペットの蛇、訓練されたレイヴン、家猫、小さな犬がこうしたオプションにふさわしい。そのペットをどうやって手に入れたか、そしてどう思っているかについて考えてみよう。少なくとも1つ過去にそのペットを助けた出来事を出してみる。そして忘れずに名前をつけること!
もしペットをキャラクターの背景として使うなら、DMと相談して適当な技能を決めよう。小さな物体をくすねるよう仕込まれたレイヴンは<盗賊>判定に+2のボーナスがつくかもしれない。小さいがよく吠える犬は<威圧>か<知覚>に+2のボーナスだろう。おしゃべりなオウムやレイヴンは、<はったり>判定に+2のボーナスを与えてくれるかもしれない。
助っ人
雇われ人が端役として冒険者のパーティーを限定的な方法で支える一方、助っ人はほとんど独立した一個のキャラクターとして関わり、冒険者のグループに交じって存在感を示す。こうしたキャラクターはパーティーの一員と言って差し支えない。助っ人にはプレイヤー・キャラクターが使う特徴や性能・パワーがたくさんあるが、簡略化することでプレイヤーが(自らのキャラクターと)同時に補助的キャラクターとして使えるよう調整している。
また助っ人は同行キャラクターのようにさまざまな形をとりうる。モンスター・マニュアルやMonster Vault(未訳)からの野獣であったりモンスターであったりするかもしれない。あるいはキャラクター同様、英雄たちと同種のパワーを使う場合もある。さらにDMが作る、あるいは以下に示すようなサプリメントを応用した独自のものもいるかもしれない。
助っ人を得る
自分のパーティーで助っ人を得る方法だが、簡単なやり方なら田舎の酒場で募集でもしてみればいいし、手の込んだものは補助クエストの達成、賃金交渉をする、もしくは仲間となる者を都市や野外、ダンジョンまで探してみる、などがあるだろう。
仲間として:助っ人はパーティーで欠けている役割を補ったり、休んでいるプレイヤーの代役を務めたりするために使われる。指揮役がいないなら冒険を成功に導けるような人材が必要だろう。常にいてもいいし、必要に応じてでもいい。ゲームの必要に応じて、仲間はどのようにも存在させることができる。
用心棒として:時に危険なミッションをこなすため、ちょっと手助けが欲しくなることもあるだろう。防衛や撃破を務める人間が増えるのは大きく違う。特にそうした役目の人間が足りないならきっとそうだろう。助っ人はお金などの見返りで冒険者のグループについてくることもあるだろうが、パーティーに加わって支援させることが主要ないし副次クエスト達成になる、ということもあるかもしれない。また、雇った人間は無期限で仲間というわけではない。その契約にはいつ終わりがくるかがきちんと書かれている。
助っ人への支払いが金銭の場合、金額はパーティーのレベルに等しいマジック・アイテムの5分の1になる。
友軍として:冒険をしていれば、中には友好的・協力的なキャラクターと会うこともあるだろう。共通の敵に対して一時的に手を組むこともあるだろうし、ライバルのパーティーに対して力を合わせることもあるだろう。重要人物を救出したところ、身の安全が確保されるまで君たちと一緒に闘ってくれることがあるかもしれない。
助っ人を作る
雇われ人と違い、助っ人を作るのはDMの仕事だ。ダンジョン・マスターズ・ガイドⅡの中に、モンスターを同行キャラクターとして使う方法および独自の同行キャラクターを作るのに必要なルールが記載してある。
助っ人を使うのは
作るのはDMであっても、助っ人はプレイヤーの側で戦闘や技能チャレンジに臨む。遭遇外では、DMがそのキャラクターの性格・動機・秘密に沿って運用する一方、遭遇ではDMの裁量でキャラクターの操作を任されることもある。
助っ人を使用する際に
助っ人を君のグループで使用する際に頭に入れておいて欲しいことをいくつか。まず、助っ人にマジック・アイテムは必要ない。よってマジック・アイテムの配分には助っ人を含めなくてよい。次に、助っ人は英雄と同等の経験値を得るため、一人当たりの経験値を計算する際に頭数に含める。最後に、助っ人はグループのキャラクターとまったく同様にレベルアップして成長する。
DMに:サンプルの助っ人を使う
ここに記載されている助っ人は2レベルで統一されている。必要に応じてダンジョン・マスターズ・ガイドⅡの32ページに記載されたルールを適用してほしい。キャラクターを描写する要素をふんだんに盛り込んでみたが、変えたいなら一向に構わない。最後に一つ。こうしたキャラクターは、キャンペーンにおける縁の下の力持ちであるように。
助っ人の例
てっとり早く助っ人を作りたい場合、以下のキャラクターを活用してほしい。
アナキシアナ
命知らずな戦闘魔術師
アナキシアナはエラドリンの魔術師、正しくは復讐に飢えた命知らずの戦闘魔術師。痩せぎすと言えるまでにほっそりしており、険しい顔つきと高い鼻が、武闘派な人となりを表す。彼女は無地の灰色のローブを好み、ロングソードを腰の鞘にさしている。
オークやドラウ狩りといった依頼は最も容易くアナキシアナをグループに誘える口実になる。こうしたモンスターと容赦なしにやりあい、また戦いを大いに楽しむ。彼女は自らの敵を駆り殺すような目的の旅にはしばらくの間同行するかもしれないが、血の渇きが満たされないようならいなくなるだろう。
アナキシアナ レベル2 制御役
中型・フェイ・人型 エラドリン
HP 27; 重傷値13; 回復力使用回数7; 回復力値6 イニシアチブ+4
AC 15; 頑健15、 反応17、 意志14 <知覚>+0
速度6 夜目
セーヴィング・スロー:[魅了]効果に対して+5
標準アクション
ロングソード[武器] 無限回
攻撃: 近接1 (クリーチャー1体); +9 対 AC
ヒット: 1d8 + 1 ダメージ。
マジック・ミサイル/魔法の矢 [力場]、 [装具] 無限回
遠隔20 (クリーチャー1体)
効果:7[力場]ダメージ。
バーニング・ハンズ/火炎双手 [火]、[装具] 遭遇毎
攻撃:近接噴射5 (範囲内のクリーチャー); +6 対反応
ヒット:2d6 + 5 [火]ダメージ。
ミス:半減ダメージ
フリージング・バースト[冷気]、[装具] 無限回
攻撃:遠隔範囲・爆発1 ・10マス以内 (爆発内のクリーチャー); +6 対反応
ヒット: 1d6 + 5[冷気]ダメージ、さらにアナキシアナは目標を1マス横滑りさせる。
移動アクション
フェイ・ステップ/フェイの一跳び [瞬間移動] 遭遇毎
効果:アナキシアナは5マスまで瞬間移動する。
即応アクション
シールド/盾 遭遇毎
トリガー:アナキシアナに対する1回の攻撃がヒットする
効果(即応・割込): アナキシアナは次のターン終了時までACと反応に+4のパワー・ボーナスを得る。
正確さのワンド 遭遇毎
トリガー:アナキシアナが自身のターンを開始する
効果(フリー・アクション):アナキシアナはターン終了時までに行うワンドを用いた次の攻撃ロールに+3のボーナスを得る。
技能<魔法学>+10、<歴史>+10、<看破>+5
【筋】10 (+1) 【敏】17 (+4) 【判】 8 (+0)
【耐】13 (+2) 【知】19 (+5) 【魅】10 (+1)
属性:無属性 言語:共通語、エルフ語
装備品:ローブ、ロングソード、ワンド、標準冒険者キット
マイケル・エバードン卿
堕ちた騎士
かつては武勇と自らの家柄を誇る有望な騎士であったが、その栄光も失われ、今やかつていた地では最下層民同然の扱いである。彼は決してこれまでどうしてきたのか自ら語ることはないものの、気が沈んだり泥酔したりすればその一端を窺い知ることができる。
マイケルは太鼓腹、赤鼻、しょぼくれた目のがっしりした男であり、やつれた見かけによらず、戦いにおける技量と力、そして苛烈さは失われていない。そのぼろぼろの甲冑はかつての武勲を、消えかかった「突進するイノシシ」の紋章は、盛んだった昔の地位を窺い知ることができる。
この堕ちた騎士は救いを求めている。名誉回復につながりそうなことをする冒険者のグループなら熱心に加わりたがる。高貴な探索行にあって、彼は一切の酒を断つ。退屈と不満で我慢できなくなるまでは・・・。
マイケル・エバードン卿 レベル2 防衛役
中型・人型・ヒューマン
HP 35; 重傷値17; 回復力使用回数11; 回復力値 8 イニシアチブ+1
AC 21; 頑健18、反応14、意志16 <知覚>+2
移動速度 5
標準アクション
ロングソード[武器]無限回
攻撃:近接1(クリーチャー1体); +9対AC
ヒット:1d8 + 5ダメージ、さらにマイケルは目標を次のターン終了時までマークする。
タイド・オヴ・アイアン/打ち寄せるくろがね [武器] 無限回
必要条件:マイケルは盾を使用していなければならない。
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +9 対AC
ヒット:1d8 + 5ダメージ、さらにマイケルは目標を1マス押しやり、それまで目標が占めていたマスにシフトすることができる。
マイナー・アクション
グローワリング・スレッド/睨めつける脅威 遭遇毎
効果:近接爆発2 (爆発内の敵すべて) マイケルの次のターン終了時まで、各目標はマイケル以外に行う攻撃ロールに–5のペナルティを受ける。
機会アクション
ヒロイック・エフォート/英雄的奮闘 遭遇毎
トリガー:マイケルが1回の攻撃ロールをミスするか、1回のセーヴィング・スローに失敗する。
効果:マイケルはトリガーとなった攻撃ロールまたはセーヴィング・スローに+4の種族ボーナスを得る。
パワー・ストライク/猛打撃 遭遇毎
トリガー:マイケルがロングソードで敵にヒットを与える。
効果(アクションではない):トリガーを発生させた攻撃は1d8の追加ダメージを与える。
技能 <運動>+10、<持久力>+8、<威圧>+8
【筋】18 (+5) 【敏】11 (+1) 【判】12 (+2)
【耐】14 (+3) 【知】 8 (+0) 【魅】14 (+3)
属性:善 言語:共通語、巨人語
装備品 プレート・アーマー、ヘヴィ・シールド、ロングソード、標準冒険者キット
ケドラ・フォージスウォーン
盲信の僧侶
ケドラ・フォージスウォーンはモラディンの熱烈な信者だが、信心も行き過ぎて狂信者ともとれる。彼女が氏族を離れたのは成功や栄光を求めてではなく、この世界におけるモラディンの教えの体現者たらんとしてのことだった。
ほとんどのドワーフがそうであるように、ケドラも背が低くがっしりしている。己の信念がいかなる物理的な力の不足も埋め合わせるし、主義主張が絡んだときの彼女の粘り強さときたら、胃袋に新鮮な死体が入ったトロルのごとくだ。彼女は自らの頭を丸め、モラディンの好戦的な聖職者が好む聖典「ブック・オヴ・スパイト(悪意の書)」に記された戦闘のくだりをそこに書いている。
他の何よりも優先して、ケドラの望みはモラディンの命ずるまま、この世界にその御印を刻みつけることにある。だが、何をどうすればよいということが分かっているわけではない。そして、その目的を達するためには冒険者という生き方が最も確実だと疑わない。彼女は以前にも他のグループと協働したことがあるが、毎回ひどい別れ方をしている。その癪に障る人格に問題があるのだ。
ケドラ・フォージスウォーン レベル2 指揮役
中型・人型・ドワーフ
HP 34; 重傷値17; 回復力使用回数10; 回復力値8 イニシアチブ+2
AC 17 頑健15、反応13、意志17 <知覚>+5
速度5 夜目
セーヴィング・スロー:[毒]の効果に対して+5
特徴
スタンド・ユア・グラウンド/踏ん張り
何らかの効果(押しやり、引き寄せ、横滑り)がケドラを強制移動させようとしたとき、ケドラが実際に移動させられるマスの数はその効果の定められる数値よりも1マス少なくなる。加えて、何らかの攻撃によってケドラが伏せ状態になったとき、ケドラは即座に1回のセーヴィング・スローを行なうことができ、成功すれば伏せ状態にならずにすむ。
標準アクション
ウォーハンマー[武器] 無限回
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +8 対AC
ヒット:1d10 + 1ダメージ。
スローイング・ハンマー[武器] 無限回
攻撃:遠隔5/10 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d6 + 2ダメージ。
ブレッシング・オヴ・ラース/怒りの祝福 [武器] 無限回
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d10 + 5ダメージ。
効果:ケドラもしくは彼女から5マス以内の味方1人は、彼女の次のターン終了時までに行う、目標に対する次のダメージ・ロールに+3のパワー・ボーナスを得る。
サンクチュアリ/聖域 遭遇毎
効果:遠隔10 (ケドラかクリーチャー1体) 目標はすべての防御値に+5のボーナスを得る。この効果は目標が攻撃を行うか、ケドラの次のターン終了時まで持続する。
ディヴァイン・グロウ/信仰の輝き [装具]、[光輝] 遭遇毎
攻撃:近接噴射3 (範囲内の敵すべて); +6 対反応
ヒット:1d8 + 5[光輝]ダメージ。
効果:噴射内の味方は、ケドラの次のターン終了時まで攻撃ロールに+2のパワー・ボーナスを得る。
マイナー・アクション
ヒーリング・ワード/癒しの言葉 [回復] 遭遇毎2回
効果:近接爆発5 (ケドラか爆発内の味方1人) 目標は回復力を消費する。
ドワーヴン・リジリアンス/ドワーフの底力 遭遇毎
効果:ケドラは底力を使用できる。
技能<地下探険>+10、<持久力>+11、<治療>+10
【筋】11 (+1) 【敏】12 (+1) 【判】19 (+5)
【耐】17 (+4) 【知】 8 (+0) 【魅】10 (+1)
属性:秩序にして善 言語:共通語、ドワーフ語
装備品:スケイル・アーマー、ウォーハンマー、スローイング・ハンマー、聖印、標準冒険者キット
ゲシュ
傭兵隊長
かつては傭兵の隊を束ねる頭であった男も、今は売剣の身であり、最も高い値を払った者に剣を捧げている。
ゲシュは人目を引く男だ。背が高く筋肉質で、青銅に輝くスケイル・アーマーを身に纏う。毎晩寝る前に、彼は自分の鎧と槍を磨いて油を差し、申し分のない状態に整えている。
指図がゲシュから次々飛んでくる。自らの意見を胸に仕舞っておくというところがこの男にはない。武器の握り方から戦術に至るまで、自分の戦場での経験が僚友の知恵となると固く信じているためだ。ゲシュの経験に口をはさむ者はいないが、あいつは横暴だと思っている者はいる。
ゲシュ レベル2 指揮役
中型・人型・ドラゴンボーン
HP 30; 重傷値15; 回復力使用回数8; 回復力値8 イニシアチブ+2
AC 17; 頑健17、反応13、意志15 <知覚>+4
速度5
特徴
ドラゴンボーンの怒り
重傷である間、ゲシュは攻撃ロールに+1のボーナスを得る。
標準アクション
ロングスピア [武器] 無限回
攻撃:間合い2 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d10 + 5ダメージ。
ヴァイパーズ・ストライク/毒蛇の打撃 [武器] 無限回
ヒット:1d10 + 5ダメージ。
効果:目標がゲシュの次のターンの開始時までにシフトを行ったなら、目標はゲシュが選んだ味方1人から機会攻撃を誘発する。
ハンマー・アンド・アンヴィル/鎚と金床 [武器] 遭遇毎
攻撃:間合い2 (クリーチャー1体); +8対反応
ヒット: 1d10 + 5ダメージ。目標に隣接する味方1人はフリー・アクションとして目標に1回の近接基礎攻撃を行なう。味方はこの攻撃のダメージに+3のボーナスを得る。
移動アクション
ナイツ・ムーヴ/桂馬跳び 遭遇毎
効果:遠隔10 (味方1人) 目標は1回の移動アクションを行なう。
マイナー・アクション
ヒーリング・ワード/癒しの言葉 [回復] 遭遇毎2回
効果:近接爆発5 (ゲシュか爆発内の味方1人) 目標は回復力を消費する。
ドラゴン・ブレス[火] 遭遇毎
攻撃:近接噴射3 (噴射内のクリーチャーすべて); +6対反応
ヒット:1d6 + 2[火]ダメージ。
技能:<歴史>+6、<威圧>+9
【筋】19 (+5) 【敏】12 (+1) 【判】 8 (+0)
【耐】13 (+2) 【知】10 (+1) 【魅】16 (+4)
属性:秩序にして善 言語:共通語、竜語
装備品:チェインメイル、ロングスピア、標準冒険者キット
ルーク
影の殺し屋
ルークはドラウの都市、エレルハイ・シンル出身の典型的なドラウだ。裏切りの街において、ルークはあらゆる意味で生きるということを学び、自由を勝ち取るためにナイフ使いの技を究めた。数年ののち都市を後にした彼は、己の仕事に疑問を差し挟まぬプロフェッショナルな無関心さを持つ殺し屋となった。
ルークの背は特に高いとはいえず、やせ気味の己の身を灰色のフードがついた外套と黒服で包んでいる。戦いにおいては、彼は隠れたところから短剣とクロスボウで敵を不意打ちする。あらゆる場面が殺し合いに発展しうると考えているため、自らの出番でないとみるやその場から離れる。
ルークは己自身とその行動について決して後悔はしない。実用主義者である彼は、仕事の遂行に必要だと思うことすべてを躊躇いなく行う。ルークは友人を作ったりしない。作るのは顧客だ。彼のする約束はみな仕事の契約であり、己の働きに見合った支払いをこそ望んでいる。
ルーク レベル2 撃破役
中型・フェイ・人型生物・ドラウ
HP 29; 重傷値14; 回復力使用回数7; 回復力値7 イニシアチブ+5
AC 17、頑健13、反応17、意志15 <知覚>+1
速度5 暗視
標準アクション
ダガー[武器] 無限回
攻撃:近接1 (クリーチャー1体); +9対AC
ヒット:1d4 + 5ダメージ。
ハンド・クロスボウ[武器] 無限回
攻撃:遠隔15/30 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:1d6 + 5ダメージ。
スライ・フラーリッシュ/狡猾にして優美
効果:ルークはダガーもしくはハンド・クロスボウで攻撃を行い、ダメージに+3のボーナスを得る。
インパクト・ショット/衝撃の一射 [武器] 遭遇毎
攻撃:遠隔15/30 (クリーチャー1体); +8対AC
ヒット:2d6 + 5ダメージ、ルークは目標を1マス押しやる。
移動アクション
タンブル/曲芸移動 遭遇毎
効果:ルークは5マスまでのシフトを行う。
マイナー・アクション
クラウド・オヴ・ダークネス/闇の雲 遭遇毎
効果:近接爆発1 この爆発は闇の雲を生み出す。この雲はルークの次のターンが終了するまでその場所に留まる。この雲は視線を妨害し、この雲の中にあるマス目は“完全な遮蔽”となり、この雲の中に完全に収まっているクリーチャーは、この雲の外に出るまで盲目状態になる。ルークはこれらの効果に対する完全耐性を得る。
機会アクション
ストライカーズ・エッジ/撃破役の刃 無限回(1ターン1回)
トリガー:ルークが戦術的優位を有する敵1体にヒットを与える
効果(アクションではない):トリガーを発生させた攻撃は1d6の追加ダメージを与える。
技能<運動>+10、<威圧>+9、<隠密>+10
【筋】10 (+1) 【敏】19 (+5) 【判】11 (+1)
【耐】12 (+2) 【知】10 (+1) 【魅】16 (+4)
属性:無属性 言語:共通語、エルフ語
装備品:レザー・アーマー、ダガー2本、ハンド・クロスボウ、ボルト20本、標準冒険者キット
筆者について
ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズ、ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ、A Song of Ice and Fire RPG、 Star Wars RPG、d20システムにおいて200近いタイトルのTRPGのデザインや開発にかかわって表彰されたゲーム・デザイナーだ。ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社での最近の作品はD&D® Gamma World: Famine in Far-Go、Dark Sun Campaign Setting、モンスター・マニュアル3があり、またドラゴン・ダンジョンマガジンの両方で、レギュラーのライターをしている。著者に関してさらに知りたい場合は、彼のウェブサイト( www.robertjschwalb.com.)を参照してほしい。
チャネル・ディヴィニティ:アイウーン
2011年5月10日 ゲーム(補足)「次元界の書」94ページに白鳥の塔、ケリスアルドの記述があります。併せてご参照ください。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201103ioun
チャネル・ディヴィニティ:アイウーン
白鳥の塔の賢人達
ケン・シルヴァーマン
君は見たか?白鳥の塔が地から天へと輝かしい弧を描くのを!そのまばゆい白い輝きは、塔にある真実を表すかのようだ。だが、見てくれなど、その中にある驚異に比べれば何ほどのことでもない。そこでは得難い才能を持つ歴史家、筆記者、予見者が定命の千世の夢にも勝る量の知識を記録しているのだから。そして賢者。ああ、栄えある賢者よ!アイウーンにすべてを捧げる、伝承に科学、そして秘術の巨匠達がそこにいる。そうだ友よ、白鳥の塔は並び立つ者なき真なる智なのだ。
ケリスアルドの学び舎、またの名を白鳥の塔と呼ばれるそこは、敬愛されるアイウーンが賢者達の居所である。この永遠の賢者たちは宇宙の、ひょっとしたら宇宙さえも超越したところから知識のかけらを学び、発見し、記録に残す。大部分のものがアイウーンに身を捧げており、いつしか、栄誉ある「啓発の間」と呼ばれる、居ながらにして最も素晴らしく、かつ最も多様な研究資材を集められるという、研究や実験に最高の場所に地位を得ることを願っている。そして、その中でもごくわずかな者が、考えうる限り最高の名誉を手に入れようと励む。すなわち、「アイウーンの柱」と称されること。
白鳥の塔の記録者
ケリスアルドにおいて最も名誉ある役目というわけではないが、記録者は白鳥の塔の生命線だ。賢者が学んで新たな真実を発見するのに時間を費やすかたわらで、記録者はそれが失われることのないように書き記す。やり方を工夫していくうち、彼らの努力の結果が珍しい光景と音に満ちた塔の内部を作り上げた。数世紀ほど前、記録者はどんな記録も簡単にやれる方法を編み出した。各人の仕事を、異なる種別の音階で魔法的に符号化するのだ。塔の住人がとある項目を参照したいと思ったら、その項目に関連する箇所がそれぞれ異なった調子の音階を発する。探し事が見つかるか、もう必要ないと念じるまで音は続く。塔の忙しい日は、一大楽曲よろしく音で溢れるが、うるさくなりすぎて集中できなかったり、音が混ざり合い、わけが分からなくなったりすることはどういうわけか起こらない。
白鳥の塔の中にいる者なら誰でも、どこにいてどれだけ離れているかに関わらず白鳥の塔にある音階記録すべてにアクセスすることができる。だが、音階が鳴るのを自らの精神だけに留めておけるのは記録者だけだ。こうした措置によって、塔は住人によって造りだされる記録を適切に管理している。
白鳥の塔の予見者
掌にある無限に近い知識のおかげで、白鳥の塔の予見者は既知の宇宙にいる他のいかなる巫女や神の信託者よりも確度が高く、詳細な予兆をもたらすことができる。白鳥の塔の予見者はこうした能力を特定の幻視について経験したり、将来を予言したりするのに役立てる。
予見者が、得られた情報から2通りの予兆を解釈できる場合、どのように対処するかは予見者それぞれの責任において行われる。ある場合、幻視を最も有効活用する方法は、賢人達を手助けして予見の指し示す世界の神秘を解き明かすことになる。またある場合、予見者が示した未来へのドアは、賢者一人では急すぎるか問題が大きすぎて手に余る。この場合、より現実的な対処法として、事態に対処できる英雄を募るよう賢者を導く。
白鳥の塔の賢者
白鳥の塔の賢者達は、宇宙が無限であるということを知っており、その真実に脅かされることはない。ケリスアルドで働く賢者の仕事は現実の中の秘密を休むことなく発見し続けることなのだ。ある者は調査に、別の者は哲学に、また別の者は実験に特化している。これらの賢者の研究や理論は定命の専門家の理解を越えるところがあり、そうした業績に「大雑把な思いつき」というレッテルを張ろうとする、懐疑論者(論を理解できない者)や批判論者(密かにヴェクナとつながっている者もいる)を招く。
賢者は白鳥の塔の住人でも最も知られた存在である。この塔を訪れた者は、ときおり賢者に集まる名声が妬ましいという記録者や予見者の嫉妬の言葉を耳にするかもしれない。ほとんどないとはいえ、そのような名声を持つ者がヘスタヴァールの街から漏れ出ることがあったとしても、アイウーンが見逃すことはない。彼女はあまねく宇宙を探し、そうした技能や専門を持った者を見つけては取り立てている。
DMに:キャンペーンでの白鳥の塔
既知宇宙における智の城として、ケリスアルドは興味を引く。よくある「軽くスポットライトを当てる」(訳注:背景設定の一部として使う)キャンペーンでは、白鳥の塔は伝説や神話のいくつかに登場させることができる。一般人やほとんどの英雄級の冒険者にとって、白鳥の塔は子供に語るようなおとぎ話にすぎない。だが、ごくわずかに、これが実在のものであることを学んだ者がいる。ある者にとっては、このことはアイウーンもしくは彼女のエグザルフからしか知らされることはなく、啓発の間に蓄えられた知識に添えた祝福として授けられる。またある者にとっては、この事実は古文書の研究やアストラル海の探索の中で得られる。
多くが気高い志を持って塔を訪れんと欲しているが、それと同じだけ知識に対する我欲から塔を探す連中もいる。だが、もっと危険なのは、破壊を欲し、価値ある物事を否定することで、世界を無知と暗闇に陥れんと望む輩だろう。
キャンペーンの中には、知識を入手するのがそんなに難しくないものもあるかもしれない。たとえば、荒れていない王国には大きな研究所がありそうだ。もっとも、そのような場合でも、白鳥の塔はいかなる定命の図書館を超える情報量を持つ。知識が通常より入手しやすいのなら、白鳥の塔は定期的にセミナーを開いているかもしれないし、年ごとに「啓発の間」に留学できる人間の選考会を行っているかもしれない。塔の特使が、他の賢者に助言したり手助けしたりするために、定命の領域にある大きな教養・文化的な施設に赴くことがあるだろう。
キャンペーンの背景設定によって、白鳥の塔は両極端、あるいはその中間のどこにでも成り立ちうる。たとえば、大きな戦争の惨禍で、ただ一つの国が生き残っていたとする。この最後の施設は白鳥の塔とのつながりを何とかして残したがっており、さもなくば戦争が定命の領域と白鳥の塔を切り離してしまうだろう。時が流れるにつれ、白鳥の塔はある者からは忘れ去られるものの、そうでない者には実在し続ける。ひょっとしたら白鳥の塔は再建を手助けするために賢者を送っているのかもしれない。ただし、争っている文明同士が塔の存在に気づけば何が起こるか分かったものではないため、こうした援助は秘密裏に行われる。
その重要性がキャンペーンによって変わるとはいえ、白鳥の塔は、英雄級の時点では単なるうわさ話にすぎないだろう。伝説級になると、英雄はストーリー上重要な箇所やクエストの場面として、白鳥の塔を訪れることができるようになる。そして神話級に達したとき、キャラクターは折に触れ白鳥の塔を訪れて目下の問題について調査したり、ひょっとすると塔に新しい知識をもたらしたりするかもしれない。
アイウーンの柱
白鳥の塔の創設以来、アイウーンは目覚ましい働きを見せた賢者を賞する場を設けている。賢者それぞれで業績は異なるものの、ただひとつ確かなことがある。それぞれの示す技能や気概、そして理想は、他の白鳥の塔にいる賢人だけにではなく、アイウーンに従う者すべてに捧げられる。
これらの賢者を祝福するため、アイウーンは石膏でできた記念碑を造り、自らの認める最も優れた者たちを讃えた。碑の一つ一つが賢者それぞれを表し、エネルギーの源として供されている。中に込められた魔法の力は永遠に燃え続け、この力はアイウーン・ストーンが作られるたび使用される。それぞれの石はアイウーンの最も優れた賢者に敬意を表して贈られるものであるため、それ以外のことでアイウーンが作ることはない。
現在まで、アイウーンに讃えられた賢者は7人いる。以下が「アイウーンの柱」と称され、敬愛される者たち。
カーリアラン・マーライズ:変化を胸に抱く者として知られた彼女は、自らの研究も1世紀以上一つの分野だけをやり続けたことはない。定命の存在がアイウーン・ストーン・オヴ・アダプテーションを使用したとき、カーリアランが持つ、変化を通じて繁栄をもたらす能力を与えられる。
チューベロン・ケロ:彼は神格の研究で名高い。その発見は他のいかなるものよりも内容が充実しており、アイウーンをして、自らよりもこの身を知っているかもしれないと言わせるほど。チューベロンによる、神に関する驚嘆するほどの知識は、アイウーン・ストーン・オヴ・ディヴァイン・ノーリッジを使ったときにその価値を示す。
ラー・ケイ・キリ:アイウーンがラー・ケイを賞した業績は、当初「片手間のこと」として始め、結果としてすぐに一生の仕事となったものだった。彼はあらゆる字体と言語において話し言葉・書き言葉を修めた。アイウーン・ストーン・オヴ・パーフェクト・ランゲージを使うと、彼の業績の偉大さがわかる。
グラージ・ツアマリー:能力がありながら努力が不運に終わることがよくあった彼だが、それでも学問への献身を失うことは決してなかった。アイウーン・ストーン・オヴ・リジェネレーションを使った者は、グラージの失敗から学ぶ精神に触れている。
ローイア・ディクワット:ローイアは逆境にあっても自分の節を曲げない不屈の精神を持っている。ついに彼女の信念が実を結んだかのごとく、アイウーン・ストーン・オヴ・ステッドファストネスを使用したものはその力を引き出せる。
ハメイル・フェリオ:食事すらも週の終わりに一度だけで済ませてしまうほど、仕事に専念することで知られた彼は、仕事に対する愛情だけで生きているという驚くべき能力を持っている。アイウーン・ストーン・オヴ・エンデュランスを使ったものは、ハメイルの専心と持久力を呼び起こす。
ジェラリー・リリム:間違った伝説のおかしいところ、意図的に歪められた文章の矛盾を指摘させることにかけてこの賢人の右に出る者はいない。アイウーン・ストーン・オヴ・トゥルー・サイトを起動させたものだけが、身を持ってジェラリーの洞察力を知る。
シナリオフック
◆ アイウーンの知識と塔の住人を亡き者にするべく、ヴェクナとその信奉者が白鳥の塔の所在を探し求めている。目的を達するため、ヴェクナ信徒が塔に忍び込み、大事な巻物や書物を盗み出そうとする。盗まれた巻物は比較的簡単に所在を特定できるとはいえ、取り返すとなると一筋縄ではいかない。さらに、ヴェクナとその僧侶どもには、音階記録化した塔の知識を解読したり改変したりできっこない、などと誰が言えるだろう?
◆ 白鳥の塔の予見者による、予言や未来に関する強力な幻視はキャラクターに対して新しいクエストを授ける良い手段になる。誰かがアイウーンを信仰しているならばなおさらだ。さらに、予見者からのメッセージは、現在進行している冒険が行き詰ったときの助けとなり、良い意味で修正が図れる。予見者の物の見方については適度な幅を持たせること。英雄に未来のことについて相談するとき、示す幻視は深刻なものであったほうがよい。
神話の運命
セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワー
Sage of the Swan Tower/白鳥の塔の賢者
前提条件:21レベル、アイウーンを信仰していなければならない。
君の学問に対する貢献とアイウーンに対する献身は、ついに他に並び立つもののない地位へと押し上げた。白鳥の塔の賢者として、栄えある啓発の間から無限の知識を引き出すことができる。だが、君は他の賢者とは一線を画する。書物を読みふけって学ぶだけでは足りないということが分かった君は、知識の獲得や仮説の実証のため、時間の大部分を外で費やす。
新たに得た貴重な知識、新たに得た啓発のひとつひとつが、君の胸に抱いたゴールへと近づけていく。君が発見と解明という偉業を成し遂げ、新たな知識となったとき、アイウーンが君のことを呼ぶのを感じる。そして君の夢は現実のものとなり、白鳥の塔における永遠の賢人に名を連ねるのだ。
ケリスアルドでの賢人仲間達との生活はまさに君の望んだものであるが、アイウーンの柱のもとを訪れるたび、自分にも同じだけの力があると感じるようになる。とはいえ、アイウーンが賢者にそのような地位を与えるまでに長い時間がかかった。君が自分の石膏の記念碑を得るその日まで、今少しの忍耐が必要になるだろう。
セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワーの特徴
レベル21:専攻分野のエキスパート
調査と研究によって君は自分の実力を示してきた。それゆえ己の土俵において右に出る者はいない。
利益:君の【知力】または【判断力】は2上昇する。加えて<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>の技能のうち、君が習得しているものを一つ選ぶ。選んだ技能の判定をする際はいつでも、2回ロールして任意の結果を用いる。
レベル24:信仰の秘術
君にとって、信仰と秘術の境目がはっきりしなくなる。
利益:[秘術]の攻撃パワーを使用したとき、次のターン終了時までに行う、次の[信仰]の攻撃パワーで君は戦術的優位を得る。また、[信仰]の攻撃パワーを使用したとき、次のターン終了時までに行う、次の[秘術]の攻撃パワーで君は戦術的優位を得る。
レベル26:応用できる知識
白鳥の塔から得た知識は君独りのものではない。君は必要に応じて仲間に情報を分け与える能力を磨いた。
セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワーのパワー
ノーリッジ・アプライド
Knowledge Applied/応用できる知識 セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワー/汎用 26
白鳥の塔に蓄えられた知識を引き出して、君は味方の行動を成功へと導く。
遭遇毎◆[秘術]、[信仰]
フリー・アクション 近接爆発5
トリガー:爆発範囲内の味方が1回の技能判定、能力判定、セーヴィング・スローに失敗する。
効果:トリガーを発生させた味方は使用者の【知力】または【判断力】修正値分のボーナスを得て新しい判定を行い、任意の結果を用いる。
レベル30:柱の秘密
アイウーンの柱には記念碑以上のものが贈られる。アイウーンは、定命の危険のうちごく近いものに対処できる閃きを授ける。
利益:遭遇毎に1回、ダメージを受けたときフリー・アクションとして【知力】判定か【判断力】判定を行うことができる。使用者は判定結果を差し引いたダメージを受ける。
新しい神の賜物
リンク・トゥ・ザ・ピラーズ
不屈の信徒に報いるため、アイウーンはたまに、「アイウーンの柱」の記念碑につながる魔法的なつながりを授ける。
リンク・トゥ・ザ・ピラーズ レベル7+アンコモン
アイウーンの柱との信仰的なつながりが、その身の力となる。
レベル7 2,600 gp レベル22 325,000 gp
レベル12 13,000 gp レベル27 1,625,000 gp
レベル17 65,000 gp
神の賜物
特性:使用者は儀式に必要なすべての技能判定に+2のアイテム・ボーナスを得る。
レベル17:+4 アイテム・ボーナス
レベル27:+6 アイテム・ボーナス
パワー([一日毎]):即応・割込。トリガー:いずれかの種別を持つダメージを受ける。効果:使用者はトリガーを発生させた種別に対する抵抗5を得る。トリガーを発生させたダメージが2種類以上の種別を持つ場合、それらのうち1種類を選ぶ。この効果は遭遇の終了時まで持続する。
レベル12:抵抗10
レベル22:抵抗15
筆者について
ケン・シルヴァーマンは脱「熱烈なファン」であることに決めた熱烈なファンかつライターだ。彼は愛する妻と動物園(天使が1体、海軍大将が1体、小神が2体)とともに居心地の良い家に住んでいる。彼にとって犬の吠える声、猫の鳴き声、妻の言葉はみな励ましで、それらにいたく感謝する。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dra/201103ioun
チャネル・ディヴィニティ:アイウーン
白鳥の塔の賢人達
ケン・シルヴァーマン
君は見たか?白鳥の塔が地から天へと輝かしい弧を描くのを!そのまばゆい白い輝きは、塔にある真実を表すかのようだ。だが、見てくれなど、その中にある驚異に比べれば何ほどのことでもない。そこでは得難い才能を持つ歴史家、筆記者、予見者が定命の千世の夢にも勝る量の知識を記録しているのだから。そして賢者。ああ、栄えある賢者よ!アイウーンにすべてを捧げる、伝承に科学、そして秘術の巨匠達がそこにいる。そうだ友よ、白鳥の塔は並び立つ者なき真なる智なのだ。
ケリスアルドの学び舎、またの名を白鳥の塔と呼ばれるそこは、敬愛されるアイウーンが賢者達の居所である。この永遠の賢者たちは宇宙の、ひょっとしたら宇宙さえも超越したところから知識のかけらを学び、発見し、記録に残す。大部分のものがアイウーンに身を捧げており、いつしか、栄誉ある「啓発の間」と呼ばれる、居ながらにして最も素晴らしく、かつ最も多様な研究資材を集められるという、研究や実験に最高の場所に地位を得ることを願っている。そして、その中でもごくわずかな者が、考えうる限り最高の名誉を手に入れようと励む。すなわち、「アイウーンの柱」と称されること。
白鳥の塔の記録者
ケリスアルドにおいて最も名誉ある役目というわけではないが、記録者は白鳥の塔の生命線だ。賢者が学んで新たな真実を発見するのに時間を費やすかたわらで、記録者はそれが失われることのないように書き記す。やり方を工夫していくうち、彼らの努力の結果が珍しい光景と音に満ちた塔の内部を作り上げた。数世紀ほど前、記録者はどんな記録も簡単にやれる方法を編み出した。各人の仕事を、異なる種別の音階で魔法的に符号化するのだ。塔の住人がとある項目を参照したいと思ったら、その項目に関連する箇所がそれぞれ異なった調子の音階を発する。探し事が見つかるか、もう必要ないと念じるまで音は続く。塔の忙しい日は、一大楽曲よろしく音で溢れるが、うるさくなりすぎて集中できなかったり、音が混ざり合い、わけが分からなくなったりすることはどういうわけか起こらない。
白鳥の塔の中にいる者なら誰でも、どこにいてどれだけ離れているかに関わらず白鳥の塔にある音階記録すべてにアクセスすることができる。だが、音階が鳴るのを自らの精神だけに留めておけるのは記録者だけだ。こうした措置によって、塔は住人によって造りだされる記録を適切に管理している。
白鳥の塔の予見者
掌にある無限に近い知識のおかげで、白鳥の塔の予見者は既知の宇宙にいる他のいかなる巫女や神の信託者よりも確度が高く、詳細な予兆をもたらすことができる。白鳥の塔の予見者はこうした能力を特定の幻視について経験したり、将来を予言したりするのに役立てる。
予見者が、得られた情報から2通りの予兆を解釈できる場合、どのように対処するかは予見者それぞれの責任において行われる。ある場合、幻視を最も有効活用する方法は、賢人達を手助けして予見の指し示す世界の神秘を解き明かすことになる。またある場合、予見者が示した未来へのドアは、賢者一人では急すぎるか問題が大きすぎて手に余る。この場合、より現実的な対処法として、事態に対処できる英雄を募るよう賢者を導く。
白鳥の塔の賢者
白鳥の塔の賢者達は、宇宙が無限であるということを知っており、その真実に脅かされることはない。ケリスアルドで働く賢者の仕事は現実の中の秘密を休むことなく発見し続けることなのだ。ある者は調査に、別の者は哲学に、また別の者は実験に特化している。これらの賢者の研究や理論は定命の専門家の理解を越えるところがあり、そうした業績に「大雑把な思いつき」というレッテルを張ろうとする、懐疑論者(論を理解できない者)や批判論者(密かにヴェクナとつながっている者もいる)を招く。
賢者は白鳥の塔の住人でも最も知られた存在である。この塔を訪れた者は、ときおり賢者に集まる名声が妬ましいという記録者や予見者の嫉妬の言葉を耳にするかもしれない。ほとんどないとはいえ、そのような名声を持つ者がヘスタヴァールの街から漏れ出ることがあったとしても、アイウーンが見逃すことはない。彼女はあまねく宇宙を探し、そうした技能や専門を持った者を見つけては取り立てている。
DMに:キャンペーンでの白鳥の塔
既知宇宙における智の城として、ケリスアルドは興味を引く。よくある「軽くスポットライトを当てる」(訳注:背景設定の一部として使う)キャンペーンでは、白鳥の塔は伝説や神話のいくつかに登場させることができる。一般人やほとんどの英雄級の冒険者にとって、白鳥の塔は子供に語るようなおとぎ話にすぎない。だが、ごくわずかに、これが実在のものであることを学んだ者がいる。ある者にとっては、このことはアイウーンもしくは彼女のエグザルフからしか知らされることはなく、啓発の間に蓄えられた知識に添えた祝福として授けられる。またある者にとっては、この事実は古文書の研究やアストラル海の探索の中で得られる。
多くが気高い志を持って塔を訪れんと欲しているが、それと同じだけ知識に対する我欲から塔を探す連中もいる。だが、もっと危険なのは、破壊を欲し、価値ある物事を否定することで、世界を無知と暗闇に陥れんと望む輩だろう。
キャンペーンの中には、知識を入手するのがそんなに難しくないものもあるかもしれない。たとえば、荒れていない王国には大きな研究所がありそうだ。もっとも、そのような場合でも、白鳥の塔はいかなる定命の図書館を超える情報量を持つ。知識が通常より入手しやすいのなら、白鳥の塔は定期的にセミナーを開いているかもしれないし、年ごとに「啓発の間」に留学できる人間の選考会を行っているかもしれない。塔の特使が、他の賢者に助言したり手助けしたりするために、定命の領域にある大きな教養・文化的な施設に赴くことがあるだろう。
キャンペーンの背景設定によって、白鳥の塔は両極端、あるいはその中間のどこにでも成り立ちうる。たとえば、大きな戦争の惨禍で、ただ一つの国が生き残っていたとする。この最後の施設は白鳥の塔とのつながりを何とかして残したがっており、さもなくば戦争が定命の領域と白鳥の塔を切り離してしまうだろう。時が流れるにつれ、白鳥の塔はある者からは忘れ去られるものの、そうでない者には実在し続ける。ひょっとしたら白鳥の塔は再建を手助けするために賢者を送っているのかもしれない。ただし、争っている文明同士が塔の存在に気づけば何が起こるか分かったものではないため、こうした援助は秘密裏に行われる。
その重要性がキャンペーンによって変わるとはいえ、白鳥の塔は、英雄級の時点では単なるうわさ話にすぎないだろう。伝説級になると、英雄はストーリー上重要な箇所やクエストの場面として、白鳥の塔を訪れることができるようになる。そして神話級に達したとき、キャラクターは折に触れ白鳥の塔を訪れて目下の問題について調査したり、ひょっとすると塔に新しい知識をもたらしたりするかもしれない。
アイウーンの柱
白鳥の塔の創設以来、アイウーンは目覚ましい働きを見せた賢者を賞する場を設けている。賢者それぞれで業績は異なるものの、ただひとつ確かなことがある。それぞれの示す技能や気概、そして理想は、他の白鳥の塔にいる賢人だけにではなく、アイウーンに従う者すべてに捧げられる。
これらの賢者を祝福するため、アイウーンは石膏でできた記念碑を造り、自らの認める最も優れた者たちを讃えた。碑の一つ一つが賢者それぞれを表し、エネルギーの源として供されている。中に込められた魔法の力は永遠に燃え続け、この力はアイウーン・ストーンが作られるたび使用される。それぞれの石はアイウーンの最も優れた賢者に敬意を表して贈られるものであるため、それ以外のことでアイウーンが作ることはない。
現在まで、アイウーンに讃えられた賢者は7人いる。以下が「アイウーンの柱」と称され、敬愛される者たち。
カーリアラン・マーライズ:変化を胸に抱く者として知られた彼女は、自らの研究も1世紀以上一つの分野だけをやり続けたことはない。定命の存在がアイウーン・ストーン・オヴ・アダプテーションを使用したとき、カーリアランが持つ、変化を通じて繁栄をもたらす能力を与えられる。
チューベロン・ケロ:彼は神格の研究で名高い。その発見は他のいかなるものよりも内容が充実しており、アイウーンをして、自らよりもこの身を知っているかもしれないと言わせるほど。チューベロンによる、神に関する驚嘆するほどの知識は、アイウーン・ストーン・オヴ・ディヴァイン・ノーリッジを使ったときにその価値を示す。
ラー・ケイ・キリ:アイウーンがラー・ケイを賞した業績は、当初「片手間のこと」として始め、結果としてすぐに一生の仕事となったものだった。彼はあらゆる字体と言語において話し言葉・書き言葉を修めた。アイウーン・ストーン・オヴ・パーフェクト・ランゲージを使うと、彼の業績の偉大さがわかる。
グラージ・ツアマリー:能力がありながら努力が不運に終わることがよくあった彼だが、それでも学問への献身を失うことは決してなかった。アイウーン・ストーン・オヴ・リジェネレーションを使った者は、グラージの失敗から学ぶ精神に触れている。
ローイア・ディクワット:ローイアは逆境にあっても自分の節を曲げない不屈の精神を持っている。ついに彼女の信念が実を結んだかのごとく、アイウーン・ストーン・オヴ・ステッドファストネスを使用したものはその力を引き出せる。
ハメイル・フェリオ:食事すらも週の終わりに一度だけで済ませてしまうほど、仕事に専念することで知られた彼は、仕事に対する愛情だけで生きているという驚くべき能力を持っている。アイウーン・ストーン・オヴ・エンデュランスを使ったものは、ハメイルの専心と持久力を呼び起こす。
ジェラリー・リリム:間違った伝説のおかしいところ、意図的に歪められた文章の矛盾を指摘させることにかけてこの賢人の右に出る者はいない。アイウーン・ストーン・オヴ・トゥルー・サイトを起動させたものだけが、身を持ってジェラリーの洞察力を知る。
シナリオフック
◆ アイウーンの知識と塔の住人を亡き者にするべく、ヴェクナとその信奉者が白鳥の塔の所在を探し求めている。目的を達するため、ヴェクナ信徒が塔に忍び込み、大事な巻物や書物を盗み出そうとする。盗まれた巻物は比較的簡単に所在を特定できるとはいえ、取り返すとなると一筋縄ではいかない。さらに、ヴェクナとその僧侶どもには、音階記録化した塔の知識を解読したり改変したりできっこない、などと誰が言えるだろう?
◆ 白鳥の塔の予見者による、予言や未来に関する強力な幻視はキャラクターに対して新しいクエストを授ける良い手段になる。誰かがアイウーンを信仰しているならばなおさらだ。さらに、予見者からのメッセージは、現在進行している冒険が行き詰ったときの助けとなり、良い意味で修正が図れる。予見者の物の見方については適度な幅を持たせること。英雄に未来のことについて相談するとき、示す幻視は深刻なものであったほうがよい。
神話の運命
セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワー
Sage of the Swan Tower/白鳥の塔の賢者
前提条件:21レベル、アイウーンを信仰していなければならない。
君の学問に対する貢献とアイウーンに対する献身は、ついに他に並び立つもののない地位へと押し上げた。白鳥の塔の賢者として、栄えある啓発の間から無限の知識を引き出すことができる。だが、君は他の賢者とは一線を画する。書物を読みふけって学ぶだけでは足りないということが分かった君は、知識の獲得や仮説の実証のため、時間の大部分を外で費やす。
新たに得た貴重な知識、新たに得た啓発のひとつひとつが、君の胸に抱いたゴールへと近づけていく。君が発見と解明という偉業を成し遂げ、新たな知識となったとき、アイウーンが君のことを呼ぶのを感じる。そして君の夢は現実のものとなり、白鳥の塔における永遠の賢人に名を連ねるのだ。
ケリスアルドでの賢人仲間達との生活はまさに君の望んだものであるが、アイウーンの柱のもとを訪れるたび、自分にも同じだけの力があると感じるようになる。とはいえ、アイウーンが賢者にそのような地位を与えるまでに長い時間がかかった。君が自分の石膏の記念碑を得るその日まで、今少しの忍耐が必要になるだろう。
セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワーの特徴
レベル21:専攻分野のエキスパート
調査と研究によって君は自分の実力を示してきた。それゆえ己の土俵において右に出る者はいない。
利益:君の【知力】または【判断力】は2上昇する。加えて<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>の技能のうち、君が習得しているものを一つ選ぶ。選んだ技能の判定をする際はいつでも、2回ロールして任意の結果を用いる。
レベル24:信仰の秘術
君にとって、信仰と秘術の境目がはっきりしなくなる。
利益:[秘術]の攻撃パワーを使用したとき、次のターン終了時までに行う、次の[信仰]の攻撃パワーで君は戦術的優位を得る。また、[信仰]の攻撃パワーを使用したとき、次のターン終了時までに行う、次の[秘術]の攻撃パワーで君は戦術的優位を得る。
レベル26:応用できる知識
白鳥の塔から得た知識は君独りのものではない。君は必要に応じて仲間に情報を分け与える能力を磨いた。
セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワーのパワー
ノーリッジ・アプライド
Knowledge Applied/応用できる知識 セイジ・オヴ・ザ・スワン・タワー/汎用 26
白鳥の塔に蓄えられた知識を引き出して、君は味方の行動を成功へと導く。
遭遇毎◆[秘術]、[信仰]
フリー・アクション 近接爆発5
トリガー:爆発範囲内の味方が1回の技能判定、能力判定、セーヴィング・スローに失敗する。
効果:トリガーを発生させた味方は使用者の【知力】または【判断力】修正値分のボーナスを得て新しい判定を行い、任意の結果を用いる。
レベル30:柱の秘密
アイウーンの柱には記念碑以上のものが贈られる。アイウーンは、定命の危険のうちごく近いものに対処できる閃きを授ける。
利益:遭遇毎に1回、ダメージを受けたときフリー・アクションとして【知力】判定か【判断力】判定を行うことができる。使用者は判定結果を差し引いたダメージを受ける。
新しい神の賜物
リンク・トゥ・ザ・ピラーズ
不屈の信徒に報いるため、アイウーンはたまに、「アイウーンの柱」の記念碑につながる魔法的なつながりを授ける。
リンク・トゥ・ザ・ピラーズ レベル7+アンコモン
アイウーンの柱との信仰的なつながりが、その身の力となる。
レベル7 2,600 gp レベル22 325,000 gp
レベル12 13,000 gp レベル27 1,625,000 gp
レベル17 65,000 gp
神の賜物
特性:使用者は儀式に必要なすべての技能判定に+2のアイテム・ボーナスを得る。
レベル17:+4 アイテム・ボーナス
レベル27:+6 アイテム・ボーナス
パワー([一日毎]):即応・割込。トリガー:いずれかの種別を持つダメージを受ける。効果:使用者はトリガーを発生させた種別に対する抵抗5を得る。トリガーを発生させたダメージが2種類以上の種別を持つ場合、それらのうち1種類を選ぶ。この効果は遭遇の終了時まで持続する。
レベル12:抵抗10
レベル22:抵抗15
筆者について
ケン・シルヴァーマンは脱「熱烈なファン」であることに決めた熱烈なファンかつライターだ。彼は愛する妻と動物園(天使が1体、海軍大将が1体、小神が2体)とともに居心地の良い家に住んでいる。彼にとって犬の吠える声、猫の鳴き声、妻の言葉はみな励ましで、それらにいたく感謝する。
NPCのストーリー 酒場の常連たち
2011年4月23日 ゲームhttp://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dufe/201103tavern
NPCのストーリー 酒場の常連たち
マット・サーネット
誰にでもストーリーはある。ダンジョンズ&ドラゴンズのキャラクターすべてにも。
もし君がもっとロールプレイに凝ってみたかったり、セッションを活発にする方法を模索しているなら、ちょっとだけノンプレイヤー・キャラクターに時間を割いてみるのはどうだろうか。キャラクターの背景だけでも面白いものになるかもしれない。2行の文章やちょっとした注意書きがロールプレイの中身をとても充実させ、プレイヤーに酒場で英雄の隣に座った人たちとおしゃべりをするきっかけをくれる。
この記事は、英雄たちが次に酒場を訪れたときにいるキャラクターをまるまる一揃い書いている。そのまま使ってくれてもいいし、アイディアの思いつくまま設定してくれてもいい。すべてのキャラクターには物語があり、それが遭遇や冒険につながったりつながらなかったりする。もちろん、英雄たちが酒場の人間すべてと話をするというのはないだろうが、それぞれについて何かしらちょっとだけでも知っておくのはロールプレイの基礎になる。そして、巻き添え必至、酒場名物大喧嘩が勃発し、君はこのD&Dの伝統に独自の色を加えて活きたものにできる。
アール=ワインライト、ヒューマンのギャンブラー
アールは酒場のずっと奥側の席につき、景気をつけようと深酒をあおっているところだ。彼はケチな賭けのために、とても悪い連中に対し巨大な負債をこしらえた。負けの金額はとても大きいため、おそらくアールは支払えないだろうし、悪い連中もそれをわかっている。連中は、負け分を払う代わりに、地元のペイロア寺院から聖なる剣を盗んでくるよう指図した。期限は明日の正午なので、アールは今夜剣を盗むつもりでいる。・・・もう何杯か飲んだ後で。
サデュース・モーカス 恋にうなされたハーフエルフ
サデュースは角の席に座り、こぼれたエールの池ができたテーブルで何やら書いている。その指先は「ファラー」と名前の入った女性の絵と、大雑把な間取りの記された貴族の家とを交互に行き来する。サデュースは地元の貴族の娘、ファラー・ナイトハートにベタ惚れ真っ只中だ。ファラーの父は、近隣の町に住む貴族の子弟と婚姻を取り付け、両家のよしみを結んで二つの町の影響力を増すつもりでいる。サデュースは壁から家に押し入り、ファラーを救出して駆け落ちする計画を考えているところだが、それには守衛に番犬、そしておそらく魔法がかかっていると思われる彫像を何とかしなくてはならない。
ブリーナ・タインウィッスル ノームの元店主
ブリーナはブリキ屋兼修繕の店を同じ場所で長年続けてきたが、最近ガート・トーバーによって、競合するブリキ屋も扱う大きな何でも屋を出され、商売が傾いた。以前からブリーナはガートが自分の商売を干上がらせるつもりかと疑っていたが、店のある建物がガートの手に渡り、彼女に法外な賃料を吹っかけたときにそれは確信に変わった。わずか一日で、彼女は店をたたんでよそへと移る決心を固め、同情してくれた友人たちと飲んでいる。その時、ガートがそうと気づかず酒場の入口をくぐった。今やブリーナの視線は彼の後頭部に穴を開けんばかりに突き刺さり、エールのジョッキを持つ手は真っ白になっている。
ガート・トーバー ヒューマンの商人
ガート・トーバーは気さくで愛想のいい男だが、ことビジネスになると情け容赦がない。彼はちょうど道路建設のための用具と物資を売る契約をまとめてきたところで、妻子の待つ自宅で夕飯を取る前に、祝いがてら酒場で働いている情婦と飲もうと立ち寄ったところだ。外から見渡してもお目当ての彼女の姿が見えないため、エールを飲んでいるときに現れはしないかと、彼は酒場の中へとにじり寄っている。
アーチン・ホワイトハンマー ドワーフの職人
地元にある沼近くを通る道路を整備する計画があり、アーチンはその職人頭だ。道があれば、隊商が他の町まで移動にかかる時間が減り、結果として両方の町の取引が増える(もっとも、軍隊も移動しやすくなり、また他の町の権力者から逃げられるようになるわけではない)ことだろう。最近の大雨による「事故」がもとで計画は遅れてしまい、さらに数日前、作業員は沼へ向かう途中みな蒸発してしまった。アーチンはとあるエルフを魔女だと訴え、これで問題は片付くだろうと思っていたが、件のエルフの女性はすぐに解放されてしまった・・・明らかに無実だったのだ。アーチンはこの事態に、そして誰が真犯人なのかに悩まされて周りが見えなくなっており、身の回りで何が起ころうとしているのか全く注意を払っていない。
カーヴァー、ゲブ、ダーン 飲み仲間
この3羽ガラスは酒を飲んで騒いで、前の酒場をたたき出された後、どこかに落ち着こうとしているところだ。ゲブは、兄貴分でドワーフのダーンからエールではなくエルフ謹製ワインを欲しがっている。そのほうが「落ち着く」というのが言い分だ。ダーンは手の届くところにあるものなら喜んで飲みたがるが、“ベリージュースみたいな弱い酒”には手を出さない。ヒューマンのカーヴァーは不機嫌に押し黙って杯をあおっている。酔ってはっきりしない視界の向こうに、元彼女と最後に訪れた場所を思い返しているのだ。その彼女はハーフエルフのアーティストに乗り換え、彼との関係は終わった。
グランドバー・ロングウィスカー ドワーフの鉱夫
近頃グランドバーは、近隣にある銀山の採掘権を獲得した。だが問題もある。原始的なゴブリンの一族が、彼の銀山ですでに掘っているのだ。地元の住民からは、ゴブリンたちが鉱山で掘り出した銀を使った矢や槍を使うことから、「光り物族」として認知されている。グランドバーの契約では、ゴブリンどもと取引するか、鉱山から追い払うかのいずれかを自分でしなくてはならないと明示されている。グランドバーは「不潔な野蛮人」と一緒に働くことなど想像すらできないため、傭兵に頼むつもりでいる。そんなことをした経験はないので、彼は相場がどれほどのものか知っておくため、傭兵や商人と話をしたがる。
水夫と盗賊
この一帯にいるヒューマンとハーフリングの水夫たちが、もっと食い物と飲み物を持ってこい、としょっちゅう叫びながら、中央のテーブルで騒がしい夕食をとっている。そのなかの3人、片目のダナド、外れ結びのアンデレ、義足のグレッグは、街にいる間にやるつもりの、ちょっとした盗みの計画を立てているところだ。三人は他の連中が感づく前におさらばするつもりでいるが、必要とあれば、この騒がしくとても酔っぱらったお仲間どもをアリバイとして使うつもりでもある。彼らは金がたんまり、あるいは高価なアイテムのありそうな寺院や貴族の屋敷を探りたいところだが、どこに狙いを絞るかという話がまとまらず、時間だけが無駄に流れている。
ブランディス、ヒューマンの処刑人兼拷問吏
ブランディスは地下牢で処刑人兼拷問吏として働いている。誰もができるような仕事ではないが、自分が罰しているのは咎人だけだと考えることで、苛む罪の意識を薄めようとしている。だが彼にとって不運なことに、自分が拷問した何者かの無実が証明され、釈放されてしまったのだ。そして今、英雄たちが酒場ですごしているその時、誰かが入ってきて、ブランディスの近くに座った。ブランディスは仕事をしているときは仮面をかぶっており、城の外の人間は自分が拷問吏だということを知らないとはいえ、無実のエルフは話し声で自分のことを分かり、復讐をしはしないかと怖がっている。ブランディスは口を利くことなく食事を終え、この場を立ち去ってしまいたい。
ダラ エルフの賢人
ダラは沼の近くに住んでおり、訪れる者に薬草の治療と助言をして助けている。数日前、彼女は沼地を通る道路建設の妨害した容疑をかけられ、地元の領主の兵士に地下牢まで連行され、そこで拷問された。現場の「事故」は魔法によって引き起こされた、という嫌疑の証拠が彼女に突き付けられた。ダラは道を造ることこそが沼地に対する侵略であるとやりかえし、ダラの友人や後援者が彼女を助け、一分の隙もないアリバイを主張し、彼女には魔法を使える能力がないことを請け合った結果、とうとう彼女は解放された。いま、ダラは酒場に来て、誰が彼女を告発したのか、この問題の裏にどういう真実があるのか情報を集められればと思っている。酒場の中に入って席に座り、調べ物を始めるつもりだ。
バラサー ドラゴンボーンのウィザード見習い
バラサーはカーテンで仕切られた席に座り、酒場の騒がしい客どもを気にしないように、師匠から「お借りした」地図に集中しようと頑張っている。マップの記述はエルフ語で、話すことができるなら簡単に分かる程度の古文体なのだが、バラサーの理解ではとても及第点とは言えない。地図の示す先に高価で強力なマジック・アイテムで詰まった財宝が隠されている、と彼は信じているため、他の誰にも地図を見せようとはしない。地図にはマジック・アイテムの危険性と、その場所は不心得者に対する備えがされているという注意書きがあるのだが・・・
エリザ・ターンストーン ヒューマンの口やかましくて喧嘩っ早い女
エリザはいつも通り夕飯遅刻常習犯の夫を探している。がみがみうるさく癇癪持ちな気性とあいまって、エリザはまるで狩りにでも来たかのように見える。彼女は部屋の中央に仁王立ちし、夫に隠れてないで出てこいと叫んでいる。この剣幕を笑える強者がいたなら、たちどころにお前が私の亭主を逃がしたのかと食って掛かるだろう。
ロヴィオスとナディア ヒューマンの酒場の主人とコック
この陽気な男は、常日頃は仕事の忙しさからをも幸せを味わうことができるのだが、そのプラス思考も終わりに差しかかっている。ウエイトレスは仕事に現れず、様子を見に行かせた皿洗いはもう何時間も戻らない。コックのナディアは、台所の山のように積まれた皿を前にして辞める気満々だ。自分の給料が前にいたコックより少なかったと知ったうえ、忙しい夜はこき使われて憤慨している。ロヴィオスは飲み物を注文した客にせっせと出し、食事が遅れていることを謝りつつ、お得意様のうるさい水夫どもにすぐに何とかしますからと媚びへつらっている。もっと悪いことに、彼の考えは、「倉庫で吠えている迷い犬を何とかするために誰かを遣らなくては」という昨日のウエイトレスの言葉に何か手がかりがあるのではないかという推測に取りつかれている。
アレックとシーラ・ワンブリック ヒューマンの夫婦
アレックとシーラは静かな夕食を求めて酒場に来たが、目的は全くもって果たされていない。水夫どもはうるさい、食事は遅いときてアレックはイライラきており、シーラはアレックを落ち着かせるか、あるいは店を出ようとなだめている。ペイロア寺院での仕事で威張り散らされてストレスが溜まったこともあり、アレックと妻は寺院を不当に追い出されるのではないかと思っている。水夫どもにこの憤りをぶつけてやりたい。シーラはお腹に子供をできたことをアレックに教えてあげたいが、彼が怒っているうちはそうするつもりもない。
トム・リトル ヒューマンの逃亡者
トムは誰にも見つからないことを祈りつつ、フード付きの外套をまとって角の席に座っている。とあることで捕まって有罪となり、懲役として彼は近頃沼に道路を通す計画のため他の囚人と共に送られた。その道中、ワーウルフ共が木立の中で待ち伏せており、トムだけが生き延びることができた。トムはワーウルフのことを誰かに知らせたいが、牢屋に逆戻りしたくはない。そのうえ、彼はワーウルフに噛まれており、他人にそれを知られてしまえば、自分がライカンスロピーの呪いにかかったと思われると心配している。
筆者について
マット・サーネットはウィザーズ社所属の、ダンジョンズ&ドラゴンズとマジック・ザ・ギャザリングに関わっているライターであり、ゲームデザイナーでもある。最近クレジットがある作品としてはMonster Vault(未訳)、 Neverwinter Campaign Guide(未訳)、マジック・ザ・ギャザリング:ミラディンの傷痕がある。彼がモンスターや世界を造っていないときは、君の思いもよらないような、そして深く触れないほうが身のためな、酷いファンタジー映画に嵌っている。
NPCのストーリー 酒場の常連たち
マット・サーネット
誰にでもストーリーはある。ダンジョンズ&ドラゴンズのキャラクターすべてにも。
もし君がもっとロールプレイに凝ってみたかったり、セッションを活発にする方法を模索しているなら、ちょっとだけノンプレイヤー・キャラクターに時間を割いてみるのはどうだろうか。キャラクターの背景だけでも面白いものになるかもしれない。2行の文章やちょっとした注意書きがロールプレイの中身をとても充実させ、プレイヤーに酒場で英雄の隣に座った人たちとおしゃべりをするきっかけをくれる。
この記事は、英雄たちが次に酒場を訪れたときにいるキャラクターをまるまる一揃い書いている。そのまま使ってくれてもいいし、アイディアの思いつくまま設定してくれてもいい。すべてのキャラクターには物語があり、それが遭遇や冒険につながったりつながらなかったりする。もちろん、英雄たちが酒場の人間すべてと話をするというのはないだろうが、それぞれについて何かしらちょっとだけでも知っておくのはロールプレイの基礎になる。そして、巻き添え必至、酒場名物大喧嘩が勃発し、君はこのD&Dの伝統に独自の色を加えて活きたものにできる。
アール=ワインライト、ヒューマンのギャンブラー
アールは酒場のずっと奥側の席につき、景気をつけようと深酒をあおっているところだ。彼はケチな賭けのために、とても悪い連中に対し巨大な負債をこしらえた。負けの金額はとても大きいため、おそらくアールは支払えないだろうし、悪い連中もそれをわかっている。連中は、負け分を払う代わりに、地元のペイロア寺院から聖なる剣を盗んでくるよう指図した。期限は明日の正午なので、アールは今夜剣を盗むつもりでいる。・・・もう何杯か飲んだ後で。
サデュース・モーカス 恋にうなされたハーフエルフ
サデュースは角の席に座り、こぼれたエールの池ができたテーブルで何やら書いている。その指先は「ファラー」と名前の入った女性の絵と、大雑把な間取りの記された貴族の家とを交互に行き来する。サデュースは地元の貴族の娘、ファラー・ナイトハートにベタ惚れ真っ只中だ。ファラーの父は、近隣の町に住む貴族の子弟と婚姻を取り付け、両家のよしみを結んで二つの町の影響力を増すつもりでいる。サデュースは壁から家に押し入り、ファラーを救出して駆け落ちする計画を考えているところだが、それには守衛に番犬、そしておそらく魔法がかかっていると思われる彫像を何とかしなくてはならない。
ブリーナ・タインウィッスル ノームの元店主
ブリーナはブリキ屋兼修繕の店を同じ場所で長年続けてきたが、最近ガート・トーバーによって、競合するブリキ屋も扱う大きな何でも屋を出され、商売が傾いた。以前からブリーナはガートが自分の商売を干上がらせるつもりかと疑っていたが、店のある建物がガートの手に渡り、彼女に法外な賃料を吹っかけたときにそれは確信に変わった。わずか一日で、彼女は店をたたんでよそへと移る決心を固め、同情してくれた友人たちと飲んでいる。その時、ガートがそうと気づかず酒場の入口をくぐった。今やブリーナの視線は彼の後頭部に穴を開けんばかりに突き刺さり、エールのジョッキを持つ手は真っ白になっている。
ガート・トーバー ヒューマンの商人
ガート・トーバーは気さくで愛想のいい男だが、ことビジネスになると情け容赦がない。彼はちょうど道路建設のための用具と物資を売る契約をまとめてきたところで、妻子の待つ自宅で夕飯を取る前に、祝いがてら酒場で働いている情婦と飲もうと立ち寄ったところだ。外から見渡してもお目当ての彼女の姿が見えないため、エールを飲んでいるときに現れはしないかと、彼は酒場の中へとにじり寄っている。
アーチン・ホワイトハンマー ドワーフの職人
地元にある沼近くを通る道路を整備する計画があり、アーチンはその職人頭だ。道があれば、隊商が他の町まで移動にかかる時間が減り、結果として両方の町の取引が増える(もっとも、軍隊も移動しやすくなり、また他の町の権力者から逃げられるようになるわけではない)ことだろう。最近の大雨による「事故」がもとで計画は遅れてしまい、さらに数日前、作業員は沼へ向かう途中みな蒸発してしまった。アーチンはとあるエルフを魔女だと訴え、これで問題は片付くだろうと思っていたが、件のエルフの女性はすぐに解放されてしまった・・・明らかに無実だったのだ。アーチンはこの事態に、そして誰が真犯人なのかに悩まされて周りが見えなくなっており、身の回りで何が起ころうとしているのか全く注意を払っていない。
カーヴァー、ゲブ、ダーン 飲み仲間
この3羽ガラスは酒を飲んで騒いで、前の酒場をたたき出された後、どこかに落ち着こうとしているところだ。ゲブは、兄貴分でドワーフのダーンからエールではなくエルフ謹製ワインを欲しがっている。そのほうが「落ち着く」というのが言い分だ。ダーンは手の届くところにあるものなら喜んで飲みたがるが、“ベリージュースみたいな弱い酒”には手を出さない。ヒューマンのカーヴァーは不機嫌に押し黙って杯をあおっている。酔ってはっきりしない視界の向こうに、元彼女と最後に訪れた場所を思い返しているのだ。その彼女はハーフエルフのアーティストに乗り換え、彼との関係は終わった。
グランドバー・ロングウィスカー ドワーフの鉱夫
近頃グランドバーは、近隣にある銀山の採掘権を獲得した。だが問題もある。原始的なゴブリンの一族が、彼の銀山ですでに掘っているのだ。地元の住民からは、ゴブリンたちが鉱山で掘り出した銀を使った矢や槍を使うことから、「光り物族」として認知されている。グランドバーの契約では、ゴブリンどもと取引するか、鉱山から追い払うかのいずれかを自分でしなくてはならないと明示されている。グランドバーは「不潔な野蛮人」と一緒に働くことなど想像すらできないため、傭兵に頼むつもりでいる。そんなことをした経験はないので、彼は相場がどれほどのものか知っておくため、傭兵や商人と話をしたがる。
水夫と盗賊
この一帯にいるヒューマンとハーフリングの水夫たちが、もっと食い物と飲み物を持ってこい、としょっちゅう叫びながら、中央のテーブルで騒がしい夕食をとっている。そのなかの3人、片目のダナド、外れ結びのアンデレ、義足のグレッグは、街にいる間にやるつもりの、ちょっとした盗みの計画を立てているところだ。三人は他の連中が感づく前におさらばするつもりでいるが、必要とあれば、この騒がしくとても酔っぱらったお仲間どもをアリバイとして使うつもりでもある。彼らは金がたんまり、あるいは高価なアイテムのありそうな寺院や貴族の屋敷を探りたいところだが、どこに狙いを絞るかという話がまとまらず、時間だけが無駄に流れている。
ブランディス、ヒューマンの処刑人兼拷問吏
ブランディスは地下牢で処刑人兼拷問吏として働いている。誰もができるような仕事ではないが、自分が罰しているのは咎人だけだと考えることで、苛む罪の意識を薄めようとしている。だが彼にとって不運なことに、自分が拷問した何者かの無実が証明され、釈放されてしまったのだ。そして今、英雄たちが酒場ですごしているその時、誰かが入ってきて、ブランディスの近くに座った。ブランディスは仕事をしているときは仮面をかぶっており、城の外の人間は自分が拷問吏だということを知らないとはいえ、無実のエルフは話し声で自分のことを分かり、復讐をしはしないかと怖がっている。ブランディスは口を利くことなく食事を終え、この場を立ち去ってしまいたい。
ダラ エルフの賢人
ダラは沼の近くに住んでおり、訪れる者に薬草の治療と助言をして助けている。数日前、彼女は沼地を通る道路建設の妨害した容疑をかけられ、地元の領主の兵士に地下牢まで連行され、そこで拷問された。現場の「事故」は魔法によって引き起こされた、という嫌疑の証拠が彼女に突き付けられた。ダラは道を造ることこそが沼地に対する侵略であるとやりかえし、ダラの友人や後援者が彼女を助け、一分の隙もないアリバイを主張し、彼女には魔法を使える能力がないことを請け合った結果、とうとう彼女は解放された。いま、ダラは酒場に来て、誰が彼女を告発したのか、この問題の裏にどういう真実があるのか情報を集められればと思っている。酒場の中に入って席に座り、調べ物を始めるつもりだ。
バラサー ドラゴンボーンのウィザード見習い
バラサーはカーテンで仕切られた席に座り、酒場の騒がしい客どもを気にしないように、師匠から「お借りした」地図に集中しようと頑張っている。マップの記述はエルフ語で、話すことができるなら簡単に分かる程度の古文体なのだが、バラサーの理解ではとても及第点とは言えない。地図の示す先に高価で強力なマジック・アイテムで詰まった財宝が隠されている、と彼は信じているため、他の誰にも地図を見せようとはしない。地図にはマジック・アイテムの危険性と、その場所は不心得者に対する備えがされているという注意書きがあるのだが・・・
エリザ・ターンストーン ヒューマンの口やかましくて喧嘩っ早い女
エリザはいつも通り夕飯遅刻常習犯の夫を探している。がみがみうるさく癇癪持ちな気性とあいまって、エリザはまるで狩りにでも来たかのように見える。彼女は部屋の中央に仁王立ちし、夫に隠れてないで出てこいと叫んでいる。この剣幕を笑える強者がいたなら、たちどころにお前が私の亭主を逃がしたのかと食って掛かるだろう。
ロヴィオスとナディア ヒューマンの酒場の主人とコック
この陽気な男は、常日頃は仕事の忙しさからをも幸せを味わうことができるのだが、そのプラス思考も終わりに差しかかっている。ウエイトレスは仕事に現れず、様子を見に行かせた皿洗いはもう何時間も戻らない。コックのナディアは、台所の山のように積まれた皿を前にして辞める気満々だ。自分の給料が前にいたコックより少なかったと知ったうえ、忙しい夜はこき使われて憤慨している。ロヴィオスは飲み物を注文した客にせっせと出し、食事が遅れていることを謝りつつ、お得意様のうるさい水夫どもにすぐに何とかしますからと媚びへつらっている。もっと悪いことに、彼の考えは、「倉庫で吠えている迷い犬を何とかするために誰かを遣らなくては」という昨日のウエイトレスの言葉に何か手がかりがあるのではないかという推測に取りつかれている。
アレックとシーラ・ワンブリック ヒューマンの夫婦
アレックとシーラは静かな夕食を求めて酒場に来たが、目的は全くもって果たされていない。水夫どもはうるさい、食事は遅いときてアレックはイライラきており、シーラはアレックを落ち着かせるか、あるいは店を出ようとなだめている。ペイロア寺院での仕事で威張り散らされてストレスが溜まったこともあり、アレックと妻は寺院を不当に追い出されるのではないかと思っている。水夫どもにこの憤りをぶつけてやりたい。シーラはお腹に子供をできたことをアレックに教えてあげたいが、彼が怒っているうちはそうするつもりもない。
トム・リトル ヒューマンの逃亡者
トムは誰にも見つからないことを祈りつつ、フード付きの外套をまとって角の席に座っている。とあることで捕まって有罪となり、懲役として彼は近頃沼に道路を通す計画のため他の囚人と共に送られた。その道中、ワーウルフ共が木立の中で待ち伏せており、トムだけが生き延びることができた。トムはワーウルフのことを誰かに知らせたいが、牢屋に逆戻りしたくはない。そのうえ、彼はワーウルフに噛まれており、他人にそれを知られてしまえば、自分がライカンスロピーの呪いにかかったと思われると心配している。
筆者について
マット・サーネットはウィザーズ社所属の、ダンジョンズ&ドラゴンズとマジック・ザ・ギャザリングに関わっているライターであり、ゲームデザイナーでもある。最近クレジットがある作品としてはMonster Vault(未訳)、 Neverwinter Campaign Guide(未訳)、マジック・ザ・ギャザリング:ミラディンの傷痕がある。彼がモンスターや世界を造っていないときは、君の思いもよらないような、そして深く触れないほうが身のためな、酷いファンタジー映画に嵌っている。
DAC2011愛知応募しました
2011年4月17日 ゲーム今しがたDAC愛知にDM参加の希望を出しました。
まだ正式にDMできると決まったわけではわけではありませんが、
参考にしていただけると幸いです。
以下、送付した内容になります。
[ マスター経験 ] 11-50回
[ マスター傾向 ] ややロールプレー重視
[ 採用ゲームシステム ] D&D4版
[ 英語ルールの採用 ] 可能
[ _初心者対応 ] 不可
[ 事前準備の必要性 ] 必要
[ 当日募集PLの参加 ] 可能
[ 募集の最小人数 ] 4
[ 募集の最大人数 ] 6
[ シナリオのレベル帯 ] 13
[ シナリオタイトル ] Crash of Steel(鋼の激突)
[ シナリオ概要 ]
彼女は、とぐろを巻くように積まれた財宝の山の中から、
1つのマジック・アイテムを抜き取った。
これだけは決して、渡すわけにはいかない。
だが、正面切って“あれ”と戦うにはリスクが大きすぎる。
己の命もさることながら、ここまで築き上げた街を失いたくはない。
そうだ、荒事揉事を解決したがる連中などごまんといるではないか?
金に財宝、名誉に正義、解決の暁には望みのままだ。
かくして、一通の手紙があなた方のもとに届いた。
ダンジョン誌#172より“Crash of Steel”をお届けします。
市長からの依頼を受けた英雄たちが、暗殺者を撃退して
核心に迫り、この街を支配しようと企む黒幕を突き止めて倒す
シティアドベンチャーです。
クエストなどはおって発表いたします。
以下、参加するにあたってのお願いです。
レベルは13(伝説級)です。このレベルで遊んだことがない方
でも大丈夫ですが、D&D第4版のルールに習熟していてください。
キャラクターやシナリオ設定などの打ち合わせのため、
掲示板やメールでのやりとりや事前準備が結構あります。
こちらの都合で期限を区切ったものもありますので
予めご承知おきください。
[ レギュレーション ]
能力値は22ポイント購入。
コア本・パワー本・種族本のすべて、冒険者の宝物庫1・2、
ドラゴン・マガジン年鑑、D&D Insiderなど。
世界背景はコア範囲内の4版公式になります。
詳細は別途連絡します。
皆様の参加をお待ちしております。
セッション終了まで楽しみましょう。
まだ正式にDMできると決まったわけではわけではありませんが、
参考にしていただけると幸いです。
以下、送付した内容になります。
[ マスター経験 ] 11-50回
[ マスター傾向 ] ややロールプレー重視
[ 採用ゲームシステム ] D&D4版
[ 英語ルールの採用 ] 可能
[ _初心者対応 ] 不可
[ 事前準備の必要性 ] 必要
[ 当日募集PLの参加 ] 可能
[ 募集の最小人数 ] 4
[ 募集の最大人数 ] 6
[ シナリオのレベル帯 ] 13
[ シナリオタイトル ] Crash of Steel(鋼の激突)
[ シナリオ概要 ]
彼女は、とぐろを巻くように積まれた財宝の山の中から、
1つのマジック・アイテムを抜き取った。
これだけは決して、渡すわけにはいかない。
だが、正面切って“あれ”と戦うにはリスクが大きすぎる。
己の命もさることながら、ここまで築き上げた街を失いたくはない。
そうだ、荒事揉事を解決したがる連中などごまんといるではないか?
金に財宝、名誉に正義、解決の暁には望みのままだ。
かくして、一通の手紙があなた方のもとに届いた。
ダンジョン誌#172より“Crash of Steel”をお届けします。
市長からの依頼を受けた英雄たちが、暗殺者を撃退して
核心に迫り、この街を支配しようと企む黒幕を突き止めて倒す
シティアドベンチャーです。
クエストなどはおって発表いたします。
以下、参加するにあたってのお願いです。
レベルは13(伝説級)です。このレベルで遊んだことがない方
でも大丈夫ですが、D&D第4版のルールに習熟していてください。
キャラクターやシナリオ設定などの打ち合わせのため、
掲示板やメールでのやりとりや事前準備が結構あります。
こちらの都合で期限を区切ったものもありますので
予めご承知おきください。
[ レギュレーション ]
能力値は22ポイント購入。
コア本・パワー本・種族本のすべて、冒険者の宝物庫1・2、
ドラゴン・マガジン年鑑、D&D Insiderなど。
世界背景はコア範囲内の4版公式になります。
詳細は別途連絡します。
皆様の参加をお待ちしております。
セッション終了まで楽しみましょう。
エラドリンの伝説のマジック・アイテム
2011年4月10日 ゲーム風変わりなマジック・アイテムのバザール:エラドリンの伝説のマジック・アイテム
マット・サーネット
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drbaz/20101213
魅惑の調べは、フェイワイルドの常夏の宵に浮かぶ瞬く星の只中を抜けていく。軽快な鳥の歌のような言の葉は森の中を抜け、樹と同じほどの時を過ごす者たちの、敏い耳へと届く。魔法はエラドリンを形作り、その力に深く触れた者たちが、伝説となった物を多く形作ってきた。こうした物語は語られ、繰り返し語られるたび、当時の人々、場所、そして世界の中に失われていた物事は生命の息吹を取り戻す。
やがて時が経ち、物語はおぼろげな歴史に、おぼろげな歴史は霧のような神話となり、魔法のアイテムに関わる伝承は雲をつかむようなものになる。それでもまだ、記憶を保つことができ、トランスによる追体験によって長く歴史を見ていられる種族は、他と比べて真実が現在も生きていることが多い。生活の中の何気ないことが、突如バードの想像力を刺激するかのような、そうした者たちの頭の中にしかないことなど誰が分かりえようか?
リング・オヴ・ウィンター
エラドリンの聖遺物が持つ力の大部分は、他の種族にとっては未知であるものの、リング・オヴ・ウィンターの強大な力は多くの種族にも伝説の宝物となっている。この指輪が着用者に与える魔法の力については諸説あふれるものの、すべての言い伝えは2点において共通している。この指輪は酷寒の時代の先駆けとなる力を持っていること、そしてこの指輪をつける者は、時間の流れによって老いず、また死ぬこともないということ。
不死の確約は愛する者を引き裂き、国を戦争へと追いやる。永遠の生、永遠の若さはそれを保てるものが持つべきだという甘い幻想は、たかが指輪をつけるだけで叶うことが分かったとき、最高の美徳さえも狂気と化す。エラドリンはリング・オヴ・ウィンターの伝説を他の種族よりもよく学ぶ。強力な魔力の込められたマジック・アイテムともなると、単純明快なことなどありえない、ということをわかっているのだ。
エラドリンによると、リング・オヴ・ウィンターの伝説は「霜の大公」についての話それ自体と重なる。かつて夏の宮廷の主である、「太陽の王子」として知られたエラドリンが、他の王国にいた“喜びの娘”と呼ばれた美しいエラドリンの乙女の一人と恋に落ちた。悲しきかな、彼女の想いは季節の移ろいとともに色褪せていき、そして定命の者を愛した。拒絶された王子は彼女と契りを結ぶことを宣言し、必要とあらば彼女を囚われの身とすることも辞さないと迫った。彼女は申し出を拒絶したものの、太陽の王子の力に脅かされ、レイヴン・クイーンに訴えるに至った。彼女は魂の運命を司る女神に祈り、自身と恋人の精神を時間の先へと飛ばし、未来に生まれ変わるよう願った。その願いは受け入れられ、そして王子の心は凍てつき、残酷なものになった。
多くのエラドリンがこの悲劇のロマンスを良く知っているが、このときエラドリンの娘によって投げ捨てられた婚約指輪がリング・オヴ・ウィンターになったということを知る者はほとんどいない。太陽の王子の暖かな愛を、永遠の夏に例えて誓った指輪であったが、彼の心変わりによって、指輪もまた変化してしまった。指輪の見かけが変わり、霜の大公にとって氷の美をつまらぬものとしてひどく嫌うがごとく、リング・オヴ・ウィンターもかつて霜の大公が感じた痛みを世界にまき散らさんとしているのかもしれない。
リング・オヴ・ウィンターをつけたとき、着用者は骨まで凍りつかんばかりの強烈な寒気を感じるが、やがてその感覚も薄れ、暖かさと活力が取って代わる。この活力こそが指輪の持つ不老の力なのだ。指輪の持ち主がこれをつけている限り、時の流れに干渉されることはない。もう額のシワも心配いらないし、髪も白くなることはない。指輪が外れるその時まで、生命は持ち主をそよ風のごとく包み込み、身は老いでうつろうこともない。それゆえ、身に着けた者が若ければその活力を保つことができ、年経た指導者であれば、数世紀にわたって玉座にいられるだけの知恵と力を失わずにすんだ。
多くにとって、不滅を約束してくれるのは祝福と映るが、このリング・オヴ・ウィンターは独特の呪いがある。身に着けている間、半径数マイルの気候は徐々に寒冷なものへと変化する。最初は、朝霜が日中まで残るように。次第に雨にみぞれが混ざる。盛夏ですら持ち主の住む場所では吹雪く。冬が長くなる。あまりに頻繁につけたり、つけている時間が長くなりすぎると、指輪は着用者を新たな氷河期の前触れにしてしまう。リング・オヴ・ウィンターを探し求める者にとっては、数える程度の作物の不作など、得られる時に比べれば見合った対価に過ぎない。そうでない者にとっては、指輪のもたらす嵐など永遠にごめんであり、指輪が目覚め、冬がその地を支配しようものなら破壊にかかる。
とある蛮族の戦長「冬の王」が指輪の最後の所有者として知られている。1世紀前の不自然に長い冬の間、彼はヒューマンの都市いくつかとドワーフの王国一つを征服した。伝説によると、霜の大公と幸運を得るための取引をしたと云われている。
しかし、霜の大公と長きにわたって対立していたレイヴン・クイーンが、この冬の王に自らが触るものすべてを氷に変えてしまう、という呪いをかけた。冬の王が霜の大公に呪いを解くよう要求したところ、その不遜を咎められ、彼と王国はすべて氷漬けにされた。もしおとぎ話を信じるのなら、リング・オヴ・ウィンターは今も、凍りつき横たわる冬の王が握りしめているのだろう。
マジック・アイテムのストーリー
この記事のストーリー要素は、君を触発してゲームにおける冒険やストーリーを思いつかせるのに使えそうな、面白い云われを持つアイテムを提供するためにある。ストーリーがキャンペーンやキャラクターに合わないなら、どうぞ自由に変えてほしい。リング・オヴ・ウィンターが複数あってもいいし、オーブ・オヴ・ドラゴンカインドが一つしか作られていなくてもいい。ウイングド・シールドは蝙蝠の翼の形をしており、ドラウの手によって造られたことにしてもかまわない。すべては君次第だ。
ルール対ストーリー
アイテムの魔法的効果がルールで述べられていないような箇所がある場合、アイテムはルールであるかのように扱われる。マジック・アイテムはフレーバー・テキストを違うフォントで書くとか、まつわるストーリーが必要とかというわけではない。たとえば、不滅を約束するリング・オヴ・ウィンターはただの言い伝えにすぎないかもしれないし、はたまたキャラクターが本当に利益を得ることができるかもしれない。いずれにしても、それはゲームに直接影響を与えるものではないし、アイテムが機能するかどうか、機能するならばどのように機能するかを決めるのはDMだ。ゲームにおいて、リングを指に通すことで訪れる冬は、PCが数か月、あるいは数年経ってから気が付くほどのとらえがたい効果かもしれないし、ほんの数日後に大寒波が押し寄せ、氷河期の引き金になるかもしれない。
リング・オヴ・ウィンター
Ring of Winter/冬の指輪 レベル14+ レア
溶けずの氷からできたこの輝く指輪は、君を冷気から守るのみならず、取り囲む敵まで凍てつかせる。
レベル14 21,000 gp
レベル19 105,000 gp
レベル24 525,000 gp
レベル29 2,625,000 gp
アイテム・スロット:指輪
特性:着用者は以下に示す通りの[冷気]に対する抵抗を得る。
レベル14:抵抗10
レベル19:抵抗15
レベル24:抵抗 20
レベル29:抵抗 25
パワー(遭遇毎):即応・割込。君が自分の抵抗の値を越える[冷気]ダメージを受けたときにこのパワーを使用する。君は次のターンの終了時まで[冷気]に対する完全耐性を得る。
パワー(遭遇毎◆[冷気]):マイナー・アクション。次の使用者のターンの終了時まで、使用者に隣接してターンを終了した敵は5点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル19: 使用者に隣接してターンを終了した敵は10点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル24: 使用者に隣接してターンを終了した敵は15点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル29: 使用者に隣接してターンを終了した敵は20点の[冷気]ダメージを受ける。
オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
伝説に名高いオーブ・オヴ・ドラゴンカインドの活躍は、ドラゴンスレイヤーやワームライダーの夢に似ている。エラドリンの長老が古代のドラゴンとの戦いで用いたことで知られており、それぞれのオーブは使用者にドラゴンを支配する力を与える。そういう使われ方をした過去があったために、このアイテムはドラゴン族を支配しようとする者および、ドラゴン自身によって探し求められる。
世界とそこへの道ができたてで、フェイワイルドが栄えていた頃、ドラゴンは華やかなエラドリンの王国を魔法のベールを通して観察し、かの地は略奪の頃合いであり、容易く我が物にできると舌なめずりした。力も智も、ただの定命の存在より神に近い存在であったため、多くのドラゴンは、他を地面に映った翼の影を汚すだけの劣等種として支配しており、フェイワイルドのエラドリンの王国とて例外ではなかった。
世界に爪痕を刻むドラゴンが増えれば増えるほど、怒りもいや増す一方であった。だがいかにして盾のごとき鱗と、槍のごとき爪を持つ暴君を退けることがすればよいだろう?その顔にある剣のような歯と死のブレスを前にして、怯える以外なにができるだろう?ドラゴンと戦わんとする心勇ましき者は数多いたものの、悲しいかな、事を成すに足る業物を帯びた者はいなかった。
他に並び立つもののないエラドリンのウィザード達が、強大なるワーム相手に形勢を逆転できるだけの魔法を編み出すべく、宇宙へと潜った。雲と魔法の影に覆われる空飛ぶ塔の中で、エレメンタルの怒りによる激しいマグマに囲まれた鉄の砦で、銀の海を渡る金の船の中で、彼らは己が魔法を磨いた。経験を活かし、ドラゴンに対して効果のあるアイテムを造りえた者もいた。だがそれ以外は、新しい魔法が自身の使命には役立たずであると悟った者、もっと多かったのが、ドラゴンとその下僕に見つかり、それらの手にかかった者。ただ一人、コアロンに知恵を授けられたというエラドリンのウィザードが、確実にドラゴンの無力化ができる魔法を編み出すことに成功した。
オリジナルのオーブ・オヴ・ドラゴンカインドは数多くあった中の一つにすぎなかった。エラドリンのウィザード達は大量のオーブを装備し、パーティーで波状攻撃をかけてドラゴン相手に立場をひっくり返すことに成功した。ついには、ドラゴンたちもエラドリンの力を認めざるを得なくなり、同胞の様に倒れて骨をさらすよりはと逃げるに至る。
オーブの脅威により、ドラゴンと“下等種”は比較的平和な状態を長く保つことができた。しかし時が流れ、宝探しどもがドラゴンの財宝につられてやってきた。ドラゴンはオーブを我が物にしようと、リーダーの欲深さに付け込んで口車に乗せた。数多くのオーブ・オヴ・ドラゴンカインドは持ち主の手から失われ、さらにたくさんのオーブが危険を招くとして砕かれ、わずかな残りは隠された。今日ではその製法は謎であり、この次元全体で、どれだけオーブ・オヴ・ドラゴンカインドが散逸したのか知る者はいない。
最も古い説によれば、エラドリンのウィザードが最も多く使用したという話に加え、オーブに浮かぶ色と同じドラゴンに対して使うと最も効果的だという、特殊なオーブ・オヴ・ドラゴンカインドがあるそうだ。それが本当なら、ドラゴンは同類と戦うのにふさわしい武器として称賛することだろう。また、すべてのオーブを揃えた者がいたとして、そのオーブから力を引き出そうと試みたとき、それがどれほどのものになるか、知っている者などいるのだろうか?
オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Orb of Dragonkind/竜封じのオーブ レベル12+ アンコモン
色が渦巻く、このなめらかな水晶のオーブは、ドラゴンに命令を下す力を君に与える。
レベル12 +3 13,000 gp
レベル17 +4 65,000 gp
レベル22 +5 325,000 gp
レベル27 +6 1,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいは(ドラゴン)に対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20;目標は(ドラゴン)のみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
レッド・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Red Orb of Dragonkind/赤竜封じのオーブ レベル14+ レア
怒り狂うマグマで満たされたかのような赤が渦巻くこの水晶球には、紅竜を制する力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはレッド・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
パワー([一日毎]◆[火]):マイナー・アクション。使用者が次に行う攻撃は、本来のダメージに加えて[火]の種別を得る。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はレッド・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
グリーン・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Green Orb of Dragonkind/緑竜封じのオーブ レベル14+ レア
ガスが蠢くこの重たい碧色ガラスの球の中に、緑竜を操る力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはグリーン・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
特性:このオーブは[毒]に対する抵抗を以下の通り与える。
レベル14:抵抗10
レベル19:抵抗15
レベル24:抵抗20
レベル29:抵抗25
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はグリーン・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
ホワイト・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
White Orb of Dragonkind/白竜封じのオーブ レベル14+ レア
ゴブリンの頭ほどの真珠に見えるこの氷のオーブは、白竜を抑え込むがための力を持つ。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはホワイト・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
特性:この装具を装備している間、動けない状態になったり、減速状態になったり、横滑りさせられたり、押しやられたり、引き寄せられたりする効果を受けたとき、ただちにセーヴィング・スローを行う。セーヴィング・スローに成功した場合、動けない状態になったり、減速状態になったり、横滑りさせられたり、押しやられたり、引き寄せられたりする効果を受けない。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はホワイト・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
シルヴァー・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Silver Orb of Dragonkind/銀竜封じのオーブ レベル14+ レア
躍動する心の臓のごとく、熱を持ち収縮するこの磨かれた銀の球には、銀竜を思いのままにする力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはシルヴァー・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
特性:この装具を装備している間、使用者はすべての脆弱性を失い、またダメージに関するいかなる脆弱性も得ない。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はシルヴァー・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
ベール・オブ・ナイト
セイハニーンは訳ありの恋人に加護を与え、二人の逢瀬を秘めるべく闇を送る。多くが女神からのお恵みをいただいたと感じる一方、その祝福たるやいかばかりのものかと顧みる者はほとんどいない。
かつて、エラドリンの伝承と同じくらい星の巡り合わせが悪い恋人たちがいた。イーシアという若い娘が、エラドリンの氏族をつなぐ目的でウィザードに嫁いだ。結婚当初、イーシアはウィザードに惚れ、結婚生活の最初は魅惑の時を過ごせた。やがて時は流れ、ウィザードは研究に没頭し、彼女を顧みなくなる。イーシアはエルフとの争いに備えるため、二つの家をつなぐため、いつも精力的に、だが満たされぬ想いを抱きながら、木製細工と戦闘訓練に身を投じた。
イーシアは夫ともに数多くの戦いを経るなかで、ウィザードは、彼女が余りに身を危険に晒しすぎており、時として彼自身の魔法によって傷つくこともあることを感じていた。イーシアと夫とは距離を取って戦うようになったあるとき、自分とよく似た魂を持つ、ハンサムなエルフの戦士を捕らえた。二人は敵同士、道理、種族、義務さえも超えた愛情を芽生えさせる。二人の、互いへの情熱は新たな運命を歩ませることとなり、片割れとともに戦争只中のエラドリンの氏族を捨てるに至る。
セイハニーン曰く、この恋人たちに憐れを覚えたという。イーシアを見て自分と重なるところがあり、ウィザードからコアロンに近いものを感じたようだ。この三角関係はセイハニーンに世界が始まって間もない頃の出来事を思い出させた。セイハニーンはどこまでも広がる夜空を切り取ってイーシアの頭と肩にかけ、ベール・オブ・ナイトを造った。この素晴らしい贈り物のおかげで、イーシアと恋人は彼らを消そうとする敵から情熱の炎を守ることができたという。
この話にはもっとロマンティックな異聞もあり、ベールを造ったのは実はウィザードで、彼女にセイハニーンからの贈り物であると信じ込ませ、己は身を引くことでエルフよりも深い愛情を示したとも伝えられている。ベールの造り主はさておいて、この話の結末はどの説も変わりない。エルフは信用していた友人にベールの持つ力を見せてしまった。友人は裏切り、エラドリンの氏族の長に密告した。イーシアと恋人は氏族に見つけられ、当然のことながら戦いとなった。そのどさくさに紛れ、裏切り者はベールを手に逃げおおせたという。エルフの側はベール・オブ・ナイトを戦いに役立て、エラドリンの氏族は滅亡したそうだ。
今日のエラドリンの間では、この話は教訓話となっている。面白いことに、それは伴侶に対する操や、エルフに気をつけろ、などではない。どんな愛情でも視野が狭くなりすぎてはならず、本当に大切なものならよくよく注意していなくてはならない。盲信という名前のベールにまかせて目を曇らせることなく、熱くなりすぎずに澄んだ眼で見定めること。
ベール・オブ・ナイト
Veil of Night/夜のベール レベル18 レア
この半透明の布地は、影と星の瞬きから造られているように思える。これがあれば君は視界から消え失せる。
アイテム・スロット:頭部 85,000 gp
特性:<隠密>判定に+4のアイテム・ボーナスを得る。
パワー([一日毎]◆[幻]):移動アクション。使用者と隣接する味方1人は、いずれかが現在いるマスから離れるか、遭遇の終了時まで不可視となる。このパワーを使用したときに隣接する味方がいなかった場合、味方が移動して使用者に隣接したとき、即応・対応アクションとしてその味方を不可視にすることができる。
パワー([一日毎]◆[幻]):即応・割込。トリガー:敵1体が使用者か隣接する味方1人を攻撃したときにこのパワーを使用する。
効果:使用者の次のターン終了時まで、目標はその敵の攻撃に対して不可視となる。
ウイングド・シールド
ミンダルティスと彼のウイングド・シールドの物語はとても有名で、何世代にもわたって多くのエラドリンに伝えられてきた。エラドリンの親が女の子にミンダルテと名付けるのは彼にならってのものであり、伝説から遠く離れた親戚であるエルフですらもミンドールとミンダという伝統的な名前がある。
ミンダルティスはエラドリンの伝説において、英雄の中の英雄として扱われている。黒裂森のドラゴン「死の牙」殺し、時に埋もれし都市アスタロイヘンの救済、愛のために冠を捨てたセンダリアを銀の玉座に戻し、名誉あるものが手にすると歌いだすといわれる剣エプシリアンを所持、かつて邪悪なフォモールの王国、今や幽霊が住み着くだけの廃墟となったハグの女王、アンゴサの打倒。ミンダルティスは行いそのものもさることながら、いかにしてそれを成し遂げたかについても知られている。
ミンダルティスは最初のクエストにおいて、黒舌族のゴブリンの女神である、蛇の髪をしたザッサリアと戦い、これを滅ぼした。 メデューサの女王との戦いのさなか、ミンダルティスは自らが石へと変わっているのに気付いた。死を免れるべく、彼はしぶしぶ、かつて拒絶したニンフの女王、ヴァンティアを呼んだ。彼女は呼び出しに応え、奇跡的な登場によって一命は取り留めたものの、気まぐれなフェイのキスは完全修復には及ばず、石化を止めただけであったのだ。それからというもの、ミンダルティスの片腕は石であった。
容姿と戦士としての力に傷がついたミンダルティスは、エプシリアンも歌うのをやめるほどの黒い殺戮と征服を行うようになった。だがジェレンナの愛が彼の善なる心根と名誉を取り戻す。このエラドリンの娘は、ミンダルティスのため、戦うときにジェレンナ自身が彼を守るかのようにひらひら飛び回る、翼のある銀の盾を造った。
彼が数多赴いた冒険のいずこかで、ミンダルティスはウイングド・シールドを失ったものの、手を取り戻している。この出来事は物語の重要な場面なので、どのタイミングでくるかは語り手によって違うようだ。この不思議なアイテムの運命がどのようなものであったかに関わらず、翼の盾はエラドリンにとって献身と救いの象徴である。この盾は、自らの過ちを悔い改めたい者によって身に着けられることがよくあり、また「翼の盾のもとに」とは不滅の絆を誓った言葉である。
ウイングド・シールド
Winged Shield/翼持つ盾 レベル15 レア
この幅狭い銀の盾は、両側から折りたたまれたミスラルの翼を生やしている。手を放すと、君の周りを飛び回って守ってくれる。まるで君自身で持っているかのよう。
アイテム・スロット:腕部25,000 gp
シールド:ライト
特性:使用者は、ACに盾ボーナスを得るためにこの盾を手で持つ必要はない。この盾は使用者の間合いの範囲内で、使用者が装備しているかのように浮遊する。使用者は空いた手で他のアイテムを持ったり、登攀したり、武器を装備したり、(訳注:両手武器を使用した、もしくは1つの手が空いていなければならない)攻撃を行うことができる。もし手が空いているなら、フリー・アクションとしてこの盾を装備できる。この盾を奪おうとする(訳注:<盗賊>判定を行おうとする)試みは、装備中の物品に対するものとして処理する。
パワー([一日毎]):即応・割込。このパワーは使用者のACに対する攻撃がヒットしたときに使用できる。使用者はその攻撃に対するACに+2のパワー・ボーナスを得て、回復力を1回分消費できる。
筆者について
マット・サーネットはウィザーズ社所属の、ダンジョンズ&ドラゴンズとマジック・ザ・ギャザリングに関わっているライターであり、ゲームデザイナーでもある。最近クレジットがある作品としてはMonster Vault(未訳)、 Neverwinter Campaign Guide(未訳)、 Hero Builder’s Handbook(未訳)、 マジック・ザ・ギャザリング:ミラディンの傷痕がある。彼がモンスターや世界を造っていないときは、君の思いもよらないような、そして深く触れないほうが身のためな、酷いファンタジー映画に嵌っている。
マット・サーネット
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drbaz/20101213
魅惑の調べは、フェイワイルドの常夏の宵に浮かぶ瞬く星の只中を抜けていく。軽快な鳥の歌のような言の葉は森の中を抜け、樹と同じほどの時を過ごす者たちの、敏い耳へと届く。魔法はエラドリンを形作り、その力に深く触れた者たちが、伝説となった物を多く形作ってきた。こうした物語は語られ、繰り返し語られるたび、当時の人々、場所、そして世界の中に失われていた物事は生命の息吹を取り戻す。
やがて時が経ち、物語はおぼろげな歴史に、おぼろげな歴史は霧のような神話となり、魔法のアイテムに関わる伝承は雲をつかむようなものになる。それでもまだ、記憶を保つことができ、トランスによる追体験によって長く歴史を見ていられる種族は、他と比べて真実が現在も生きていることが多い。生活の中の何気ないことが、突如バードの想像力を刺激するかのような、そうした者たちの頭の中にしかないことなど誰が分かりえようか?
リング・オヴ・ウィンター
エラドリンの聖遺物が持つ力の大部分は、他の種族にとっては未知であるものの、リング・オヴ・ウィンターの強大な力は多くの種族にも伝説の宝物となっている。この指輪が着用者に与える魔法の力については諸説あふれるものの、すべての言い伝えは2点において共通している。この指輪は酷寒の時代の先駆けとなる力を持っていること、そしてこの指輪をつける者は、時間の流れによって老いず、また死ぬこともないということ。
不死の確約は愛する者を引き裂き、国を戦争へと追いやる。永遠の生、永遠の若さはそれを保てるものが持つべきだという甘い幻想は、たかが指輪をつけるだけで叶うことが分かったとき、最高の美徳さえも狂気と化す。エラドリンはリング・オヴ・ウィンターの伝説を他の種族よりもよく学ぶ。強力な魔力の込められたマジック・アイテムともなると、単純明快なことなどありえない、ということをわかっているのだ。
エラドリンによると、リング・オヴ・ウィンターの伝説は「霜の大公」についての話それ自体と重なる。かつて夏の宮廷の主である、「太陽の王子」として知られたエラドリンが、他の王国にいた“喜びの娘”と呼ばれた美しいエラドリンの乙女の一人と恋に落ちた。悲しきかな、彼女の想いは季節の移ろいとともに色褪せていき、そして定命の者を愛した。拒絶された王子は彼女と契りを結ぶことを宣言し、必要とあらば彼女を囚われの身とすることも辞さないと迫った。彼女は申し出を拒絶したものの、太陽の王子の力に脅かされ、レイヴン・クイーンに訴えるに至った。彼女は魂の運命を司る女神に祈り、自身と恋人の精神を時間の先へと飛ばし、未来に生まれ変わるよう願った。その願いは受け入れられ、そして王子の心は凍てつき、残酷なものになった。
多くのエラドリンがこの悲劇のロマンスを良く知っているが、このときエラドリンの娘によって投げ捨てられた婚約指輪がリング・オヴ・ウィンターになったということを知る者はほとんどいない。太陽の王子の暖かな愛を、永遠の夏に例えて誓った指輪であったが、彼の心変わりによって、指輪もまた変化してしまった。指輪の見かけが変わり、霜の大公にとって氷の美をつまらぬものとしてひどく嫌うがごとく、リング・オヴ・ウィンターもかつて霜の大公が感じた痛みを世界にまき散らさんとしているのかもしれない。
リング・オヴ・ウィンターをつけたとき、着用者は骨まで凍りつかんばかりの強烈な寒気を感じるが、やがてその感覚も薄れ、暖かさと活力が取って代わる。この活力こそが指輪の持つ不老の力なのだ。指輪の持ち主がこれをつけている限り、時の流れに干渉されることはない。もう額のシワも心配いらないし、髪も白くなることはない。指輪が外れるその時まで、生命は持ち主をそよ風のごとく包み込み、身は老いでうつろうこともない。それゆえ、身に着けた者が若ければその活力を保つことができ、年経た指導者であれば、数世紀にわたって玉座にいられるだけの知恵と力を失わずにすんだ。
多くにとって、不滅を約束してくれるのは祝福と映るが、このリング・オヴ・ウィンターは独特の呪いがある。身に着けている間、半径数マイルの気候は徐々に寒冷なものへと変化する。最初は、朝霜が日中まで残るように。次第に雨にみぞれが混ざる。盛夏ですら持ち主の住む場所では吹雪く。冬が長くなる。あまりに頻繁につけたり、つけている時間が長くなりすぎると、指輪は着用者を新たな氷河期の前触れにしてしまう。リング・オヴ・ウィンターを探し求める者にとっては、数える程度の作物の不作など、得られる時に比べれば見合った対価に過ぎない。そうでない者にとっては、指輪のもたらす嵐など永遠にごめんであり、指輪が目覚め、冬がその地を支配しようものなら破壊にかかる。
とある蛮族の戦長「冬の王」が指輪の最後の所有者として知られている。1世紀前の不自然に長い冬の間、彼はヒューマンの都市いくつかとドワーフの王国一つを征服した。伝説によると、霜の大公と幸運を得るための取引をしたと云われている。
しかし、霜の大公と長きにわたって対立していたレイヴン・クイーンが、この冬の王に自らが触るものすべてを氷に変えてしまう、という呪いをかけた。冬の王が霜の大公に呪いを解くよう要求したところ、その不遜を咎められ、彼と王国はすべて氷漬けにされた。もしおとぎ話を信じるのなら、リング・オヴ・ウィンターは今も、凍りつき横たわる冬の王が握りしめているのだろう。
マジック・アイテムのストーリー
この記事のストーリー要素は、君を触発してゲームにおける冒険やストーリーを思いつかせるのに使えそうな、面白い云われを持つアイテムを提供するためにある。ストーリーがキャンペーンやキャラクターに合わないなら、どうぞ自由に変えてほしい。リング・オヴ・ウィンターが複数あってもいいし、オーブ・オヴ・ドラゴンカインドが一つしか作られていなくてもいい。ウイングド・シールドは蝙蝠の翼の形をしており、ドラウの手によって造られたことにしてもかまわない。すべては君次第だ。
ルール対ストーリー
アイテムの魔法的効果がルールで述べられていないような箇所がある場合、アイテムはルールであるかのように扱われる。マジック・アイテムはフレーバー・テキストを違うフォントで書くとか、まつわるストーリーが必要とかというわけではない。たとえば、不滅を約束するリング・オヴ・ウィンターはただの言い伝えにすぎないかもしれないし、はたまたキャラクターが本当に利益を得ることができるかもしれない。いずれにしても、それはゲームに直接影響を与えるものではないし、アイテムが機能するかどうか、機能するならばどのように機能するかを決めるのはDMだ。ゲームにおいて、リングを指に通すことで訪れる冬は、PCが数か月、あるいは数年経ってから気が付くほどのとらえがたい効果かもしれないし、ほんの数日後に大寒波が押し寄せ、氷河期の引き金になるかもしれない。
リング・オヴ・ウィンター
Ring of Winter/冬の指輪 レベル14+ レア
溶けずの氷からできたこの輝く指輪は、君を冷気から守るのみならず、取り囲む敵まで凍てつかせる。
レベル14 21,000 gp
レベル19 105,000 gp
レベル24 525,000 gp
レベル29 2,625,000 gp
アイテム・スロット:指輪
特性:着用者は以下に示す通りの[冷気]に対する抵抗を得る。
レベル14:抵抗10
レベル19:抵抗15
レベル24:抵抗 20
レベル29:抵抗 25
パワー(遭遇毎):即応・割込。君が自分の抵抗の値を越える[冷気]ダメージを受けたときにこのパワーを使用する。君は次のターンの終了時まで[冷気]に対する完全耐性を得る。
パワー(遭遇毎◆[冷気]):マイナー・アクション。次の使用者のターンの終了時まで、使用者に隣接してターンを終了した敵は5点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル19: 使用者に隣接してターンを終了した敵は10点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル24: 使用者に隣接してターンを終了した敵は15点の[冷気]ダメージを受ける。
レベル29: 使用者に隣接してターンを終了した敵は20点の[冷気]ダメージを受ける。
オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
伝説に名高いオーブ・オヴ・ドラゴンカインドの活躍は、ドラゴンスレイヤーやワームライダーの夢に似ている。エラドリンの長老が古代のドラゴンとの戦いで用いたことで知られており、それぞれのオーブは使用者にドラゴンを支配する力を与える。そういう使われ方をした過去があったために、このアイテムはドラゴン族を支配しようとする者および、ドラゴン自身によって探し求められる。
世界とそこへの道ができたてで、フェイワイルドが栄えていた頃、ドラゴンは華やかなエラドリンの王国を魔法のベールを通して観察し、かの地は略奪の頃合いであり、容易く我が物にできると舌なめずりした。力も智も、ただの定命の存在より神に近い存在であったため、多くのドラゴンは、他を地面に映った翼の影を汚すだけの劣等種として支配しており、フェイワイルドのエラドリンの王国とて例外ではなかった。
世界に爪痕を刻むドラゴンが増えれば増えるほど、怒りもいや増す一方であった。だがいかにして盾のごとき鱗と、槍のごとき爪を持つ暴君を退けることがすればよいだろう?その顔にある剣のような歯と死のブレスを前にして、怯える以外なにができるだろう?ドラゴンと戦わんとする心勇ましき者は数多いたものの、悲しいかな、事を成すに足る業物を帯びた者はいなかった。
他に並び立つもののないエラドリンのウィザード達が、強大なるワーム相手に形勢を逆転できるだけの魔法を編み出すべく、宇宙へと潜った。雲と魔法の影に覆われる空飛ぶ塔の中で、エレメンタルの怒りによる激しいマグマに囲まれた鉄の砦で、銀の海を渡る金の船の中で、彼らは己が魔法を磨いた。経験を活かし、ドラゴンに対して効果のあるアイテムを造りえた者もいた。だがそれ以外は、新しい魔法が自身の使命には役立たずであると悟った者、もっと多かったのが、ドラゴンとその下僕に見つかり、それらの手にかかった者。ただ一人、コアロンに知恵を授けられたというエラドリンのウィザードが、確実にドラゴンの無力化ができる魔法を編み出すことに成功した。
オリジナルのオーブ・オヴ・ドラゴンカインドは数多くあった中の一つにすぎなかった。エラドリンのウィザード達は大量のオーブを装備し、パーティーで波状攻撃をかけてドラゴン相手に立場をひっくり返すことに成功した。ついには、ドラゴンたちもエラドリンの力を認めざるを得なくなり、同胞の様に倒れて骨をさらすよりはと逃げるに至る。
オーブの脅威により、ドラゴンと“下等種”は比較的平和な状態を長く保つことができた。しかし時が流れ、宝探しどもがドラゴンの財宝につられてやってきた。ドラゴンはオーブを我が物にしようと、リーダーの欲深さに付け込んで口車に乗せた。数多くのオーブ・オヴ・ドラゴンカインドは持ち主の手から失われ、さらにたくさんのオーブが危険を招くとして砕かれ、わずかな残りは隠された。今日ではその製法は謎であり、この次元全体で、どれだけオーブ・オヴ・ドラゴンカインドが散逸したのか知る者はいない。
最も古い説によれば、エラドリンのウィザードが最も多く使用したという話に加え、オーブに浮かぶ色と同じドラゴンに対して使うと最も効果的だという、特殊なオーブ・オヴ・ドラゴンカインドがあるそうだ。それが本当なら、ドラゴンは同類と戦うのにふさわしい武器として称賛することだろう。また、すべてのオーブを揃えた者がいたとして、そのオーブから力を引き出そうと試みたとき、それがどれほどのものになるか、知っている者などいるのだろうか?
オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Orb of Dragonkind/竜封じのオーブ レベル12+ アンコモン
色が渦巻く、このなめらかな水晶のオーブは、ドラゴンに命令を下す力を君に与える。
レベル12 +3 13,000 gp
レベル17 +4 65,000 gp
レベル22 +5 325,000 gp
レベル27 +6 1,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいは(ドラゴン)に対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20;目標は(ドラゴン)のみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
レッド・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Red Orb of Dragonkind/赤竜封じのオーブ レベル14+ レア
怒り狂うマグマで満たされたかのような赤が渦巻くこの水晶球には、紅竜を制する力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはレッド・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
パワー([一日毎]◆[火]):マイナー・アクション。使用者が次に行う攻撃は、本来のダメージに加えて[火]の種別を得る。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はレッド・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
グリーン・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Green Orb of Dragonkind/緑竜封じのオーブ レベル14+ レア
ガスが蠢くこの重たい碧色ガラスの球の中に、緑竜を操る力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはグリーン・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
特性:このオーブは[毒]に対する抵抗を以下の通り与える。
レベル14:抵抗10
レベル19:抵抗15
レベル24:抵抗20
レベル29:抵抗25
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はグリーン・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
ホワイト・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
White Orb of Dragonkind/白竜封じのオーブ レベル14+ レア
ゴブリンの頭ほどの真珠に見えるこの氷のオーブは、白竜を抑え込むがための力を持つ。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはホワイト・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
特性:この装具を装備している間、動けない状態になったり、減速状態になったり、横滑りさせられたり、押しやられたり、引き寄せられたりする効果を受けたとき、ただちにセーヴィング・スローを行う。セーヴィング・スローに成功した場合、動けない状態になったり、減速状態になったり、横滑りさせられたり、押しやられたり、引き寄せられたりする効果を受けない。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はホワイト・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
シルヴァー・オーブ・オヴ・ドラゴンカインド
Silver Orb of Dragonkind/銀竜封じのオーブ レベル14+ レア
躍動する心の臓のごとく、熱を持ち収縮するこの磨かれた銀の球には、銀竜を思いのままにする力が。
レベル14 +3 21,000 gp
レベル19 +4 105,000 gp
レベル24 +5 525,000 gp
レベル29 +6 2,625,000 gp
装具(オーブ)
強化:攻撃ロールおよびダメージ・ロール
クリティカル:プラスの数字ごとに+1d6ダメージ、あるいはシルヴァー・ドラゴンに対してはプラスの数字ごとに+1d10ダメージ
パワー([一日毎]):マイナー・アクション。使用者のターン終了時までに行う、この装具を用いた(ドラゴン)に対する次の攻撃は、攻撃ロールに+5のパワー・ボーナスを得て、そのドラゴンが持ついかなる抵抗も無視する。
特性:この装具を装備している間、使用者はすべての脆弱性を失い、またダメージに関するいかなる脆弱性も得ない。
パワー([無限回]◆[魅了]・[装具]):遠隔攻撃を行う。
遠隔20; 目標はシルヴァー・ドラゴンのみ;[知力]+ 4対意志、[判断力]+ 4対意志、[魅力]+ 4対意志のいずれか
ヒット:目標となったドラゴンは、ドラゴンのターン終了時まで支配状態となる。
ミス:使用者は次のターンの終了時まで幻惑状態となる。
ベール・オブ・ナイト
セイハニーンは訳ありの恋人に加護を与え、二人の逢瀬を秘めるべく闇を送る。多くが女神からのお恵みをいただいたと感じる一方、その祝福たるやいかばかりのものかと顧みる者はほとんどいない。
かつて、エラドリンの伝承と同じくらい星の巡り合わせが悪い恋人たちがいた。イーシアという若い娘が、エラドリンの氏族をつなぐ目的でウィザードに嫁いだ。結婚当初、イーシアはウィザードに惚れ、結婚生活の最初は魅惑の時を過ごせた。やがて時は流れ、ウィザードは研究に没頭し、彼女を顧みなくなる。イーシアはエルフとの争いに備えるため、二つの家をつなぐため、いつも精力的に、だが満たされぬ想いを抱きながら、木製細工と戦闘訓練に身を投じた。
イーシアは夫ともに数多くの戦いを経るなかで、ウィザードは、彼女が余りに身を危険に晒しすぎており、時として彼自身の魔法によって傷つくこともあることを感じていた。イーシアと夫とは距離を取って戦うようになったあるとき、自分とよく似た魂を持つ、ハンサムなエルフの戦士を捕らえた。二人は敵同士、道理、種族、義務さえも超えた愛情を芽生えさせる。二人の、互いへの情熱は新たな運命を歩ませることとなり、片割れとともに戦争只中のエラドリンの氏族を捨てるに至る。
セイハニーン曰く、この恋人たちに憐れを覚えたという。イーシアを見て自分と重なるところがあり、ウィザードからコアロンに近いものを感じたようだ。この三角関係はセイハニーンに世界が始まって間もない頃の出来事を思い出させた。セイハニーンはどこまでも広がる夜空を切り取ってイーシアの頭と肩にかけ、ベール・オブ・ナイトを造った。この素晴らしい贈り物のおかげで、イーシアと恋人は彼らを消そうとする敵から情熱の炎を守ることができたという。
この話にはもっとロマンティックな異聞もあり、ベールを造ったのは実はウィザードで、彼女にセイハニーンからの贈り物であると信じ込ませ、己は身を引くことでエルフよりも深い愛情を示したとも伝えられている。ベールの造り主はさておいて、この話の結末はどの説も変わりない。エルフは信用していた友人にベールの持つ力を見せてしまった。友人は裏切り、エラドリンの氏族の長に密告した。イーシアと恋人は氏族に見つけられ、当然のことながら戦いとなった。そのどさくさに紛れ、裏切り者はベールを手に逃げおおせたという。エルフの側はベール・オブ・ナイトを戦いに役立て、エラドリンの氏族は滅亡したそうだ。
今日のエラドリンの間では、この話は教訓話となっている。面白いことに、それは伴侶に対する操や、エルフに気をつけろ、などではない。どんな愛情でも視野が狭くなりすぎてはならず、本当に大切なものならよくよく注意していなくてはならない。盲信という名前のベールにまかせて目を曇らせることなく、熱くなりすぎずに澄んだ眼で見定めること。
ベール・オブ・ナイト
Veil of Night/夜のベール レベル18 レア
この半透明の布地は、影と星の瞬きから造られているように思える。これがあれば君は視界から消え失せる。
アイテム・スロット:頭部 85,000 gp
特性:<隠密>判定に+4のアイテム・ボーナスを得る。
パワー([一日毎]◆[幻]):移動アクション。使用者と隣接する味方1人は、いずれかが現在いるマスから離れるか、遭遇の終了時まで不可視となる。このパワーを使用したときに隣接する味方がいなかった場合、味方が移動して使用者に隣接したとき、即応・対応アクションとしてその味方を不可視にすることができる。
パワー([一日毎]◆[幻]):即応・割込。トリガー:敵1体が使用者か隣接する味方1人を攻撃したときにこのパワーを使用する。
効果:使用者の次のターン終了時まで、目標はその敵の攻撃に対して不可視となる。
ウイングド・シールド
ミンダルティスと彼のウイングド・シールドの物語はとても有名で、何世代にもわたって多くのエラドリンに伝えられてきた。エラドリンの親が女の子にミンダルテと名付けるのは彼にならってのものであり、伝説から遠く離れた親戚であるエルフですらもミンドールとミンダという伝統的な名前がある。
ミンダルティスはエラドリンの伝説において、英雄の中の英雄として扱われている。黒裂森のドラゴン「死の牙」殺し、時に埋もれし都市アスタロイヘンの救済、愛のために冠を捨てたセンダリアを銀の玉座に戻し、名誉あるものが手にすると歌いだすといわれる剣エプシリアンを所持、かつて邪悪なフォモールの王国、今や幽霊が住み着くだけの廃墟となったハグの女王、アンゴサの打倒。ミンダルティスは行いそのものもさることながら、いかにしてそれを成し遂げたかについても知られている。
ミンダルティスは最初のクエストにおいて、黒舌族のゴブリンの女神である、蛇の髪をしたザッサリアと戦い、これを滅ぼした。 メデューサの女王との戦いのさなか、ミンダルティスは自らが石へと変わっているのに気付いた。死を免れるべく、彼はしぶしぶ、かつて拒絶したニンフの女王、ヴァンティアを呼んだ。彼女は呼び出しに応え、奇跡的な登場によって一命は取り留めたものの、気まぐれなフェイのキスは完全修復には及ばず、石化を止めただけであったのだ。それからというもの、ミンダルティスの片腕は石であった。
容姿と戦士としての力に傷がついたミンダルティスは、エプシリアンも歌うのをやめるほどの黒い殺戮と征服を行うようになった。だがジェレンナの愛が彼の善なる心根と名誉を取り戻す。このエラドリンの娘は、ミンダルティスのため、戦うときにジェレンナ自身が彼を守るかのようにひらひら飛び回る、翼のある銀の盾を造った。
彼が数多赴いた冒険のいずこかで、ミンダルティスはウイングド・シールドを失ったものの、手を取り戻している。この出来事は物語の重要な場面なので、どのタイミングでくるかは語り手によって違うようだ。この不思議なアイテムの運命がどのようなものであったかに関わらず、翼の盾はエラドリンにとって献身と救いの象徴である。この盾は、自らの過ちを悔い改めたい者によって身に着けられることがよくあり、また「翼の盾のもとに」とは不滅の絆を誓った言葉である。
ウイングド・シールド
Winged Shield/翼持つ盾 レベル15 レア
この幅狭い銀の盾は、両側から折りたたまれたミスラルの翼を生やしている。手を放すと、君の周りを飛び回って守ってくれる。まるで君自身で持っているかのよう。
アイテム・スロット:腕部25,000 gp
シールド:ライト
特性:使用者は、ACに盾ボーナスを得るためにこの盾を手で持つ必要はない。この盾は使用者の間合いの範囲内で、使用者が装備しているかのように浮遊する。使用者は空いた手で他のアイテムを持ったり、登攀したり、武器を装備したり、(訳注:両手武器を使用した、もしくは1つの手が空いていなければならない)攻撃を行うことができる。もし手が空いているなら、フリー・アクションとしてこの盾を装備できる。この盾を奪おうとする(訳注:<盗賊>判定を行おうとする)試みは、装備中の物品に対するものとして処理する。
パワー([一日毎]):即応・割込。このパワーは使用者のACに対する攻撃がヒットしたときに使用できる。使用者はその攻撃に対するACに+2のパワー・ボーナスを得て、回復力を1回分消費できる。
筆者について
マット・サーネットはウィザーズ社所属の、ダンジョンズ&ドラゴンズとマジック・ザ・ギャザリングに関わっているライターであり、ゲームデザイナーでもある。最近クレジットがある作品としてはMonster Vault(未訳)、 Neverwinter Campaign Guide(未訳)、 Hero Builder’s Handbook(未訳)、 マジック・ザ・ギャザリング:ミラディンの傷痕がある。彼がモンスターや世界を造っていないときは、君の思いもよらないような、そして深く触れないほうが身のためな、酷いファンタジー映画に嵌っている。
ツイン・ストライクのアップデート
2011年4月1日 ゲームhttp://www.wizards.com/DnD/TOC.aspx?x=dnd/4new/drtoc/398
まずは恒例のアップデートから。今回は1つだけ、でもとても重要な1つ。
Twin Strike Ranger Attack 1
If the first attack doesn’t kill it, the second one will.
At-Will ◆ Martial, Weapon
Standard Action Melee or Ranged weapon
Requirement: You must be wielding two melee weapons or a ranged weapon.
Targets: One or two creatures
Attack: Strength vs. AC (melee; main weapon and off-hand weapon) or Dexterity vs. AC
(ranged), two attacks
Hit: 1[W] damage per attack. If you hit the same creature twice, it must make a saving
throw. On a failure, it automatically drops to 0 hit points.
Increase damage to 2[W] at 21st level.
2発とも命中すると目標がセーヴィング・スロー、
失敗すると即座にhp0。
ツイン・ストライクもやっと適切なバランスが図られましたね。
そして、新アイテム。
バック・オヴ・ステューピッド・ペット・トリックス。
ランダムにモンスターが出てきて芸をし、とても癒されます。
水のないところでイルカが出てくるのはご愛嬌。
うっかりタラスクさんが出てきてさようなら。
Bag of Stupid Pet Tricks
This simple, leather bag produces trained critters that can amaze your allies and enemies alike.
Rare Wondrous Item
Power (Daily Conjuration): Standard Action. Use this bag to conjure a minion (see below for statistics). Roll a d8 to determine which creature is produced and modify its statistics accordingly:
1. Flea. Tricks: Although difficult to see, the flea will walk to the nearest random observer, effortlessly lift them into the air, juggle them, then gently set them back on the ground.
2. Mouse; this creature appears on a small, toy motorcycle. Tricks: The mouse can perform relatively amazing feats (relative to its size) of jumps, wheelies, stoppies, and other motorcycle stunts.
3. Dog (Scottish Deerhound); just look at this awesome dog. Just look at it. Tricks: Aside from its incomparable pedigree, pose, and disposition, the dog will walk alongside its controller without failure, patiently subjecting itself to all observers’ scrutiny and examination.
4. Cat. Tricks: Cats do not perform tricks. Move along.
5. Bear; this creature appears on a large circus ball, and wears a fez. Tricks: Going by the name Oso de la Fez, the bear confines his act to balancing atop his magic circus ball, rolling up to various observers, and tipping his hat to them. Note: The bear will continue to keep its hat tipped until a small coin or other suitable tip is placed inside. It is strongly advised to do so.
6. Dolphin. Tricks: Amazing aerial leaps, balancing on the water atop its fluke, and vigorous nodding of its head. Note: If summoned without being near a suitably large body of water, the dolphin’s performance suffers noticeably.
7. Elephant; this creature appears alongside an easel and canvas. Tricks: The elephant will draw the portrait of a random observer, usually as an exaggerated (and fairly insulting) caricature.
8. Tarrasque. Tricks: The tarrasque immediately sets about destroying everything in its path, attacking all observers and its controller alike, without pity or remorse. It’s a tarrasque, what kind of tricks did you expect?
そしてみんな大好き、コーデル氏によるダメージ・キーワードの解説。
[神聖]、[邪悪]、[猛悪]の復活や、
[チキン野郎]、[アップデート]、[二日酔い]まで幅広くサポート。
Damage Types
Chicken [keyword]: A damage type. When you want to leave your target lying stunned on the battlefield with the inexplicable taste of chicken in his mouth.
Dumbass [keyword]: A damage type. Really, the only thing dumbass damage is good for is showing your disdain for your target’s idiotic b.s., but sometimes that’s just the thing to soothe the soul.
Edition [keyword]: A damage type. Every time you leap to defend the version of something for which several versions exist, regardless of whether anyone was actually attacking your preferred version and despite that you’ve repeated your counter-attack a hundred previous times, you’re dealing edition damage.
Emotional [keyword]: A damage type. Deal emotional damage when you want to cut your target so precisely that he doesn’t even realize he’s been hurt . . . until he wakes up crying in the middle of the night, having finally realized he’s failed to attain every one of his life’s aspirations.
Hangover [keyword]: A damage type. Inflict this splitting headache on your target when you want to impose a creeping dread that he’s done something horrible the night before… even though he can’t recall what it was.
Holy/Unholy [keyword]: A damage type. The kind of damage that once made the angels cry and devils sing, but now doesn’t get too much traction . . . see Edition damage.
Mold [keyword]: A damage type. This putrid fluff loves to sprouts on your basement walls; imagine how effective it would be coating your target’s eyes. Eeww!
Nether [keyword]: A damage type. When you want to show up your friends who are dealing necrotic or radiant-thunder damage, who think they’re too cool for school, whip out attacks that deal nether damage. Nether damage. You heard it here first. That intangible interstitial planar flux that defies true definition other than the implication of how awesome it is. That’s right. Nether damage.
Newb [keyword]: A damage type. This is a great way to devolve your target’s skills, briefly, into that of a beginner; they suddenly won’t remember how to use their magic items, what a d20 is, or whose turn it is next.
Pwnage [keyword]: A damage type. Deal this kind of damage when you want to stress your superiority on all levels. No one’s going to mess with you after they’ve been pwned.
Paranoid [keyword]: A damage type. Do you wonder what they’re saying about you? Have they cooked up a plan to undermine you? Maybe you suspect they’re laughing at you, those bastards! If you wonder this, you might be the target of an attack that dealt paranoid damage. But remember, just because you’ve taken paranoid damage doesn’t mean they’re not out to get you.
Vile [keyword]: A damage type. Vile damage is two steps beyond evil, with a helping of mental scarring thrown in just to make sure your foes never ever forget they’ve been touched by something utterly repulsive. Yes, it’s unbelievably gross—we’re talking twenty-three buckets of blood gross—but sometimes you’ve got to take off the kid gloves.
そして最後に長柄武器クイズ。
5択から一つ選んで点数が出ます。
16点以上だと「ズルしたろ。Unearhted Arcana読みながら答えるなよ」
以上、4月1日。
まずは恒例のアップデートから。今回は1つだけ、でもとても重要な1つ。
Twin Strike Ranger Attack 1
If the first attack doesn’t kill it, the second one will.
At-Will ◆ Martial, Weapon
Standard Action Melee or Ranged weapon
Requirement: You must be wielding two melee weapons or a ranged weapon.
Targets: One or two creatures
Attack: Strength vs. AC (melee; main weapon and off-hand weapon) or Dexterity vs. AC
(ranged), two attacks
Hit: 1[W] damage per attack. If you hit the same creature twice, it must make a saving
throw. On a failure, it automatically drops to 0 hit points.
Increase damage to 2[W] at 21st level.
2発とも命中すると目標がセーヴィング・スロー、
失敗すると即座にhp0。
ツイン・ストライクもやっと適切なバランスが図られましたね。
そして、新アイテム。
バック・オヴ・ステューピッド・ペット・トリックス。
ランダムにモンスターが出てきて芸をし、とても癒されます。
水のないところでイルカが出てくるのはご愛嬌。
うっかりタラスクさんが出てきてさようなら。
Bag of Stupid Pet Tricks
This simple, leather bag produces trained critters that can amaze your allies and enemies alike.
Rare Wondrous Item
Power (Daily Conjuration): Standard Action. Use this bag to conjure a minion (see below for statistics). Roll a d8 to determine which creature is produced and modify its statistics accordingly:
1. Flea. Tricks: Although difficult to see, the flea will walk to the nearest random observer, effortlessly lift them into the air, juggle them, then gently set them back on the ground.
2. Mouse; this creature appears on a small, toy motorcycle. Tricks: The mouse can perform relatively amazing feats (relative to its size) of jumps, wheelies, stoppies, and other motorcycle stunts.
3. Dog (Scottish Deerhound); just look at this awesome dog. Just look at it. Tricks: Aside from its incomparable pedigree, pose, and disposition, the dog will walk alongside its controller without failure, patiently subjecting itself to all observers’ scrutiny and examination.
4. Cat. Tricks: Cats do not perform tricks. Move along.
5. Bear; this creature appears on a large circus ball, and wears a fez. Tricks: Going by the name Oso de la Fez, the bear confines his act to balancing atop his magic circus ball, rolling up to various observers, and tipping his hat to them. Note: The bear will continue to keep its hat tipped until a small coin or other suitable tip is placed inside. It is strongly advised to do so.
6. Dolphin. Tricks: Amazing aerial leaps, balancing on the water atop its fluke, and vigorous nodding of its head. Note: If summoned without being near a suitably large body of water, the dolphin’s performance suffers noticeably.
7. Elephant; this creature appears alongside an easel and canvas. Tricks: The elephant will draw the portrait of a random observer, usually as an exaggerated (and fairly insulting) caricature.
8. Tarrasque. Tricks: The tarrasque immediately sets about destroying everything in its path, attacking all observers and its controller alike, without pity or remorse. It’s a tarrasque, what kind of tricks did you expect?
そしてみんな大好き、コーデル氏によるダメージ・キーワードの解説。
[神聖]、[邪悪]、[猛悪]の復活や、
[チキン野郎]、[アップデート]、[二日酔い]まで幅広くサポート。
Damage Types
Chicken [keyword]: A damage type. When you want to leave your target lying stunned on the battlefield with the inexplicable taste of chicken in his mouth.
Dumbass [keyword]: A damage type. Really, the only thing dumbass damage is good for is showing your disdain for your target’s idiotic b.s., but sometimes that’s just the thing to soothe the soul.
Edition [keyword]: A damage type. Every time you leap to defend the version of something for which several versions exist, regardless of whether anyone was actually attacking your preferred version and despite that you’ve repeated your counter-attack a hundred previous times, you’re dealing edition damage.
Emotional [keyword]: A damage type. Deal emotional damage when you want to cut your target so precisely that he doesn’t even realize he’s been hurt . . . until he wakes up crying in the middle of the night, having finally realized he’s failed to attain every one of his life’s aspirations.
Hangover [keyword]: A damage type. Inflict this splitting headache on your target when you want to impose a creeping dread that he’s done something horrible the night before… even though he can’t recall what it was.
Holy/Unholy [keyword]: A damage type. The kind of damage that once made the angels cry and devils sing, but now doesn’t get too much traction . . . see Edition damage.
Mold [keyword]: A damage type. This putrid fluff loves to sprouts on your basement walls; imagine how effective it would be coating your target’s eyes. Eeww!
Nether [keyword]: A damage type. When you want to show up your friends who are dealing necrotic or radiant-thunder damage, who think they’re too cool for school, whip out attacks that deal nether damage. Nether damage. You heard it here first. That intangible interstitial planar flux that defies true definition other than the implication of how awesome it is. That’s right. Nether damage.
Newb [keyword]: A damage type. This is a great way to devolve your target’s skills, briefly, into that of a beginner; they suddenly won’t remember how to use their magic items, what a d20 is, or whose turn it is next.
Pwnage [keyword]: A damage type. Deal this kind of damage when you want to stress your superiority on all levels. No one’s going to mess with you after they’ve been pwned.
Paranoid [keyword]: A damage type. Do you wonder what they’re saying about you? Have they cooked up a plan to undermine you? Maybe you suspect they’re laughing at you, those bastards! If you wonder this, you might be the target of an attack that dealt paranoid damage. But remember, just because you’ve taken paranoid damage doesn’t mean they’re not out to get you.
Vile [keyword]: A damage type. Vile damage is two steps beyond evil, with a helping of mental scarring thrown in just to make sure your foes never ever forget they’ve been touched by something utterly repulsive. Yes, it’s unbelievably gross—we’re talking twenty-three buckets of blood gross—but sometimes you’ve got to take off the kid gloves.
そして最後に長柄武器クイズ。
5択から一つ選んで点数が出ます。
16点以上だと「ズルしたろ。Unearhted Arcana読みながら答えるなよ」
以上、4月1日。
明かされた魔法:拠点
2011年2月28日 ゲーム3/4 修正
明かされた魔法:拠点 ロバート J. シュワルブ
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drfe/201101bases
ダンジョンズ&ドラゴンズ・ファンタジー・ロールプレイング・ゲームは、英雄たちが苦労の末に手に入れたコインを手放させる術をごまんと用意している。職人の棚で輝きを放っているマジック・アイテムの購入や、強力な儀式の構成要素は英雄の財布を軽くする。また、冒険者たちはガレオン船、乗騎、ワゴン、もっとレベルが高くなればスペルジャマー(帆走宇宙艇)やプレイナー・ドロモンド(次元帆船)(※次元界の書p19~20)に手を出す。これまでに触れられていなかった使い方の一つに、冒険者たちが遠征から引き返す場所、怪我を癒す場所、次のクエストに赴く前に調べものをしておく場所としての拠点がある。
他に冒険を通じて手に入れた大部分の財宝や報酬は、ハッキリと形を持った利益がある。だが拠点がもたらすそれは無形だ。冒険者は、その稼業に拠点を持ち運ぶこともできないし、それを使って敵を攻撃することもできない。ほとんどのクエストで成功・失敗に影響することもない。ファイターが拠点を手に入れたところで、さらに凶悪になったりはしない。
その代わり、拠点はストーリー要素がある。筋書きに応じて使われたり使われなかったりする。このことを考慮すれば、拠点の建築や維持を徹底的かつ網羅的に考え出すのは、ほとんどのプレイヤーにとって不要な骨折りでしかない。(もちろんミニチュアの類と同様、こだわる人間もいる。が、これは全体向けの記事なので) 冒険者たちが英雄級を卒業したら、より遠へと旅し、より強大で凶悪な脅威と戦う。シギルの通りやアストラル海の支配圏を探索するようになるにつれ、拠点からは足が遠のく。だが、だからといってその場所に新しい拠点を建てたり、手に入れたりしてはいけない理由などどこにもない。
ダンジョンズ&ドラゴンズの拠点には、豊かな伝統と熟成したシナリオフックがある。本稿では、キャンペーンでの拠点の建築・管理に簡素化されたシステムをご覧に入れたい。その内容が手早く簡単に基地を建設する助けとなり、投資に見合っただけの益をもたらさんことを。
拠点の基本
拠点とは命令の発信所であり、司令部であり、冒険から引き上げる際の安全な場所である。冒険と冒険の合間の場所であるため、どんな冒険においても主要な場所にはなりづらい。(もちろんDMは拠点にスポットを当てることもできる)そのうえ、伝説級・神話級のキャラクターは、長い間遠くまで赴き、お家に帰ってくる頃には数レベルも上がっていることもある。
こうした理由から、この記事ではプレイヤーやダンジョン・マスターに、拠点の外見・場所・設備について想像を膨らませる余地を残しつつ、細部まで詰めた要約を提供したい。
追加投資可能:普通の拠点は25,000 gpかかる。つまり、拠点ひとつで15レベル相当のアイテムに匹敵する。 これはグレートシップよりも高く(訳注:13,000gp)、ナイトメアの乗騎と等価。二つ目の拠点を買うなら、二の丸として使ったり、一つ目を補強する用途で買ったりしてもよい。また後述する拠点の設備を充実させるのに使うのもありだ。
好きなように:拠点は城だ。だが大聖堂でもあり、寺院でもあり、大学でもあり、ウィザードの塔でもあり、屋敷でもあり、複雑な洞窟であり、島でもあり、もう君が思いついてDMが認めたものなら何にでもなる。だが拠点は国ではない。都市でもないし、宿屋の部屋でもないし、ポケットの空間でもなければ、田舎のおばあちゃんのクローゼットの中でもない。拠点は船や空に浮かぶ城、巨大な機械のように通常動いたりしない。(ただしアイディアとしては非常に面白い。DMはプレイヤーが望むなら柔軟にいくべきだろう。船かつ拠点が欲しいなら、船と拠点の島同様にばらばらに購入することにしてもいいし、2倍の価格のグレートシップが拠点付きになるか聞いてみるのもいい。すべては相談次第。) 拠点ひとつで冒険者のパーティーと、管理するためのサポートスタッフ全員を(必要ならいくらでも)収容することができる。基本的な拠点は床面積にして300マス(7,500フィート四方)の広さである。自分の拠点の間取りは自分で作ることを推奨したい。程よくやるなら楽しく創造的で、実利もあるかもしれない。間取りがあるということは、DMがおそらくそれを利用するだろう。与えられた広さを部屋、廊下、その他欲しい内装があるなら何でも使おう。平屋の拠点でもいいし、複数階ある建物や塔、あるいは地面を掘って地下に造るのもありだろう。300マス以内という制限の範囲内なら、何をどうしようと自由だ。
安全な場所:どんな拠点も、基本的には安全安心だ。外の異常に対しては、夜ベットで横になっている間に強盗や侵入者の心配をしたり、留守中に居座られたり、占拠されたり、追い出されたりといったことを心配すべきではない。
だが安全なんだと高をくくってもいけない。ふとしたことから敵ができて、DMはごろつきを送り込み、古い仇敵から犯行声明を受ける。次の冒険に行く前に奪還だ。
拠点を手に入れる
キャラクターが拠点を得る方法は3つ。すなわち、購入する、征服する、建築する。
購入する
拠点を手に入れる一番簡単な方法は買うことだろう。厄介なのは、良い拠点はすでに誰かのもので、所有者は売りに出したりしないであろうことだ。売り手との談判は、相互作用系(<交渉>、<看破>、<威圧>)や情報収集系 (<事情通>)などを使った技能チャレンジになる。手ごろな場所と構造の砦を探す必要もあるだろう。儀式によって拠点を移動させたり、改良を加えたりすることができるが、そうした儀式の執行は追加で費用がかかる。
DMに:キャラクターが拠点を買うことができるのは、過不足ない財産を所有しているときだけだ。もしキャラクターたちが拠点にお金を使うことを決めたのなら、どうしたら拠点がゲームに最も合うか、プレイヤーと一緒に考えよう。
征服する
君は報酬として拠点を勝ち取ることもできる。ウィザードの塔から、前の住人を追い出して自分のものだと宣言できるし、隠れ家に潜んだヴァンパイアを滅した後、廃墟の城に居を構えるかもしれない。力づくで拠点を奪い取る場合の制約だが、購入するとき(場所と構造)に加え、以前の所有者の人となりが残ることだろう。たとえば、死霊術師の塔であった痕跡を完全には消し去れないかもしれない。逆に、一見完璧な建物を邪な持ち主が手ごろな値段で売買を持ちかけ、近隣を安定させた頃に乗っ取ろうとする手もある。
DMに:もしプレイヤーが拠点を自らの力で陥としたのなら、拠点はその冒険で得た25,000 gp相当の財宝として扱うこと。 手に入れる前段階でダンジョンとしての探索をしているのであれば、拠点のマッピングは終わっているかもしれない。この方法で手に入れたのであれば、通常の制限より若干広いくらいは許されるだろう。キャラクターは足りない分を自らの血で払ったのだから、このくらいは問題ない。拠点が明らかに大きすぎるようなら、その分を別の得られる報酬から削れば済む話だ。
建築する
購入も征服もしっくりこないなら、無から作り上げるという方法もある。そうしたとしても、費用は購入する以上にかかったりはしない。だが、時間はかかる。共同体が大聖堂や城を造るのに数十年もかけることもあるのを考えてほしい。紆余曲折なしに出来上がるなんてありえない。計画が完璧だとしても、地元の物資や労働力頼みだ。建築美に凝ったり、山の際や不毛の離れ小島など、とんでもない場所に造ろうとしたりするなら、状況はさらにひどいことになる。どのような拠点にしたいのかにもよるが、記事の表紙のような、見事なロングハウスの木製の建物は1d10+5か月、石造りの城や大聖堂をゼロから組もうとするなら1d10+5年の時間がかかる。とても難しいプロジェクト付きならさらに上乗せ。幸いにして、儀式があれば拠点建築にかかる時間を幾年も省くことができる。儀式を使って建築にかかる時間を縮めたり省いたりした場合、その構成要素の分を拠点の建築価格から差し引くように。また、次の建築儀式の項を参照してほしい。
あるいは、拠点を造るための儀式を創りたくなるかもしれない。ビグビーズ・コンストラクション・クルーのような。
建築儀式
儀式によっては、執行者の判定結果次第で拠点建築にかかる年月を減らせるかもしれない。同じ儀式を重ね掛けしても効果は重複しないが、種類が違えば重複する。コミューン・ウィズ・ネイチャー(プレイヤーズ・ハンドブック)、アイアンウッド(プレイヤーズ・ハンドブックⅡ)、トレイルブレイズ(フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド) アーセン・ランパーツ[Earthen Ramparts]、エクスカベイション[Excavation]、テンサーズ・リフト[Tenser’s Lift] (すべてドラゴン誌366号)などがある。
新儀式:
ビグビーズ・コンストラクション・クルー
Bigby’s Construction Crew/ビグビーの建築作業員
レベル:15 構成要素費用:5,000 gp
系統: 創造 市価:20,000 gp
執行時間:24時間 対応技能:<魔法学>(判定なし)
持続時間:永遠
君の頭上に紛れもない魔法の手の一団が現れる。大工道具から石工道具に至るまで、手はそれぞれ君が作らんとするものに必要な道具を持っている。この儀式を執行するとき、執行者は細かいところに至るまで望むままに指示できる。手は現れるや否や使える材料を集め始める。採石して形を整え、木を切り倒して材木にし、葦を集めて藁葺きにする、等々。ただし、手が材料を採集できる範囲は1マイル程度に限られる。たとえば、手は砂漠の真ん中で石造りの聖堂の材料を集められない。手は壊れた建物を修復したり、壊れた建物から新しいものを作り直したりできる。手は攻撃したりダメージを与えることはできず、またダメージに関する何物をも受け付けない。
この儀式で建築できる拠点は300マスを超えてはならない。間取りは好きなように調整できるが、各部分はつながっていること。
DMの許可があれば、この儀式を橋の建設や、山の斜面に階段を作る類の作業にも応用できる。
拠点を造る
一度に複数の拠点を持つ冒険者のグループなどほとんどいない。それゆえに、みんなで拠点を造る過程に携わるのが一番いいだろう。ほかのプレイヤーとダンジョン・マスター全員で特徴を決めていこう。
外見と感じ
拠点の外見や感じを決めるのは君だ。中世のような城でもいいし、生きている樹で形造られた小屋でもいいし、馬鹿でかいウィザードの塔でもいいし、奉ずる神を讃える神気に溢れた聖堂でもいい。拠点の外見的要素は基本価格に含まれる。
場所
拠点を造るにあたって、最初に考えるべきはどこに建てるかだ。奪取する場合は選択肢が多いとは言えない。見えているものに限られる。だが造るなら、君の好きなところに拠点はある。地元の労働力に頼って拠点建設をする場合、離れた場所に建てるのは困難になる。山頂や荒野の奥深くといった非常に離れたところなら、値段は倍の50,000gpになる。水中や他の次元界・雲に浮かぶ城となれば、儀式からでしか造りだすことはできず、125,000 gpになるだろう。だがこうした目安に縛られることもない。DMと共同で作り上げ、どちらも幸せになれるようにしてほしい。
建築できるマス
拠点建築に与えられた広さは300マス。300マスで部屋と廊下を造る。考えるのは平面的な間取りのことだけでよく、高さは不合理なことにならない限り考慮しない。何が合理的かはDMが決める。ドラゴンズ&ダンジョンズのお話では、天井は25フィートが比較的よくある設定だ。
部屋:「部屋」とは、寝室や食堂でもあるし、塔を2つ造ることによってできる城の外防壁かもしれないし、中庭やドックも含まれる。部屋の大きさは自由だ。たとえば15×20の大部屋一つでもよいし、同面積であれば5×5の部屋が4つ、8×10の部屋が2つ、これらをつなぐ幅10フィート長さ100フィート(2×20マス)の廊下でもよい。
廊下:廊下は部屋をつなぐ。通り道のため、廊下の分も確保しておこう。廊下は少なくとも1マスの幅がなければならない。
壁:壁は造る部屋すべてについてくる。内壁は木製で厚さ6インチ、ドアは好きなように設置できる。外壁は場所的に無理があるか望まない限り、厚さ1フィートの石造り。ドアと窓は自由に配置可能。
天井と床:床と天井は壁と同じ材質でできている。天井は特に指定がなければ高さ10フィート。(訳注:与えられたマスを割り振って)上の階を構築してもいい。拠点が複数階ある場合、上下の階は石か木でできた階段でつながっている。
部屋の内装
造った部屋の目的を決めること。部屋の目的に合わせた基本的な家具や小物を配置でき、これらは拠点の基本価格に含まれる。寝室にはベッド、ドレッサー、テーブルなどがあり、食堂には食卓と椅子がある。細かいところは好きにやって構わない。
拠点を描く
自分の拠点を自分で作るか決めるのは君次第だ。ここが冒険の場とはならないようなら、おおよその部屋の外見と配置を決め、必要に応じて廊下と階段で結んでしまえばいい。逆に、詳細なところまで作りたいのなら、もうやるっきゃない。磨けば磨くほど拠点も輝くことだろう。
あらゆる拠点に必要な類がある。寝室が最低1つに客間がいくつか。控室に兵舎。台所や工房、武器庫も入れるべきだ。あとはマスの制限の範囲内で好きなように部屋を追加するといい。
特殊用途の場所
特別な目的のための部屋も作ることができる。ダンジョンや玉座の間、魔術の研究所を造りたくなるかもしれない。これらの部屋は一定以上のマスを使い、お金も余分にかかる。そのぶん、その部屋から得られる利益もある。コモンの特別室を以下に記載する。
特に明記していない限り、それぞれの施設は拠点に付属しており、設備の外で行う判定には利益を与えない。
オーデトリウム
Auditorium/講堂 レベル2 コモン
この部屋の音響は、大人数に聴かせるのにうってつけだ。
拠点設備 520gp
必要条件:この部屋は24マス以上の広さがなければならない。
利益:君はこの部屋で行う<はったり>および<交渉>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
アーマリー
Armory/武器庫 レベル7 コモン
各種武器防具はこの部屋に保管する。
拠点設備 2,600 gp
必要条件:この部屋は24マス以上の広さがなければならない。
利益:この部屋は通常の武器と鎧一式を合計50まで保管できるが、1種類につき5つまでしか置くことができない。矢30本、ボルト20本、手裏剣6つをそれぞれ武器1つとみなす。
チャペル
Chapel/簡易礼拝堂 レベル5+ コモン
聖なる場は宗教絡みのことに没頭するのにご利益がある。
レベル5 1,000 gp
レベル15 25,000 gp
レベル25 625,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は9マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<宗教>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル15: +2 アイテム・ボーナス
レベル25: +3 アイテム・ボーナス
マジカル・ラボラトリー
Magical Laboratory/魔法の学究室 レベル5+ コモン
この研究室には、君が魔法学の研究をするのに必要な道具すべてが備わっている。
レベル5 1,000 gp
レベル15 25,000 gp
レベル25 625,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は4マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<魔法学>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル15: +2 アイテム・ボーナス
レベル25: +3 アイテム・ボーナス
ライブラリー
Library/図書室 レベル8+ コモン
君の研究に使う本と巻物が、棚と机にギッシリ。
レベル8 3,400 gp
レベル18 85,000 gp
レベル28 2,125,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
以下の技能から1つ選択する:<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>。君はこの部屋で行う選択した知識判定およびモンスター知識判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル18:+2アイテム・ボーナス
レベル28:+3アイテム・ボーナス
特殊:君は同じ部屋の中に複数回この設備を購入できる。購入のたびに異なる技能を選択すること。
プリズン
Prison/牢屋 レベル4+ コモン4
手かせや重い鉄のかんぬきで、虜囚をここに留め置く。
レベル4 840 gp
レベル 14 21,000 gp
レベル 24 525,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
利益:この部屋に入れられたクリーチャーは、魔法的手段を除き、解放されるか難易度21の<運動>または<軽業>判定に成功しない限り脱出することができない。
レベル14:難易度29
レベル24:難易度37
スローン・ルーム
Throne Room/玉座の間 レベル6 コモン
豪華な椅子が一脚、そして探索行の戦利品がこの部屋にある。
拠点設備 1,800 gp
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<はったり>、<交渉>、<看破>、<威圧>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
トーチャー・チャンバー
Torture Chamber/拷問室 レベル3+ コモン
縁起でもない設備と道具が、身の毛もよだつようなこの部屋の目的を物語る。
レベル3 680 gp
レベル13 17,000 gp
レベル 23 425,000 gp
拠点設備 1,800 gp
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<威圧>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル13: +2 アイテム・ボーナス
レベル23: +3 アイテム・ボーナス
防衛施設
建設の際に追加で支払うことで、以下の防衛施設を加えることができる。
アロー・スリッツ
Arrow Slits/矢ぶすま レベル4 コモン
狭い窓の向こうから、射手は護られつつ射ることができる。
拠点設備 840 gp
利益:建物の窓は矢ぶすまとなる。矢ぶすまの内側で戦闘するクリーチャーは、外側からの敵に対して、少なくとも“良好な遮蔽”を得る。
ディフェンシヴ・ウォールズ
Defensive Walls/防護壁 レベル10 コモン
自分の拠点を厚い外壁で囲む。
拠点設備5,000 gp
利益:防護壁は高さ10フィート、幅10フィートの石造り。この壁を登攀するためには、<運動>判定(クリーチャーのレベルに応じた“標準”の難易度)に成功しなくてはならない。壁には好きなだけ門をつけることができる。防護壁の上にいるクリーチャーは、下にいるクリーチャーからの攻撃に対して少なくとも“軽度の遮蔽”を得る。
特殊:君はこの拠点設備を複数回購入できる。購入するたび、新たな壁を造るか既存の壁を強化するか選ぶことができる。既存の壁を強化する場合、壁の高さと厚さが5フィート増す。
ガーズ
Guards/守備隊 レベル1+ コモン
自分の留守中、拠点の安全を護る兵士と歩哨の一団を雇う。
拠点設備 特殊
利益:君は拠点を護るための守備隊を雇用する。購入時に守備隊のレベルを選択すること。価格は同レベルのマジック・アイテムに等しい。守備隊は自身と同レベル以下の攻撃に対する完全耐性を持つ。
アイロン・ドアズ
Iron Doors/鉄製ドア レベル3 コモン
内部のドアを鉄製にして、さらなる防護を施す。
拠点設備 680 gp
利益:拠点のドアは鉄製になる。
モート
Moat/濠 レベル8
幅広の水掘と柵は、寄せ手を阻むのに大いに役立つ。
拠点設備 3,400 gp
利益:拠点は濠で囲まれる。深さは15フィート、幅は30フィート。跳ね橋も含む。
スーペリア・ロックス
Superior Locks/高品質の錠 レベル3 コモン
よくできた錠は、君の護る部屋に賊が押し入るのを退けてくれる。
拠点設備 680 gp
利益:拠点のドアに高品質の錠がつく。鍵なしで開錠を試みる場合、<盗賊>判定(クリーチャーのレベルに応じた“困難”の難易度)に成功しなくてはならない。
拠点を保護する
儀式修得者は自らに合わせて拠点を調整できる。拠点の中で儀式を執行する場合、保護する範囲は通常よりも広くなる。ガーズ・アンド・ウォーズ(秘術の書)、フォービダンス、アーケイン・ロック(ともにPHB)などの儀式を自分や仲間の所有する拠点に使う場合、儀式の効果は拠点全体に及ぶ。
スタッフ
拠点を維持する作業は骨が折れる。自分の手で修繕しようとするなら、他のことをしている暇などあまりない。拠点を手に入れたなら、それを良好に管理できるのに足る数のスタッフも揃えたということになる。召使、料理人、執事、職人、農夫などが維持するのに必要な分のスタッフとして含まれる。“維持するのに必要な分”というのがミソで、本当に必要なのを越える分は、自動的には得られない。スタッフは拠点を良く改修し、清潔に保ち、抜かりなく備えている。拠点の初期投資には、雇用者の衣食住にかかる費用も含まれている。スタッフはみな非戦闘員で、君の冒険には同行しない。
罠
罠は招かれざる客を防ぐ、すぐれた護りとなりうる。既存の罠を使ってもいいし、DMと相談して、自分の考えに最も合うものを造ってもいい。罠の価格は同レベルのマジック・アイテムと一緒だ。“精鋭”の罠であれば価格は2倍。“単独”の罠であれば5倍になる。
魔法のアイテムによる強化
冒険者の宝物庫Ⅱで掲載されている“その他の魔法のアイテム(設置型)”は拠点の防御と価値を向上させるのにうってつけだ。これらのアイテムは廉価で実に使える。ウォッチフル・アイが視界に入った何者かを警告するかたわら、テレポーテーション・ディスクで拠点の好きな場所に瞬間移動できる。自分の寺院にホーリー・シュラインを入れて[信仰]パワーに柔軟性を持たせたり、ディプロマッツ・テーブルで、すべての交渉系の判定にボーナスを得ようとしたりできる。
機動する拠点
あらゆる拠点にとって、持ち主の長期不在こそが最も過酷な試練となるだろう。テレポーテーション・サークルを永続させれば行き来が自由になるが、構成要素費用もかかるし戻るときのことも考えなくてはならない。以下の儀式を使えば、拠点のほうが君についてくる。
コール・ストロングホールド
Call Stronghold/拠点召喚
レベル:20
構成要素費用:5,000 gp
系統:創造
市価:25,000 gp
執行時間:1時間
対応技能:<魔法学>(判定なし)
持続時間:永遠
君はこのために用意した拠点を、ある場所から別の場所へと移動させるべく、現実を捻じ曲げる。移動先は拠点の大きさ以上に広くなければならず、そうでなければ儀式は失敗し、構成要素は無駄に消費される。この儀式は次元の境界に縛られない。つまり、君はこの儀式を使って、拠点を物質界からフェイワイルド、または他の次元界に移動させることもできる。
フライング・フォートレス
Flying Fortress/飛行要塞
レベル:23
構成要素:13,000 gp
系統:移動
市価:65,000 gp
執行時間:1時間
対応技能:魔法学(判定なし)
持続時間:永遠
君の拠点と相当量の地面は、100フィートの高さまで持ち上がり空に浮かぶ。拠点は飛行速度6(ホバリング)を得る。君が拠点の中にいる場合、移動アクションを消費することで、指定した方向にその移動速度まで飛行させることができる。飛行する拠点が何かにぶつかった場合、そこで移動を停止する。
レイズ・ランド対フライング・フォートレス
フライング・フォートレスはフォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイドのレイズ・ランドに似ている。確かに目指すところは似ている。が、レイズ・ランドは2マイル四方の土の塊を持ち上げ、お祭りの巨大風船よろしく浮かべたい人には垂涎ものではあるものの、30レベルともなれば、拠点など砂漠の船よろしく地べたに置き去りにされることだろう。フライング・フォートレスは、レベルが上昇して逃げ道ができてしまう前に、高い投資を楽しむために調整し、やりやすくしたバージョンだ。
最後に考えるべきこと
拠点は、捨てるくらいに金の余ったキャラクターには面白い選択肢だが、すべてのプレイヤーに魅力なオプションではない。拠点を造るのは、こういう簡素化したルールをもってしても、時間がかかるし計画も必要だ。そのうえ責任もついてくる。大きな城を持つということは、君がふさわしい君主であるかどうかにかかわらず、その地域が君の庇護にあるとみなされるということでもある。レベルが上がれば、君の目には物質界など色褪せ、遠く離れた地や他の次元にいる新たな敵を求めていることだろう。
それを踏まえたうえで、拠点を造ることはなお、労力に見合うだけの価値があると言えるのだろうか?
絶対にイエスだ!拠点は世界のわずかな部分のコントロールを君に与える。何をなし、どう形作るかを委ねる。この大きな耐久建築物は、拠点そのものや周りに住む人々を護るという新たな挑戦を通して、これまでにない冒険やロールプレイの機会をもたらす。君のキャラクターは闇の蛮族を退け、文明の灯火をわかりやすく、かつ永く続くやり方で広めることができる。これによって、キャンペーンの設定は他に類を見ないほど地に足の着いたものとなり、冒険者にとっても、拠点は悪との戦いで一息入れるだけの場所から、永遠にそこにある隠れ家に昇華する。
最後に、キャラクターが拠点に収まりきらないほどに成長し、そこから巣立つ時が来る。主の背中を見て育って経験を積み、自分たちの偉業を継いでくれるノンプレイヤー・キャラクターに後を託すのもいいだろう。
筆者について
ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズ、ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ、A Song of Ice and Fire RPG、 Star Wars RPG、d20システムにおいて200近いタイトルのTRPGのデザインや開発にかかわって表彰されたゲーム・デザイナーだ。ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社での最近の作品はD&D® Gamma World: Famine in Far-Go、Dark Sun Campaign Setting、モンスター・マニュアル3があり、またドラゴン・ダンジョンマガジンの両方で、レギュラーのライターをしている。著者に関してさらに知りたい場合は、彼のウェブサイト( www.robertjschwalb.com.)を参照してほしい。
明かされた魔法:拠点 ロバート J. シュワルブ
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drfe/201101bases
ダンジョンズ&ドラゴンズ・ファンタジー・ロールプレイング・ゲームは、英雄たちが苦労の末に手に入れたコインを手放させる術をごまんと用意している。職人の棚で輝きを放っているマジック・アイテムの購入や、強力な儀式の構成要素は英雄の財布を軽くする。また、冒険者たちはガレオン船、乗騎、ワゴン、もっとレベルが高くなればスペルジャマー(帆走宇宙艇)やプレイナー・ドロモンド(次元帆船)(※次元界の書p19~20)に手を出す。これまでに触れられていなかった使い方の一つに、冒険者たちが遠征から引き返す場所、怪我を癒す場所、次のクエストに赴く前に調べものをしておく場所としての拠点がある。
他に冒険を通じて手に入れた大部分の財宝や報酬は、ハッキリと形を持った利益がある。だが拠点がもたらすそれは無形だ。冒険者は、その稼業に拠点を持ち運ぶこともできないし、それを使って敵を攻撃することもできない。ほとんどのクエストで成功・失敗に影響することもない。ファイターが拠点を手に入れたところで、さらに凶悪になったりはしない。
その代わり、拠点はストーリー要素がある。筋書きに応じて使われたり使われなかったりする。このことを考慮すれば、拠点の建築や維持を徹底的かつ網羅的に考え出すのは、ほとんどのプレイヤーにとって不要な骨折りでしかない。(もちろんミニチュアの類と同様、こだわる人間もいる。が、これは全体向けの記事なので) 冒険者たちが英雄級を卒業したら、より遠へと旅し、より強大で凶悪な脅威と戦う。シギルの通りやアストラル海の支配圏を探索するようになるにつれ、拠点からは足が遠のく。だが、だからといってその場所に新しい拠点を建てたり、手に入れたりしてはいけない理由などどこにもない。
ダンジョンズ&ドラゴンズの拠点には、豊かな伝統と熟成したシナリオフックがある。本稿では、キャンペーンでの拠点の建築・管理に簡素化されたシステムをご覧に入れたい。その内容が手早く簡単に基地を建設する助けとなり、投資に見合っただけの益をもたらさんことを。
拠点の基本
拠点とは命令の発信所であり、司令部であり、冒険から引き上げる際の安全な場所である。冒険と冒険の合間の場所であるため、どんな冒険においても主要な場所にはなりづらい。(もちろんDMは拠点にスポットを当てることもできる)そのうえ、伝説級・神話級のキャラクターは、長い間遠くまで赴き、お家に帰ってくる頃には数レベルも上がっていることもある。
こうした理由から、この記事ではプレイヤーやダンジョン・マスターに、拠点の外見・場所・設備について想像を膨らませる余地を残しつつ、細部まで詰めた要約を提供したい。
追加投資可能:普通の拠点は25,000 gpかかる。つまり、拠点ひとつで15レベル相当のアイテムに匹敵する。 これはグレートシップよりも高く(訳注:13,000gp)、ナイトメアの乗騎と等価。二つ目の拠点を買うなら、二の丸として使ったり、一つ目を補強する用途で買ったりしてもよい。また後述する拠点の設備を充実させるのに使うのもありだ。
好きなように:拠点は城だ。だが大聖堂でもあり、寺院でもあり、大学でもあり、ウィザードの塔でもあり、屋敷でもあり、複雑な洞窟であり、島でもあり、もう君が思いついてDMが認めたものなら何にでもなる。だが拠点は国ではない。都市でもないし、宿屋の部屋でもないし、ポケットの空間でもなければ、田舎のおばあちゃんのクローゼットの中でもない。拠点は船や空に浮かぶ城、巨大な機械のように通常動いたりしない。(ただしアイディアとしては非常に面白い。DMはプレイヤーが望むなら柔軟にいくべきだろう。船かつ拠点が欲しいなら、船と拠点の島同様にばらばらに購入することにしてもいいし、2倍の価格のグレートシップが拠点付きになるか聞いてみるのもいい。すべては相談次第。) 拠点ひとつで冒険者のパーティーと、管理するためのサポートスタッフ全員を(必要ならいくらでも)収容することができる。基本的な拠点は床面積にして300マス(7,500フィート四方)の広さである。自分の拠点の間取りは自分で作ることを推奨したい。程よくやるなら楽しく創造的で、実利もあるかもしれない。間取りがあるということは、DMがおそらくそれを利用するだろう。与えられた広さを部屋、廊下、その他欲しい内装があるなら何でも使おう。平屋の拠点でもいいし、複数階ある建物や塔、あるいは地面を掘って地下に造るのもありだろう。300マス以内という制限の範囲内なら、何をどうしようと自由だ。
安全な場所:どんな拠点も、基本的には安全安心だ。外の異常に対しては、夜ベットで横になっている間に強盗や侵入者の心配をしたり、留守中に居座られたり、占拠されたり、追い出されたりといったことを心配すべきではない。
だが安全なんだと高をくくってもいけない。ふとしたことから敵ができて、DMはごろつきを送り込み、古い仇敵から犯行声明を受ける。次の冒険に行く前に奪還だ。
拠点を手に入れる
キャラクターが拠点を得る方法は3つ。すなわち、購入する、征服する、建築する。
購入する
拠点を手に入れる一番簡単な方法は買うことだろう。厄介なのは、良い拠点はすでに誰かのもので、所有者は売りに出したりしないであろうことだ。売り手との談判は、相互作用系(<交渉>、<看破>、<威圧>)や情報収集系 (<事情通>)などを使った技能チャレンジになる。手ごろな場所と構造の砦を探す必要もあるだろう。儀式によって拠点を移動させたり、改良を加えたりすることができるが、そうした儀式の執行は追加で費用がかかる。
DMに:キャラクターが拠点を買うことができるのは、過不足ない財産を所有しているときだけだ。もしキャラクターたちが拠点にお金を使うことを決めたのなら、どうしたら拠点がゲームに最も合うか、プレイヤーと一緒に考えよう。
征服する
君は報酬として拠点を勝ち取ることもできる。ウィザードの塔から、前の住人を追い出して自分のものだと宣言できるし、隠れ家に潜んだヴァンパイアを滅した後、廃墟の城に居を構えるかもしれない。力づくで拠点を奪い取る場合の制約だが、購入するとき(場所と構造)に加え、以前の所有者の人となりが残ることだろう。たとえば、死霊術師の塔であった痕跡を完全には消し去れないかもしれない。逆に、一見完璧な建物を邪な持ち主が手ごろな値段で売買を持ちかけ、近隣を安定させた頃に乗っ取ろうとする手もある。
DMに:もしプレイヤーが拠点を自らの力で陥としたのなら、拠点はその冒険で得た25,000 gp相当の財宝として扱うこと。 手に入れる前段階でダンジョンとしての探索をしているのであれば、拠点のマッピングは終わっているかもしれない。この方法で手に入れたのであれば、通常の制限より若干広いくらいは許されるだろう。キャラクターは足りない分を自らの血で払ったのだから、このくらいは問題ない。拠点が明らかに大きすぎるようなら、その分を別の得られる報酬から削れば済む話だ。
建築する
購入も征服もしっくりこないなら、無から作り上げるという方法もある。そうしたとしても、費用は購入する以上にかかったりはしない。だが、時間はかかる。共同体が大聖堂や城を造るのに数十年もかけることもあるのを考えてほしい。紆余曲折なしに出来上がるなんてありえない。計画が完璧だとしても、地元の物資や労働力頼みだ。建築美に凝ったり、山の際や不毛の離れ小島など、とんでもない場所に造ろうとしたりするなら、状況はさらにひどいことになる。どのような拠点にしたいのかにもよるが、記事の表紙のような、見事なロングハウスの木製の建物は1d10+5か月、石造りの城や大聖堂をゼロから組もうとするなら1d10+5年の時間がかかる。とても難しいプロジェクト付きならさらに上乗せ。幸いにして、儀式があれば拠点建築にかかる時間を幾年も省くことができる。儀式を使って建築にかかる時間を縮めたり省いたりした場合、その構成要素の分を拠点の建築価格から差し引くように。また、次の建築儀式の項を参照してほしい。
あるいは、拠点を造るための儀式を創りたくなるかもしれない。ビグビーズ・コンストラクション・クルーのような。
建築儀式
儀式によっては、執行者の判定結果次第で拠点建築にかかる年月を減らせるかもしれない。同じ儀式を重ね掛けしても効果は重複しないが、種類が違えば重複する。コミューン・ウィズ・ネイチャー(プレイヤーズ・ハンドブック)、アイアンウッド(プレイヤーズ・ハンドブックⅡ)、トレイルブレイズ(フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド) アーセン・ランパーツ[Earthen Ramparts]、エクスカベイション[Excavation]、テンサーズ・リフト[Tenser’s Lift] (すべてドラゴン誌366号)などがある。
新儀式:
ビグビーズ・コンストラクション・クルー
Bigby’s Construction Crew/ビグビーの建築作業員
レベル:15 構成要素費用:5,000 gp
系統: 創造 市価:20,000 gp
執行時間:24時間 対応技能:<魔法学>(判定なし)
持続時間:永遠
君の頭上に紛れもない魔法の手の一団が現れる。大工道具から石工道具に至るまで、手はそれぞれ君が作らんとするものに必要な道具を持っている。この儀式を執行するとき、執行者は細かいところに至るまで望むままに指示できる。手は現れるや否や使える材料を集め始める。採石して形を整え、木を切り倒して材木にし、葦を集めて藁葺きにする、等々。ただし、手が材料を採集できる範囲は1マイル程度に限られる。たとえば、手は砂漠の真ん中で石造りの聖堂の材料を集められない。手は壊れた建物を修復したり、壊れた建物から新しいものを作り直したりできる。手は攻撃したりダメージを与えることはできず、またダメージに関する何物をも受け付けない。
この儀式で建築できる拠点は300マスを超えてはならない。間取りは好きなように調整できるが、各部分はつながっていること。
DMの許可があれば、この儀式を橋の建設や、山の斜面に階段を作る類の作業にも応用できる。
拠点を造る
一度に複数の拠点を持つ冒険者のグループなどほとんどいない。それゆえに、みんなで拠点を造る過程に携わるのが一番いいだろう。ほかのプレイヤーとダンジョン・マスター全員で特徴を決めていこう。
外見と感じ
拠点の外見や感じを決めるのは君だ。中世のような城でもいいし、生きている樹で形造られた小屋でもいいし、馬鹿でかいウィザードの塔でもいいし、奉ずる神を讃える神気に溢れた聖堂でもいい。拠点の外見的要素は基本価格に含まれる。
場所
拠点を造るにあたって、最初に考えるべきはどこに建てるかだ。奪取する場合は選択肢が多いとは言えない。見えているものに限られる。だが造るなら、君の好きなところに拠点はある。地元の労働力に頼って拠点建設をする場合、離れた場所に建てるのは困難になる。山頂や荒野の奥深くといった非常に離れたところなら、値段は倍の50,000gpになる。水中や他の次元界・雲に浮かぶ城となれば、儀式からでしか造りだすことはできず、125,000 gpになるだろう。だがこうした目安に縛られることもない。DMと共同で作り上げ、どちらも幸せになれるようにしてほしい。
建築できるマス
拠点建築に与えられた広さは300マス。300マスで部屋と廊下を造る。考えるのは平面的な間取りのことだけでよく、高さは不合理なことにならない限り考慮しない。何が合理的かはDMが決める。ドラゴンズ&ダンジョンズのお話では、天井は25フィートが比較的よくある設定だ。
部屋:「部屋」とは、寝室や食堂でもあるし、塔を2つ造ることによってできる城の外防壁かもしれないし、中庭やドックも含まれる。部屋の大きさは自由だ。たとえば15×20の大部屋一つでもよいし、同面積であれば5×5の部屋が4つ、8×10の部屋が2つ、これらをつなぐ幅10フィート長さ100フィート(2×20マス)の廊下でもよい。
廊下:廊下は部屋をつなぐ。通り道のため、廊下の分も確保しておこう。廊下は少なくとも1マスの幅がなければならない。
壁:壁は造る部屋すべてについてくる。内壁は木製で厚さ6インチ、ドアは好きなように設置できる。外壁は場所的に無理があるか望まない限り、厚さ1フィートの石造り。ドアと窓は自由に配置可能。
天井と床:床と天井は壁と同じ材質でできている。天井は特に指定がなければ高さ10フィート。(訳注:与えられたマスを割り振って)上の階を構築してもいい。拠点が複数階ある場合、上下の階は石か木でできた階段でつながっている。
部屋の内装
造った部屋の目的を決めること。部屋の目的に合わせた基本的な家具や小物を配置でき、これらは拠点の基本価格に含まれる。寝室にはベッド、ドレッサー、テーブルなどがあり、食堂には食卓と椅子がある。細かいところは好きにやって構わない。
拠点を描く
自分の拠点を自分で作るか決めるのは君次第だ。ここが冒険の場とはならないようなら、おおよその部屋の外見と配置を決め、必要に応じて廊下と階段で結んでしまえばいい。逆に、詳細なところまで作りたいのなら、もうやるっきゃない。磨けば磨くほど拠点も輝くことだろう。
あらゆる拠点に必要な類がある。寝室が最低1つに客間がいくつか。控室に兵舎。台所や工房、武器庫も入れるべきだ。あとはマスの制限の範囲内で好きなように部屋を追加するといい。
特殊用途の場所
特別な目的のための部屋も作ることができる。ダンジョンや玉座の間、魔術の研究所を造りたくなるかもしれない。これらの部屋は一定以上のマスを使い、お金も余分にかかる。そのぶん、その部屋から得られる利益もある。コモンの特別室を以下に記載する。
特に明記していない限り、それぞれの施設は拠点に付属しており、設備の外で行う判定には利益を与えない。
オーデトリウム
Auditorium/講堂 レベル2 コモン
この部屋の音響は、大人数に聴かせるのにうってつけだ。
拠点設備 520gp
必要条件:この部屋は24マス以上の広さがなければならない。
利益:君はこの部屋で行う<はったり>および<交渉>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
アーマリー
Armory/武器庫 レベル7 コモン
各種武器防具はこの部屋に保管する。
拠点設備 2,600 gp
必要条件:この部屋は24マス以上の広さがなければならない。
利益:この部屋は通常の武器と鎧一式を合計50まで保管できるが、1種類につき5つまでしか置くことができない。矢30本、ボルト20本、手裏剣6つをそれぞれ武器1つとみなす。
チャペル
Chapel/簡易礼拝堂 レベル5+ コモン
聖なる場は宗教絡みのことに没頭するのにご利益がある。
レベル5 1,000 gp
レベル15 25,000 gp
レベル25 625,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は9マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<宗教>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル15: +2 アイテム・ボーナス
レベル25: +3 アイテム・ボーナス
マジカル・ラボラトリー
Magical Laboratory/魔法の学究室 レベル5+ コモン
この研究室には、君が魔法学の研究をするのに必要な道具すべてが備わっている。
レベル5 1,000 gp
レベル15 25,000 gp
レベル25 625,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は4マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<魔法学>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル15: +2 アイテム・ボーナス
レベル25: +3 アイテム・ボーナス
ライブラリー
Library/図書室 レベル8+ コモン
君の研究に使う本と巻物が、棚と机にギッシリ。
レベル8 3,400 gp
レベル18 85,000 gp
レベル28 2,125,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
以下の技能から1つ選択する:<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>。君はこの部屋で行う選択した知識判定およびモンスター知識判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル18:+2アイテム・ボーナス
レベル28:+3アイテム・ボーナス
特殊:君は同じ部屋の中に複数回この設備を購入できる。購入のたびに異なる技能を選択すること。
プリズン
Prison/牢屋 レベル4+ コモン4
手かせや重い鉄のかんぬきで、虜囚をここに留め置く。
レベル4 840 gp
レベル 14 21,000 gp
レベル 24 525,000 gp
拠点設備
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
利益:この部屋に入れられたクリーチャーは、魔法的手段を除き、解放されるか難易度21の<運動>または<軽業>判定に成功しない限り脱出することができない。
レベル14:難易度29
レベル24:難易度37
スローン・ルーム
Throne Room/玉座の間 レベル6 コモン
豪華な椅子が一脚、そして探索行の戦利品がこの部屋にある。
拠点設備 1,800 gp
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<はったり>、<交渉>、<看破>、<威圧>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
トーチャー・チャンバー
Torture Chamber/拷問室 レベル3+ コモン
縁起でもない設備と道具が、身の毛もよだつようなこの部屋の目的を物語る。
レベル3 680 gp
レベル13 17,000 gp
レベル 23 425,000 gp
拠点設備 1,800 gp
必要条件:この部屋は16マス以上の広さがなくてはならない。
利益:君はこの部屋で行う<威圧>判定に+1のアイテム・ボーナスを得る。
レベル13: +2 アイテム・ボーナス
レベル23: +3 アイテム・ボーナス
防衛施設
建設の際に追加で支払うことで、以下の防衛施設を加えることができる。
アロー・スリッツ
Arrow Slits/矢ぶすま レベル4 コモン
狭い窓の向こうから、射手は護られつつ射ることができる。
拠点設備 840 gp
利益:建物の窓は矢ぶすまとなる。矢ぶすまの内側で戦闘するクリーチャーは、外側からの敵に対して、少なくとも“良好な遮蔽”を得る。
ディフェンシヴ・ウォールズ
Defensive Walls/防護壁 レベル10 コモン
自分の拠点を厚い外壁で囲む。
拠点設備5,000 gp
利益:防護壁は高さ10フィート、幅10フィートの石造り。この壁を登攀するためには、<運動>判定(クリーチャーのレベルに応じた“標準”の難易度)に成功しなくてはならない。壁には好きなだけ門をつけることができる。防護壁の上にいるクリーチャーは、下にいるクリーチャーからの攻撃に対して少なくとも“軽度の遮蔽”を得る。
特殊:君はこの拠点設備を複数回購入できる。購入するたび、新たな壁を造るか既存の壁を強化するか選ぶことができる。既存の壁を強化する場合、壁の高さと厚さが5フィート増す。
ガーズ
Guards/守備隊 レベル1+ コモン
自分の留守中、拠点の安全を護る兵士と歩哨の一団を雇う。
拠点設備 特殊
利益:君は拠点を護るための守備隊を雇用する。購入時に守備隊のレベルを選択すること。価格は同レベルのマジック・アイテムに等しい。守備隊は自身と同レベル以下の攻撃に対する完全耐性を持つ。
アイロン・ドアズ
Iron Doors/鉄製ドア レベル3 コモン
内部のドアを鉄製にして、さらなる防護を施す。
拠点設備 680 gp
利益:拠点のドアは鉄製になる。
モート
Moat/濠 レベル8
幅広の水掘と柵は、寄せ手を阻むのに大いに役立つ。
拠点設備 3,400 gp
利益:拠点は濠で囲まれる。深さは15フィート、幅は30フィート。跳ね橋も含む。
スーペリア・ロックス
Superior Locks/高品質の錠 レベル3 コモン
よくできた錠は、君の護る部屋に賊が押し入るのを退けてくれる。
拠点設備 680 gp
利益:拠点のドアに高品質の錠がつく。鍵なしで開錠を試みる場合、<盗賊>判定(クリーチャーのレベルに応じた“困難”の難易度)に成功しなくてはならない。
拠点を保護する
儀式修得者は自らに合わせて拠点を調整できる。拠点の中で儀式を執行する場合、保護する範囲は通常よりも広くなる。ガーズ・アンド・ウォーズ(秘術の書)、フォービダンス、アーケイン・ロック(ともにPHB)などの儀式を自分や仲間の所有する拠点に使う場合、儀式の効果は拠点全体に及ぶ。
スタッフ
拠点を維持する作業は骨が折れる。自分の手で修繕しようとするなら、他のことをしている暇などあまりない。拠点を手に入れたなら、それを良好に管理できるのに足る数のスタッフも揃えたということになる。召使、料理人、執事、職人、農夫などが維持するのに必要な分のスタッフとして含まれる。“維持するのに必要な分”というのがミソで、本当に必要なのを越える分は、自動的には得られない。スタッフは拠点を良く改修し、清潔に保ち、抜かりなく備えている。拠点の初期投資には、雇用者の衣食住にかかる費用も含まれている。スタッフはみな非戦闘員で、君の冒険には同行しない。
罠
罠は招かれざる客を防ぐ、すぐれた護りとなりうる。既存の罠を使ってもいいし、DMと相談して、自分の考えに最も合うものを造ってもいい。罠の価格は同レベルのマジック・アイテムと一緒だ。“精鋭”の罠であれば価格は2倍。“単独”の罠であれば5倍になる。
魔法のアイテムによる強化
冒険者の宝物庫Ⅱで掲載されている“その他の魔法のアイテム(設置型)”は拠点の防御と価値を向上させるのにうってつけだ。これらのアイテムは廉価で実に使える。ウォッチフル・アイが視界に入った何者かを警告するかたわら、テレポーテーション・ディスクで拠点の好きな場所に瞬間移動できる。自分の寺院にホーリー・シュラインを入れて[信仰]パワーに柔軟性を持たせたり、ディプロマッツ・テーブルで、すべての交渉系の判定にボーナスを得ようとしたりできる。
機動する拠点
あらゆる拠点にとって、持ち主の長期不在こそが最も過酷な試練となるだろう。テレポーテーション・サークルを永続させれば行き来が自由になるが、構成要素費用もかかるし戻るときのことも考えなくてはならない。以下の儀式を使えば、拠点のほうが君についてくる。
コール・ストロングホールド
Call Stronghold/拠点召喚
レベル:20
構成要素費用:5,000 gp
系統:創造
市価:25,000 gp
執行時間:1時間
対応技能:<魔法学>(判定なし)
持続時間:永遠
君はこのために用意した拠点を、ある場所から別の場所へと移動させるべく、現実を捻じ曲げる。移動先は拠点の大きさ以上に広くなければならず、そうでなければ儀式は失敗し、構成要素は無駄に消費される。この儀式は次元の境界に縛られない。つまり、君はこの儀式を使って、拠点を物質界からフェイワイルド、または他の次元界に移動させることもできる。
フライング・フォートレス
Flying Fortress/飛行要塞
レベル:23
構成要素:13,000 gp
系統:移動
市価:65,000 gp
執行時間:1時間
対応技能:魔法学(判定なし)
持続時間:永遠
君の拠点と相当量の地面は、100フィートの高さまで持ち上がり空に浮かぶ。拠点は飛行速度6(ホバリング)を得る。君が拠点の中にいる場合、移動アクションを消費することで、指定した方向にその移動速度まで飛行させることができる。飛行する拠点が何かにぶつかった場合、そこで移動を停止する。
レイズ・ランド対フライング・フォートレス
フライング・フォートレスはフォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイドのレイズ・ランドに似ている。確かに目指すところは似ている。が、レイズ・ランドは2マイル四方の土の塊を持ち上げ、お祭りの巨大風船よろしく浮かべたい人には垂涎ものではあるものの、30レベルともなれば、拠点など砂漠の船よろしく地べたに置き去りにされることだろう。フライング・フォートレスは、レベルが上昇して逃げ道ができてしまう前に、高い投資を楽しむために調整し、やりやすくしたバージョンだ。
最後に考えるべきこと
拠点は、捨てるくらいに金の余ったキャラクターには面白い選択肢だが、すべてのプレイヤーに魅力なオプションではない。拠点を造るのは、こういう簡素化したルールをもってしても、時間がかかるし計画も必要だ。そのうえ責任もついてくる。大きな城を持つということは、君がふさわしい君主であるかどうかにかかわらず、その地域が君の庇護にあるとみなされるということでもある。レベルが上がれば、君の目には物質界など色褪せ、遠く離れた地や他の次元にいる新たな敵を求めていることだろう。
それを踏まえたうえで、拠点を造ることはなお、労力に見合うだけの価値があると言えるのだろうか?
絶対にイエスだ!拠点は世界のわずかな部分のコントロールを君に与える。何をなし、どう形作るかを委ねる。この大きな耐久建築物は、拠点そのものや周りに住む人々を護るという新たな挑戦を通して、これまでにない冒険やロールプレイの機会をもたらす。君のキャラクターは闇の蛮族を退け、文明の灯火をわかりやすく、かつ永く続くやり方で広めることができる。これによって、キャンペーンの設定は他に類を見ないほど地に足の着いたものとなり、冒険者にとっても、拠点は悪との戦いで一息入れるだけの場所から、永遠にそこにある隠れ家に昇華する。
最後に、キャラクターが拠点に収まりきらないほどに成長し、そこから巣立つ時が来る。主の背中を見て育って経験を積み、自分たちの偉業を継いでくれるノンプレイヤー・キャラクターに後を託すのもいいだろう。
筆者について
ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズ、ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ、A Song of Ice and Fire RPG、 Star Wars RPG、d20システムにおいて200近いタイトルのTRPGのデザインや開発にかかわって表彰されたゲーム・デザイナーだ。ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社での最近の作品はD&D® Gamma World: Famine in Far-Go、Dark Sun Campaign Setting、モンスター・マニュアル3があり、またドラゴン・ダンジョンマガジンの両方で、レギュラーのライターをしている。著者に関してさらに知りたい場合は、彼のウェブサイト( www.robertjschwalb.com.)を参照してほしい。
チャネル・ディヴィニティ:ヴェクナ
2011年2月7日 ゲームチャネル・ディヴィニティ:ヴェクナ
ロバート・J・シュワルブ
原文:http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drcd/201101vecna
それでも、我々は忘れてはいない。見せかけの慈善は終わった。ヴェクナの遺産は、真の反乱を欲したもう。あの神々は、我らの抱くあらゆる信条を根絶やしにした。我らが主を追い落とし、その名を穢した。あの者どもが自らの悪を見出す唯一の方法は、我らの忌まわしき行いに関わらせることだろう。そして連中は、自らのなした悪が我々のためになったことを悟るのだ。-モーゼレンの書
多元宇宙の探求者は、“不具なるもの”に目を向ける真似など滅多にしない。「ヴェクナ」というその名はそれだけで聞くものに恐怖を呼び起こす。闇の神に関する伝承は、おそらく究極であろう死霊術と苦痛、裏切りと悪で満ちている。その身が定命であったころ、ヴェクナは当時の誰もが忌み嫌うことをなさんと欲した。彼こそが自らの肉体を捧げて、リッチとしての不死を得た最初の人物であったのだ。彼は魔力をふるってアンデッドの軍勢を作り、自らの帝国を打ち立てた。その後片割れに裏切られて片手と片目を失い、シャドウフェルに追われてその戦いを続けた。やがてその力は頂点に上り詰め、秘密、アンデッド、そして死霊術の神となるだけの神気を得るに至る。
“囁くもの”の導きと啓示を受け、穢されずにすむ術などどこにあろう?ヴェクナの闇の抱擁を受けた定命の存在が、どうして理性的でいられよう?英雄たる冒険者たちが、裏切りの神と和するなどどうしてできよう?疑うべくもなし、ヴェクナは悪であり、この神への奉仕は裏切りから始まる。帰するところ、ヴェクナとは不死の神。その悪とは悪夢の杖であり、世界を死霊の術で覆い尽くさんと努め、絶え間なく自らの穢れへと誘う。
そしてさらに、ヴェクナとは闇、秘密の神、囁く者の主、禁じられた知識の護り手である。邪悪の栄える世界においては、ほとんど皆が隠されたままにしておきたいことがある。真実の中には、見つかってはいけないものもあるのだ。普通では考えられないことだが、白日にさらされてはならない秘密を守るために、ヴェクナの信徒が英雄たちと協力し合うこともありうる。
真実?
ヴェクナの信徒にとって、真実は決して重要なものではない。移ろいやすい、考え方によって形を変えるものと彼らは見なす。事実を変えることが自らの神のためになるなら、彼らは変える。ヴェクナの信徒絡みで厄介なのは、何をするにも秘密が最優先事項になることだろう。彼らは憎き他の神の信徒とやりあう危険を冒すことより、陰から己の計画を進めることをよしとする。さらに厄介なことに、ヴェクナ信徒には協働する義務などない。多くの聖職者は単独で動き、同じ考え方を持つ忠実な信奉者からなる小規模なカルトを作る。この2つにより、己の神についての存在と、この世界で“囁くもの”に仕えることの意味について、各セクトは独特の説を持つに至る。
いずれのヴェクナ崇拝者にとっても共通する真実はある。定命の身であった頃より、ヴェクナは強大な魔力の持ち主であった。同胞たるカースの助けもあり、ヴェクナは魔法の専修によって束の間さらなる力を操った。やがて彼はリッチ・トランスフォーメーションの儀式を創り出してリッチとなり、最後には「不浄なる暗黒の書」を著した。それからほどなくしてカースはヴェクナを裏切り、滅ぼしかけるところまで追いつめる。ヴェクナは斬られ散らされた。だが魂はその強大な邪悪さゆえに消え失せることなく、新たな身を形作った。片手と片目を失った身を。死が儀式を全きものとし、欲した神位に押し上げた。
力を得るまでのヴェクナの人となり、裏切りの経緯、いかにヴェクナが神になったか、という一連の出来事はすべて論争の種であり、ヴェクナがその地位に就いた時以来争われる、多様な解釈をもつ事実でもある。先のモーゼレンの書で触れたように、ヴェクナはその才と力にゆえに他の神に恐れ嫌われ、迫害されたと信じる者もいる。またあるものは、ヴェクナは“かつてありし神”の定命の子孫であり、この世界の希望として信仰されていると主張する。ほかには、ヴェクナを産んだ見下げ果てた魔女が、正義の狂信者の手で焼かれるまでの間、どのような闇の生き方を彼に示したのかもいくつか物語がある。カースという存在は、ヴェクナをネルルの干渉から解き放った救いであると見る向きもあれば、力欲しさに主の手を噛んだ飼い犬程度に扱う者もいる。
真実に近づくにはあまりにも多くの説があるが、これこそが不具なるものの望むところである。彼の勃興の道程を秘することこそが、自らに取って代わる芽を摘んでおくことになるのだから。定命の存在もまた、ヴェクナにまつわる伝承を実際に起こりえた範囲より、はるかに手の込んだものに作り上げる。作り話が突拍子もないものであればあるほど、より畏れられ偉大なヴェクナになるというものだ。しかして、ヴェクナを理解し、世界にどんな興味を持っているかということを理解するのに、その過去など無用でしかないことがわかる。神話や伝説が神位を得るまでの十分な説明になるし、その飾った物語から、自らの生まれより高みを欲した彼の独特の人となりをうかがうことができる。
禁じられた伝承の護り手
確かにヴェクナは巨悪だが、だからといってこの神につながるものことごとくが悪とは限らない。ヴェクナはアンデッドの神ではあると同時に、信奉者にあらゆる犠牲を払っても危険で禁じられた知識を護り抜くよう命ずる、秘密を司る神でもある。ヴェクナの信徒の大部分はこの命令を禁じられた知識の深みに臨むための免状と思っているが、その行間からは、最重要な部分を秘密にしておきたいヴェクナの意図を読める。
ヴェクナは世界を征服し、生きとし生けるものをアンデッドの僕にするつもりなのは間違いないものの、“彼方の領域”に狂気をまき散らす気はないし、アビスから地獄の軍勢を率い、創造のための破壊を起こす気もない。ネルルに力を取り戻してほしくはないし、“鎖につながれし神”を牢獄から解き放つことも望まない。最終的な目的は世界に存在するあらゆる脅威を排除することであり、それにつながる思想・呪文・儀式を秘密のままにしておくことに最も執着している。
それゆえヴェクナは、世界を危うくしかねないとみるや、ただちに自らの信徒を急き立ててその存在を消させようとする。信徒たちはそうした知識を集め、アイウーンの手が決して届かないような、深くて暗い保管庫の奥の奥にしまう。“禁じられた伝承の護り手”は古くからの、ヴェクナにつながる小さなセクトと伝えられている。ヴェクナがリッチとして世界を闊歩していた頃を知る者によれば、そのセクトは、危険な伝承を集め、ヴェクナに捧げる(そしておそらくヴェクナはそれを研究し、“不浄なる暗黒の書”にまとめたと思われる)任務における執行組であるそうだ。護り手はヴェクナが手と目を失い、人としての生を終えた時代を生き延びたセクトである。
ほかの主要流派と違い、多くのヴェクナ信者は護り手の存在すら知らない。やりかたはヴェクナ信徒の典型で、自分たちのやり方で秘密の価値を測り、望ましくない思想や考えを葬るべく、闇から闇へと危険な知識を集める。他と一線を画すのは、護り手は善悪の争い、いずれの側にもつかないことを決めている点である。世界を危険思想から守ることが、己に課せられた神聖なる勤めであると信じて疑わない。ヴェクナ降臨の暁には、自分たちの成果をかの神が望むままに差し出すことを夢見ている。その時が来るまで、護り手は己が手で集めた知識を漏らさぬよう努め、死も厭わない。
この世界の中で、護り手の味方などまず存在しない。護り手はヴェクナ信者が神聖視する儀式や式典を拒絶するため、同じ信徒の中ですら異端扱いされ、信用されていない。また、護り手はアイウーンとその信徒たちを、自分たちがどれほど危険な火遊びをしているかわかっていない連中とみなして争っている。アイウーンの信徒の大部分は、どれほど危険であろうと、知りうることはすべて研究に用いられるべきと信じている。知識はそれ自体が危険なのではなく、その使い方にあると。それゆえ定命の者は、自らの研究する知識で道を外さぬことが、責務としてその双肩にかかる。お分かりのことと思うが、護り手は知識の有用性や知識そのものの存在について価値を見出すことは皆無であり、ただ世界に無用な力や破壊としか考えない。それゆえに、護り手は可能ならアイウーンの寺院に潜入し、怪しい物証の奪取や、その研究を完成させてしまうと脅威となる人物の暗殺を試みる。
不浄なる暗黒の書
世界中で、最強にして最古の悪が込められたものこそ、不浄なる暗黒の書である。ヴェクナがこれを著したのは、カースに裏切られて不具の身になり、危うく滅ぼされるより前であると信じられている。その中には、デヴィルの扱い方からデーモンとの取引のやり方といった、ヴェクナが定命の者であった頃に得た闇の知識や伝承が綴られている。ヴェクナは死霊術を飛躍的に発展させ、星々からの怪しいパワーを見つけ、極めつけは定命の世界から外に足を踏み出す儀式まで記した。ヴェクナはこの本が決して自身の蔵書から流出させるつもりはなかったが、裏切りの際に止めることはできなかった。
以降、この書はアーティファクトとなり、いつでもどこでも混乱と絶望をもたらすべく、歴史の要所にその姿を見せる。ヴェクナ信者の大部分は、封印するためにしろ、読んで真の力に覚醒するためにしろ、生涯をかけたこの書の争奪戦に加わる。
ヴェクナに仕える
ヴェクナに仕えるということは、日陰者として人生を歩むことに等しい。行動のすべて、努力のすべてが、他には決して理解されない、あるいは仮の主人の意に反するような存在に捧げられていることを隠すための嘘である。自らの秘密は頑なに守り、親しきものと諍いになろうとも知識を発見の目から護る。ヴェクナの教義が自身の良心に訴えかけるところがほとんどないため、闇に身を置くことを恐れない。
また無属性の信奉者にとって、ヴェクナへの信仰は実用的な観点からになるだろう。ヴェクナを奉仕の見返りに力を与えてくれる庇護者とみるには縁遠い。神の定めたことに従って行動するだろうが、黒い陰謀には進んで加担したりはしない。闇の影響力を和らげる結果のことを行おうとも、積極的に釈明を行う必要はないのだ。例えば他の神々から同類と見られているレイヴン・クイーン、ゼヒーア、アスモデウスなどと敵対することすらありうる。とはいえ、積極的に仲間を悪に染めるのが主義ではなかったとしても、仲間が悪事に手を染めるのを止めることはなく、その悪事を後々自分のために利用することを厭わない。
ヴェクナの僕を作る
ヴェクナの僕を作るなら、以下の考え方を頭に入れておくのがよいだろう。
クラス
ヴェクナに仕えるすべてのキャラクターが信仰クラスとは限らない。ヴェクナは影の力の源と強く結びついているため、信徒の大部分もそれに倣おうとする。アサシン、メイジ、ウォーロックはその典型だ。信仰クラスでは、ヴェクナは属性絡みでいくぶん込み入った話になる。信仰クラスの大半はその神と属性を同じにすることを求められるため、インヴォーカーや(キャバリアではない)パラディンをプレイしたいなら、属性は悪に決まる。アヴェンジャーやクレリックは若干融通が利き、無属性か悪かが選べる。2つのクラスは例外で、ウォープリースト(堕ちた地の勇者)とルーンプリーストは仕える神に関係なく属性を選べる。とはいえ、明らかに悪の神に仕えるのだからそれなりの理由が必要になるだろう。
種族
どんな種族も不具の神に忠誠を誓う理由はありえる。ヴェクナはリッチとなる前はヒューマンであり、伝統・価値観・文化といったものの見方がヒューマン由来のものであるため、ヒューマンは一番数が多い。レヴナントもアンデッドという身に唯一理解のあるヴェクナに身を捧げるかもしれない。デーヴァやほとんどのフェイ起源の種族は、この影の神にはほとんど興味を持たない。
技能と技能パワー
秘密の神の信徒なのだから、それに類する物事に習熟したり、汎用パワーを関係のある技能パワーに置き換えたりするのがたしなみだろう。まずはヴェクナが最も関心を持つ魔法学、歴史に宗教が優先だ。
特技
この記事で解説している特技に加え、ヴェクナの信奉者は信仰関係、知識伝承、そして影の勇者に記載されているような、影と関わりのある特技を好む。特に、<死の使徒>、<学識の使徒>、そして<影の使徒> (堕ちた地の勇者) はヴェクナが自らのお気に入りに力を授けたような表現ができる。
クラス特徴とパワー
キャラクターのパワーを選ぶにあたっては、他のクリーチャーから隠れたり欺いたりする[幻]キーワードのようなパワーに専念しよう。アンデッドを創る、あるいは影から力を得られるかのような[死霊]ダメージを与えるパワーも重要だ。DMの許可が得られれば、[光輝]キーワードのパワーを[死霊]や[精神]に置き換え、それらしくするのもいいだろう。
属性と詰めとなる細部
繰り返しになるが、ヴェクナを奉ずる定命の大部分は悪属性であるため、冒険者向きではない。ごく稀にいる無属性の信奉者にしても、あえて自身の信心を明かして神敵から迫害を受けようとはしない。どのようにして囁かれしものに惹かれるに至ったか?ヴェクナを信仰するプレイヤー・キャラクターを作るなら、“禁じられた知識の護り手”が世界への正義と神への忠誠の折り合いをつけるのに格好の存在になるだろう。英雄的行為をしつつ、このセクトは構成員に対する制約が少なく、ヴェクナの悪に染まりにくい。高潔な騎士のキャラクターと手段や方法についてやりあうことになるかもしれないが、世界の破滅に対しては協力できるだろう。
このセクトに関係を持たないことを選ぶなら、どういう物語になるだろう?自分の神の影の側面と、この世界で課せられた責務に対してどう向き合うのか?ヴェクナとは終末なのだろうか?ヴェクナを模して神への道を望むのか?レイヴン・クイーンやゼヒーアのような、他の神憎しからヴェクナに仕えているのか?自らの信心はひた隠しにするのか、はたまた身の危険を顧みずパンテオンでも最悪の扱いである神に献身するのか?神敵に相対したとき、どう振る舞うのか?いくら無属性であるとはいっても、仕える神が勧めているのは悪行なのだ。パーティーが同じ穴のムジナであったとしても、悪の冒険者は滅多に成功を掴めない。裏切りやパーティー内の陰謀が互いの足を引っ張り、ほとんどすべてのケースが血みどろの共食いに終わる。例によって、悪のキャラクターを作る前に、ダンジョン・マスターやほかのプレイヤーとよく話し合って、パーティー全体の方向性に反しないよう調整しておくこと。
新しい英雄級特技
“その名を囁かれしもの”は、アンデッドや秘密の分野の覇権を我が物にと試みる。その信奉者や意志の代行者に、主人は働きに応じた褒美で報いる。ヴェクナの僕のような信仰キャラクターにぴったりくる特技を以下に記す。
Command Undead Vecna Feats
Corrupting Presence
Hasten the Rot
Master of Secrets
Touched by Darkness
Vecna’s Final Command
Command Undead
ヴェクナはすべてのアンデッドの支配を狙っており、その闇の支配力を自らに仕える者にも使わせる。
前提条件:アンデッドを目標にする“チャネル・ディヴィニティ”のクラス特徴、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君はコマンド・アンデッドのパワーを得る。
Command Undead 特技パワー
君はアンデッド・クリーチャーを数瞬だけ言いなりにする。
[遭遇毎]◆[信仰]・[装具]・[影]
標準アクション 近接爆発5 (レベル21で10)
目標:爆発内のアンデッド・クリーチャー1体
攻撃:[判断力]対意志
ヒット:君は目標を3+[選択能力値]マスまで横滑りさせる。目標は君の次のターン終了時まで動けない状態になる。目標に隣接して自分のターンを終了したクリーチャーはすべて5ダメージを受ける。
レベル11:10ダメージを受ける。
レベル21:20ダメージを受ける。
ミス:目標は君の次のターン終了時まで幻惑状態になる。
Corrupting Presence
君が闇から力を得て攻撃するとき、ヴェクナは君に影のような外套を纏わせるのを好む。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:[死霊]のキーワードを持つ、遭遇毎および一日毎の[信仰]パワーを使用するとき、君は近接爆発1の区域を作ることができる。この区域は君の次のターン終了時まで持続する。区域内の“明るい”光は“薄明るい”光になる。この区域内にいる味方が[死霊]キーワードを持つ攻撃パワーを使用する際、攻撃ロールに+1のパワー・ボーナスを得る。
Hasten the Rot
アンデッド・クリーチャーは君からヴェクナの匂いを感じ取る。君に打たれるたび、連中は君の背後にいる闇の主人の存在に身をすくませる。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君の[死霊]キーワードを持つ遭遇毎および一日毎のパワーがヒットしたアンデッドの敵は、通常の効果に加え、君の次のターン終了時まで減速状態になる。
Master of Secrets
君の知識の秘密が、使命を達成するのに必要なパワーを授ける。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君はあたかも<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>に習熟しているかのように技能パワーを習得することができる。
Touched by Darkness
禁じられた研究が君の魂を黒く染める。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君が[死霊]キーワードを持つ[信仰]パワーを使用するとき、君の攻撃は目標の持つ[死霊]に対する抵抗を5ポイントまで無視する。
Vecna’s Final Command [信仰]
命令すれば死霊術の力が君のもの。君は己の神格の力を呼び降ろし、死にゆくクリーチャーを操って最期の奉公をさせる。
前提条件:“チャネル・ディヴィニティ”のクラス特徴、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君はヴェクナズ・ファイナル・コマンドのパワーを得る。
チャネル・ディヴィニティ:ヴェクナズ・ファイナル・コマンド 特技汎用パワー
君は死を一時食い止め、最後の一撃を打たせるだけの時間を稼ぐ。
[遭遇毎]◆[チャネル・ディヴィニティ]・[信仰]
即応・割込 近接爆発5
トリガー:爆発の範囲内のクリーチャーのヒット・ポイントが0以下になる
目標:トリガーを誘発したクリーチャー
効果:目標は君が選択したクリーチャー1体に対して1回の基礎攻撃を行う。
筆者について
ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズ、ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ、A Song of Ice and Fire RPG、 Star Wars RPG、d20システムにおいて200近いタイトルのTRPGのデザインや開発にかかわって表彰されたゲーム・デザイナーだ。ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社での最近の作品はD&D® Gamma World:Famine in Far-Go、Dark Sun Campaign Setting、モンスター・マニュアル3があり、またドラゴン・ダンジョンマガジンの両方で、レギュラーのライターをしている。著者に関してさらに知りたい場合は、彼のウェブサイト(www.robertjschwalb.com.)を参照してほしい。
ロバート・J・シュワルブ
原文:http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drcd/201101vecna
それでも、我々は忘れてはいない。見せかけの慈善は終わった。ヴェクナの遺産は、真の反乱を欲したもう。あの神々は、我らの抱くあらゆる信条を根絶やしにした。我らが主を追い落とし、その名を穢した。あの者どもが自らの悪を見出す唯一の方法は、我らの忌まわしき行いに関わらせることだろう。そして連中は、自らのなした悪が我々のためになったことを悟るのだ。-モーゼレンの書
多元宇宙の探求者は、“不具なるもの”に目を向ける真似など滅多にしない。「ヴェクナ」というその名はそれだけで聞くものに恐怖を呼び起こす。闇の神に関する伝承は、おそらく究極であろう死霊術と苦痛、裏切りと悪で満ちている。その身が定命であったころ、ヴェクナは当時の誰もが忌み嫌うことをなさんと欲した。彼こそが自らの肉体を捧げて、リッチとしての不死を得た最初の人物であったのだ。彼は魔力をふるってアンデッドの軍勢を作り、自らの帝国を打ち立てた。その後片割れに裏切られて片手と片目を失い、シャドウフェルに追われてその戦いを続けた。やがてその力は頂点に上り詰め、秘密、アンデッド、そして死霊術の神となるだけの神気を得るに至る。
“囁くもの”の導きと啓示を受け、穢されずにすむ術などどこにあろう?ヴェクナの闇の抱擁を受けた定命の存在が、どうして理性的でいられよう?英雄たる冒険者たちが、裏切りの神と和するなどどうしてできよう?疑うべくもなし、ヴェクナは悪であり、この神への奉仕は裏切りから始まる。帰するところ、ヴェクナとは不死の神。その悪とは悪夢の杖であり、世界を死霊の術で覆い尽くさんと努め、絶え間なく自らの穢れへと誘う。
そしてさらに、ヴェクナとは闇、秘密の神、囁く者の主、禁じられた知識の護り手である。邪悪の栄える世界においては、ほとんど皆が隠されたままにしておきたいことがある。真実の中には、見つかってはいけないものもあるのだ。普通では考えられないことだが、白日にさらされてはならない秘密を守るために、ヴェクナの信徒が英雄たちと協力し合うこともありうる。
真実?
ヴェクナの信徒にとって、真実は決して重要なものではない。移ろいやすい、考え方によって形を変えるものと彼らは見なす。事実を変えることが自らの神のためになるなら、彼らは変える。ヴェクナの信徒絡みで厄介なのは、何をするにも秘密が最優先事項になることだろう。彼らは憎き他の神の信徒とやりあう危険を冒すことより、陰から己の計画を進めることをよしとする。さらに厄介なことに、ヴェクナ信徒には協働する義務などない。多くの聖職者は単独で動き、同じ考え方を持つ忠実な信奉者からなる小規模なカルトを作る。この2つにより、己の神についての存在と、この世界で“囁くもの”に仕えることの意味について、各セクトは独特の説を持つに至る。
いずれのヴェクナ崇拝者にとっても共通する真実はある。定命の身であった頃より、ヴェクナは強大な魔力の持ち主であった。同胞たるカースの助けもあり、ヴェクナは魔法の専修によって束の間さらなる力を操った。やがて彼はリッチ・トランスフォーメーションの儀式を創り出してリッチとなり、最後には「不浄なる暗黒の書」を著した。それからほどなくしてカースはヴェクナを裏切り、滅ぼしかけるところまで追いつめる。ヴェクナは斬られ散らされた。だが魂はその強大な邪悪さゆえに消え失せることなく、新たな身を形作った。片手と片目を失った身を。死が儀式を全きものとし、欲した神位に押し上げた。
力を得るまでのヴェクナの人となり、裏切りの経緯、いかにヴェクナが神になったか、という一連の出来事はすべて論争の種であり、ヴェクナがその地位に就いた時以来争われる、多様な解釈をもつ事実でもある。先のモーゼレンの書で触れたように、ヴェクナはその才と力にゆえに他の神に恐れ嫌われ、迫害されたと信じる者もいる。またあるものは、ヴェクナは“かつてありし神”の定命の子孫であり、この世界の希望として信仰されていると主張する。ほかには、ヴェクナを産んだ見下げ果てた魔女が、正義の狂信者の手で焼かれるまでの間、どのような闇の生き方を彼に示したのかもいくつか物語がある。カースという存在は、ヴェクナをネルルの干渉から解き放った救いであると見る向きもあれば、力欲しさに主の手を噛んだ飼い犬程度に扱う者もいる。
真実に近づくにはあまりにも多くの説があるが、これこそが不具なるものの望むところである。彼の勃興の道程を秘することこそが、自らに取って代わる芽を摘んでおくことになるのだから。定命の存在もまた、ヴェクナにまつわる伝承を実際に起こりえた範囲より、はるかに手の込んだものに作り上げる。作り話が突拍子もないものであればあるほど、より畏れられ偉大なヴェクナになるというものだ。しかして、ヴェクナを理解し、世界にどんな興味を持っているかということを理解するのに、その過去など無用でしかないことがわかる。神話や伝説が神位を得るまでの十分な説明になるし、その飾った物語から、自らの生まれより高みを欲した彼の独特の人となりをうかがうことができる。
禁じられた伝承の護り手
確かにヴェクナは巨悪だが、だからといってこの神につながるものことごとくが悪とは限らない。ヴェクナはアンデッドの神ではあると同時に、信奉者にあらゆる犠牲を払っても危険で禁じられた知識を護り抜くよう命ずる、秘密を司る神でもある。ヴェクナの信徒の大部分はこの命令を禁じられた知識の深みに臨むための免状と思っているが、その行間からは、最重要な部分を秘密にしておきたいヴェクナの意図を読める。
ヴェクナは世界を征服し、生きとし生けるものをアンデッドの僕にするつもりなのは間違いないものの、“彼方の領域”に狂気をまき散らす気はないし、アビスから地獄の軍勢を率い、創造のための破壊を起こす気もない。ネルルに力を取り戻してほしくはないし、“鎖につながれし神”を牢獄から解き放つことも望まない。最終的な目的は世界に存在するあらゆる脅威を排除することであり、それにつながる思想・呪文・儀式を秘密のままにしておくことに最も執着している。
それゆえヴェクナは、世界を危うくしかねないとみるや、ただちに自らの信徒を急き立ててその存在を消させようとする。信徒たちはそうした知識を集め、アイウーンの手が決して届かないような、深くて暗い保管庫の奥の奥にしまう。“禁じられた伝承の護り手”は古くからの、ヴェクナにつながる小さなセクトと伝えられている。ヴェクナがリッチとして世界を闊歩していた頃を知る者によれば、そのセクトは、危険な伝承を集め、ヴェクナに捧げる(そしておそらくヴェクナはそれを研究し、“不浄なる暗黒の書”にまとめたと思われる)任務における執行組であるそうだ。護り手はヴェクナが手と目を失い、人としての生を終えた時代を生き延びたセクトである。
ほかの主要流派と違い、多くのヴェクナ信者は護り手の存在すら知らない。やりかたはヴェクナ信徒の典型で、自分たちのやり方で秘密の価値を測り、望ましくない思想や考えを葬るべく、闇から闇へと危険な知識を集める。他と一線を画すのは、護り手は善悪の争い、いずれの側にもつかないことを決めている点である。世界を危険思想から守ることが、己に課せられた神聖なる勤めであると信じて疑わない。ヴェクナ降臨の暁には、自分たちの成果をかの神が望むままに差し出すことを夢見ている。その時が来るまで、護り手は己が手で集めた知識を漏らさぬよう努め、死も厭わない。
この世界の中で、護り手の味方などまず存在しない。護り手はヴェクナ信者が神聖視する儀式や式典を拒絶するため、同じ信徒の中ですら異端扱いされ、信用されていない。また、護り手はアイウーンとその信徒たちを、自分たちがどれほど危険な火遊びをしているかわかっていない連中とみなして争っている。アイウーンの信徒の大部分は、どれほど危険であろうと、知りうることはすべて研究に用いられるべきと信じている。知識はそれ自体が危険なのではなく、その使い方にあると。それゆえ定命の者は、自らの研究する知識で道を外さぬことが、責務としてその双肩にかかる。お分かりのことと思うが、護り手は知識の有用性や知識そのものの存在について価値を見出すことは皆無であり、ただ世界に無用な力や破壊としか考えない。それゆえに、護り手は可能ならアイウーンの寺院に潜入し、怪しい物証の奪取や、その研究を完成させてしまうと脅威となる人物の暗殺を試みる。
不浄なる暗黒の書
世界中で、最強にして最古の悪が込められたものこそ、不浄なる暗黒の書である。ヴェクナがこれを著したのは、カースに裏切られて不具の身になり、危うく滅ぼされるより前であると信じられている。その中には、デヴィルの扱い方からデーモンとの取引のやり方といった、ヴェクナが定命の者であった頃に得た闇の知識や伝承が綴られている。ヴェクナは死霊術を飛躍的に発展させ、星々からの怪しいパワーを見つけ、極めつけは定命の世界から外に足を踏み出す儀式まで記した。ヴェクナはこの本が決して自身の蔵書から流出させるつもりはなかったが、裏切りの際に止めることはできなかった。
以降、この書はアーティファクトとなり、いつでもどこでも混乱と絶望をもたらすべく、歴史の要所にその姿を見せる。ヴェクナ信者の大部分は、封印するためにしろ、読んで真の力に覚醒するためにしろ、生涯をかけたこの書の争奪戦に加わる。
ヴェクナに仕える
ヴェクナに仕えるということは、日陰者として人生を歩むことに等しい。行動のすべて、努力のすべてが、他には決して理解されない、あるいは仮の主人の意に反するような存在に捧げられていることを隠すための嘘である。自らの秘密は頑なに守り、親しきものと諍いになろうとも知識を発見の目から護る。ヴェクナの教義が自身の良心に訴えかけるところがほとんどないため、闇に身を置くことを恐れない。
また無属性の信奉者にとって、ヴェクナへの信仰は実用的な観点からになるだろう。ヴェクナを奉仕の見返りに力を与えてくれる庇護者とみるには縁遠い。神の定めたことに従って行動するだろうが、黒い陰謀には進んで加担したりはしない。闇の影響力を和らげる結果のことを行おうとも、積極的に釈明を行う必要はないのだ。例えば他の神々から同類と見られているレイヴン・クイーン、ゼヒーア、アスモデウスなどと敵対することすらありうる。とはいえ、積極的に仲間を悪に染めるのが主義ではなかったとしても、仲間が悪事に手を染めるのを止めることはなく、その悪事を後々自分のために利用することを厭わない。
ヴェクナの僕を作る
ヴェクナの僕を作るなら、以下の考え方を頭に入れておくのがよいだろう。
クラス
ヴェクナに仕えるすべてのキャラクターが信仰クラスとは限らない。ヴェクナは影の力の源と強く結びついているため、信徒の大部分もそれに倣おうとする。アサシン、メイジ、ウォーロックはその典型だ。信仰クラスでは、ヴェクナは属性絡みでいくぶん込み入った話になる。信仰クラスの大半はその神と属性を同じにすることを求められるため、インヴォーカーや(キャバリアではない)パラディンをプレイしたいなら、属性は悪に決まる。アヴェンジャーやクレリックは若干融通が利き、無属性か悪かが選べる。2つのクラスは例外で、ウォープリースト(堕ちた地の勇者)とルーンプリーストは仕える神に関係なく属性を選べる。とはいえ、明らかに悪の神に仕えるのだからそれなりの理由が必要になるだろう。
種族
どんな種族も不具の神に忠誠を誓う理由はありえる。ヴェクナはリッチとなる前はヒューマンであり、伝統・価値観・文化といったものの見方がヒューマン由来のものであるため、ヒューマンは一番数が多い。レヴナントもアンデッドという身に唯一理解のあるヴェクナに身を捧げるかもしれない。デーヴァやほとんどのフェイ起源の種族は、この影の神にはほとんど興味を持たない。
技能と技能パワー
秘密の神の信徒なのだから、それに類する物事に習熟したり、汎用パワーを関係のある技能パワーに置き換えたりするのがたしなみだろう。まずはヴェクナが最も関心を持つ魔法学、歴史に宗教が優先だ。
特技
この記事で解説している特技に加え、ヴェクナの信奉者は信仰関係、知識伝承、そして影の勇者に記載されているような、影と関わりのある特技を好む。特に、<死の使徒>、<学識の使徒>、そして<影の使徒> (堕ちた地の勇者) はヴェクナが自らのお気に入りに力を授けたような表現ができる。
クラス特徴とパワー
キャラクターのパワーを選ぶにあたっては、他のクリーチャーから隠れたり欺いたりする[幻]キーワードのようなパワーに専念しよう。アンデッドを創る、あるいは影から力を得られるかのような[死霊]ダメージを与えるパワーも重要だ。DMの許可が得られれば、[光輝]キーワードのパワーを[死霊]や[精神]に置き換え、それらしくするのもいいだろう。
属性と詰めとなる細部
繰り返しになるが、ヴェクナを奉ずる定命の大部分は悪属性であるため、冒険者向きではない。ごく稀にいる無属性の信奉者にしても、あえて自身の信心を明かして神敵から迫害を受けようとはしない。どのようにして囁かれしものに惹かれるに至ったか?ヴェクナを信仰するプレイヤー・キャラクターを作るなら、“禁じられた知識の護り手”が世界への正義と神への忠誠の折り合いをつけるのに格好の存在になるだろう。英雄的行為をしつつ、このセクトは構成員に対する制約が少なく、ヴェクナの悪に染まりにくい。高潔な騎士のキャラクターと手段や方法についてやりあうことになるかもしれないが、世界の破滅に対しては協力できるだろう。
このセクトに関係を持たないことを選ぶなら、どういう物語になるだろう?自分の神の影の側面と、この世界で課せられた責務に対してどう向き合うのか?ヴェクナとは終末なのだろうか?ヴェクナを模して神への道を望むのか?レイヴン・クイーンやゼヒーアのような、他の神憎しからヴェクナに仕えているのか?自らの信心はひた隠しにするのか、はたまた身の危険を顧みずパンテオンでも最悪の扱いである神に献身するのか?神敵に相対したとき、どう振る舞うのか?いくら無属性であるとはいっても、仕える神が勧めているのは悪行なのだ。パーティーが同じ穴のムジナであったとしても、悪の冒険者は滅多に成功を掴めない。裏切りやパーティー内の陰謀が互いの足を引っ張り、ほとんどすべてのケースが血みどろの共食いに終わる。例によって、悪のキャラクターを作る前に、ダンジョン・マスターやほかのプレイヤーとよく話し合って、パーティー全体の方向性に反しないよう調整しておくこと。
新しい英雄級特技
“その名を囁かれしもの”は、アンデッドや秘密の分野の覇権を我が物にと試みる。その信奉者や意志の代行者に、主人は働きに応じた褒美で報いる。ヴェクナの僕のような信仰キャラクターにぴったりくる特技を以下に記す。
Command Undead Vecna Feats
Corrupting Presence
Hasten the Rot
Master of Secrets
Touched by Darkness
Vecna’s Final Command
Command Undead
ヴェクナはすべてのアンデッドの支配を狙っており、その闇の支配力を自らに仕える者にも使わせる。
前提条件:アンデッドを目標にする“チャネル・ディヴィニティ”のクラス特徴、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君はコマンド・アンデッドのパワーを得る。
Command Undead 特技パワー
君はアンデッド・クリーチャーを数瞬だけ言いなりにする。
[遭遇毎]◆[信仰]・[装具]・[影]
標準アクション 近接爆発5 (レベル21で10)
目標:爆発内のアンデッド・クリーチャー1体
攻撃:[判断力]対意志
ヒット:君は目標を3+[選択能力値]マスまで横滑りさせる。目標は君の次のターン終了時まで動けない状態になる。目標に隣接して自分のターンを終了したクリーチャーはすべて5ダメージを受ける。
レベル11:10ダメージを受ける。
レベル21:20ダメージを受ける。
ミス:目標は君の次のターン終了時まで幻惑状態になる。
Corrupting Presence
君が闇から力を得て攻撃するとき、ヴェクナは君に影のような外套を纏わせるのを好む。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:[死霊]のキーワードを持つ、遭遇毎および一日毎の[信仰]パワーを使用するとき、君は近接爆発1の区域を作ることができる。この区域は君の次のターン終了時まで持続する。区域内の“明るい”光は“薄明るい”光になる。この区域内にいる味方が[死霊]キーワードを持つ攻撃パワーを使用する際、攻撃ロールに+1のパワー・ボーナスを得る。
Hasten the Rot
アンデッド・クリーチャーは君からヴェクナの匂いを感じ取る。君に打たれるたび、連中は君の背後にいる闇の主人の存在に身をすくませる。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君の[死霊]キーワードを持つ遭遇毎および一日毎のパワーがヒットしたアンデッドの敵は、通常の効果に加え、君の次のターン終了時まで減速状態になる。
Master of Secrets
君の知識の秘密が、使命を達成するのに必要なパワーを授ける。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君はあたかも<魔法学>、<地下探検>、<歴史>、<自然>、<宗教>に習熟しているかのように技能パワーを習得することができる。
Touched by Darkness
禁じられた研究が君の魂を黒く染める。
前提条件:任意の信仰系クラス、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君が[死霊]キーワードを持つ[信仰]パワーを使用するとき、君の攻撃は目標の持つ[死霊]に対する抵抗を5ポイントまで無視する。
Vecna’s Final Command [信仰]
命令すれば死霊術の力が君のもの。君は己の神格の力を呼び降ろし、死にゆくクリーチャーを操って最期の奉公をさせる。
前提条件:“チャネル・ディヴィニティ”のクラス特徴、ヴェクナを信仰していなければならない
利益:君はヴェクナズ・ファイナル・コマンドのパワーを得る。
チャネル・ディヴィニティ:ヴェクナズ・ファイナル・コマンド 特技汎用パワー
君は死を一時食い止め、最後の一撃を打たせるだけの時間を稼ぐ。
[遭遇毎]◆[チャネル・ディヴィニティ]・[信仰]
即応・割込 近接爆発5
トリガー:爆発の範囲内のクリーチャーのヒット・ポイントが0以下になる
目標:トリガーを誘発したクリーチャー
効果:目標は君が選択したクリーチャー1体に対して1回の基礎攻撃を行う。
筆者について
ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズ、ウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ、A Song of Ice and Fire RPG、 Star Wars RPG、d20システムにおいて200近いタイトルのTRPGのデザインや開発にかかわって表彰されたゲーム・デザイナーだ。ウィザーズ・オヴ・ザ・コースト社での最近の作品はD&D® Gamma World:Famine in Far-Go、Dark Sun Campaign Setting、モンスター・マニュアル3があり、またドラゴン・ダンジョンマガジンの両方で、レギュラーのライターをしている。著者に関してさらに知りたい場合は、彼のウェブサイト(www.robertjschwalb.com.)を参照してほしい。
「イエス」という技術
2010年8月29日 ゲーム時系列的には「ノーと言っても構わない」の先に書かれた記事になります。
あわせて読んでいただければ幸い。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dusg/20080721
「イエス」という技術
RPGAのコンテンツ・マネージャーとしての日々から戻った自分を待っていたのは大量のEメール。たくさん届いているだろう、という予想自体も甘かった。一日あたり50通から100通。これには青い錠剤のセールスやナイジェリアからの投資詐欺はカウントしていない。ゲーマーからの意見、ゲーマーからの質問、ゲーマーからの相談であること、嘘偽り無い。この手のメールは2種類に分かれている。ダンジョンズ&ドラゴンズというゲームの中で、プレイヤーが何かしら「壊れた」ことをやりたがるというマスターの不平不満が1つ。そしてもう1つは、その逆にプレイヤーが「すごい」ことをやるために、どうマスターにお伺いを立てるか、あるいはそのやりたいことが「壊れていない」と納得させるための方法について。
ひょっとしたらご存知かもしれないが、同じプレイグループの、マスタースクリーンの両サイドからメールを受け取ることがよくある。両方とも助けを求めており、よく相手をだまして解決を図ろうとしている。
ダンジョンズ&ドラゴンズというゲームに競技性はないが、たまに勝敗めいたものを感じる。君がダンジョン・マスターであれば、キャラクターに対して、ときに大きな障害を設けて戦わせなくてはならない。君がプレイヤーなら、キャラクターに報酬と名誉を与えるべく、万難排して挑んでいくことになる。こうしたマスターとプレイヤーの関係が、セッションのよい緊張感や楽しさになる一方、簡単に崩壊させもする。ゲームは英雄的な経験を友人と分かち合うためにある。その他大勢にはできないようなことをやってのける英雄が求められ、マスターの仕事はそれを達成できるものの、素晴らしくかつ困難な障害を置くことだ。プレイヤーはその障害を達成できなかったり、あるいはこともなげにやってのけるようなら、ルールを読み漁って抜け道を探したり、どうやったら自分のキャラクターを強化できるか考え出すことだろう。マスターはマスターで「壊れた」ルールに愚痴愚痴こぼしつつ、どうやったらゲームが台無しにならずにすむか煩悶する。
よい対処法はごく普通なことだ。レベルが上がるとき、伝説の道の将来計画を立てるとき、カスの寺院にある伝説のマジックアイテムを発見したときなどなど、プレイヤーのテンションが上がる瞬間を感じたことがあると思う。そして、こっちがすっかり失念ないし過小評価していたプレイヤーが持っている「つまらないもの」のために、せっかく作った障害を潰してくれることもある。どんな優れたマスターにもそういう経験はあるはずだ。プレイヤーは自分のキャラクターが何もできないとイライラするし、マスターもセッションで毎回毎回用意したモンスターや罠が「機能不全」に陥るようならムラムラくる。そうなるともう何かがおかしい。こういうときに選択肢を絞る、「つまらないもの」を使用禁止にする、あれこれ目の敵にするなんてことがよく見られるが、だがやり方は他にもある。「イエス」というスキルを身に付けよう!
「イエス」を自分の経文にしよう!
新霊性運動の教祖みたいなことが言いたいわけじゃない。思うに、ゲームが問題に陥るとしたら、不思議さや驚きの感覚がまったく失われているときだろう。普通こういうときは、プレイヤーが新たな「発見」をしたときよりも、マスターがそれを禁止したときに多い。どうやったらそうならずに済むだろうか?子供心にもわくわくするような驚きを絶やしたくないだけなのだが。
(中略)
君がシナリオに良く合うモンスター(群生昆虫型人工生命体!)をデザインし、それをプレイヤーに最初の遭遇でこともなげに撃破されてしまったとしよう。君はアドベンチャーの要所要所にこいつの出番がある予定だった。どうしようか?もうその場で変更。このモンスターには欠陥があったものの、修理して飛行できるようにしてしまえ。次に遭うときはわずかながらも目立つ変化を付けておこう。(単に前の奴よりも動きがいいとか、魔法のエネルギーを纏っているとか、装甲が厚くなってるとか。)それをキャラクターに示す。プレイヤーがこいつらの進化系を次々倒して満足するものの、こういう満足はすぐに色あせてしまう。プレイヤーは試されたいのだ。もう手を尽くして喜ばせてやれ。もっとヒットポイントを、もっと防御値を、そしてスリルを与える(かつ、やり過ぎにならないような)面白いパワーを。
マスターとして、キャラクターの行動を許可するかどうかというとき、この手の驚きと柔軟さを忘れずにおこう。ドラゴンボーンのような新しい種族が出たことによって、D&Dの元になっているトールキンから離れてしまったという物議があった。だがファンタジーとは言語であり、言語とは広がり、また変わりゆくもの、そしてそういう変化は若い人間に好まれることがわかっていると思う。(中略)頭から否定なんてせず、会話に加われ!D&Dやロールプレイングゲームの最高の長所のひとつに、考え方を共有できるということがある。共有するということは妥協するということ。共有するということはより柔軟であること。共有するということは「イエス」ということ。共有するということは楽しいということ!
もちろん新たな驚きに対して心を開くということは、モンスターを片っ端からデザインしたり、闇雲にプレイヤーの要求を許したりすることじゃない。「イエス」ということが真価を発揮するのは実際のプレイの場だ。ウィザードがファイアーボールとタイム・ストップを使うことができ、ローグが切り立った崖を登り、アンデッドの守護者の目を盗んでドラゴンボーンの卵ほどの宝石を盗めるような世界において、マスターが「ノー」と言えることなど、ほとんどない。もちろん、プレイヤーが図々しく言ってきたり、マスターとして「容認できない」という判断がベストなときもある。だが残りはすべて「了解した、じゃあそれでいこう」のはずだ。これがD&Dのシステムにおいて、最高のスキルのひとつとなる。
技能、チャレンジ、そしてイエス
気がついていないかもしれないが、4版の技能は一つ一つが広い意味を持ち柔軟だ。キャラクターにできることを厳しく制限せず、単純明快で頼れるシステム、すなわち技能判定がある。
言わんとすることのちょっとした例を。ゲームで最も典型的な技能判定が、モンスターを知っているか判定する知識ロールだろう。プレイヤーは若干メタ的にやってくる。(私がマスターのときはむしろそれを推奨している。ロールプレイの腕前と同様、メタ的なプレイングの腕前にボーナスを付けるのが好きだ。)それに加え、判定の結果が高かったなら、追加情報が入手できる。とあるゲームで、大型の爬虫類クリーチャーと遭遇した。モンスター識別のため自然を習得しているキャラクターは自然で振ったわけだが、ローグのプレイヤーが事情通でわかるかどうか聞いてきた。難易度を高めにしたうえでイエスと言ってみたところ、高い数字が出た。そこで、「この妙な爬虫類が、君のよく出入りする酒場の看板で見た覚えがあることに気がついた。そう、バシリスク。次に行った時に、絵師に良く見て描いてるねって褒めてやるといいよ」と言ったところ、プレイヤーは「いいねぇ、そういうの」と返してくれた。
ルール上、厳密な技能の区分としては許されることではないだろう。だがこの程度、イエスといって何か問題があるだろうか?また、もっと複雑な判定結果のために、複雑な技能のシステムを作りたいだろうか?そこでマスターを助けるためにデザインされた、4版の技能判定が真価を発揮する。もしそうしたいなら、これが正しくないかもしれないというごく自然な心配を捨て、意図するところを貫こう。君たちの中で、ダンジョン誌のアドベンチャーや、サプリメントを執筆している人はほとんどいないだろう。バランスやら確率的な問題など、記憶に残るゲームや楽しさに比べれば二の次でしかない。だから大まかな要素しか決めていない。これはゲームを楽しくするためにしたいためで、際限なく使用例を作りたいわけじゃない。こうした知識の特殊な使用が、ルールの文言に優先しても心配することは無い。
まとめると、プレイヤーが何か閃いて(あるいはやけっぱちになって)提案する技能判定をさせてやろう。君が難易度を設定し、成功なり失敗なりをするチャンスを与える。もし判定が失敗に終わったとしても、プレイヤーは自分が合理的な(あるいはできるだけのことを)やったという気分になるだろう。この柔軟さがロールプレイゲームと、杓子定規なコンピューターゲームとの格の違いだろう。素早く、常に備え、楽しく。ときにはヘマもするだろうが、やがて君はゲームでどのように「イエス」ができればよいか学ぶことができる。これはもちろん面白くなるようなときにのみ使うこと。最初は戸惑いを感じるかもしれないが、これはマスターに関するどのようなスキルでも磨くことができる。
Stephen Radney-MacFarland
あわせて読んでいただければ幸い。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dusg/20080721
「イエス」という技術
RPGAのコンテンツ・マネージャーとしての日々から戻った自分を待っていたのは大量のEメール。たくさん届いているだろう、という予想自体も甘かった。一日あたり50通から100通。これには青い錠剤のセールスやナイジェリアからの投資詐欺はカウントしていない。ゲーマーからの意見、ゲーマーからの質問、ゲーマーからの相談であること、嘘偽り無い。この手のメールは2種類に分かれている。ダンジョンズ&ドラゴンズというゲームの中で、プレイヤーが何かしら「壊れた」ことをやりたがるというマスターの不平不満が1つ。そしてもう1つは、その逆にプレイヤーが「すごい」ことをやるために、どうマスターにお伺いを立てるか、あるいはそのやりたいことが「壊れていない」と納得させるための方法について。
ひょっとしたらご存知かもしれないが、同じプレイグループの、マスタースクリーンの両サイドからメールを受け取ることがよくある。両方とも助けを求めており、よく相手をだまして解決を図ろうとしている。
ダンジョンズ&ドラゴンズというゲームに競技性はないが、たまに勝敗めいたものを感じる。君がダンジョン・マスターであれば、キャラクターに対して、ときに大きな障害を設けて戦わせなくてはならない。君がプレイヤーなら、キャラクターに報酬と名誉を与えるべく、万難排して挑んでいくことになる。こうしたマスターとプレイヤーの関係が、セッションのよい緊張感や楽しさになる一方、簡単に崩壊させもする。ゲームは英雄的な経験を友人と分かち合うためにある。その他大勢にはできないようなことをやってのける英雄が求められ、マスターの仕事はそれを達成できるものの、素晴らしくかつ困難な障害を置くことだ。プレイヤーはその障害を達成できなかったり、あるいはこともなげにやってのけるようなら、ルールを読み漁って抜け道を探したり、どうやったら自分のキャラクターを強化できるか考え出すことだろう。マスターはマスターで「壊れた」ルールに愚痴愚痴こぼしつつ、どうやったらゲームが台無しにならずにすむか煩悶する。
よい対処法はごく普通なことだ。レベルが上がるとき、伝説の道の将来計画を立てるとき、カスの寺院にある伝説のマジックアイテムを発見したときなどなど、プレイヤーのテンションが上がる瞬間を感じたことがあると思う。そして、こっちがすっかり失念ないし過小評価していたプレイヤーが持っている「つまらないもの」のために、せっかく作った障害を潰してくれることもある。どんな優れたマスターにもそういう経験はあるはずだ。プレイヤーは自分のキャラクターが何もできないとイライラするし、マスターもセッションで毎回毎回用意したモンスターや罠が「機能不全」に陥るようならムラムラくる。そうなるともう何かがおかしい。こういうときに選択肢を絞る、「つまらないもの」を使用禁止にする、あれこれ目の敵にするなんてことがよく見られるが、だがやり方は他にもある。「イエス」というスキルを身に付けよう!
「イエス」を自分の経文にしよう!
新霊性運動の教祖みたいなことが言いたいわけじゃない。思うに、ゲームが問題に陥るとしたら、不思議さや驚きの感覚がまったく失われているときだろう。普通こういうときは、プレイヤーが新たな「発見」をしたときよりも、マスターがそれを禁止したときに多い。どうやったらそうならずに済むだろうか?子供心にもわくわくするような驚きを絶やしたくないだけなのだが。
(中略)
君がシナリオに良く合うモンスター(群生昆虫型人工生命体!)をデザインし、それをプレイヤーに最初の遭遇でこともなげに撃破されてしまったとしよう。君はアドベンチャーの要所要所にこいつの出番がある予定だった。どうしようか?もうその場で変更。このモンスターには欠陥があったものの、修理して飛行できるようにしてしまえ。次に遭うときはわずかながらも目立つ変化を付けておこう。(単に前の奴よりも動きがいいとか、魔法のエネルギーを纏っているとか、装甲が厚くなってるとか。)それをキャラクターに示す。プレイヤーがこいつらの進化系を次々倒して満足するものの、こういう満足はすぐに色あせてしまう。プレイヤーは試されたいのだ。もう手を尽くして喜ばせてやれ。もっとヒットポイントを、もっと防御値を、そしてスリルを与える(かつ、やり過ぎにならないような)面白いパワーを。
マスターとして、キャラクターの行動を許可するかどうかというとき、この手の驚きと柔軟さを忘れずにおこう。ドラゴンボーンのような新しい種族が出たことによって、D&Dの元になっているトールキンから離れてしまったという物議があった。だがファンタジーとは言語であり、言語とは広がり、また変わりゆくもの、そしてそういう変化は若い人間に好まれることがわかっていると思う。(中略)頭から否定なんてせず、会話に加われ!D&Dやロールプレイングゲームの最高の長所のひとつに、考え方を共有できるということがある。共有するということは妥協するということ。共有するということはより柔軟であること。共有するということは「イエス」ということ。共有するということは楽しいということ!
もちろん新たな驚きに対して心を開くということは、モンスターを片っ端からデザインしたり、闇雲にプレイヤーの要求を許したりすることじゃない。「イエス」ということが真価を発揮するのは実際のプレイの場だ。ウィザードがファイアーボールとタイム・ストップを使うことができ、ローグが切り立った崖を登り、アンデッドの守護者の目を盗んでドラゴンボーンの卵ほどの宝石を盗めるような世界において、マスターが「ノー」と言えることなど、ほとんどない。もちろん、プレイヤーが図々しく言ってきたり、マスターとして「容認できない」という判断がベストなときもある。だが残りはすべて「了解した、じゃあそれでいこう」のはずだ。これがD&Dのシステムにおいて、最高のスキルのひとつとなる。
技能、チャレンジ、そしてイエス
気がついていないかもしれないが、4版の技能は一つ一つが広い意味を持ち柔軟だ。キャラクターにできることを厳しく制限せず、単純明快で頼れるシステム、すなわち技能判定がある。
言わんとすることのちょっとした例を。ゲームで最も典型的な技能判定が、モンスターを知っているか判定する知識ロールだろう。プレイヤーは若干メタ的にやってくる。(私がマスターのときはむしろそれを推奨している。ロールプレイの腕前と同様、メタ的なプレイングの腕前にボーナスを付けるのが好きだ。)それに加え、判定の結果が高かったなら、追加情報が入手できる。とあるゲームで、大型の爬虫類クリーチャーと遭遇した。モンスター識別のため自然を習得しているキャラクターは自然で振ったわけだが、ローグのプレイヤーが事情通でわかるかどうか聞いてきた。難易度を高めにしたうえでイエスと言ってみたところ、高い数字が出た。そこで、「この妙な爬虫類が、君のよく出入りする酒場の看板で見た覚えがあることに気がついた。そう、バシリスク。次に行った時に、絵師に良く見て描いてるねって褒めてやるといいよ」と言ったところ、プレイヤーは「いいねぇ、そういうの」と返してくれた。
ルール上、厳密な技能の区分としては許されることではないだろう。だがこの程度、イエスといって何か問題があるだろうか?また、もっと複雑な判定結果のために、複雑な技能のシステムを作りたいだろうか?そこでマスターを助けるためにデザインされた、4版の技能判定が真価を発揮する。もしそうしたいなら、これが正しくないかもしれないというごく自然な心配を捨て、意図するところを貫こう。君たちの中で、ダンジョン誌のアドベンチャーや、サプリメントを執筆している人はほとんどいないだろう。バランスやら確率的な問題など、記憶に残るゲームや楽しさに比べれば二の次でしかない。だから大まかな要素しか決めていない。これはゲームを楽しくするためにしたいためで、際限なく使用例を作りたいわけじゃない。こうした知識の特殊な使用が、ルールの文言に優先しても心配することは無い。
まとめると、プレイヤーが何か閃いて(あるいはやけっぱちになって)提案する技能判定をさせてやろう。君が難易度を設定し、成功なり失敗なりをするチャンスを与える。もし判定が失敗に終わったとしても、プレイヤーは自分が合理的な(あるいはできるだけのことを)やったという気分になるだろう。この柔軟さがロールプレイゲームと、杓子定規なコンピューターゲームとの格の違いだろう。素早く、常に備え、楽しく。ときにはヘマもするだろうが、やがて君はゲームでどのように「イエス」ができればよいか学ぶことができる。これはもちろん面白くなるようなときにのみ使うこと。最初は戸惑いを感じるかもしれないが、これはマスターに関するどのようなスキルでも磨くことができる。
Stephen Radney-MacFarland
Lords of Madness スポイラー
2010年8月24日 ゲームhttp://www.ddmspoilers.com/mm_05.php
日本は9月下旬?リリースのLords of Madness。
今更ですがフルスポイラーが出ているので確認したい方はどうぞ。
(ミニチュアの写真をスポイラーというのも語弊がありますが・・・)
ドラゴン4種類+ドラコリッチなど豪華なラインナップですが、
欲しいのはことごとくレアやベリーレア。そういえばエルフがいない。
Brain in a Jarがいい。まあ皆さん色々あると思います。
時期的にはぎりぎりでDACに間に合います。
すぐにシングル買いできればいいんですが。
DACといえば、プレイヤーの募集締切が延長されました。
卓の定員100人超に対して50ちょっとの応募なので、
まだまだ空きがあるようです。
皆様の参加を心よりお待ちしております。
日本は9月下旬?リリースのLords of Madness。
今更ですがフルスポイラーが出ているので確認したい方はどうぞ。
(ミニチュアの写真をスポイラーというのも語弊がありますが・・・)
ドラゴン4種類+ドラコリッチなど豪華なラインナップですが、
欲しいのはことごとくレアやベリーレア。そういえばエルフがいない。
Brain in a Jarがいい。まあ皆さん色々あると思います。
時期的にはぎりぎりでDACに間に合います。
すぐにシングル買いできればいいんですが。
DACといえば、プレイヤーの募集締切が延長されました。
卓の定員100人超に対して50ちょっとの応募なので、
まだまだ空きがあるようです。
皆様の参加を心よりお待ちしております。
ノーといっても構わない
2010年8月19日 ゲーム諸事情により、部分だけ抜粋。あくまで習作ということでご了承を。
http://www.wizards.com/dnd/Article.aspx?x=dnd/dusg/20100617
よいマスターと素晴らしいマスターの差は、「イエス」と言える能力。プレイヤーがしょうもない判定をやりたいと言い出したら?適切な非戦闘遭遇をアレンジしたまえ。誰かがドラゴン誌のシャドーマインド・アサシンを使いたいと言い出したら?キャンペーンに合うキャラクターの背景を作ろう。とはいえ、プレイヤーの要求に次ぐ要求の波に呑まれ、マスターは途方にくれることもあるだろう。「俺って何なのよ?」
ほとんどのマスターは世界観の創造と、マスターとしてのゲームマネージメント、両方を好む。完璧なマスターとは、ひょっとすると二個の人間になるのかもしれない。片方が世界や冒険をつくり、もう片方がゲームを運営する。理想的には、一人で両方の側面を楽しみ、ゲームを運営していく中で「イエス」というスキルを磨いていければいい。それでも、「ノー」と言いたくても、そうするのがよろしくない気がするシチュエーションがどうしても出てくる。
ちょっとしたコツをご覧に入れよう。時には「ノー」と言っても構わない。
・馬鹿言うな!
「イエス」と言えるのもスキルのうちだが、「ノー」で八方丸く収められるのは至難の業だろう。もちろん、アホな要求を「却下」できるのはマスターの伝家の宝刀ではあるけれど。ときには嫌味っぽく、またときには幼稚っぽく、プレイヤーはゲームのルールからぶっ飛んだことができるかどうか聞いてくる。
「翼を生やしてバルコニーから飛んでいい?」
「特技やアイテム、伝説の道にもないなら駄目」
「いいじゃん、いいじゃん、いいじゃん!」
「1出したけど、自動クリティカルだよね?」
「馬鹿言え!」
「イエス」と言えるスキルはゲームが泥沼化しないためにあり、この方法のマスタリングは、なるべく「ノー」と言わないようにゲームを進めていくものだ。だが君がマスタリングに慣れていないなら、妙な注文がきたときは断っても構わないことを覚えておこう。
それなりに筋が通っているものの、それでも許可したくないときは、無理に「ノー」と言いたいのを押さえ込まなくてもいい。なぜ自分がそうしたいのかを探ってみよう。たとえば、上空にあるストーム・ジャイアントの居城にパーティーがいる。主目標は達成したが、下に行くための脱出手段であるグリフィンは捕まっている。そこまでの道はわかっているが、そこにはクラウド・ジャイアントとお友達が手ぐすね引いて待っている。おびただしい脅威を前にして、プレイヤーはどうやってグリフィンのもとに辿り着いたものか考え出す。プレイヤーの一人が閃いた。城の外壁をよじ登って直接グリフォンまで行けば敵さんの群れを回避できないか?無謀ではあるが、面白い。向こう見ずな冒険者をやってほしいなら褒められるような方法だし、こういう一つ一つの試みが最高の冒険譚に繋がっていくのかもしれない。
だが裏を返すと、それは君が準備したセッションのほとんど全部を無にしてしまう。君は準備するのが好きだ。ゲームのつじつまを保つなどと、上辺を取り繕って水を差してしまうのは、間違っているし身勝手なのではないだろうか?そうじゃあない。ノーと言おう。だがこう言うのも良いかもしれない。「できないけれど・・・」
・できないけれど・・・
妥協した感じの「ノー」をするための骨折りをすること。ことストーリー描写に関して、マスターが何をどうするか自由に決められるのはダンジョンズ&ドラゴンズの特徴だろう。ストーリーの描写のやり方を明文化したルールで規定するRPGも多いが、個人的にはマスター裁量のほうが一般則よりも優れていることが多いと思う。使うシナリオ、今日やるセッションのメモ、ミニチュアの選択にモンスター・マニュアルの処理、D&D Insider用のパソコンさえも、型にはめられることはない。卓についてゲームを始めるまで、君の準備したものはたたき台として扱おう。プレイヤーが、君やシナリオの作者が意図してない、何かしら面白そうなことを見つけるたび、そのたたき台は進化していく。これが裁量的なストーリー描写の構築だ。
グリフィンの話に戻ろう。「やるのは構わないが、どうも自殺行為に思える。窓の外に目をやると1・2階ほど下ったバルコニーが見えた。下りればグリフィンに近づくだろう」
ちょっと遭遇を修正。次の部屋にカッパー・ドラゴンが控えていたなら、グリフィンに辿り着いた冒険者たちと空中戦闘だ。こういう発展的な再構築をしてみると、新しい発見がより良い結果につながり、最初に考えたものよりも記憶に残るものになる!
もうお分かりだと思う。こういう「ノー」は「イエス」の変形だということ。最初はそう思えないかもしれない。変更の度合いが大きければ大きいほど、間違いを犯したのではないかという心配も大きくなる。深呼吸して細かいことに拘るのをやめれば、君はプレイヤーが何かしら良い(良い意味で裏をかくような)ことをしているときでも、別にそこまで核心に迫っているわけではないのに気がつくだろう。
・選択肢から外す
「ノー」を示す一番良いやり方は、キャンペーンやセッションが始まる前に概要を詰めてしまうことだ。この類の「ノー」は君のキャンペーンのテーマや調子を決める土台となる。今やD&D第4版はルールが成熟し、オプションも数が増しているため、新参のプレイヤーが毒気に当てられたり、君が考える冒険の中身がわからなくなるかもしれない。こういう制限は、ゲームのデザインを絞るのに役立ち、キャラクター製作でもプレイヤーに面白く、またゲームに影響を与えるような選択をさせる。
ただ、よく注意した方がいい。プレイヤーの中にはエルフなし、ドラゴンボーンなし、信仰系クラス不可なんていうキャンペーンに横槍を入れてくる人もいるかもしれない。プレイヤーにはお気に入りのクラス・種族・パワーの組み合わせがあり、それを取り上げてしまうのは制裁を与えるのに等しい。また一方で、D&Dというゲームは、ダンジョン・マスターが情熱的な創造をやるとベストなようにできている。君が語りたいストーリーは、相手に自由を感じさせるものであるべきだ。君がダークサンの設定にわくわくして、キャンペーンを始めたくなったと仮定する。通常君は4版にあるものなら(信仰のクラスも含めて)どんなものでも使えるが、古いものを蹴っ飛ばしたくなり、従前のクラスを選ぶことに制限をつけた。そうしたなら、プレイヤーにどういうことをするか、そしてそうするのはなぜか話して理解を求めよう。相手にその考え方と理由について分かってもらえたなら、君はそのプレイヤーがそういう制限を受けるのに意欲を見せているのが分かると思う。柔軟なプレイヤーは、D&Dというゲームは、マスターが創造力をほとばしらせるものであることが分かるし、種族やクラス、選択オプションの制限はその制限ゆえの面白さを見出すものだから。
(後略)
Stephen Radney-MacFarland
http://www.wizards.com/dnd/Article.aspx?x=dnd/dusg/20100617
よいマスターと素晴らしいマスターの差は、「イエス」と言える能力。プレイヤーがしょうもない判定をやりたいと言い出したら?適切な非戦闘遭遇をアレンジしたまえ。誰かがドラゴン誌のシャドーマインド・アサシンを使いたいと言い出したら?キャンペーンに合うキャラクターの背景を作ろう。とはいえ、プレイヤーの要求に次ぐ要求の波に呑まれ、マスターは途方にくれることもあるだろう。「俺って何なのよ?」
ほとんどのマスターは世界観の創造と、マスターとしてのゲームマネージメント、両方を好む。完璧なマスターとは、ひょっとすると二個の人間になるのかもしれない。片方が世界や冒険をつくり、もう片方がゲームを運営する。理想的には、一人で両方の側面を楽しみ、ゲームを運営していく中で「イエス」というスキルを磨いていければいい。それでも、「ノー」と言いたくても、そうするのがよろしくない気がするシチュエーションがどうしても出てくる。
ちょっとしたコツをご覧に入れよう。時には「ノー」と言っても構わない。
・馬鹿言うな!
「イエス」と言えるのもスキルのうちだが、「ノー」で八方丸く収められるのは至難の業だろう。もちろん、アホな要求を「却下」できるのはマスターの伝家の宝刀ではあるけれど。ときには嫌味っぽく、またときには幼稚っぽく、プレイヤーはゲームのルールからぶっ飛んだことができるかどうか聞いてくる。
「翼を生やしてバルコニーから飛んでいい?」
「特技やアイテム、伝説の道にもないなら駄目」
「いいじゃん、いいじゃん、いいじゃん!」
「1出したけど、自動クリティカルだよね?」
「馬鹿言え!」
「イエス」と言えるスキルはゲームが泥沼化しないためにあり、この方法のマスタリングは、なるべく「ノー」と言わないようにゲームを進めていくものだ。だが君がマスタリングに慣れていないなら、妙な注文がきたときは断っても構わないことを覚えておこう。
それなりに筋が通っているものの、それでも許可したくないときは、無理に「ノー」と言いたいのを押さえ込まなくてもいい。なぜ自分がそうしたいのかを探ってみよう。たとえば、上空にあるストーム・ジャイアントの居城にパーティーがいる。主目標は達成したが、下に行くための脱出手段であるグリフィンは捕まっている。そこまでの道はわかっているが、そこにはクラウド・ジャイアントとお友達が手ぐすね引いて待っている。おびただしい脅威を前にして、プレイヤーはどうやってグリフィンのもとに辿り着いたものか考え出す。プレイヤーの一人が閃いた。城の外壁をよじ登って直接グリフォンまで行けば敵さんの群れを回避できないか?無謀ではあるが、面白い。向こう見ずな冒険者をやってほしいなら褒められるような方法だし、こういう一つ一つの試みが最高の冒険譚に繋がっていくのかもしれない。
だが裏を返すと、それは君が準備したセッションのほとんど全部を無にしてしまう。君は準備するのが好きだ。ゲームのつじつまを保つなどと、上辺を取り繕って水を差してしまうのは、間違っているし身勝手なのではないだろうか?そうじゃあない。ノーと言おう。だがこう言うのも良いかもしれない。「できないけれど・・・」
・できないけれど・・・
妥協した感じの「ノー」をするための骨折りをすること。ことストーリー描写に関して、マスターが何をどうするか自由に決められるのはダンジョンズ&ドラゴンズの特徴だろう。ストーリーの描写のやり方を明文化したルールで規定するRPGも多いが、個人的にはマスター裁量のほうが一般則よりも優れていることが多いと思う。使うシナリオ、今日やるセッションのメモ、ミニチュアの選択にモンスター・マニュアルの処理、D&D Insider用のパソコンさえも、型にはめられることはない。卓についてゲームを始めるまで、君の準備したものはたたき台として扱おう。プレイヤーが、君やシナリオの作者が意図してない、何かしら面白そうなことを見つけるたび、そのたたき台は進化していく。これが裁量的なストーリー描写の構築だ。
グリフィンの話に戻ろう。「やるのは構わないが、どうも自殺行為に思える。窓の外に目をやると1・2階ほど下ったバルコニーが見えた。下りればグリフィンに近づくだろう」
ちょっと遭遇を修正。次の部屋にカッパー・ドラゴンが控えていたなら、グリフィンに辿り着いた冒険者たちと空中戦闘だ。こういう発展的な再構築をしてみると、新しい発見がより良い結果につながり、最初に考えたものよりも記憶に残るものになる!
もうお分かりだと思う。こういう「ノー」は「イエス」の変形だということ。最初はそう思えないかもしれない。変更の度合いが大きければ大きいほど、間違いを犯したのではないかという心配も大きくなる。深呼吸して細かいことに拘るのをやめれば、君はプレイヤーが何かしら良い(良い意味で裏をかくような)ことをしているときでも、別にそこまで核心に迫っているわけではないのに気がつくだろう。
・選択肢から外す
「ノー」を示す一番良いやり方は、キャンペーンやセッションが始まる前に概要を詰めてしまうことだ。この類の「ノー」は君のキャンペーンのテーマや調子を決める土台となる。今やD&D第4版はルールが成熟し、オプションも数が増しているため、新参のプレイヤーが毒気に当てられたり、君が考える冒険の中身がわからなくなるかもしれない。こういう制限は、ゲームのデザインを絞るのに役立ち、キャラクター製作でもプレイヤーに面白く、またゲームに影響を与えるような選択をさせる。
ただ、よく注意した方がいい。プレイヤーの中にはエルフなし、ドラゴンボーンなし、信仰系クラス不可なんていうキャンペーンに横槍を入れてくる人もいるかもしれない。プレイヤーにはお気に入りのクラス・種族・パワーの組み合わせがあり、それを取り上げてしまうのは制裁を与えるのに等しい。また一方で、D&Dというゲームは、ダンジョン・マスターが情熱的な創造をやるとベストなようにできている。君が語りたいストーリーは、相手に自由を感じさせるものであるべきだ。君がダークサンの設定にわくわくして、キャンペーンを始めたくなったと仮定する。通常君は4版にあるものなら(信仰のクラスも含めて)どんなものでも使えるが、古いものを蹴っ飛ばしたくなり、従前のクラスを選ぶことに制限をつけた。そうしたなら、プレイヤーにどういうことをするか、そしてそうするのはなぜか話して理解を求めよう。相手にその考え方と理由について分かってもらえたなら、君はそのプレイヤーがそういう制限を受けるのに意欲を見せているのが分かると思う。柔軟なプレイヤーは、D&Dというゲームは、マスターが創造力をほとばしらせるものであることが分かるし、種族やクラス、選択オプションの制限はその制限ゆえの面白さを見出すものだから。
(後略)
Stephen Radney-MacFarland
D&D Novel eBooks(混ぜるな)
2010年8月17日 ゲームhttp://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/4news/20100817
D&D関係の小説をE-bookで。
Dungeons & Dragons Novelsといいつつ、堂々と他のゲームが混ざってるのがポイント。
兄弟戦争やギルドの都はまだしも、神河物語はさすがに無理があるかと。
種族が狐、クラスが侍、最狂アーティファクトが十手。
昔々のお話でした。
他の記事もやろうと思ったら、サーバーメンテナンスで見られません。
ということでまた明日。
D&D関係の小説をE-bookで。
Dungeons & Dragons Novelsといいつつ、堂々と他のゲームが混ざってるのがポイント。
兄弟戦争やギルドの都はまだしも、神河物語はさすがに無理があるかと。
種族が狐、クラスが侍、最狂アーティファクトが十手。
昔々のお話でした。
他の記事もやろうと思ったら、サーバーメンテナンスで見られません。
ということでまた明日。
1箱レア3つ(あくまで理論上)
2010年8月15日 ゲームhttp://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/4pr/20100813
D&Dミニチュア、次のエクスパンション"Lord of Madness"の情報。
レア・アンコモン・コモンに加え、ベリーレア(very rare)が出るらしいです。
レアリティを分けたのは、「オークの酋長ならともかく、2体目のドリッズドや
モルデンカイネンはいらないよね」からだとか。
レアリティごとの種類はベリーレア12、レア22、アンコモン18、コモン8。
いつもより余計に偏ってます。
ブースター1つに巨大1体、大型1体、中・小型4体。
巨大と大型それぞれのレア封入率はアンコモン:レア:ベリーレア=2:1:1
中・小型は、レアもしくはベリーレア1、アンコモン1、コモン2。
だから運がよければ巨大、大型、中・小型それぞれでレアがゲットできるよ!
とのことで。
・・・話が大きいのもほどほどに。
D&Dミニチュア、次のエクスパンション"Lord of Madness"の情報。
レア・アンコモン・コモンに加え、ベリーレア(very rare)が出るらしいです。
レアリティを分けたのは、「オークの酋長ならともかく、2体目のドリッズドや
モルデンカイネンはいらないよね」からだとか。
レアリティごとの種類はベリーレア12、レア22、アンコモン18、コモン8。
いつもより余計に偏ってます。
ブースター1つに巨大1体、大型1体、中・小型4体。
巨大と大型それぞれのレア封入率はアンコモン:レア:ベリーレア=2:1:1
中・小型は、レアもしくはベリーレア1、アンコモン1、コモン2。
だから運がよければ巨大、大型、中・小型それぞれでレアがゲットできるよ!
とのことで。
・・・話が大きいのもほどほどに。
Psionic Power
2010年8月15日 ゲームhttp://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/4ex/20100813b
とうとうエイリアニストが出てきました。サイオンの伝説の道です。
詳しくはリンク先をご覧ください。
Insane Action(狂気のアクション)
アクションポイントを使用したターンの終了時、
1d4を振って出た目の効果を受ける。
1:君は次の自分のターン終了時まで幻惑状態になる。
2:君が攻撃した最後のクリーチャーは5マスまで瞬間移動できる。
3:もし君に意識があるなら、5マスまで瞬間移動できる。
そうした場合、君の次のターン終了時まですべての防御値に+4の
ボーナスを得る。
4:君は20点の一時的ヒットポイントを得る。
アクションポイントを使って悪いことがおきる(かもしれない)のは
さすがエイリアニストといったところ。
とうとうエイリアニストが出てきました。サイオンの伝説の道です。
詳しくはリンク先をご覧ください。
Insane Action(狂気のアクション)
アクションポイントを使用したターンの終了時、
1d4を振って出た目の効果を受ける。
1:君は次の自分のターン終了時まで幻惑状態になる。
2:君が攻撃した最後のクリーチャーは5マスまで瞬間移動できる。
3:もし君に意識があるなら、5マスまで瞬間移動できる。
そうした場合、君の次のターン終了時まですべての防御値に+4の
ボーナスを得る。
4:君は20点の一時的ヒットポイントを得る。
アクションポイントを使って悪いことがおきる(かもしれない)のは
さすがエイリアニストといったところ。
Essentials Countdown
2010年8月11日 ゲームhttp://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/drfe/20100809
近日発売されるDungeons & Dragons Essentialsですが、
色々と大きな変更がある模様。DACでどうなるのか少々心配です。
時間の都合で部分的に抜き出しています。ご了承を。
パワー、装具、特技・・・”Essentials” カウントダウン
・装具
さらなる進化のため、Dungeons & Dragonsでの装具の習熟について、扱いを武器と同様にすることにした。習熟している装具で、「装具」のキーワードが入ったパワーすべてを使える。伝説の道・違うクラス・新しいビルドだろうがなんだろうが関係ない。習熟した装具ならどれでも、保持しているパワーが使えるようになる。
・パワー
アップデートを数種類のカテゴリに分け、パワーのいくつかを変更。
・ウィザードの遭遇毎の呪文
ミスしたときも効果が出るように修正。これによってウィザードはより制御役として働けるようになる。バーニング・ハンドはミスしてもダメージを与えるようになったし、他のパワーも強制移動・状態変化など、ダメージを与えなくとも何らかの嫌がらせをするようになった。
・種族
プレイヤーズ・ハンドブック3で出た種族のように、能力修正値の変更も行われる。すべての種族が1つの能力値に+2、そして2つのどちらかから1つ選んで+2。ドワーフの場合、耐久力に+2、筋力もしくは判断力に+2。
この変更でキャラクターの作成がフレキシブルになり、キャラクター製作により強力なオプションを提供できるようになった。ドワーフはクレリックやファイターに適正があり、エルフは弓術にも秘術にも長けている。
人間が「好きな能力値1つを+2」なのは変わらないが、追加の無限回パワーを取るか、ヒロイック・エフォートという名前の新しいパワーにするか選択できるようになった。
ヒロイック・エフォートは遭遇毎のパワーで、攻撃ロールかセーヴィング・スローの結果に+4のボーナスを足すことができる。これによって失敗を成功に変えてしまう。
・特技
Essentialsでは特技を概念・戦術等で分類し、いくつかのカテゴリに分けた。”Enduring Stamina”のカテゴリでは、より堅くて耐久力のある特技を集めた。追加hpはこちらに当てはまる。
また、前提条件のうち英雄・伝説・神話といった級の区切りもなくなる。他の条件さえ満たせば1レベルから取得可能。たとえば頑健・反応・意思にボーナスを与える特技はこれまで伝説級だったが、これからは英雄級でも使える。
・マジックアイテムと魔法の装備
大きな変更としては、キャンペーン内のマジックアイテムの入手に関して、マスターのコントロールをやりやすくする。方法については後のプレビューで。
近日発売されるDungeons & Dragons Essentialsですが、
色々と大きな変更がある模様。DACでどうなるのか少々心配です。
時間の都合で部分的に抜き出しています。ご了承を。
パワー、装具、特技・・・”Essentials” カウントダウン
・装具
さらなる進化のため、Dungeons & Dragonsでの装具の習熟について、扱いを武器と同様にすることにした。習熟している装具で、「装具」のキーワードが入ったパワーすべてを使える。伝説の道・違うクラス・新しいビルドだろうがなんだろうが関係ない。習熟した装具ならどれでも、保持しているパワーが使えるようになる。
・パワー
アップデートを数種類のカテゴリに分け、パワーのいくつかを変更。
・ウィザードの遭遇毎の呪文
ミスしたときも効果が出るように修正。これによってウィザードはより制御役として働けるようになる。バーニング・ハンドはミスしてもダメージを与えるようになったし、他のパワーも強制移動・状態変化など、ダメージを与えなくとも何らかの嫌がらせをするようになった。
・種族
プレイヤーズ・ハンドブック3で出た種族のように、能力修正値の変更も行われる。すべての種族が1つの能力値に+2、そして2つのどちらかから1つ選んで+2。ドワーフの場合、耐久力に+2、筋力もしくは判断力に+2。
この変更でキャラクターの作成がフレキシブルになり、キャラクター製作により強力なオプションを提供できるようになった。ドワーフはクレリックやファイターに適正があり、エルフは弓術にも秘術にも長けている。
人間が「好きな能力値1つを+2」なのは変わらないが、追加の無限回パワーを取るか、ヒロイック・エフォートという名前の新しいパワーにするか選択できるようになった。
ヒロイック・エフォートは遭遇毎のパワーで、攻撃ロールかセーヴィング・スローの結果に+4のボーナスを足すことができる。これによって失敗を成功に変えてしまう。
・特技
Essentialsでは特技を概念・戦術等で分類し、いくつかのカテゴリに分けた。”Enduring Stamina”のカテゴリでは、より堅くて耐久力のある特技を集めた。追加hpはこちらに当てはまる。
また、前提条件のうち英雄・伝説・神話といった級の区切りもなくなる。他の条件さえ満たせば1レベルから取得可能。たとえば頑健・反応・意思にボーナスを与える特技はこれまで伝説級だったが、これからは英雄級でも使える。
・マジックアイテムと魔法の装備
大きな変更としては、キャンペーン内のマジックアイテムの入手に関して、マスターのコントロールをやりやすくする。方法については後のプレビューで。
良いマスターを大事にする
2010年8月8日 ゲーム難しくなくて短いのを適当にやったけれど結構かかりました。所要3時間ほど。
こういうの久しぶりなので、と言い訳を。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dued/2010August より、
Steve Winter “Treasure a Good DM”
良いマスターを大事にする
キャンペーンを創造したり破壊したりする。それがダンジョン・マスター。
別にショッキングなものいいだとも思わない。キャンペーンが成功裏に終わってみんなが満足できるかどうかという観点において、マスターとは単なるファクターじゃない。マスターやプレイヤーのうち、誰か一人でも傍若無人だったり、気を散らしたり、邪魔したり、サボったりすることでキャンペーンは崩壊しうる。だがプレイヤーだけではキャンペーンを最高のものにすることはできない。プレイヤーは自分たちにできることを求められる。そしてダイスがそれに応えたならば、今度はマスターの肩にかかってくる。どれほどプレイヤーが優れたチームワークを発揮しても、しょぼいマスターをカバーできるわけじゃない。だけど、優れたマスターなら、プレイヤーがちょっとばかしアレだったとしても、それを補って余りあることができる。
驚くべきことでもないが、この点について多くのマスターは水準に達していない。誰もマスターをやりたがらない、あるいはルールブックを持っているからという理由でマスターという役割を押し付けられる人もいる。マスターをやるには未熟で幼すぎるのもいる。本当にどうしようもないのは揚げ足取り、干渉大大大好き、学者ぶった空論家、つまらない話を長々しゃべる奴に陰口中傷なんでもござれ、なかでも最悪なのがジャイアン。(※1)
わかっている、みんな誰もが最高のマスターになりたい。だが現実は茨の道。エキサイティングな冒険を作り上げ、複数のNPCのロールをこなし、血湧き肉踊る白熱の戦闘シーンを演出し、みんなを活躍させてプレイヤーそれぞれを尊重する。マスタリングとは、そういうことを求められる立場だ。一つ一つなら大体の人間ができるだろう。だが、一度にすべてを同時にこなせることを求めると罠に嵌る。さながら絵描き兼車の修理工兼コック兼サッカー選手、すべてできる人を探すみたいじゃないか?
もし、君が本当にすごいマスターとゲームをしたことがあるなら、それを真似することが至難の業だとわかると思う。高い目標を己に課し、もうその人自体すら壮大に感じられる。誰が「世界最高マスター」の後釜になんて座りたいと思うだろう?
われわれは、ダンジョンズ&ドラゴンズのプレイヤーすべてがマスター候補だと思っている。自分の置かれた環境の中で、マスターから学び、そして真似る。悲しいかな、悪いマスターから残念なテクニックを吸収しきってしまうのは簡単。人間誰しも、何かしら悪いことは身に付けられてしまうものだ。そして逆は真ならず。最高のマスターを見ているということだけでは、君の糧になりはしない。
それゆえ優れた指導者としてプレイヤーに範を垂れることができつつも、自身が何者であるか知っており、謙虚で表立っては賞賛を受けないような人物は、それ相応に評価される。これを生まれついてのものに対して、得がたい長所として褒めているとは考えないで欲しい。(※2)第4版は、プレイヤーがキャンペーンのマネージメントに関する役割を持たせることをマスターに推奨している。これは単にマスターという暗夜を照らす光となるだけでなく、プレイヤーの持つ長所をマスターが学ぶきっかけになる。じゃあプレイヤーのスキルからマスターが学ぶということは、単に良いところを一つ一つ見つけていくことに比べ、どういう点がよいのだろう?以下に可能性を挙げてみる。
・もしパーティーのこれまでの冒険の歩みを記録するのに長けたプレイヤーがいるなら、その世界の歴史をまとめたり、時には部分的に作ったりしてもらうのはどうか。
・もし興味を引くキャラクターを演じるスキルのあるプレイヤーがいるなら、そのキャラクターがいないシーンになどで、街中・店・洞窟などで遭遇するNPCの役割を頼むのはどうか。
・戦術に定評のあるプレイヤーがいるなら、そのキャラクターがどこかにいる、もしくは不運にも気絶していたり死んでいたりする場合に、代わりにモンスターの操作を任せてしまうのはどうか。
・ストーリーテラーとしての資質があるプレイヤーがいるなら、冒険のデザインや、アウトラインだけでも頼んでみるのはどうか。短めの冒険が向いている。好評ならグループ内で周り番にしても面白いし、プレイヤーにマスタースクリーンの反対側に交代で来させ、やらせてみてもいい。
理想のマスターとは一個人として大人であることだが、少なくともダンジョン・マスターとして足りるものであればいい。運がよければ、誰かが君に道を示してくれる。新たな一歩を踏み出すのは今だ。
Steve Winter
(※1)単語のニュアンスを表現できる適当な言葉は思いつきませんでしたが、よい例えは思いつきました。ジャイアンがマスターやったらどうなるでしょうね?
(※2)かなり適当。前後の文章とその部分の語意から推測した継ぎ接ぎ。いわゆる誤魔化し。
こういうの久しぶりなので、と言い訳を。
http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/dued/2010August より、
Steve Winter “Treasure a Good DM”
良いマスターを大事にする
キャンペーンを創造したり破壊したりする。それがダンジョン・マスター。
別にショッキングなものいいだとも思わない。キャンペーンが成功裏に終わってみんなが満足できるかどうかという観点において、マスターとは単なるファクターじゃない。マスターやプレイヤーのうち、誰か一人でも傍若無人だったり、気を散らしたり、邪魔したり、サボったりすることでキャンペーンは崩壊しうる。だがプレイヤーだけではキャンペーンを最高のものにすることはできない。プレイヤーは自分たちにできることを求められる。そしてダイスがそれに応えたならば、今度はマスターの肩にかかってくる。どれほどプレイヤーが優れたチームワークを発揮しても、しょぼいマスターをカバーできるわけじゃない。だけど、優れたマスターなら、プレイヤーがちょっとばかしアレだったとしても、それを補って余りあることができる。
驚くべきことでもないが、この点について多くのマスターは水準に達していない。誰もマスターをやりたがらない、あるいはルールブックを持っているからという理由でマスターという役割を押し付けられる人もいる。マスターをやるには未熟で幼すぎるのもいる。本当にどうしようもないのは揚げ足取り、干渉大大大好き、学者ぶった空論家、つまらない話を長々しゃべる奴に陰口中傷なんでもござれ、なかでも最悪なのがジャイアン。(※1)
わかっている、みんな誰もが最高のマスターになりたい。だが現実は茨の道。エキサイティングな冒険を作り上げ、複数のNPCのロールをこなし、血湧き肉踊る白熱の戦闘シーンを演出し、みんなを活躍させてプレイヤーそれぞれを尊重する。マスタリングとは、そういうことを求められる立場だ。一つ一つなら大体の人間ができるだろう。だが、一度にすべてを同時にこなせることを求めると罠に嵌る。さながら絵描き兼車の修理工兼コック兼サッカー選手、すべてできる人を探すみたいじゃないか?
もし、君が本当にすごいマスターとゲームをしたことがあるなら、それを真似することが至難の業だとわかると思う。高い目標を己に課し、もうその人自体すら壮大に感じられる。誰が「世界最高マスター」の後釜になんて座りたいと思うだろう?
われわれは、ダンジョンズ&ドラゴンズのプレイヤーすべてがマスター候補だと思っている。自分の置かれた環境の中で、マスターから学び、そして真似る。悲しいかな、悪いマスターから残念なテクニックを吸収しきってしまうのは簡単。人間誰しも、何かしら悪いことは身に付けられてしまうものだ。そして逆は真ならず。最高のマスターを見ているということだけでは、君の糧になりはしない。
それゆえ優れた指導者としてプレイヤーに範を垂れることができつつも、自身が何者であるか知っており、謙虚で表立っては賞賛を受けないような人物は、それ相応に評価される。これを生まれついてのものに対して、得がたい長所として褒めているとは考えないで欲しい。(※2)第4版は、プレイヤーがキャンペーンのマネージメントに関する役割を持たせることをマスターに推奨している。これは単にマスターという暗夜を照らす光となるだけでなく、プレイヤーの持つ長所をマスターが学ぶきっかけになる。じゃあプレイヤーのスキルからマスターが学ぶということは、単に良いところを一つ一つ見つけていくことに比べ、どういう点がよいのだろう?以下に可能性を挙げてみる。
・もしパーティーのこれまでの冒険の歩みを記録するのに長けたプレイヤーがいるなら、その世界の歴史をまとめたり、時には部分的に作ったりしてもらうのはどうか。
・もし興味を引くキャラクターを演じるスキルのあるプレイヤーがいるなら、そのキャラクターがいないシーンになどで、街中・店・洞窟などで遭遇するNPCの役割を頼むのはどうか。
・戦術に定評のあるプレイヤーがいるなら、そのキャラクターがどこかにいる、もしくは不運にも気絶していたり死んでいたりする場合に、代わりにモンスターの操作を任せてしまうのはどうか。
・ストーリーテラーとしての資質があるプレイヤーがいるなら、冒険のデザインや、アウトラインだけでも頼んでみるのはどうか。短めの冒険が向いている。好評ならグループ内で周り番にしても面白いし、プレイヤーにマスタースクリーンの反対側に交代で来させ、やらせてみてもいい。
理想のマスターとは一個人として大人であることだが、少なくともダンジョン・マスターとして足りるものであればいい。運がよければ、誰かが君に道を示してくれる。新たな一歩を踏み出すのは今だ。
Steve Winter
(※1)単語のニュアンスを表現できる適当な言葉は思いつきませんでしたが、よい例えは思いつきました。ジャイアンがマスターやったらどうなるでしょうね?
(※2)かなり適当。前後の文章とその部分の語意から推測した継ぎ接ぎ。いわゆる誤魔化し。
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